BtoBインサイドセールスの基本と成功のポイント|組織設計から運用まで

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/9

営業の生産性が低くて、リードをうまく活用できていませんか?

BtoB企業の営業マネージャーや経営者の多くが、インサイドセールス部門の立ち上げや成果向上に課題を抱えています。「リードが大量にあるのに対応しきれない」「営業担当者が訪問ばかりで新規開拓が進まない」「フィールドセールスとの連携がうまくいかない」といった問題は尽きません。

この記事では、BtoBインサイドセールスの基本と成功のポイントを、組織設計から運用まで実践的に解説します。

この記事のポイント:

  • インサイドセールスは非対面でリード育成・商談創出を担当し、フィールドセールスと分業する営業手法
  • SDR(反響型)から始め、成果が出てからBDR(新規開拓型)へ拡張するのが成功パターン
  • 立ち上げは少人数(マネージャー+担当者)でスタートし、ナレッジ蓄積後に拡大する
  • KPIは立ち上げ初期は「商談数」、安定後は「有効商談数」へ移行
  • BANT情報(予算・決裁権・必要性・導入時期)2つ以上を聴取した確度の高い商談を創出することが重要

1. BtoBインサイドセールスが注目される理由

(1) コロナ禍以降の営業手法変化

コロナ禍をきっかけに、BtoB営業の現場では対面営業が困難になり、非対面(電話・メール・Web会議)でのアプローチが急速に普及しました。

変化の背景:

  • 訪問営業の制約により、効率的なリード対応が求められるように
  • リモートワーク環境でも営業活動を継続する必要性
  • Web会議ツールの普及により、非対面でも商談が成立する環境が整備

この変化により、インサイドセールスの導入企業が増加し、分業型営業が定着しつつあります。

(2) The Model型分業営業の定着

「The Model」とは、Salesforceが提唱した分業型営業モデルで、以下の4部門で構成されます。

The Modelの4部門:

  1. マーケティング:リード獲得(見込み顧客の集客)
  2. インサイドセールス:リードナーチャリング・商談創出
  3. フィールドセールス:商談・クロージング(受注)
  4. カスタマーサクセス:既存顧客の成功支援・アップセル

この分業により、各部門が専門性を発揮し、営業プロセス全体の効率が向上すると言われています。

2. インサイドセールスの役割と組織設計

(1) フィールドセールスとの違い

インサイドセールスとフィールドセールスの主な違いは以下の通りです。

インサイドセールス:

  • 非対面(電話・メール・Web会議)でアプローチ
  • リード育成(ナーチャリング)と商談創出が主な役割
  • 効率的に多数のリードを対応できる
  • BANT情報(後述)を聴取し、確度の高いリードをフィールドセールスへ引き継ぐ

フィールドセールス:

  • 対面(訪問・オンライン商談)でアプローチ
  • 商談を進め、クロージング(受注)を担当
  • 高額商材や複雑な提案に適している
  • 既存顧客のアカウントマネジメントも担当するケースがある

この分業により、フィールドセールスは質の高い商談に集中でき、生産性が向上します。

(2) SDR(反響型)とBDR(新規開拓型)の役割分担

インサイドセールスは、さらにSDRとBDRに分類されます。

SDR(Sales Development Representative):

  • インバウンドリード(資料請求・問い合わせ・セミナー参加)への反響営業
  • すでに関心を示している見込み顧客を育成
  • 立ち上げ初期はSDRから始めるのが推奨される

BDR(Business Development Representative):

  • 新規顧客開拓のアウトバウンド営業
  • ターゲット企業リストに基づく架電・メール送信
  • SDRで成果が出た後、自社の商材や営業課題に応じてBDRへ拡張

立ち上げ時は「SDRから始め、成果が出てから段階的にBDRへ拡張する」のが成功パターンと言われています。

(3) 配置先の3パターン(マーケティング部門寄り、営業部門寄り、独立)

インサイドセールスの配置先は、企業の営業戦略により以下の3パターンがあります。

パターン1: マーケティング部門寄り

  • リードナーチャリング(育成)を重視する企業向け
  • マーケティング施策との連携が密
  • SDR中心の組織

パターン2: 営業部門寄り

  • 商談創出を重視する企業向け
  • フィールドセールスとの連携が密
  • BDR中心の組織

パターン3: 独立部門

  • インサイドセールス専門の独立部門として設置
  • マーケティング・フィールドセールスの中間に位置
  • 大企業や成熟したインサイドセールス組織に多い

自社の営業課題や組織文化に応じて、最適な配置先を選定することが重要です。

(4) BANT情報の活用方法

BANTとは、商談化判断の基準となる4つの情報です。

BANT:

  • B (Budget): 予算(導入予算が確保されているか)
  • A (Authority): 決裁権(意思決定者は誰か、決裁プロセスは)
  • N (Need): 必要性(課題・ニーズが明確か)
  • T (Timeline): 導入時期(いつまでに導入したいか)

インサイドセールスの重要な役割は、BANT情報のうち2つ以上を聴取し、確度の高い商談をフィールドセールスへ引き継ぐことです。これにより、フィールドセールスは受注確度の高い商談に集中できます。

3. 立ち上げの具体的手順(5ステップ)

(1) 目標とKPIの設定

インサイドセールス立ち上げ時は、以下の目標とKPIを設定します。

立ち上げ初期の目標:

  • 月間商談創出数(例:月間20件)
  • フィールドセールスのリソースを基準に現実的な数値を設定

立ち上げ初期のKPI(後述):

  • 架電数・メール数
  • 接続率
  • 商談化率

(2) 有効商談の定義とフィールドセールスとの合意

「有効商談」の定義を事前に明確化し、フィールドセールスと合意することが成功の鍵です。

有効商談の定義例:

  • BANT情報のうち2つ以上を聴取済み
  • 決裁者または決裁に影響を与えるキーパーソンとの接触が確認できている
  • 初回商談の日程が確定している

この定義があいまいだと、インサイドセールスとフィールドセールスの間で認識の齟齬が生じ、連携が失敗します。

(3) 少人数でスタート(マネージャー+担当者)

立ち上げ初期は、マネージャー+担当者の少人数でスタートするのが推奨されます。

少人数でスタートする理由:

  • ナレッジ不足の状態で大量採用すると失敗しやすい
  • 少人数で成果を出し、ノウハウを蓄積してから拡大する
  • 初期は試行錯誤が多く、柔軟な運用が必要

成果が出てから段階的に人員を増やすのが成功パターンです。

(4) SDRから始めて段階的にBDRへ拡張

前述の通り、立ち上げはSDR(反響型)から始めるのが推奨されます。

SDRから始める理由:

  • すでに関心を示しているインバウンドリードは対応しやすい
  • 成果が出やすく、インサイドセールスの有効性を実証できる
  • ノウハウを蓄積した後、BDR(新規開拓型)へ拡張

自社の商材や営業課題に応じて、段階的にBDRへアレンジしていくのが良いと言われています。

(5) ツール導入とナレッジ蓄積

インサイドセールスには、以下のツール導入が推奨されます。

主要ツール:

  • CRM/SFA: HubSpot、Salesforce等(リード管理・商談進捗管理)
  • MA(Marketing Automation): リードスコアリング・メール配信自動化
  • 架電ツール: 通話録音・分析機能付きの電話システム
  • Web会議ツール: Zoom、Microsoft Teams等

ツールを活用してナレッジ(成功パターン・トークスクリプト等)を蓄積し、組織として再現性を高めることが重要です。

4. KPI設計とフィールドセールスとの連携

(1) 立ち上げ初期のKPI(商談数重視)

立ち上げ初期は、「商談数」を重視します。

立ち上げ初期のKPI:

  • 架電数・メール数(活動量)
  • 接続率(架電数のうち担当者と話せた割合)
  • 商談化率(接続数のうち商談に発展した割合)
  • 商談創出数(月間商談数)

この段階では、まず商談数を増やすことを優先し、インサイドセールスの存在価値を社内に示すことが重要です。

(2) 安定後のKPI(有効商談数重視)

立ち上げから3〜6ヶ月経過し、運用が安定してきたら、「有効商談数」へKPIを移行します。

安定後のKPI:

  • 有効商談数(BANT情報2つ以上を聴取した商談)
  • 商談受注率(フィールドセールスへ引き継いだ商談の受注率)
  • リード転換率(リードから有効商談への転換率)

これにより、商談の「量」だけでなく「質」を重視する運用へシフトします。

(3) 代表的なKPI指標(架電数、接続率、商談化率)

インサイドセールスの代表的なKPI指標は以下の通りです。

活動量KPI:

  • 架電数・メール数(1日あたり・週間・月間)
  • リーチ数(接触できたリード数)

効率KPI:

  • 接続率(架電数のうち担当者と話せた割合)
  • 商談化率(接続数のうち商談に発展した割合)
  • 有効商談化率(商談数のうち有効商談の割合)

成果KPI:

  • 商談創出数(月間商談数)
  • 有効商談数(BANT情報2つ以上を聴取した商談数)
  • 受注貢献数(インサイドセールス経由で受注した件数)

これらのKPIを定期的にモニタリングし、改善活動につなげることが重要です。

(4) フィールドセールスへの引き継ぎタイミング

インサイドセールスからフィールドセールスへの引き継ぎは、以下のタイミングで行います。

引き継ぎタイミング:

  • BANT情報のうち2つ以上を聴取できた
  • 初回商談の日程が確定した
  • 決裁者または決裁に影響を与えるキーパーソンとの接触が確認できた

引き継ぎ時の情報共有:

  • リード情報(企業名・担当者・連絡先)
  • BANT情報(予算・決裁権・必要性・導入時期)
  • これまでの接触履歴・ヒアリング内容
  • 商談の背景・顧客の課題

CRM/SFAツールを活用し、これらの情報を漏れなくフィールドセールスへ共有することが、受注率向上につながります。

5. 成功事例と失敗パターン

(1) 成功事例(商談数4倍、資料請求50倍、受注率2倍以上)

インサイドセールス導入による成功事例では、以下のような成果が報告されています。

成功事例の成果:

  • 商談数が4倍に増加(出典: 電通B2B「インサイドセールス成功導入事例11選」)
  • 資料請求が50倍に増加(出典: Sales Marker「インサイドセールスの成功事例4選」)
  • 受注率が2倍以上に向上(フィールドセールスが質の高い商談に集中できたため)

成功の共通点:

  • マーケティング部門・フィールドセールスとの緊密な連携
  • 有効商談の定義が明確で、部門間の認識が一致している
  • KPIを適切に設定し、定期的にモニタリング・改善している
  • 少人数でスタートし、成果が出てから拡大している

(2) 失敗パターン(大量採用、短期成果要求、部門間断絶)

一方で、以下のような失敗パターンも報告されています。

失敗パターン:

  • ナレッジ不足の状態で大量採用し、成果が出ない
  • 立ち上げ初期から短期的な成果を求めすぎ、組織が疲弊する
  • インサイドセールスとフィールドセールスの間でコミュニケーション断絶や顧客体験の一貫性欠如が発生
  • KPI設定が不適切で、商談数は増えても質が低下し、受注につながらない

失敗を防ぐポイント:

  • 少人数でスタートし、ノウハウを蓄積してから拡大
  • 立ち上げ初期は成果が出にくいことを前提に、中長期的な視点で評価
  • 有効商談の定義を明確化し、部門間の認識を一致させる
  • CRM/SFAツールを活用し、情報共有を徹底する

(3) 2024-2025年トレンド(AI活用の自動化)

2024-2025年のトレンドとして、AIを活用したインサイドセールスツールの普及が進んでいます。

AI活用の例:

  • リード優先度付けの自動化(スコアリング)
  • アプローチタイミングの最適化(AIによる予測)
  • 通話内容の自動要約・文字起こし
  • 次のアクション提案(AIによるレコメンド)

これらのAI機能により、インサイドセールスの生産性がさらに向上すると期待されています。

6. まとめ:インサイドセールス導入の判断基準

(1) 導入が向いている企業の条件

インサイドセールスの導入が向いている企業は、以下の条件に当てはまります。

導入が向いている企業:

  • リード獲得数が月間50件以上あるが、対応しきれていない
  • フィールドセールスが訪問営業に忙殺され、新規開拓が進まない
  • 商談化率・受注率が低く、リードの質を高めたい
  • 従業員30名以上のBtoB企業で、営業プロセスを分業化できるリソースがある
  • The Model型の分業営業を導入し、営業効率を向上させたい

(2) 導入時の注意点とリスク

一方で、以下の注意点とリスクも考慮する必要があります。

注意点:

  • 分業体制では情報共有や連携の仕組みがないと、顧客体験が断絶する可能性
  • BtoBは決裁プロセスが複雑で時間がかかるため、短期的な成果を求めすぎない
  • ナレッジ不足の状態で大量採用せず、少人数でスタートしてノウハウを蓄積
  • マーケティング部門・フィールドセールスとの連携が成功の鍵

次のアクション:

  • 自社のリード獲得数・対応状況を整理する
  • 有効商談の定義を明確化し、フィールドセールスと合意する
  • 少人数(マネージャー+担当者)で立ち上げ、SDRから始める
  • CRM/SFAツールを導入し、情報共有の仕組みを整備する
  • 立ち上げ初期は「商談数」重視、安定後は「有効商談数」へKPIを移行

インサイドセールスは、BtoB企業の営業プロセスを大きく効率化できる可能性があります。少人数でスタートし、成果を確認しながら段階的に拡大していきましょう。

※この記事は2024-2025年時点の情報です。組織設計やKPIは企業の状況により異なるため、自社に合わせた調整が推奨されます。

よくある質問

Q1インサイドセールスとフィールドセールスの違いは何ですか?

A1インサイドセールスは非対面(電話・メール・Web会議)でリード育成・商談創出を担当します。フィールドセールスは対面(訪問・オンライン商談)で商談を進め、クロージング(受注)を担当する分業体制です。この分業により、フィールドセールスは質の高い商談に集中でき、生産性が向上します。

Q2SDRとBDRの違いは?

A2SDR(Sales Development Representative)はインバウンドリード(資料請求・問い合わせ)への反響営業を担当します。BDR(Business Development Representative)は新規顧客開拓のアウトバウンド営業を担当します。立ち上げはSDRから始め、成果が出てから段階的にBDRへ拡張するのが成功パターンです。

Q3インサイドセールスの主なKPIは?

A3架電数・メール数、接続率、商談化率、有効商談数が代表的なKPIです。立ち上げ初期は「商談数」重視、安定後は「有効商談数」へ移行します。BANT情報(予算・決裁権・必要性・導入時期)のうち2つ以上を聴取した確度の高い商談を創出することが重要です。

Q4どのくらいの人数で立ち上げるべきですか?

A4マネージャー+担当者の少人数でスタートし、成果が出てから拡大するのが成功パターンです。ナレッジ不足の状態で大量採用すると失敗しやすいため、まずは少人数でノウハウを蓄積してから段階的に人員を増やすことが推奨されます。

Q5成功事例ではどの程度の成果が出ていますか?

A5商談数が4倍、資料請求が50倍、受注率が2倍以上などの事例が報告されています。ただし立ち上げ初期は成果が出にくいため、短期的な成果を求めすぎないことが重要です。マーケティング部門・フィールドセールスとの緊密な連携が成功の鍵となります。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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