営業の生産性が低くて、リードをうまく活用できていませんか?
BtoB企業の営業マネージャーや経営者の多くが、インサイドセールス部門の立ち上げや成果向上に課題を抱えています。「リードが大量にあるのに対応しきれない」「営業担当者が訪問ばかりで新規開拓が進まない」「フィールドセールスとの連携がうまくいかない」といった問題は尽きません。
この記事では、BtoBインサイドセールスの基本と成功のポイントを、組織設計から運用まで実践的に解説します。
この記事のポイント:
- インサイドセールスは非対面でリード育成・商談創出を担当し、フィールドセールスと分業する営業手法
- SDR(反響型)から始め、成果が出てからBDR(新規開拓型)へ拡張するのが成功パターン
- 立ち上げは少人数(マネージャー+担当者)でスタートし、ナレッジ蓄積後に拡大する
- KPIは立ち上げ初期は「商談数」、安定後は「有効商談数」へ移行
- BANT情報(予算・決裁権・必要性・導入時期)2つ以上を聴取した確度の高い商談を創出することが重要
1. BtoBインサイドセールスが注目される理由
(1) コロナ禍以降の営業手法変化
コロナ禍をきっかけに、BtoB営業の現場では対面営業が困難になり、非対面(電話・メール・Web会議)でのアプローチが急速に普及しました。
変化の背景:
- 訪問営業の制約により、効率的なリード対応が求められるように
- リモートワーク環境でも営業活動を継続する必要性
- Web会議ツールの普及により、非対面でも商談が成立する環境が整備
この変化により、インサイドセールスの導入企業が増加し、分業型営業が定着しつつあります。
(2) The Model型分業営業の定着
「The Model」とは、Salesforceが提唱した分業型営業モデルで、以下の4部門で構成されます。
The Modelの4部門:
- マーケティング:リード獲得(見込み顧客の集客)
- インサイドセールス:リードナーチャリング・商談創出
- フィールドセールス:商談・クロージング(受注)
- カスタマーサクセス:既存顧客の成功支援・アップセル
この分業により、各部門が専門性を発揮し、営業プロセス全体の効率が向上すると言われています。
2. インサイドセールスの役割と組織設計
(1) フィールドセールスとの違い
インサイドセールスとフィールドセールスの主な違いは以下の通りです。
インサイドセールス:
- 非対面(電話・メール・Web会議)でアプローチ
- リード育成(ナーチャリング)と商談創出が主な役割
- 効率的に多数のリードを対応できる
- BANT情報(後述)を聴取し、確度の高いリードをフィールドセールスへ引き継ぐ
フィールドセールス:
- 対面(訪問・オンライン商談)でアプローチ
- 商談を進め、クロージング(受注)を担当
- 高額商材や複雑な提案に適している
- 既存顧客のアカウントマネジメントも担当するケースがある
この分業により、フィールドセールスは質の高い商談に集中でき、生産性が向上します。
(2) SDR(反響型)とBDR(新規開拓型)の役割分担
インサイドセールスは、さらにSDRとBDRに分類されます。
SDR(Sales Development Representative):
- インバウンドリード(資料請求・問い合わせ・セミナー参加)への反響営業
- すでに関心を示している見込み顧客を育成
- 立ち上げ初期はSDRから始めるのが推奨される
BDR(Business Development Representative):
- 新規顧客開拓のアウトバウンド営業
- ターゲット企業リストに基づく架電・メール送信
- SDRで成果が出た後、自社の商材や営業課題に応じてBDRへ拡張
立ち上げ時は「SDRから始め、成果が出てから段階的にBDRへ拡張する」のが成功パターンと言われています。
(3) 配置先の3パターン(マーケティング部門寄り、営業部門寄り、独立)
インサイドセールスの配置先は、企業の営業戦略により以下の3パターンがあります。
パターン1: マーケティング部門寄り
- リードナーチャリング(育成)を重視する企業向け
- マーケティング施策との連携が密
- SDR中心の組織
パターン2: 営業部門寄り
- 商談創出を重視する企業向け
- フィールドセールスとの連携が密
- BDR中心の組織
パターン3: 独立部門
- インサイドセールス専門の独立部門として設置
- マーケティング・フィールドセールスの中間に位置
- 大企業や成熟したインサイドセールス組織に多い
自社の営業課題や組織文化に応じて、最適な配置先を選定することが重要です。
(4) BANT情報の活用方法
BANTとは、商談化判断の基準となる4つの情報です。
BANT:
- B (Budget): 予算(導入予算が確保されているか)
- A (Authority): 決裁権(意思決定者は誰か、決裁プロセスは)
- N (Need): 必要性(課題・ニーズが明確か)
- T (Timeline): 導入時期(いつまでに導入したいか)
インサイドセールスの重要な役割は、BANT情報のうち2つ以上を聴取し、確度の高い商談をフィールドセールスへ引き継ぐことです。これにより、フィールドセールスは受注確度の高い商談に集中できます。
3. 立ち上げの具体的手順(5ステップ)
(1) 目標とKPIの設定
インサイドセールス立ち上げ時は、以下の目標とKPIを設定します。
立ち上げ初期の目標:
- 月間商談創出数(例:月間20件)
- フィールドセールスのリソースを基準に現実的な数値を設定
立ち上げ初期のKPI(後述):
- 架電数・メール数
- 接続率
- 商談化率
(2) 有効商談の定義とフィールドセールスとの合意
「有効商談」の定義を事前に明確化し、フィールドセールスと合意することが成功の鍵です。
有効商談の定義例:
- BANT情報のうち2つ以上を聴取済み
- 決裁者または決裁に影響を与えるキーパーソンとの接触が確認できている
- 初回商談の日程が確定している
この定義があいまいだと、インサイドセールスとフィールドセールスの間で認識の齟齬が生じ、連携が失敗します。
(3) 少人数でスタート(マネージャー+担当者)
立ち上げ初期は、マネージャー+担当者の少人数でスタートするのが推奨されます。
少人数でスタートする理由:
- ナレッジ不足の状態で大量採用すると失敗しやすい
- 少人数で成果を出し、ノウハウを蓄積してから拡大する
- 初期は試行錯誤が多く、柔軟な運用が必要
成果が出てから段階的に人員を増やすのが成功パターンです。
(4) SDRから始めて段階的にBDRへ拡張
前述の通り、立ち上げはSDR(反響型)から始めるのが推奨されます。
SDRから始める理由:
- すでに関心を示しているインバウンドリードは対応しやすい
- 成果が出やすく、インサイドセールスの有効性を実証できる
- ノウハウを蓄積した後、BDR(新規開拓型)へ拡張
自社の商材や営業課題に応じて、段階的にBDRへアレンジしていくのが良いと言われています。
(5) ツール導入とナレッジ蓄積
インサイドセールスには、以下のツール導入が推奨されます。
主要ツール:
- CRM/SFA: HubSpot、Salesforce等(リード管理・商談進捗管理)
- MA(Marketing Automation): リードスコアリング・メール配信自動化
- 架電ツール: 通話録音・分析機能付きの電話システム
- Web会議ツール: Zoom、Microsoft Teams等
ツールを活用してナレッジ(成功パターン・トークスクリプト等)を蓄積し、組織として再現性を高めることが重要です。
4. KPI設計とフィールドセールスとの連携
(1) 立ち上げ初期のKPI(商談数重視)
立ち上げ初期は、「商談数」を重視します。
立ち上げ初期のKPI:
- 架電数・メール数(活動量)
- 接続率(架電数のうち担当者と話せた割合)
- 商談化率(接続数のうち商談に発展した割合)
- 商談創出数(月間商談数)
この段階では、まず商談数を増やすことを優先し、インサイドセールスの存在価値を社内に示すことが重要です。
(2) 安定後のKPI(有効商談数重視)
立ち上げから3〜6ヶ月経過し、運用が安定してきたら、「有効商談数」へKPIを移行します。
安定後のKPI:
- 有効商談数(BANT情報2つ以上を聴取した商談)
- 商談受注率(フィールドセールスへ引き継いだ商談の受注率)
- リード転換率(リードから有効商談への転換率)
これにより、商談の「量」だけでなく「質」を重視する運用へシフトします。
(3) 代表的なKPI指標(架電数、接続率、商談化率)
インサイドセールスの代表的なKPI指標は以下の通りです。
活動量KPI:
- 架電数・メール数(1日あたり・週間・月間)
- リーチ数(接触できたリード数)
効率KPI:
- 接続率(架電数のうち担当者と話せた割合)
- 商談化率(接続数のうち商談に発展した割合)
- 有効商談化率(商談数のうち有効商談の割合)
成果KPI:
- 商談創出数(月間商談数)
- 有効商談数(BANT情報2つ以上を聴取した商談数)
- 受注貢献数(インサイドセールス経由で受注した件数)
これらのKPIを定期的にモニタリングし、改善活動につなげることが重要です。
(4) フィールドセールスへの引き継ぎタイミング
インサイドセールスからフィールドセールスへの引き継ぎは、以下のタイミングで行います。
引き継ぎタイミング:
- BANT情報のうち2つ以上を聴取できた
- 初回商談の日程が確定した
- 決裁者または決裁に影響を与えるキーパーソンとの接触が確認できた
引き継ぎ時の情報共有:
- リード情報(企業名・担当者・連絡先)
- BANT情報(予算・決裁権・必要性・導入時期)
- これまでの接触履歴・ヒアリング内容
- 商談の背景・顧客の課題
CRM/SFAツールを活用し、これらの情報を漏れなくフィールドセールスへ共有することが、受注率向上につながります。
5. 成功事例と失敗パターン
(1) 成功事例(商談数4倍、資料請求50倍、受注率2倍以上)
インサイドセールス導入による成功事例では、以下のような成果が報告されています。
成功事例の成果:
- 商談数が4倍に増加(出典: 電通B2B「インサイドセールス成功導入事例11選」)
- 資料請求が50倍に増加(出典: Sales Marker「インサイドセールスの成功事例4選」)
- 受注率が2倍以上に向上(フィールドセールスが質の高い商談に集中できたため)
成功の共通点:
- マーケティング部門・フィールドセールスとの緊密な連携
- 有効商談の定義が明確で、部門間の認識が一致している
- KPIを適切に設定し、定期的にモニタリング・改善している
- 少人数でスタートし、成果が出てから拡大している
(2) 失敗パターン(大量採用、短期成果要求、部門間断絶)
一方で、以下のような失敗パターンも報告されています。
失敗パターン:
- ナレッジ不足の状態で大量採用し、成果が出ない
- 立ち上げ初期から短期的な成果を求めすぎ、組織が疲弊する
- インサイドセールスとフィールドセールスの間でコミュニケーション断絶や顧客体験の一貫性欠如が発生
- KPI設定が不適切で、商談数は増えても質が低下し、受注につながらない
失敗を防ぐポイント:
- 少人数でスタートし、ノウハウを蓄積してから拡大
- 立ち上げ初期は成果が出にくいことを前提に、中長期的な視点で評価
- 有効商談の定義を明確化し、部門間の認識を一致させる
- CRM/SFAツールを活用し、情報共有を徹底する
(3) 2024-2025年トレンド(AI活用の自動化)
2024-2025年のトレンドとして、AIを活用したインサイドセールスツールの普及が進んでいます。
AI活用の例:
- リード優先度付けの自動化(スコアリング)
- アプローチタイミングの最適化(AIによる予測)
- 通話内容の自動要約・文字起こし
- 次のアクション提案(AIによるレコメンド)
これらのAI機能により、インサイドセールスの生産性がさらに向上すると期待されています。
6. まとめ:インサイドセールス導入の判断基準
(1) 導入が向いている企業の条件
インサイドセールスの導入が向いている企業は、以下の条件に当てはまります。
導入が向いている企業:
- リード獲得数が月間50件以上あるが、対応しきれていない
- フィールドセールスが訪問営業に忙殺され、新規開拓が進まない
- 商談化率・受注率が低く、リードの質を高めたい
- 従業員30名以上のBtoB企業で、営業プロセスを分業化できるリソースがある
- The Model型の分業営業を導入し、営業効率を向上させたい
(2) 導入時の注意点とリスク
一方で、以下の注意点とリスクも考慮する必要があります。
注意点:
- 分業体制では情報共有や連携の仕組みがないと、顧客体験が断絶する可能性
- BtoBは決裁プロセスが複雑で時間がかかるため、短期的な成果を求めすぎない
- ナレッジ不足の状態で大量採用せず、少人数でスタートしてノウハウを蓄積
- マーケティング部門・フィールドセールスとの連携が成功の鍵
次のアクション:
- 自社のリード獲得数・対応状況を整理する
- 有効商談の定義を明確化し、フィールドセールスと合意する
- 少人数(マネージャー+担当者)で立ち上げ、SDRから始める
- CRM/SFAツールを導入し、情報共有の仕組みを整備する
- 立ち上げ初期は「商談数」重視、安定後は「有効商談数」へKPIを移行
インサイドセールスは、BtoB企業の営業プロセスを大きく効率化できる可能性があります。少人数でスタートし、成果を確認しながら段階的に拡大していきましょう。
※この記事は2024-2025年時点の情報です。組織設計やKPIは企業の状況により異なるため、自社に合わせた調整が推奨されます。
