ECサイト向けCRMの選び方|顧客管理とリピート率向上の実践ガイド

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/13

ECサイトの売上が頭打ち...リピーターを増やすには?

ECサイトを運営していると、新規顧客の獲得コストが高騰し、売上が頭打ちになる局面に直面することがあります。「広告費をかけても思うように売上が伸びない」「リピーターが増えない」といった悩みを抱えるEC事業者は少なくありません。

実際、新規顧客の獲得コストは既存顧客の5倍とも言われており、リピーターを増やすことがECサイトの収益性を左右する重要な要素となっています。顧客情報を活用して良好な関係を構築し、リピート購入を促進する手法として、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)の導入ニーズが高まっています。

この記事では、ECサイト向けCRMの基礎知識から選び方、主要ツールの比較、導入時の注意点まで、実務担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。

この記事のポイント:

  • ECサイトでは新規獲得の限界からリピーター重視の経営が重要に
  • CRMは顧客情報を活用した管理手法で、LTV(顧客生涯価値)向上を目指す
  • 選び方のポイントは機能・料金・既存ツール連携・セキュリティの4点
  • 主要ツールは月額数千円〜数万円が一般的で、ECカートとの連携が重要
  • 導入前の計画・準備が成功の鍵、全社的な推進体制とデータ設計が必須

1. ECサイトにCRMが必要な理由

(1) 新規獲得の限界とリピーター重要性

ECサイトの運営では、新規顧客の獲得だけでは持続的な売上拡大が困難です。広告費の高騰により、新規顧客1人あたりの獲得コスト(CPA)は年々上昇しており、投資対効果が悪化する傾向にあります。

一方で、既存顧客は商品やサービスをすでに知っており、再購入のハードルが低いため、リピーター獲得施策のほうがコスト効率が高いケースが多いと言われています。ECサイトの収益性を高めるには、既存顧客との関係を強化し、リピート購入を促進することが重要です。

(2) 顧客データ活用による売上拡大

CRMツールを導入すると、購買履歴やWebサイトの閲覧行動を自動的に収集・分析できるようになります。これにより、顧客ごとの購入傾向や興味関心を把握し、セグメント別に最適な施策を展開することが可能になります。

例えば、会員ランク別の割引クーポン配信、誕生月のプレゼントキャンペーン、休眠顧客への再アプローチなど、顧客の状態に応じた施策を実施することで、顧客満足度の向上とリピート率の改善が期待できます。

2. ECサイト向けCRMの基礎知識

(1) CRMとは何か

CRM(Customer Relationship Management)は、顧客情報を活用して良好な関係を構築し、売上を拡大する管理手法です。顧客中心のマーケティングを実現し、リピーターやファンを獲得することを目的としています。

ECサイト向けCRMでは、購買履歴、閲覧行動、メール開封率、クリック率などのデータを統合管理し、顧客一人ひとりに最適なコミュニケーションを実現します。

(2) ECサイト向けCRMの主な機能

ECサイト向けCRMには、以下のような機能が搭載されています:

基本機能:

  • 顧客情報の一元管理(氏名、住所、購買履歴等)
  • セグメント機能(会員ランク、購入金額、行動履歴等で分類)
  • メール配信機能(セグメント別の自動配信)
  • 分析・レポート機能(売上分析、顧客分析、施策効果測定)

上位機能(ツールにより異なる):

  • MAツールとの連携(リード育成の自動化)
  • ECカートシステムとの連携(Shopify、BASE、EC-CUBE等)
  • LINE・SNS連携(顧客接点の拡大)
  • ポイント・クーポン管理
  • レコメンド機能(おすすめ商品の自動提案)

(3) 導入によるメリット(LTV向上、顧客満足度向上)

CRM導入の主なメリットは以下の通りです:

LTV(顧客生涯価値)の向上: 顧客一人ひとりの購入回数・購入金額を増やすことで、LTVを最大化できます。セグメント別施策により、優良顧客の育成が可能になります。

顧客満足度の向上: 顧客の購入履歴や興味関心に基づいた提案により、「自分に合った情報が届く」という顧客体験を提供できます。

業務効率化: 手作業での顧客管理やメール配信を自動化することで、担当者の業務負荷を軽減できます。

3. ECサイト向けCRMの選び方

(1) 機能面での比較ポイント

CRMツールを選ぶ際は、自社の営業プロセスに必要な機能を明確にすることが重要です。以下の機能が自社にとって必要かを検討しましょう:

  • セグメント機能の詳細度(どこまで細かく分類できるか)
  • メール配信の自動化レベル(シナリオ配信、ステップメール等)
  • ECカートとの連携(既存システムと連携可能か)
  • 分析・レポート機能(必要な指標を可視化できるか)
  • LINE・SNS連携(顧客接点を拡大できるか)

(2) 料金体系の確認

CRMツールの料金は、月額数千円から数万円が一般的です。ツールによって以下のような料金体系があります:

  • 従量課金制: 顧客データ数やメール配信数に応じて課金
  • 定額制: 月額固定料金(機能制限あり・なし)
  • 初期費用: 無料のツールも多いが、有料の場合は数万円〜数十万円

料金は執筆時点のものであり、変更される可能性があります。導入前に各社の公式サイトで最新の料金体系を確認することをおすすめします。

(3) 既存ツールとの連携性(ECカート、MAツール等)

既存のECカートシステム(Shopify、BASE、EC-CUBE等)やMAツール、アクセス解析ツールとの連携が可能かを確認しましょう。連携できない場合、手作業でのデータ移行が必要になり、業務負荷が増大します。

主要ECカートとの連携パターンは以下の通りです:

  • Shopify: API連携に対応したCRMツールが多数存在
  • BASE: BASE Apps経由で連携可能なツールあり
  • EC-CUBE: プラグインやAPI連携で対応

(4) セキュリティ性能

顧客データを扱うCRMツールは、高いセキュリティ性能が求められます。以下のポイントを確認しましょう:

  • データの暗号化(通信・保存時)
  • アクセス権限管理(担当者ごとの権限設定)
  • バックアップ体制(データ消失リスクへの対策)
  • プライバシーポリシー・個人情報保護方針の明示

4. 主要CRMツールの比較

(1) 主要CRMツールの機能・料金比較

2024年時点で、ECサイト向けCRMツールは10〜13選の詳細比較記事が複数公開されています(GENIEE、ASPIC Japan等)。ここでは、代表的なツールの特徴を紹介します。

HubSpot CRM:

  • 無料プランあり(基本機能のみ)
  • 有料プランは月額数万円〜
  • Shopify等の主要ECカートと連携可能
  • MAツールとの統合で顧客育成を自動化

Salesforce:

  • 大企業向けの本格的CRM
  • 月額数万円〜(ユーザー数に応じた課金)
  • 高度なカスタマイズが可能
  • ECカート連携も対応

Zoho CRM:

  • 中小企業向けで導入しやすい
  • 月額数千円〜の低価格帯
  • 基本機能が充実
  • 日本語サポートあり

国内ツール(SATORI、カスタマーリングス等):

  • 日本語サポートが充実
  • 国内企業の業務フローに最適化
  • ECカート連携も対応

ツールの仕様・料金は変更される可能性があるため、導入前に各社の公式サイトで最新情報を確認してください。

(2) ECプラットフォーム別の連携パターン(Shopify、BASE、EC-CUBE等)

ECプラットフォームごとに、CRMとの連携方法が異なります:

Shopify:

  • アプリストア経由で多数のCRMツールが利用可能
  • API連携でカスタマイズも可能
  • HubSpot、Salesforce、Klaviyo等が主要な連携先

BASE:

  • BASE Apps経由で連携可能なCRMあり
  • API連携も対応(開発が必要)

EC-CUBE:

  • プラグイン経由での連携が一般的
  • API連携でカスタマイズ可能

ECカートとCRMの連携により、購買データの自動取り込み、顧客情報の一元管理、セグメント別施策の自動実行が可能になります。

5. 導入時の注意点とリピート率向上施策

(1) 導入前の計画・準備の重要性

CRMツールを効果的に活用するには、事前の計画・準備が必須です。ツールを導入するだけでは、業務効率化や売上向上は実現しません。

以下のステップで計画を立てましょう:

  1. 導入目的の明確化: 何を達成したいのか(リピート率向上、LTV向上等)
  2. 現状の課題整理: どのような課題があるか(顧客データの分散、手作業の多さ等)
  3. 目標設定: 具体的な数値目標(リピート率〇%向上、LTV〇円向上等)
  4. 必要機能の洗い出し: 自社に必要な機能を明確化

(2) 全社的な推進体制とデータ設計

CRM導入は、マーケティング部門だけでなく、営業・CS・経営層を巻き込んだ全社的なプロジェクトです。推進体制を構築し、役割分担を明確にしましょう。

また、データ設計も重要です。顧客をどのような基準でセグメント化するか、どのようなデータを収集・管理するかを事前に定義します。

セグメント例:

  • 会員ランク(ブロンズ・シルバー・ゴールド等)
  • 年間購入金額(〜1万円、1〜5万円、5万円〜等)
  • 購入回数(初回、2〜5回、6回以上等)
  • 休眠期間(30日、60日、90日以上等)

(3) 顧客セグメント別施策(会員ランク、誕生月、購入金額等)

セグメント別に最適な施策を展開することで、顧客満足度とリピート率を向上させることができます。

施策例:

  • 会員ランク別割引: ゴールド会員に20%オフクーポン配信
  • 誕生月プレゼント: 誕生月の顧客に特別クーポンや割引を提供
  • 休眠顧客へのアプローチ: 90日以上購入がない顧客に「お久しぶりです」メールと特典を配信
  • 初回購入者フォロー: 初回購入後1週間以内にサンキューメールと次回クーポンを配信

(4) カスタマージャーニーに応じた施策展開

カスタマージャーニー(認知→興味→購入→リピート)の各段階に応じたCRM施策を展開することが重要です。

認知・興味段階:

  • メルマガ登録者への定期的な情報配信
  • 興味関心に応じたコンテンツ提供

購入段階:

  • カート放棄者へのリマインドメール
  • 初回購入特典の提供

リピート段階:

  • 購入後のフォローメール
  • レビュー依頼
  • クロスセル・アップセル提案

EC管理者の約63.7%が「多機能で使いこなせていない」と回答しているため、段階的に施策を増やし、PDCAを回すことが推奨されます。

6. まとめ:自社に適したCRMの選択

ECサイト向けCRMは、顧客情報を活用してリピート率を向上させ、LTVを最大化するための重要なツールです。選定時は、機能・料金・既存ツール連携・セキュリティの4点を比較し、自社の規模・予算・目的に合ったツールを選びましょう。

また、ツールを導入するだけでは効果は得られません。導入前の計画・準備、全社的な推進体制、データ設計、セグメント別施策の実施が成功の鍵となります。

次のアクション:

  • 自社の課題と導入目的を明確化する
  • 必要な機能と予算を整理する
  • 3〜5社の公式サイトで最新の機能・料金を確認する
  • 無料トライアルで実際の操作性を試す
  • 導入計画を策定し、全社的な推進体制を構築する

自社に適したCRMを選択し、顧客との良好な関係を構築して、持続的な売上拡大を目指しましょう。

よくある質問

Q1ECサイト向けCRMの導入コストは?

A1月額数千円〜数万円が一般的です。機能や顧客データ量により変動します。初期費用が無料のツールも多いですが、導入計画・設定工数を含めると初期に1〜3ヶ月の準備期間が必要です。執筆時点の料金のため、公式サイトで最新情報をご確認ください。

Q2小規模ECサイトでもCRMは必要?

A2月間注文数が50件以上、または既存顧客が100名以上いる場合は効果が期待できます。それ以下の場合はスプレッドシート管理でも十分なケースがあります。リピーター獲得に課題を感じたらCRM導入を検討するのが適切です。

Q3CRM導入後の効果測定はどうすればいい?

A3リピート率、LTV(顧客生涯価値)、顧客単価を導入前後で比較します。セグメント別施策の開封率・クリック率・購入率も測定しましょう。EC管理者の63.7%が「多機能で使いこなせていない」と回答しているため、段階的な活用とPDCAサイクルが重要です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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