デジタルセールスが注目される背景
(1) 顧客の購買行動のデジタル化
顧客の購買行動プロセスがデジタル化し、営業担当者と会う前にWebで情報収集する顧客が増えました。BtoBでも、製品・サービスの比較検討をオンラインで完結する企業が増えています。
従来の購買行動:
- 営業担当者からの提案を受けて検討開始
- 対面での情報提供・デモンストレーション
デジタル時代の購買行動:
- Webサイト・SNS・比較サイトで事前に情報収集
- 営業担当者と会う時点で既に候補を絞り込んでいる
このため、営業側もデジタルチャネルでの情報提供・コミュニケーションが必須になっています。
(2) コロナ禍による非対面営業の普及
コロナ禍により対面営業が制限され、オンライン商談が急速に普及しました。Web会議ツール(Zoom、Microsoft Teams等)を活用した営業活動が一般化し、デジタルセールスの必要性が高まりました。
デジタルセールスの基礎知識(定義・関連用語との違い)
(1) デジタルセールスとは:デジタル技術・ITツールを活用した営業
デジタルセールスとは、デジタル技術やITツールを駆使して行う営業手法です。インターネット、Webサイト、ソーシャルメディア、電子メール、SFA、MA、Web会議ツール、デジタルセールスルーム(DSR)などを活用します。
デジタルセールスのメリット:
- 地理的制約がなく、国内外の見込み客にリーチ可能
- 移動コストを削減し、営業効率を向上
- スピーディーな営業活動(即座の情報提供、迅速な商談設定)
(2) インサイドセールスとの違い(広義の概念 vs 具体的手法)
デジタルセールス(広義の概念):
- デジタル技術・ITツールを活用した営業全般
- リード獲得、商談、クロージング、カスタマーサクセスの全プロセスを含む
インサイドセールス(具体的手法):
- デジタルセールスの代表的な手法の一つ
- 電話やメール、ITツールを活用して遠隔で顧客にアプローチする営業手法
- フィールドセールス(対面営業)と分業することが一般的
(3) デジタルマーケティングとの違い(商談・受注まで vs リード獲得まで)
デジタルマーケティング:
- リード獲得までが主な範囲
- Webサイト、SEO、SNS、Web広告、コンテンツマーケティング等
デジタルセールス:
- リード獲得後の商談・受注までが主な範囲
- 商談管理、提案、クロージング、カスタマーサクセス等
両者は連携して営業活動全体を支援します。
デジタルセールスで活用する主要ツール
(1) SFA(営業支援システム):顧客情報管理・商談管理
SFA(Sales Force Automation、営業支援システム)は、営業活動の効率化、顧客情報管理、商談管理などを行うツールです。
主な機能:
- 顧客情報の一元管理
- 商談の進捗管理(パイプライン可視化)
- 営業活動の記録・分析
代表的なSFA:
- Salesforce
- HubSpot
- Mazrica(旧Senses)
(2) MA(マーケティングオートメーション):見込み客の可視化・育成
MA(Marketing Automation、マーケティングオートメーション)は、見込み客のWeb行動を可視化し、適切なタイミングでフォロー活動を自動化するツールです。
主な機能:
- 見込み客のWeb行動追跡(ページ閲覧、資料ダウンロード等)
- スコアリング(見込み度の数値化)
- メール配信の自動化
代表的なMA:
- HubSpot Marketing Hub
- Marketo
- Pardot
(3) Web会議ツール:オンライン商談
Web会議ツールは、オンラインで商談・デモンストレーション・打ち合わせを行うツールです。
主な機能:
- ビデオ会議
- 画面共有
- チャット
代表的なWeb会議ツール:
- Zoom
- Microsoft Teams
- Google Meet
(4) デジタルセールスルーム(DSR):営業資料・議事録の集約
デジタルセールスルーム(DSR: Digital Sales Room)は、BtoB企業と顧客がセキュアな環境で商談できるオンライン・プラットフォームです。議事録、営業資料などの情報を集約し、見込み客や既存顧客との円滑なコミュニケーションを実現します。
主な機能:
- 営業資料・提案書の共有
- 議事録の記録・共有
- 商談の進捗状況の可視化
- 顧客との双方向コミュニケーション
DSR市場の成長:
- 2022年に前年比約300%成長
- 2024年には30社以上のプレイヤーが参入
代表的なDSR:
- openpage
- Seismic
- Highspot
デジタルセールスの導入ステップ
(1) 営業プロセスの現状分析とデジタル化ポイントの特定
営業プロセス全体を見直し、どのプロセスをデジタル化すべきかを特定します。
営業プロセス:
- リード獲得(デジタルマーケティング)
- リード育成(MAツール)
- 商談(Web会議、DSR)
- クロージング(電子契約)
- カスタマーサクセス(SFA、CRM)
各プロセスでのボトルネックを特定し、デジタル化の優先順位を決定します。
(2) ツール選定(SFA、MA、DSR等の組み合わせ)
営業プロセスに応じて、必要なツールを選定します。複数ツールの組み合わせが必要なため、既存システムとの連携、コスト、サポート体制を考慮します。
ツール選定基準:
- 既存システム(基幹システム、CRM等)との連携
- 必要な機能(商談管理、見込み客育成、資料共有等)
- コスト(初期費用、月額費用、ユーザー数課金等)
- サポート体制(日本語サポート、導入支援)
(3) 営業組織の体制構築(インサイドセールス/フィールドセールス分業)
デジタルセールスを導入する場合、営業組織の体制を見直すことが一般的です。
分業型営業体制:
- マーケティング: リード獲得
- インサイドセールス: リード育成・商談化
- フィールドセールス: 対面商談・クロージング
- カスタマーサクセス: 継続利用支援・解約防止
各役割を明確化し、部門間のデータ共有とコミュニケーションを強化します。
(4) 人材育成とトレーニング
デジタルセールスは比較的新しい職種で経験者が少ないため、社内育成やトレーニングプログラムの活用が必要です。
育成内容:
- デジタルツールの操作方法
- 遠隔コミュニケーションのスキル
- データ分析スキル
- オンライン商談のノウハウ
デジタルセールスの導入事例と効果
(1) 富士通の事例(営業DX推進、3年間の成果)
富士通は2024年8月に「富士通流!営業のデジタルシフト」を出版し、デジタルセールスチームの3年間のDX推進の成果を公開しました。
富士通の取り組み:
- デジタルセールス部門の新設
- SFA、MA、DSRツールの統合活用
- 営業プロセスのデジタル化設計
- 人材育成プログラムの構築
(2) 導入効果(営業効率向上、移動コスト削減、地理的制約の解消)
デジタルセールスの導入により、以下の効果が期待できます:
- 営業効率向上: 移動時間の削減、商談数の増加
- 移動コスト削減: 交通費・宿泊費の削減
- 地理的制約の解消: 国内外の見込み客にリーチ可能
- スピーディーな営業活動: 即座の情報提供、迅速な商談設定
(3) 導入時の課題と解決策
デジタルセールス導入時には、以下の課題があります:
課題1: ツールを導入するだけでは効果が出ない
- 解決策: 営業プロセスの見直しとデジタル化の設計
課題2: 対面営業と比べて信頼関係構築に時間がかかる
- 解決策: 適切なコミュニケーション設計、定期的なフォローアップ
課題3: 経験者が少なく、人材育成が必要
- 解決策: トレーニングプログラムの活用(例: MM デジタルセールス・アカデミー)
まとめ:デジタルセールス導入のポイント
デジタルセールスは、顧客の購買行動のデジタル化に対応するため、B2B企業にとって必須の営業手法です。SFA、MA、Web会議ツール、DSRなどのツールを組み合わせて活用し、営業プロセス全体をデジタル化することで、営業効率向上・移動コスト削減・地理的制約の解消を実現できます。
次のアクション:
- 営業プロセスの現状分析を行い、デジタル化ポイントを特定する
- SFA、MA、DSR等のツールを比較検討し、自社に最適な組み合わせを選定する
- インサイドセールス/フィールドセールス分業の営業体制を構築する
- トレーニングプログラムを活用し、デジタルセールス人材を育成する
2024年の営業戦略トレンドである「AI、セールスイネーブルメント、DSR」を活用し、デジタルセールスで営業活動を強化しましょう。
