チャレンジャーセールスモデルとは?特徴・実践方法・成功事例

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/5

B2B営業で成果が伸び悩んでいませんか?

「顧客との関係構築に力を入れているのに、なぜか受注率が上がらない」「既存の営業手法に限界を感じている」——B2B企業の営業マネージャーやチームリーダーの多くが、こうした悩みを抱えています。

実は、従来の「関係構築型営業」が必ずしも高い成果につながらないことが、大規模な調査によって明らかになっています。マシュー・ディクソンとブレント・アダムソンは、4年間にわたり90社6,000人以上の営業担当者を分析し、「チャレンジャーセールスモデル」という新しい営業手法を提唱しました。

この記事では、チャレンジャーセールスモデルの概念・実践方法・導入事例を詳しく解説します。B2B営業の成果向上を目指す実務担当者の方に、具体的なヒントをお届けします。

この記事のポイント:

  • チャレンジャーセールスモデルは4年間90社6,000人の大規模調査から生まれた営業手法
  • 5つの営業タイプのうち、ハイパフォーマーの54%がチャレンジャータイプ
  • 「指導」「適応」「支配」の3要素が商談成約の鍵を握る
  • 伊藤忠テクノソリューションズでは7割の営業担当に明確な変化が見られた
  • B2B複雑商材(SaaS、IT、コンサルティング等)での適用が特に有効

チャレンジャーセールスモデルとは

チャレンジャーセールスモデルは、CEB(現Gartner)のマシュー・ディクソンとブレント・アダムソンが提唱した営業手法です。従来の営業の常識を覆す、データに基づいたアプローチとして注目を集めています。

(1) 従来の営業の常識を覆した研究(4年間90社6,000人の大規模調査)

2011年に発表された原著「The Challenger Sale」は、4年間にわたり90社6,000人以上の営業担当者を分析した大規模な調査に基づいています。この調査により、従来「関係構築が最も重要」とされていた営業の常識が、必ずしも成果に直結しないことが明らかになりました。

調査の結果、営業担当者は5つのタイプに分類され、それぞれの成果に大きな差があることが判明しました。特に複雑な販売環境では、「チャレンジャー」と呼ばれるタイプが圧倒的な成果を上げていたのです。

(参考: マシュー・ディクソン、ブレント・アダムソン「チャレンジャー・セールス・モデル」(海と月社)

(2) 2025年の営業トレンド(IT進化と購買行動の複雑化)

2025年現在、IT技術の進化により顧客の購買行動はさらに複雑化しています。顧客は営業担当者と接触する前に、インターネットで多くの情報を収集するようになりました。その結果、営業担当者には「顧客自身も気づいていない課題を指摘し、交渉を有利に進める力」が求められています。

チャレンジャーセールスモデルは、このような環境変化に適した営業手法として、再び注目を集めています。情報と専門知識を感情より重視し、結果を出す自信に満ちた営業チームを作ることが、現代の営業には不可欠です。

(参考: 月刊タレンタル「ハイパフォーマーが実践するチャレンジャーセールスモデルとは?」

(3) 原著書籍「The Challenger Sale」の概要

チャレンジャーセールスモデルは、単なる営業テクニックではなく、顧客との関係性を根本から見直す営業哲学です。原著では、「顧客がまだ気づいていない問題や課題を指摘し、より良い解決策を提案する」というアプローチが詳しく解説されています。

重要なのは、「挑戦する」とは強引に押し付ける意味ではない、という点です。顧客に新しい視点を提供し、顧客自身の考え方や行動を変容させることが、チャレンジャーの本質です。

5つの営業タイプと特徴

大規模調査により、営業担当者は以下の5つのタイプに分類されることが明らかになりました。

(1) ハードワーカー(勤勉型)

向上心が高く、圧倒的な行動量で受注を獲得する営業タイプです。常に学び、努力を惜しまない姿勢が特徴ですが、行動量だけでは複雑な商談には対応しきれない場合があります。

(2) リレーションシップビルダー(関係構築型)

顧客との関係構築を最も得意とする営業タイプです。実は、このタイプは最も広く採用されていますが、調査によると営業実績は最も低いという結果が出ています。関係構築は重要ですが、それだけでは成果につながらないのが現実です。

(参考: type「「営業」を根本から見直す!本当に成果を出す営業タイプは●●ができる」

(3) ローンウルフ(一匹狼型)

直感的な営業で成果を上げる一匹狼タイプです。独自のやり方で結果を出しますが、そのアプローチを組織全体に展開することが難しいという課題があります。

(4) リアクティブ・プロブレムソルバー(受動的問題解決型)

顧客との約束を最優先し、サービス精神が旺盛な営業タイプです。顧客の要望に迅速に対応しますが、受け身の姿勢になりがちで、商談の主導権を握りにくい面があります。

(5) チャレンジャー(論客型)

社内外問わず発展的な議論を展開する論客タイプです。顧客に新しい視点や洞察を提供し、商談をリードする力に優れています。

(6) 各タイプの成果比較(ハイパフォーマーの54%がチャレンジャー)

調査の最も重要な発見は、複雑な販売環境でのハイパフォーマーの54%がチャレンジャータイプだったという点です。一方、最も広く採用されているリレーションシップビルダーは、実績が最も低いという結果でした。

チャレンジャーは景気の好不況にかかわらず安定した成果を出す傾向があり、特にB2B複雑商材の営業で圧倒的な優位性を発揮します。

(参考: Mazrica「チャレンジャーセールスモデルとは?これからの営業に求められる力」

チャレンジャーの3つの核となる要素

チャレンジャーセールスモデルは、「指導(Teaching)」「適応(Tailoring)」「支配(Taking Control)」の3つの要素で構成されています。

(1) 指導(Teaching): 顧客に新しい視点・洞察を提供

**指導(Teaching)**とは、顧客に新しい視点や洞察を提供し、考え方や行動を変容させるスキルです。単に製品やサービスを説明するのではなく、「顧客がまだ気づいていない課題」を指摘し、より良い解決策を提案します。

例えば、顧客が「営業効率化ツールが欲しい」と考えている場合、チャレンジャーは「そもそも営業プロセスに無駄が多い可能性がある」と指摘し、プロセス改善とツール導入を組み合わせた提案を行います。

(参考: flier「チャレンジャー・セールス・モデル / 成約に直結させる「指導」「適応」「支配」」

(2) 適応(Tailoring): ステークホルダー間のコンセンサス形成

**適応(Tailoring)**とは、顧客組織内のステークホルダー間でコンセンサスを形成するためにメッセージやアプローチをカスタマイズするスキルです。

B2B商談では、経営層・現場担当者・IT部門など、複数のステークホルダーが関与します。それぞれの関心事や優先順位は異なるため、各ステークホルダーに合わせたメッセージを伝える必要があります。

例えば、経営層には「ROI(投資対効果)」、現場担当者には「業務効率化」、IT部門には「システム連携」といった形で、それぞれの視点に合わせた価値を提示します。

(3) 支配(Taking Control): 商談の主導権を握る

**支配(Taking Control)**とは、商談の主導権を握り、複雑なB2B購買プロセスの遅延を管理するスキルです。

B2B商談では、意思決定に時間がかかるケースが多く、遅延が発生しがちです。チャレンジャーは、「いつまでに何を決めるか」を明確にし、顧客と一緒にスケジュールを管理することで、商談をスムーズに進めます。

(4) 具体的な商談シーンでの実践例

例えば、SaaS営業の商談では以下のように実践できます:

指導: 「御社の営業チームは属人化が課題では?データ共有の仕組みがあれば、チーム全体の生産性が30%向上する可能性があります」

適応: 「営業部長様にはチーム生産性向上のメリットを、現場リーダー様には日々の業務効率化のメリットを、それぞれご説明します」

支配: 「今週中にトライアル開始のご判断をいただければ、来月の営業会議に間に合います。スケジュールを一緒に確認しましょう」

(参考: 01START「成果の出る営業「チャレンジャーセールスモデル」とは?(2)商談成約に繋がる「指導」の方法を解説」

チャレンジャーセールスの導入・実践方法

チャレンジャーセールスモデルを組織に導入するには、段階的なアプローチが必要です。

(1) 組織内のチャレンジャーを特定する

まず、自社の営業チーム内で高い成果を上げているチャレンジャータイプの担当者を特定します。彼らがどのようなアプローチで商談を進めているか、具体的な行動パターンを観察・分析します。

(2) アプローチをモデル化して全営業組織に展開

チャレンジャーの特徴は再現可能であり、平均的な営業担当者にも教えられることが分かっています。特定したチャレンジャーのアプローチをモデル化し、ワークショップ形式で全営業チームに手法を紹介します。

(参考: Challenger Inc.「What is the Challenger Sales Methodology?」

(3) 商業変革プログラム(スキル開発・メッセージ作成・実装サポート)

導入には、以下の3つの要素を含む商業変革プログラムが有効です:

  • スキル開発: 「指導」「適応」「支配」のスキルを段階的にトレーニング
  • メッセージ作成: 顧客に提供する「新しい視点」を具体的に設計
  • 実装サポート: 実際の商談でのフィードバックと改善を繰り返す

(参考: プログレス アンド パートナーズ「チャレンジャーセールスモデルとは? B2B営業の進化に向けた導入と実践を解説」

(4) 導入の障壁(営業文化の変革抵抗)と対処法

従来の関係構築型営業に慣れた組織では、チャレンジャーアプローチへの移行に抵抗が生じる可能性があります。「顧客に挑戦するなんて失礼では?」という懸念を持つメンバーもいるでしょう。

対処法としては、以下が挙げられます:

  • 「挑戦する」の本質(顧客の課題発見と解決策提案)を丁寧に説明する
  • 小規模なパイロットプログラムで成果を示す
  • 経営層が率先してチャレンジャーアプローチを支持する

成功事例と他営業手法との比較

(1) 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の事例(7割の営業担当に変化)

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)では、チャレンジャーセールスモデルを具体的な行動に翻訳し、営業組織全体に展開しました。その結果、7割の営業担当に明確な変化が見られたと報告されています。

CTCの成功のポイントは、チャレンジャーの抽象的な概念を「具体的な行動」に落とし込んだことです。現場の営業担当者が実践しやすい形に変換することで、行動変容を促進しました。

(参考: SalesZine「「7割の営業担当に明らかな変化」 伊藤忠テクノソリューションズのチャレンジャー・セールス・モデル実践」

(2) Googleの営業チームのDX支援事例

Googleの営業チームは、企業のDX支援のために「チャレンジャーセール」手法を採用しています。顧客と対等に議論し、共に変革の未来を目指す能力を重視することで、複雑なDXプロジェクトの受注に成功しています。

(3) SPIN営業・ソリューションセリングとの違い

チャレンジャーセールスは、他の営業手法とどう違うのでしょうか?

SPIN営業:

  • Situation(状況)、Problem(問題)、Implication(示唆)、Need-payoff(解決)の質問技法
  • 顧客のニーズを引き出すことに重点を置く
  • チャレンジャーは「顧客が気づいていない課題を指摘する」点で異なる

ソリューションセリング:

  • 顧客の課題に対してソリューションを提案する手法
  • チャレンジャーは「新しい視点の提供」により、課題そのものを再定義する

チャレンジャーセールスは、これらの手法と対立するものではなく、組み合わせることでより効果を発揮します。

(4) 適用が有効な商材(B2B複雑商材・SaaS・IT・コンサルティング等)

チャレンジャーセールスモデルは、特に以下のような商材で有効です:

  • B2B複雑商材: 購買プロセスが複雑で、複数のステークホルダーが関与
  • SaaS: 導入効果を示すには顧客の業務プロセス理解が必要
  • IT: 技術的な専門知識を活かして顧客に新しい視点を提供できる
  • コンサルティング: 顧客の課題発見と解決策提案が中核

一方、シンプルな商材や短期決済型の営業(例: 日用品の小売営業)では、他の営業手法が適している場合もあります。

まとめ:自社への適用可能性を見極めよう

チャレンジャーセールスモデルは、B2B営業の成果向上に大きな可能性を秘めた手法です。4年間90社6,000人以上の調査に基づく科学的なアプローチであり、再現性のある営業手法として注目されています。

「指導」「適応」「支配」の3要素を実践することで、複雑なB2B商談でも高い成果を上げることができます。伊藤忠テクノソリューションズやGoogleなど、多くの企業で導入実績があり、7割の営業担当に明確な変化をもたらした事例もあります。

次のアクション:

  • 自社の営業チーム内で高い成果を上げているチャレンジャータイプを特定する
  • 原著書籍「The Challenger Sale」を読み、概念を深く理解する
  • 小規模なパイロットプログラムで効果を検証する
  • 商業変革プログラム(スキル開発・メッセージ作成・実装サポート)を計画する

ただし、すべての業種・商材に適しているわけではありません。自社の商材・顧客・営業プロセスに照らし合わせて、適用可能性を慎重に見極めることが重要です。

※この記事は2025年11月時点の情報です。最新の研究成果や導入事例については、各種公式サイトをご確認ください。

よくある質問

Q1チャレンジャーセールスモデルとは何ですか?

A1マシュー・ディクソンとブレント・アダムソンが4年間90社6,000人の大規模調査で従来の営業の常識を覆したモデルです。顧客がまだ気づいていない課題を指摘し、より良い解決策を提案する手法で、「指導」「適応」「支配」の3要素で構成されます。

Q25つの営業タイプとは何ですか?

A2ハードワーカー(勤勉)、リレーションシップビルダー(関係構築)、ローンウルフ(一匹狼)、リアクティブ・プロブレムソルバー(受動的問題解決)、チャレンジャー(論客)の5タイプです。複雑な販売環境でのハイパフォーマーの54%がチャレンジャータイプで、景気の好不況にかかわらず成果を出します。

Q3なぜチャレンジャーが優れているのですか?

A3複雑なB2B購買プロセスでステークホルダー間のコンセンサス形成を助ける「適応」と、遅延を管理する「支配」が特に有効だからです。リレーションシップビルダーは最も広く採用されていますが営業実績が最も低いのに対し、チャレンジャーは安定した高い成果を出します。

Q4どうやって導入すればよいですか?

A4組織内のチャレンジャーを特定し、そのアプローチをモデル化して全営業組織に組み込みます。ワークショップ形式で手法を紹介し、スキル開発・メッセージ作成・実装サポートを含む商業変革プログラムを実施します。チャレンジャーの特徴は再現可能で、平均的な営業担当者にも教えられます。

Q5すべての企業・商材に適用できますか?

A5特にB2B複雑商材(SaaS、IT、コンサルティング等)での適用が有効です。購買プロセスが複雑で複数のステークホルダーが関与する商談に向いています。すべての業種・商材に適しているわけではなく、シンプルな商材や短期決済型の営業には他の手法が適している場合もあります。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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