顧客セグメントを活用できず、マーケティング施策の精度が上がらない...
マーケティング担当者の多くが、「顧客データは持っているけれど、どう活用すればいいか分からない」という課題を抱えています。 年齢・性別・購買履歴などのデータはあるものの、それをどう分類し、どんな施策に落とし込めばよいのか、明確な基準が見えていない状態です。
この記事では、顧客セグメントの基礎知識から、RFM分析・デシル分析などの具体的な分類方法、BtoB・BtoCでの活用事例まで、実務で使える情報を解説します。
この記事のポイント:
- 顧客セグメントは「顧客を属性・行動で分類したグループ」、セグメンテーションは「分類する活動」を指す
- 分類には4つの変数(デモグラフィック、ジオグラフィック、サイコグラフィック、ビヘイビアル)を組み合わせる
- RFM分析(最新購入日・購入頻度・購入金額)は優良顧客の特定に有効
- BtoBでは企業特性(ファーモグラフィックス)や決裁権などの切り口でセグメント化を行う
- 顧客分類を実施している企業の8割以上が前年よりも増収見込みと回答(調査データ)
1. 顧客セグメントとは?マーケティングで重要な理由
顧客セグメントとは、顧客を年齢・性別・地域・行動の傾向などで分類したグループのことです。一方、顧客セグメンテーションは、顧客をセグメントに分類する活動・プロセスを指します。
セグメンテーションを実施した結果、複数の顧客セグメントが生まれます。
(1) 顧客ニーズの多様化と効果的なマーケティングの必要性
2024年現在、顧客ニーズの多様化と広告手法の変化により、顧客セグメント分析の重要性がさらに高まっています。 同じ商品・サービスでも、20代と50代では求める価値が異なりますし、都市部と地方では購買行動も変わります。
顧客を適切にセグメント化することで、以下のようなメリットが得られます:
- ターゲットを絞った効率的な広告配信
- セグメント別にパーソナライズされたメッセージ
- リソースの最適配分(優良顧客への注力)
(2) 顧客分類実施企業の8割以上が増収見込み(調査データ)
マーケティングリサーチコンシェルジュの調査によると、顧客分類を実施している企業の8割以上が前年よりも増収見込みと回答しており、売上向上に直結する施策であることが示されています。
2. 顧客セグメントの基礎知識(4つの分類変数)
顧客セグメントは、以下の4つの変数を組み合わせて作成するのが一般的です。
(1) デモグラフィック変数(年齢・性別・家族構成・職業・収入)
デモグラフィック変数は、年齢・性別・家族構成・職業・収入などの人口動態的な属性です。
活用例:
- 20代女性向けのスキンケア商品
- 年収800万円以上の40代男性向けの高級車
- 子育て世帯向けの家事代行サービス
デモグラフィック変数は、データ収集が比較的容易で、マーケティング施策に直結しやすいのが特徴です。
(2) ジオグラフィック変数(国・都市・地域・市町村)
ジオグラフィック変数は、国・都市・地域・市町村などの地理的な属性です。
活用例:
- 東京・大阪の都市部向けの宅配サービス
- 北海道・東北向けの防寒グッズ
- 海外展開を視野に入れた国別のマーケティング戦略
地域によって気候・文化・購買習慣が異なるため、ジオグラフィック変数を考慮することで、よりローカライズされた施策が可能になります。
(3) サイコグラフィック変数(性格・ライフスタイル・価値観)
サイコグラフィック変数は、性格・ライフスタイル・価値観などの心理的な属性です。
活用例:
- 環境意識の高い層向けのエコ商品
- アクティブなライフスタイルを好む層向けのアウトドア用品
- 健康志向の高い層向けのオーガニック食品
サイコグラフィック変数は、顧客の心理や価値観を深く理解できる一方、把握が難しいという課題があります。他の変数と組み合わせて慎重に活用する必要があります。
(4) ビヘイビアル変数(購買パターン・購入経路・利用頻度)
ビヘイビアル変数は、購買パターン・購入経路・利用頻度などの行動的な属性です。
活用例:
- 月1回以上購入するヘビーユーザー向けの優待プログラム
- スマホ経由での購入が多い層向けのアプリ開発
- 初回購入者向けのオンボーディング施策
顧客の行動データは、実際の購買履歴やWebサイトのアクセスログなどから取得でき、施策の効果測定にも活用できます。
3. 顧客セグメント作成の具体的手順と分析手法
顧客セグメントを作成する際、以下の分析手法がよく用いられます。
(1) RFM分析(最新購入日・購入頻度・購入金額)
RFM分析は、Recency(最新購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3つの指標で顧客を分類する分析手法です。
RFM分析の3つの指標:
- Recency(最近性): 最後に購入した日からどれくらい経過しているか
- Frequency(頻度): どれくらいの頻度で購入しているか
- Monetary(金額): どれくらいの金額を使っているか
RFM分析を活用することで、顧客の行動を深く掘り下げた分類が可能になり、優良顧客の特定や離反防止に有効です。
活用例:
- 「最近購入し、頻繁に購入し、高額を使う」顧客 → 優良顧客として特別なオファー
- 「以前は頻繁に購入していたが、最近購入していない」顧客 → 離反防止キャンペーン
(2) デシル分析(購入金額でランク分け)
デシル分析は、購入金額で顧客を10等分し、売上への貢献度を可視化する手法です。
活用例:
- 上位10%の顧客が売上の50%を占めている場合、この層への注力が効率的
- 下位10%の顧客には、コストをかけすぎないマーケティング施策を検討
(3) 5ステップでの戦略的活用法(目的設定→データ収集→分析→検証→改善)
THE MOLTSの資料によると、顧客セグメントの戦略的な活用には以下の5ステップが推奨されています:
- 目的設定: 何のためにセグメント化するのか(売上向上、離反防止、新規獲得など)
- データ収集: 必要なデータを整備(顧客属性、購買履歴、行動ログなど)
- 分析: RFM分析やデシル分析などの手法でセグメント化
- 検証: 各セグメントに適した施策を実施し、効果を測定
- 改善: データをもとに継続的にセグメントを見直し・最適化
(4) セグメント細分化のバランス(過度な細分化は非効率)
セグメントを細分化しすぎると、各セグメントのボリュームが小さくなり、効率的なマーケティングができなくなる可能性があります。 自社のリソースと目的に応じて、適切な粒度でセグメント化を行うことが重要です。
4. BtoB・BtoCでのセグメンテーションの違いと事例
(1) BtoC:個人属性・行動データを中心にセグメンテーション
BtoCでは、個人の属性(デモグラフィック)や行動データを中心にセグメント化を行います。
BtoC事例:
- ECサイト:購買履歴や閲覧履歴からレコメンドを最適化
- 小売:AIカメラやデジタル技術を活用した店舗分析(2024年トレンド)
(2) BtoB:ファーモグラフィックス(企業特性・業種・従業員数・売上規模)
BtoBでは、企業特性(ファーモグラフィックス:業種・従業員数・売上規模など)による分類が基本となります。
ファーモグラフィックスの例:
- 業種(製造業、IT、金融など)
- 従業員数(10人未満、50人未満、100人以上など)
- 売上規模(年商1億円未満、10億円未満、100億円以上など)
(3) BtoB特有の切り口(ビジネスモデル・商流、部署・職種、役職・決裁権)
才流の資料によると、BtoB市場では以下の切り口でセグメンテーションを行うことが推奨されています:
- ビジネスモデル・商流: SaaS企業、受託開発企業、商社など
- 部署・職種: マーケティング部門、営業部門、開発部門など
- 役職・決裁権: 経営層、部長、担当者など
BtoBでは、個人ではなく「組織の特性」と「意思決定構造」に基づいてセグメント化を行うのが特徴です。
(4) AIカメラ・デジタル技術活用による分析精度の向上(2024年トレンド)
2024年現在、AIカメラやデジタル技術を活用した顧客セグメント分析が注目されており、店舗分析やWeb行動分析の精度が向上しています。
5. 顧客セグメントを活用したマーケティング戦略(STP分析)
(1) STP分析とは(セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニング)
STP分析は、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の頭文字を取ったマーケティング分析手法です。
フィリップ・コトラーが提唱したフレームワークであり、セグメンテーションはSTP分析の最初のステップとして位置づけられています。
(2) セグメンテーションの重要性(フィリップ・コトラー提唱)
セグメンテーションは、適切なターゲティングやポジショニングを可能にする土台です。 セグメント分析が不十分だと、その後のターゲティングやポジショニングの精度も下がってしまいます。
(3) ターゲティング:優先セグメントの選定
セグメンテーション後、どのセグメントを優先的に攻めるかを決定するのがターゲティングです。
ターゲティングの基準:
- 市場規模(そのセグメントにどれだけの顧客がいるか)
- 成長性(今後伸びる見込みがあるか)
- 自社の強み(競合と比べて優位性があるか)
(4) ポジショニング:差別化戦略の立案
ポジショニングは、ターゲットセグメントの中で、自社がどのような位置づけで差別化するかを決定するステップです。
ポジショニングの例:
- 「低価格で手軽に始められるMAツール」
- 「大企業向けの高機能なCRM」
セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングを一貫して設計することで、効果的なマーケティング戦略が実現できます。
6. まとめ:効果的な顧客セグメント活用のポイント
顧客セグメントは、顧客を適切に分類し、それぞれのニーズに応じた施策を展開するための重要な手法です。 デモグラフィック、ジオグラフィック、サイコグラフィック、ビヘイビアルの4つの変数を組み合わせ、RFM分析やデシル分析などの手法を活用することで、精度の高いセグメント化が可能になります。
BtoCでは個人属性・行動データを、BtoBでは企業特性・意思決定構造を中心にセグメント化を行うのが基本です。 セグメンテーションはSTP分析の最初のステップであり、適切なセグメント化が的確なターゲティングやポジショニングを可能にします。
次のアクション:
- 自社の顧客データを整理し、デモグラフィック・ビヘイビアルの変数を洗い出す
- RFM分析またはデシル分析を試行し、優良顧客セグメントを特定する
- BtoB企業の場合は、ファーモグラフィックス(業種・従業員数・売上規模)でセグメント化を検討する
- セグメント別に施策を実施し、効果測定・改善を継続的に行う
顧客セグメントを戦略的に活用し、マーケティング施策の精度向上と売上拡大を目指しましょう。
よくある質問:
Q: 顧客セグメントと顧客セグメンテーションの違いは? A: 顧客セグメントは「顧客を属性・行動で分類したグループ」そのもの、顧客セグメンテーションは「顧客をセグメントに分類する活動・プロセス」のことです。セグメンテーションを実施した結果、複数の顧客セグメントが生まれます。
Q: BtoBとBtoCで顧客セグメンテーションの方法はどう異なる? A: BtoCは個人属性(デモグラフィック)や行動データを中心にセグメント化します。BtoBは企業特性(ファーモグラフィックス:業種・従業員数・売上規模)、ビジネスモデル・商流、部署・職種、役職・決裁権など、組織の特性と意思決定構造に基づいてセグメント化を行います。
Q: RFM分析やデシル分析など、どの分析手法を使えばよい? A: RFM分析は最新購入日・購入頻度・購入金額の3軸で顧客の行動を深く分析でき、優良顧客の特定や離反防止に有効です。デシル分析は購入金額でランク分けし、売上貢献度を可視化します。既存顧客が多い場合はRFM、売上への貢献度を重視する場合はデシルが推奨されます。自社の目的とデータに応じて選択しましょう。
Q: セグメントはどれくらい細分化すればよい? A: セグメントを細分化しすぎると、各セグメントのボリュームが小さくなり、効率的なマーケティングが困難になる可能性があります。自社のリソース(人員・予算・時間)と目的に応じて、3〜10個程度の適切な粒度でセグメント化を行うのが一般的です。
Q: 既存の顧客データが少ない場合、どのようにセグメンテーションを始めればよいか? A: まずは簡易的なデモグラフィック変数(年齢・性別・地域など)やジオグラフィック変数から始め、Webサイトのアクセスログや問い合わせ内容などの行動データを徐々に蓄積していくのが推奨されます。データが増えてきたら、RFM分析やデシル分析などの高度な手法に移行しましょう。
