リードを獲得しても商談につながらない、営業と連携できない...
B2B企業のマーケティング担当者の多くが、「リードは獲得できているが商談につながらない」「マーケティングと営業の連携がうまくいかない」といった課題を抱えています。見込み顧客を獲得するだけでなく、育成し、営業に引き渡すまでの一連のプロセスを設計することで、効率的な商談創出が可能になります。
この記事では、デマンドジェネレーションの基本概念から、3つのプロセス、具体的な施策とツール活用、導入時の注意点まで、実務で役立つ情報を網羅的に解説します。
この記事のポイント:
- デマンドジェネレーションとは、見込み客を獲得・育成し、営業部門に引き渡すまでの全マーケティングプロセス
- リードジェネレーションはデマンドジェネレーションの一部(第1ステップ)で、獲得だけでなく育成・選別も含む
- 3つのプロセス:リードジェネレーション(獲得)→リードナーチャリング(育成)→リードクオリフィケーション(選別)
- MAツールとSFAを連携し、リードスコアリングで購買意欲の高いリードを優先的に営業へ
- 2024年はABM(42%)とウェビナー(44%)が需要創出の主要チャネル
1. なぜ今デマンドジェネレーションが重要なのか
デマンドジェネレーションが注目される背景には、BtoB企業の購買プロセスの長期化・複雑化があります。
従来のBtoB営業:
- 営業が飛び込み訪問や電話で新規開拓
- 案件化までのリードタイムが短い
- 顧客は限られた情報源から製品を選定
現在のBtoB購買プロセス:
- 顧客は営業に会う前にWeb検索で情報収集(検討プロセスの約60%)
- 複数の意思決定者が関与し、検討期間が長期化(3〜12ヶ月)
- 比較検討の選択肢が増え、差別化が困難
この変化により、見込み顧客を獲得するだけでなく、購買意欲を段階的に高め、適切なタイミングで営業に引き渡す仕組みが必要になりました。これがデマンドジェネレーションです。
デマンドジェネレーションのメリット:
- リードの質が向上し、商談化率が高まる
- 営業が優先的にアプローチすべき顧客が明確になる
- マーケティングと営業の連携がスムーズになる
- 長期的な顧客獲得コストが低下する
2. デマンドジェネレーションの基礎知識
(1) デマンドジェネレーションの定義
**デマンドジェネレーション(Demand Generation)**とは、直訳すると「需要の創出」で、見込み客を獲得・育成し、営業部門に引き渡すまでの全マーケティングプロセスを指します。
デマンドジェネレーションは、以下の3つのプロセスで構成されます。
- リードジェネレーション(Lead Generation): 見込み顧客の獲得
- リードナーチャリング(Lead Nurturing): 見込み顧客の育成
- リードクオリフィケーション(Lead Qualification): 見込み顧客の選別
この3つのプロセスを一貫して管理することで、効率的に商談を創出できます。
(2) リードジェネレーションとの違い
よく混同されるのが、デマンドジェネレーションとリードジェネレーションの違いです。
リードジェネレーション:
- デマンドジェネレーションの第1ステップ(一部)
- 見込み顧客を獲得する活動のみを指す
- 例:展示会、ウェビナー、Web広告でリードを集める
デマンドジェネレーション:
- リードジェネレーション、リードナーチャリング、リードクオリフィケーションの3つのプロセス全体を包括する戦略
- 獲得から営業への引き渡しまでを一貫して管理
関係性: デマンドジェネレーションで興味関心を引き、リードジェネレーションで具体的な商談のきっかけを得る流れを作ります。
3. デマンドジェネレーションの3つのプロセス
デマンドジェネレーションは、以下の3つのプロセスを順に実施します。
(1) リードジェネレーション(獲得)
リードジェネレーションは、見込み顧客の情報(企業名、担当者名、メールアドレス等)を獲得する活動です。
主な施策:
- オンライン: ホワイトペーパー、ウェビナー、コンテンツSEO、Web広告、SNS広告
- オフライン: 展示会、セミナー、テレマーケティング
ポイント: 量だけでなく質も重視し、ターゲット層に絞った施策を実施することが重要です。
(2) リードナーチャリング(育成)
リードナーチャリングは、獲得したリードに対して継続的に情報提供を行い、購買意欲を高める活動です。
主な施策:
- メールマーケティング: セグメント別に有益な情報を定期配信
- コンテンツ提供: ブログ記事、導入事例、ホワイトペーパー
- リターゲティング広告: サイト訪問者に再度広告を表示
- インサイドセールス: 電話やメールでフォローアップ
ポイント: リードの行動履歴(サイト訪問、資料ダウンロード、メール開封等)を把握し、興味関心に応じた情報を提供します。
(3) リードクオリフィケーション(選別)
リードクオリフィケーションは、購買意欲の高いリードを選別し、営業部門に引き渡す活動です。
選別の基準:
- MQL(Marketing Qualified Lead): マーケティング部門が適格と判断したリード(一定のスコアに達した見込み顧客)
- SQL(Sales Qualified Lead): 営業部門が適格と判断したリード(商談化の可能性が高い見込み顧客)
リードスコアリング: 見込み顧客のアクションや属性に点数をつけ、優先順位を決める手法です。
スコアリング例:
- ホワイトペーパーダウンロード: +10点
- ウェビナー参加: +20点
- 料金ページ閲覧: +15点
- 問い合わせフォーム閲覧: +30点
- 役職が部長以上: +20点
スコアが一定値(例:80点)に達したリードをMQLとし、営業に引き渡します。
ポイント: スコアリングの基準は営業部門と協議して決定し、定期的に見直すことが重要です。
4. 具体的な施策とツール活用
(1) コンテンツマーケティング・ウェビナー・展示会
デマンドジェネレーションの成功には、適切な施策の組み合わせが重要です。
コンテンツマーケティング(50%): 2024年の調査では、コンテンツマーケティングが最も需要を創出するチャネルとして第1位(50%)に選ばれています。SEO対策されたブログ記事、ホワイトペーパー、導入事例などを継続的に発信し、自然検索からリードを獲得します。
ウェビナー(44%): 2024年のトレンドとして、ウェビナーが需要を生み出す可能性のあるキャンペーンタイプの第2位(44%)に選ばれています。オンライン開催のため、場所を選ばず全国・海外からも参加でき、録画配信で後日視聴者にもリーチできます。
ABM(42%): アカウントベースマーケティング(ABM)が需要創出の第2位のチャネル(42%)として注目されています。特定の企業(アカウント)を狙って集中的にマーケティング施策を展開する手法で、大口顧客の獲得に効果的です。
展示会: 短期間で多数の見込み顧客と接点を持てるため、依然として有効な施策です。出展費用は高額(数十万円〜数百万円)ですが、展示会後のフォローアップをしっかり行うことで、商談化率を高められます。
(2) MAツール・SFAの活用
MA(マーケティングオートメーション)ツールは、リードナーチャリングの自動化に不可欠です。
MAツールでできること:
- リードのスコアリング(行動履歴に基づいて点数化)
- セグメント別のメール配信(興味のあるテーマに応じた情報提供)
- リードの行動履歴の可視化(サイト訪問、資料ダウンロード等)
- ホットリード(購買意欲の高いリード)の自動通知
代表的なMAツール:
- HubSpot(中小企業向け、使いやすい、月額数万円〜)
- Marketo(大企業向け、高機能、月額数十万円〜)
- SATORI(国内企業に強い、月額数万円〜)
**SFA(営業支援システム)**は、リードクオリフィケーション後の営業活動を効率化します。
SFAでできること:
- 商談管理(進捗状況、確度の可視化)
- 顧客情報の一元管理
- 営業活動の記録・分析
代表的なSFA:
- Salesforce(世界シェアNo.1、1ユーザーあたり数千円〜)
- HubSpot CRM(無料版あり、有料版は1ユーザーあたり数千円〜)
MAとSFAの連携: MAツールで育成したリードをSFAに自動連携することで、営業はリードの行動履歴を把握しながらアプローチできます。
(3) リードスコアリングの設計
リードスコアリングは、デマンドジェネレーション成功の鍵です。
スコアリング設計のステップ:
- 営業部門と協議し、MQL・SQLの定義を明確にする
- 過去の商談化データを分析し、商談化しやすいリードの特徴を洗い出す
- アクション(ウェビナー参加、資料ダウンロード等)と属性(役職、企業規模等)にスコアを設定
- スコアが一定値に達したリードをMQLとし、営業に引き渡す
- 定期的にスコアリング基準を見直し、最適化する
注意点: スコアリング設計が不適切だと、購買意欲の低いリードを営業に渡してしまい、営業効率が低下します。営業からのフィードバックを定期的に収集し、改善を続けることが重要です。
5. 導入時の注意点と失敗を防ぐポイント
(1) 初期コストと運用体制の整備
デマンドジェネレーションの導入には、初期コストと運用体制の整備が必要です。
初期コスト:
- MAツール: 月額数万円〜数十万円
- SFA: 1ユーザーあたり数千円〜
- コンテンツ制作(ホワイトペーパー、ウェビナー等): 数十万円〜
効果が出るまでの期間: 6ヶ月〜1年程度が目安です。
運用体制:
- マーケティング部門:施策の企画・実行、リードナーチャリング
- 営業部門:MQL・SQLの定義、商談化、フィードバック
- IT部門:MAツール・SFAの導入・保守
ポイント: 小規模企業の場合、月間リード数が50件未満であればスプレッドシートやメール配信ツールから始めるのも選択肢です。
(2) スコアリング設計の落とし穴
スコアリング設計でよくある失敗例と対策を紹介します。
失敗例1: スコアの基準が曖昧
- 問題: 何となくスコアを設定し、営業が納得しない
- 対策: 過去の商談化データを分析し、根拠のあるスコアを設定
失敗例2: スコアが高いリードでも商談化しない
- 問題: アクションだけでスコアリングし、属性(役職、企業規模)を考慮していない
- 対策: アクションと属性の両方を組み合わせてスコアリング
失敗例3: スコアリング基準を見直さない
- 問題: 一度設定したスコアを放置し、効果が低下
- 対策: 四半期ごとに営業からフィードバックを収集し、基準を見直す
(3) 営業部門との連携
デマンドジェネレーション成功の最大の鍵は、営業部門との連携です。
連携のポイント:
- MQL・SQLの定義を営業と協議して決定する
- 週次または月次で営業にリードの品質をヒアリングする
- 商談化したリード、失注したリードの特徴を共有し、スコアリングに反映
- 営業がMAツールやSFAを使いこなせるよう、トレーニングを実施
失敗例: マーケティングが一方的にスコアリング基準を決め、営業が「使えないリードばかり」と不満を持つケース。
対策: 営業を巻き込み、一緒にスコアリング基準を設計し、定期的に改善することで、連携がスムーズになります。
6. まとめ:自社に合ったデマンドジェネレーション設計
デマンドジェネレーションは、見込み客を獲得・育成し、営業部門に引き渡すまでの全マーケティングプロセスです。リードジェネレーション(獲得)、リードナーチャリング(育成)、リードクオリフィケーション(選別)の3つのプロセスを一貫して管理することで、効率的に商談を創出できます。
MAツールとSFAを活用し、リードスコアリングで購買意欲の高いリードを優先的に営業へ引き渡すことで、商談化率と営業効率が向上します。ただし、初期コストと運用体制の整備が必要で、効果が出るまで6ヶ月〜1年は見込むことが重要です。
次のアクション:
- 自社の月間リード数と営業の状況を確認し、デマンドジェネレーション導入の必要性を判断する
- 営業部門と協議し、MQL・SQLの定義を明確にする
- MAツール・SFAの導入を検討し、無料トライアルで使い勝手を確認する
- リードスコアリングの基準を設計し、過去のデータをもとに検証する
- コンテンツマーケティング、ウェビナー、ABMなど、自社に合った施策を選択して開始する
デマンドジェネレーションは一朝一夕には成果が出ません。営業部門と連携し、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善することで、中長期的な成果につながります。
※この記事は2025年1月時点の情報です。マーケティング手法やツールは進化するため、最新の情報は各種メディアや公式サイトをご確認ください。
補足: Google広告のデマンドジェネレーションキャンペーンは、YouTube・Gmail・Discoverに配信する広告商品で、本記事で解説したB2Bマーケティング戦略としてのデマンドジェネレーションとは別物です。
