Salesforce Lightning導入後に活用できない企業の共通点
ずばり、Salesforce Lightning導入の成功は、機能理解と移行だけでなく、カスタマイズによる業務プロセス標準化と運用定着までの一気通貫の実装で実現します。
多くのBtoB企業がSalesforce Lightningへの移行を進めていますが、実際には導入後に十分な成果が出ていないケースが少なくありません。よくある失敗パターンとして、Lightningに移行しただけで満足し、カスタマイズや運用ルール整備、ユーザートレーニングを後回しにしてしまうケースが挙げられます。その結果、ツールが活用されず、期待した業務効率化が実現できないまま、投資対効果が得られない状況に陥ります。
この記事では、MA/SFA導入済みだが活用できていない企業のSalesforce管理者、マーケティング責任者、営業責任者の方々に向けて、Lightningの基本概念から導入後の運用定着方法まで、一気通貫で解説します。
この記事で分かること
- Salesforce Lightning Experienceの基本概念とSalesforce Classicとの違い
- Lightning App Builder、Agentforce等の主要機能と業務効率化のメリット
- Lightning導入前に準備すべき事項(チェックリスト付き)
- 導入時のよくある失敗パターンと対処法
- カスタマイズと運用定着までの実践的なステップ
Salesforce Lightning Experienceとは
Lightning Experienceとは、Salesforceのモダンユーザーインターフェースで、カード型UI、ドラッグ&ドロップ開発、AI機能統合を特徴とする次世代プラットフォームです。従来のSalesforce Classic(表形式中心のシンプル画面)から大幅に進化し、ノーコード/ローコード開発による迅速なカスタマイズと、視覚的に分かりやすいUIを実現しています。
Salesforce CRMは世界市場で高いシェアを誇り、2023年時点で約22%の市場シェアを占め、フォーチュン500企業の80%がSalesforceを採用しています。この広範な採用実績が示すように、Salesforceは多くの企業で業務の中核を担っており、Lightning Experienceへの移行は今後のSalesforce活用において重要な選択肢となっています。
Lightning App Builderとは、ドラッグ&ドロップでカスタムUIを構築できるノーコード/ローコード開発ツールで、コーディング不要で画面変更やアプリ構築が可能です。また、Lightning Component Framework(再利用可能なコンポーネントベースのモダンUI開発フレームワーク)により、Lightning Web Componentsを活用した高速なアプリケーション開発が実現します。
Lightning ExperienceとSalesforce Classicの違いについては、次のセクションで詳しく解説します。
Lightning Experienceの主な特徴
Lightning Experienceには、従来のClassicと比較して大きく3つの特徴があります。
特徴1: カード型UIによる視覚的な情報把握
Classicの表形式中心のUIとは異なり、Lightningはカード型のデザインを採用し、1つの画面で複数の情報を視覚的に把握できます。ダッシュボードやレポートも直感的に操作でき、情報の見やすさが大幅に向上しています。
特徴2: ノーコード/ローコード開発による開発効率化
Lightning Component Frameworkを活用することで、コーディングスキルがなくても業務に必要な画面やアプリケーションを構築できます。これにより、開発期間の短縮とコスト削減が期待できます。
特徴3: AI機能(Agentforce)統合による業務自動化
Agentforceとは、Salesforce LightningプラットフォームでAIエージェントを統合する仕組み(Agentforce 360)で、営業・マーケティング業務を自動化します。2025年にはLINEヤフー、三菱UFJ銀行、東京海上日動などの大手企業がAgentforceを戦略的に採用しており、業務自動化の新しいトレンドとなっています。
Lightning ExperienceとSalesforce Classicの違い
Lightning ExperienceとSalesforce Classicの主な違いは、UI/UX、開発効率、AI機能、データ連携の各面にあります。移行判断の材料として、以下の比較表で両者の特徴を確認してください。
【比較表】Lightning vs Classic 機能比較表
| 比較項目 | Lightning Experience | Salesforce Classic |
|---|---|---|
| UI/UX | カード型UI、視覚的で直感的 | 表形式中心、シンプル |
| 開発効率 | ノーコード/ローコード開発(Lightning App Builder) | コーディング中心の開発 |
| AI機能 | Agentforce統合、Einstein AI対応 | AI機能は限定的 |
| データ連携 | Data Cloud連携、リアルタイムデータ処理 | 従来型のデータ連携 |
| カスタマイズ性 | ドラッグ&ドロップで柔軟にカスタマイズ可能 | カスタマイズには技術知識が必要 |
| 操作性 | 1つのページで複数作業を同時実行可能 | ページ遷移が多い |
| 新機能対応 | 最新機能が優先的に提供される | 新機能は基本的にLightning優先 |
| 移行の自由度 | Classicに切り替え可能 | Lightningに切り替え可能 |
Lightning Experienceへの移行により開発コストを43%削減できた事例が報告されています。ただし、この数値は成功事例ベースであり、企業規模・業種・既存システム状況により効果は大きく変動する点に注意が必要です。
重要な注意点として、LightningはClassicの完全上位互換ではなく、一部機能はClassicでのみ利用可能です。 そのため、両方を使い分ける必要があります。幸い、Lightning Experience導入後もSalesforce Classicに自由に切り替え可能なため、段階的な移行が推奨されます。Lightning未対応の機能が必要な場合はClassicを併用することで、業務への影響を最小限に抑えながら移行を進めることができます。
Lightning の主要機能と業務効率化のメリット
Lightning Experienceの主要機能は、Lightning App Builder、UI/UX改善、Agentforce(AI統合)の3つです。これらの機能を組み合わせることで、BtoB企業の営業・マーケティング業務の効率化が実現します。
Lightning App Builderによるノーコード開発
Lightning App Builderは、ドラッグ&ドロップでカスタムUIを構築できるノーコード/ローコード開発ツールで、コーディング不要で画面変更やアプリ構築が可能です。
具体的には、マーケティングダッシュボードや顧客ジャーニー可視化を、エンジニアに依頼せずに自社で作成できます。例えば、マーケティング部門が「リード獲得状況をリアルタイムで確認したい」「顧客の行動履歴を一覧で見たい」といった要望を持った場合、Lightning App Builderを使えば数日で専用ダッシュボードを構築できます。これにより、部門要望への迅速対応が実現し、現場の業務改善スピードが大幅に向上します。
AgentforceによるAI統合と業務自動化
Agentforceは、Salesforce LightningプラットフォームでAIエージェントを統合する仕組み(Agentforce 360)で、営業・マーケティング業務を自動化します。
Agentforce導入によりSalesforce営業チームで年間203,000時間の業務時間を節約したというグローバル事例があります。ただし、これはSalesforceグローバル事例であり、日本企業での効果は企業規模や運用体制により異なる点に注意が必要です。
日本国内では、2025年にLINEヤフー、三菱UFJ銀行、東京海上日動がAgentforce(Lightning基盤のAI機能)を戦略的に採用しています。これらの大手企業がAI統合を進めている背景には、営業活動の自動化、顧客対応の効率化、マーケティング施策の最適化といった課題があります。ただし、これらの企業事例では定量的なROIは未公表であるため、導入効果は企業ごとに評価する必要があります。
Data Cloud連携によるデータ統合とMA/SFA連携
Data Cloudとは、Salesforce Lightningと連携するデータ統合基盤で、リアルタイムデータ処理により顧客エンゲージメントを強化します。
Salesforce Data Cloudは2024年度に7兆件のインバウンドレコード処理と1.2兆件のアクティベーションを実現しました。ただし、これはSalesforce公式の自己申告実績のため、他社比較データがない点に留意してください。
Data Cloud連携の実務的なメリットは、MA(マーケティングオートメーション)/SFA(営業支援ツール)連携強化です。リアルタイムデータ処理により、マーケティング部門が獲得したリードの行動履歴を営業部門がすぐに確認でき、顧客エンゲージメントに基づいた改善なタイミングでのアプローチが可能になります。これにより、BtoBマーケティングの顧客エンゲージメント測定とパーソナライゼーションが高度化します。
Lightning導入前の準備と運用定着の方法
Lightning導入を成功させるためには、移行作業だけでなく、カスタマイズ設計、運用ルール整備、ユーザートレーニングまでを計画的に実施することが重要です。
よくある誤解として、「Lightningに移行すれば自動的に業務が効率化する」という考え方があります。この考え方は誤りです。 カスタマイズと運用定着の取り組みが不可欠で、設定や教育なしでは効果が出ません。導入前に以下のチェックリストで準備状況を確認し、不足している項目から順次着手してください。
【チェックリスト】Salesforce Lightning導入前チェックリスト
- 現状分析:Classic機能の棚卸しを完了している
- 現状分析:現在の業務プロセスを可視化している
- 移行計画:段階的移行スケジュールを策定している
- 移行計画:移行優先順位(部門・機能)を決定している
- 移行計画:移行期間中のClassic併用方針を明確にしている
- カスタマイズ設計:業務プロセス標準化の方針を決定している
- カスタマイズ設計:Lightning App Builderで構築する画面を特定している
- カスタマイズ設計:必要なコンポーネントをリストアップしている
- カスタマイズ設計:Data Cloud連携の設計を完了している
- 運用ルール整備:Lightning利用のガイドラインを作成している
- 運用ルール整備:データ入力ルールを標準化している
- 運用ルール整備:アクセス権限の設計を完了している
- ユーザートレーニング:トレーニング計画を策定している
- ユーザートレーニング:操作マニュアルを作成している
- ユーザートレーニング:部門別の研修スケジュールを決定している
- データ移行準備:移行対象データを特定している
- データ移行準備:データクレンジング計画を策定している
- テスト計画:テスト環境を構築している
- テスト計画:テストシナリオを作成している
- 予算確保:Lightning Platform料金を確認している
- 予算確保:カスタマイズ開発費用を見積もっている
- 体制構築:Lightning管理者をアサインしている
- 体制構築:外部パートナーの選定を完了している(必要に応じて)
Lightning Platform料金は、Platform Starterが3,000円/ユーザー/月、Platform Plusが12,000円/ユーザー/月(アプリケーションビルダー・UI改善機能含む)です。ただし、カスタム開発追加やユーザー数増加により実際のコストは大きく変動するため、自社の要件に応じた詳細な見積もりが必要です。
段階的移行の実践的なアプローチとして、まずシンプルな業務プロセス(日報管理、リード管理等)から開始し、効果測定しながら段階的に拡大することが推奨されます。最初から全社一斉移行を目指すのではなく、小規模な部門やチームでパイロット導入を行い、課題を洗い出してから本格展開することで、リスクを最小化できます。
よくある失敗パターンと対処法
Lightning導入時によくある失敗パターンを3つ紹介し、それぞれの対処法を解説します。
失敗パターン1: カスタマイズや運用ルール整備を後回しにする
Lightningに移行すれば自動的に業務が効率化すると考え、カスタマイズや運用ルール整備、ユーザートレーニングを後回しにしてしまうケースが多く見られます。この場合、ツールが活用されず成果につながりません。
対処法として、移行前に業務プロセスの標準化方針を決定し、Lightning App Builderで構築する画面やカスタマイズ内容を明確にしておくことが重要です。また、運用ルール(データ入力ルール、アクセス権限等)を移行と同時に整備し、ユーザーが迷わず使える環境を構築してください。
失敗パターン2: ユーザートレーニングを実施せず、活用率が低い
Lightningは直感的なUIを特徴としていますが、Classicに慣れたユーザーにとっては操作方法が大きく変わるため、トレーニングなしでは活用率が低下します。
対処法として、部門別の研修スケジュールを策定し、実際の業務フローに沿った操作マニュアルを作成してください。特に、Lightning App Builderで構築したカスタム画面の使い方や、Data Cloud連携によるデータ活用方法など、自社固有の機能については重点的にトレーニングを実施することが推奨されます。
失敗パターン3: Classic機能への依存が残り、Lightning移行が中途半端になる
「LightningはClassicの完全上位互換」という誤解から、すべての機能がLightningで使えると期待して移行したものの、一部機能がClassicでしか使えず、結局Classicに戻ってしまうケースがあります。
対処法として、移行前にClassic機能の棚卸しを行い、Lightning未対応の機能を特定してください。その上で、Lightning移行後もClassicを併用する運用方針を明確にし、ユーザーに周知することで、混乱を防ぐことができます。LightningとClassicの切り替えは自由にできるため、必要に応じて両方を使い分ける柔軟な運用が現実的です。
まとめ - Lightning導入成功のために
本記事では、Salesforce Lightning Experienceの基本概念、Classicとの違い、主要機能(Lightning App Builder、Agentforce、Data Cloud連携)、導入前の準備と運用定着方法について解説しました。
改めて強調しますが、Salesforce Lightning導入の成功は、機能理解と移行だけでなく、カスタマイズによる業務プロセス標準化と運用定着までの一気通貫の実装で実現します。 移行しただけで満足するのではなく、自社の業務に合わせたカスタマイズ、運用ルールの整備、ユーザートレーニングまでを計画的に実施することが成功の鍵です。
次のアクションとして、本記事で紹介した「Lightning導入前チェックリスト」を活用し、自社の準備状況を確認してください。段階的移行を基本方針とし、小規模な部門やチームでパイロット導入を行い、効果を測定しながら本格展開することを推奨します。
自社でのリソース不足や専門知識不足を感じる場合、外部の専門家(Salesforceコンサルティングパートナー等)への相談を検討することも有効です。適切な準備と運用定着の取り組みにより、Lightning導入による業務効率化が実現できます。
