データベースとは何か
BtoB企業の情報システム担当者やデータエンジニアの多くが、「業務システムのためにデータベースを構築したいが、設計や構築の基礎がわからない」という悩みを抱えています。
データベースは、体系的に整理されたデータの集合体で、効率的な検索・更新・管理を可能にします。BtoBビジネスでは、顧客情報・受注データ・在庫管理など、業務の中核を支えるデータ基盤として不可欠な存在です。
この記事では、データベース作成の基礎から、設計・構築・運用まで、実務で役立つポイントを体系的に解説します。
この記事のポイント:
- データベースは業務データの効率的な管理を可能にし、BtoBシステムの中核を支える
- 規模に応じてExcel/ノーコードツール/MySQL・PostgreSQLから選定する
- 設計は概念設計→論理設計→物理設計の3段階で進める
- クラウドDBは初期コスト不要で自動バックアップ・スケーリングが可能
- セキュリティ対策(アクセス制御・暗号化・バックアップ・ログ監視)が必須
(1) データベースの定義と役割
データベースとは、体系的に整理されたデータの集合体です。従来のファイル保存と異なり、以下の機能を提供します。
データベースの主な機能:
- 効率的な検索: 条件を指定して必要なデータを瞬時に取得
- データの一貫性: 重複や矛盾のないデータ管理
- 同時アクセス対応: 複数ユーザーが同時にデータを利用可能
- セキュリティ: アクセス制御により機密情報を保護
- バックアップ・復旧: データ損失を防ぐ仕組み
小規模な顧客リストや商品管理にはExcelのテーブル機能で簡易データベースが作成可能ですが、データ量が増えると専門ツールが必要になります。
(2) BtoBシステムにおけるデータベースの重要性
BtoBビジネスでは、データベースが以下の業務を支えます。
データベースが支える業務例:
| 業務 | データベースの役割 |
|---|---|
| 顧客管理(CRM) | 顧客情報・商談履歴・問い合わせ記録の一元管理 |
| 受注管理 | 受注情報・在庫連携・出荷ステータスの追跡 |
| 財務会計 | 取引データ・請求書発行・入金管理 |
| 人事管理 | 社員情報・勤怠記録・給与計算 |
| 製品管理 | 製品マスタ・価格情報・在庫状況 |
BtoBシステムにおけるDB設計は業務要件理解が前提です。データ構造が業務フローに合っていないと、後から大きな修正コストが発生します。
※出典: Offers Magazine「データベースの作り方を簡単解説。作り方のイロハから実践知識まで」(2024年)
データベースの種類と選定基準
データベースには複数の種類があり、用途に応じて選定することが重要です。
(1) RDB(リレーショナルDB)とNoSQLの違い
RDB(リレーショナルデータベース):
- テーブル(表)形式でデータを管理
- 複雑な検索条件や集計が可能
- MySQL、PostgreSQL、Oracle、SQL Serverなど
NoSQL(非リレーショナルデータベース):
- キーバリュー、ドキュメント、グラフ型など多様な形式
- 大量データを高速処理
- MongoDB、Cassandra、Redis、DynamoDBなど
選定基準:
| 項目 | RDB | NoSQL |
|---|---|---|
| 適したデータ | 構造化データ | 非構造化データ |
| 用途例 | 顧客情報、受注データ | ログデータ、センサーデータ |
| 検索複雑度 | 複雑な条件・集計が可能 | シンプルな検索が中心 |
| スケーラビリティ | 垂直スケール(サーバー強化) | 水平スケール(サーバー追加) |
構造化データ(顧客情報・受注データ等)で複雑な検索条件が必要ならRDB(MySQL、PostgreSQL)を選択します。多くのBtoBの基幹システムはRDBを採用しています。
※出典: ITトレンド「【2025年最新】データベースソフトおすすめ比較15選!無料・有料製品の機能や選び方・人気ランキングを徹底解説」(2025年)
(2) クラウドDBとオンプレミスDBの比較
クラウドDB:
- AWS RDS、Google Cloud SQL、Azure SQL Databaseなど
- 初期コスト不要(従量課金)、自動スケーリング、自動バックアップ
- 運用負荷が大幅に軽減されるが、継続的な月額コストが発生
オンプレミスDB:
- 自社サーバーにインストール
- 初期投資必要(サーバー購入・ライセンス)、運用は自社で管理
- 長期的にはコスト抑制も可能だが、運用負荷が高い
クラウドDBのメリット:
- 初期コスト不要で小規模から開始可能
- 自動バックアップ・高可用性構成が容易
- スケールアップ・スケールダウンが柔軟
2025年現在、スタートアップや中小企業を中心にクラウドDBの採用が拡大しています。
(3) ツール選定の基準(規模・予算・スキル)
規模別の選定目安:
| 規模 | データ量 | おすすめツール | 理由 |
|---|---|---|---|
| 小規模 | 〜1万件 | Excel、Googleスプレッドシート | 無料、導入が容易 |
| 中規模 | 1万〜10万件 | ノーコードツール(kintone、サスケWorks) | プログラミング不要、アプリ開発も可能 |
| 大規模 | 10万件〜 | MySQL、PostgreSQL(クラウドまたはオンプレミス) | 高性能、大量データ処理に対応 |
プログラミング知識がない場合、ノーコード/ローコードツール(kintone、サスケWorks、PigeonCloud)を使えばプログラミング不要でDB構築可能です。
※参考: MeetsMore「データベースが作成できるおすすめのフリーソフト7選|作業を楽にするツールもご紹介」(2024年)
データベース設計の3段階プロセス
データベース設計は概念設計→論理設計→物理設計の3段階で進めます。
(1) 概念設計:業務要件の整理とER図
概念設計では、業務全体のデータ構造を俯瞰し、ER図(Entity Relationship Diagram:実体関連図)で表現します。
ER図の要素:
- エンティティ(実体): データの対象(顧客、商品、受注など)
- 属性: エンティティの情報(顧客名、住所、電話番号など)
- リレーション(関連): エンティティ間の関係(顧客が複数の受注を持つ、など)
概念設計の手順:
- 業務フローを整理し、管理すべきデータを洗い出す
- エンティティを特定する(顧客、商品、受注など)
- エンティティ間の関連を定義する(1対1、1対多、多対多)
- ER図を作成する
(2) 論理設計:テーブル構造と正規化
論理設計では、ER図を基にテーブル構造を決定し、正規化を行います。
正規化とは:
- データの冗長性(重複)を排除し、一貫性を保つ手法
- 第1正規形→第2正規形→第3正規形と段階的に整理
正規化の例:
正規化前(冗長なデータ):
| 受注ID | 顧客名 | 顧客住所 | 商品名 | 単価 |
|---|---|---|---|---|
| 001 | A社 | 東京都 | 製品X | 1000円 |
| 002 | A社 | 東京都 | 製品Y | 2000円 |
正規化後(テーブル分割):
顧客テーブル:
| 顧客ID | 顧客名 | 顧客住所 |
|---|---|---|
| C01 | A社 | 東京都 |
受注テーブル:
| 受注ID | 顧客ID | 商品ID |
|---|---|---|
| 001 | C01 | P01 |
| 002 | C01 | P02 |
正規化により、データの更新・削除時の不整合を防ぎます。
(3) 物理設計:インデックスとパフォーマンス最適化
物理設計では、実際のDBMSに合わせて、パフォーマンスを最適化します。
主な物理設計の要素:
- インデックス設計: 検索を高速化するための索引
- データ型の選択: 数値、文字列、日付などの型を最適化
- パーティショニング: 大量データを分割して管理
- レプリケーション: データの複製による高可用性
データベース設計が不適切だと、後からの修正コストが膨大になるため、3段階設計プロセスを慎重に行う必要があります。
※出典: ASPIC「データベースソフトおすすめ14選。選び方や無料ソフトを紹介」(2024年)
データベースの構築手順
設計が完了したら、実際にデータベースを構築します。
(1) Excelでの簡易データベース作成
手順:
- Excelを開き、1行目に列名(項目名)を入力
- 2行目以降にデータを入力
- 「挿入」→「テーブル」で範囲をテーブル化
- フィルター・並べ替え機能で検索・集計
注意点:
- Excelでの大規模データベース管理は動作が遅くなる
- 複数人での同時編集に弱い
- データ量が1万件を超えたら専門ツールへの移行を検討
※参考: ITトレンド「Excelでデータベースを作成する方法は?手順や注意点、効率化する方法を解説」(2024年)
(2) MySQL/PostgreSQLでのDB構築
MySQLはオープンソースで世界で最もシェアされており、高性能で柔軟性が高いです。PostgreSQLは30年以上開発されており、商用レベルの高性能を無料で利用可能です。
基本的な構築手順(MySQL例):
- MySQLのインストール(またはクラウドDBを契約)
- データベースの作成:
CREATE DATABASE mydb;
- テーブルの作成:
CREATE TABLE customers (
customer_id INT PRIMARY KEY,
name VARCHAR(100),
address VARCHAR(255)
);
- データの挿入:
INSERT INTO customers VALUES (1, 'A社', '東京都');
- データの検索:
SELECT * FROM customers WHERE name = 'A社';
SQL(Structured Query Language)を使ってデータベースの操作・定義・制御を行います。
※出典: プロゲート「MySQLでデータベースを作成しよう」(2024年)
(3) ノーコードツールの活用
2025年現在、Notion AI等のAI機能により、自然言語指示で自動的にデータベース構築が可能になっています。
ノーコードツールの例:
- kintone: プログラミング不要でアプリ開発可能
- サスケWorks: 営業支援に特化したデータベース
- Notion AI: 自然言語指示で自動DB構築(Businessプラン以上)
Notion AIの例: ユーザー: 「顧客管理データベースを作成してください」 Notion AI: 自動的に顧客ID・顧客名・連絡先・商談状況などのカラムを持つDBを生成
ノーコード/ローコードツールの普及により、非技術者でもデータベースアプリを構築できる環境が整っています。
※出典: Kipwise「Notion AIで簡単データベース作成!2025年最新機能と使い方徹底解説」(2025年)
データベースの運用と保守
データベースは構築後も継続的な運用・保守が必要です。
(1) バックアップとセキュリティ対策
バックアップ:
- 日次バックアップ: 毎日自動でバックアップを取得
- 復旧テスト: 定期的にバックアップからの復旧テストを実施
- 世代管理: 複数世代のバックアップを保持
セキュリティ対策(最低限やるべきこと):
- アクセス制御: 必要最小限の権限付与
- 暗号化: 通信・保管データの暗号化
- バックアップ: 日次バックアップと復旧テスト
- ログ監視: 不正アクセス検知
個人情報を扱う場合は個人情報保護法対応も必須です。クラウドDBは一部自動対応していますが、設定確認が重要です。
(2) パフォーマンスチューニングと継続的改善
パフォーマンスチューニング:
- クエリの最適化: 遅いクエリを特定し、インデックスを追加
- 統計情報の更新: DBMSが最適な実行計画を選択できるよう統計を更新
- 不要データの削除: 古いデータをアーカイブまたは削除
継続的改善:
- 定期的なパフォーマンス監視
- 利用状況に応じたスケールアップ・スケールダウン
- セキュリティパッチの適用
まとめ:ビジネス要件に合ったデータベース作成のポイント
データベースは、BtoBビジネスの業務データを効率的に管理するための中核です。設計・構築・運用の各段階で適切な判断をすることで、長期的に安定したデータ基盤を構築できます。
成功のための重要ポイント:
- 規模に応じてExcel/ノーコードツール/MySQL・PostgreSQLから選定する
- 設計は概念設計→論理設計→物理設計の3段階で慎重に進める
- クラウドDBは初期コスト不要で自動バックアップ・スケーリングが可能
- セキュリティ対策(アクセス制御・暗号化・バックアップ・ログ監視)を徹底
- まずはExcelで小規模運用し、必要に応じて段階的にスキルアップが推奨
次のアクション:
- 業務要件を整理し、管理すべきデータを洗い出す
- データ規模・予算・スキルに応じたツールを選定する
- 3段階設計プロセスでデータベースを設計する
- バックアップ・セキュリティ対策を設定し、運用を開始する
ビジネス要件に合ったデータベースを正しく構築・運用することで、業務効率化とデータ活用の基盤を確立しましょう。
※この記事は2025年11月時点の情報です。データベース技術やツールは変化するため、最新情報は各製品の公式サイトをご確認ください。
