Salesforceダッシュボードを作ったのに誰も見ていない問題
Salesforceダッシュボードは作成手順を覚えるだけでは現場に定着せず、業務プロセスに合ったKPI設計と運用ルールの整備が必要であり、それを実現するには専門家の支援が有効です——本記事ではこの結論を詳しく解説します。
ダッシュボードとは、複数のレポートを基にグラフや表を1画面に集約し、データを視覚化してビジネス全体を俯瞰できる機能です。Salesforceダッシュボードでは20個のグラフ/コンポーネントを1画面に配置可能であり、機能面では十分な表現力を備えています(出典:Salesforceのダッシュボードについてまとめてみた)。
しかし、多くの企業でダッシュボードを作成したにもかかわらず「現場が見ていない」「活用されていない」という課題が生じています。この問題の原因はツールの機能不足ではなく、設計と運用にあるケースがほとんどです。
この記事で分かること
- ダッシュボードとレポートの違い・基本機能
- ダッシュボードが定着しない原因と設計の落とし穴
- 営業管理で活用できるダッシュボード項目例
- 現場に定着させる運用ルールとチェックリスト
Salesforceダッシュボードとレポートの違い・基本機能
Salesforceにおけるダッシュボードとレポートは、データ活用の目的が異なります。レポートは、Salesforceのデータを条件指定で抽出・集計し、詳細分析を行うための機能であり、ダッシュボードの基盤となります。一方、ダッシュボードは複数のレポートを視覚化して一画面で俯瞰するための機能です。
両者の主な違いは以下のとおりです。
| 項目 | ダッシュボード | レポート |
|---|---|---|
| 目的 | 全体像の俯瞰・KPIモニタリング | 詳細データの抽出・分析 |
| 表示形式 | グラフ・ゲージ等を複数配置 | リスト・サマリー形式 |
| 更新タイミング | 手動更新または自動更新設定が必要 | 画面表示時に自動で最新化 |
| 主な利用者 | 経営層・マネージャー | 担当者・分析者 |
特に注意すべき点として、ダッシュボードは手動更新が必要であり、自動更新を設定しても最新データは「更新」ボタン押下時に反映されます@@SOURCE_0@@。レポートは画面を開くたびに自動で最新データが表示されるため、この違いを理解しておくことが重要です。
コンポーネントとは、ダッシュボード上に配置する個々のグラフや表のことで、ウィジェットとも呼ばれます。各コンポーネントは特定のレポートを参照して可視化を行います。
ダッシュボードで使えるグラフの種類と選び方
Salesforceダッシュボードでは、目的に応じて適切なグラフを選ぶことが重要です。主なグラフの種類と選び方の目安は以下のとおりです。
| 目的 | 推奨グラフ | 活用シーン例 |
|---|---|---|
| 複数項目の比較 | 棒グラフ(縦・横) | 担当者別売上、商品別受注件数 |
| 時系列の推移 | 折れ線グラフ | 月次売上推移、リード獲得数の変化 |
| 構成比の把握 | 円グラフ・ドーナツグラフ | 商談ステージ別割合、業種別顧客構成 |
| 目標達成度 | ゲージ | 売上目標達成率、KPI進捗 |
グラフの「正解」は一つではなく、何を伝えたいか、誰が見るかによって最適な選択は変わります。重要なのは、「分析したい」ではなく「何を伝えたいか」という視点で選ぶことです。
ダッシュボードが定着しない原因と設計の落とし穴
ダッシュボードが現場で活用されない最大の原因は、「作り方」だけを学んで自力で構築しようとすることです。何を見るべきかの設計がないまま作ると、誰も見ないダッシュボードになります。これはよくある失敗パターンです。
マジカルナンバーとは、人が同時に処理できる情報量の限界(7±2)を指します。ダッシュボード設計でも、グラフ配置数は7±2個を目安にすると情報過多を避けられると言われています(出典:マジカルナンバーで考えるダッシュボードレイアウト)。最大20個まで配置できるからといって詰め込みすぎると、スクロールが必要になり、かえって意思決定の効率が低下します。
定着しないダッシュボードによく見られる問題点は以下のとおりです。
- 目的が不明確: 「何のために見るのか」が定義されていない
- 情報過多: グラフを詰め込みすぎて見るべきポイントが分からない
- 更新されない: 古いデータのまま放置され、信頼を失う
- 現場の業務と乖離: 日常業務で使うシーンがない
見られるダッシュボードの設計条件
現場で活用されるダッシュボードには、共通する設計条件があります。
まず、「誰が」「何を」「どう判断するために使うか」を明確にすることが出発点です。たとえば「営業マネージャーが週次会議で商談進捗を確認し、フォローすべき案件を特定する」といった具体的な利用シーンを想定します。
次に、グラフの配置順序も重要です。全体から詳細へ(大→小)の順で配置すると視認性が向上します。たとえば、最初に全社売上の推移を配置し、次に部門別、最後に担当者別という流れです。
名前の付け方にも配慮が必要です。「ダッシュボード1」ではなく「週次営業レビュー」「月次KPI進捗」など、一目で用途が分かる名前にすることで、現場での利用頻度が上がります。
営業管理で活用できるダッシュボード項目例
営業管理でダッシュボードを活用する場合、以下のような項目を配置することが一般的です。動的ダッシュボードを使えば、閲覧者の権限に応じて表示データが変わり、各ユーザーが自分のデータのみ参照できるようになります。
【比較表】営業管理用ダッシュボード項目例
| ダッシュボード名 | 主な配置コンポーネント | 対象者 | 更新頻度目安 |
|---|---|---|---|
| リードファネル | リードソース別件数、ステージ別推移、コンバージョン率 | マーケティング・IS | 日次〜週次 |
| 商談パイプライン | 商談ステージ別金額、担当者別商談数、クローズ予定案件 | 営業マネージャー | 日次 |
| 売上予測 | 月次売上予測、達成見込み案件、リスク案件 | 営業部長・経営層 | 週次 |
| KPI達成度 | 売上目標達成率、訪問件数、提案件数 | 営業担当者 | 日次 |
| 失注分析 | 失注理由別件数、競合負け案件、価格負け案件 | 営業企画 | 月次 |
Salesforce Winter'26(2025年度)では、ダッシュボードグラフに基準線(目標線)機能が追加されました(出典:Salesforce Winter'26 リリースノート解説)。この機能を使えば、売上目標や前年実績を視覚的に比較できるため、達成度の把握がより直感的になります。
配置するコンポーネントは、前述のマジカルナンバーを意識して7±2個に絞り込むことをおすすめします。すべてを1つのダッシュボードに詰め込むのではなく、用途別に複数のダッシュボードを作成する方が効果的です。
ダッシュボードを現場に定着させる運用ルール
ダッシュボードを作成しただけでは定着しません。運用ルールを整備し、継続的に活用される仕組みを作ることが重要です。
【チェックリスト】ダッシュボード設計チェックリスト
- ダッシュボードの利用目的が明文化されている
- 「誰が」「いつ」「何を判断するために」使うか定義されている
- 配置するコンポーネントが7±2個に絞り込まれている
- グラフの種類が目的に合っている(比較→棒、推移→折れ線など)
- 全体から詳細への配置順序になっている
- ダッシュボード名から用途が分かる
- 更新頻度と更新担当者が決まっている
- アクセス権限が適切に設定されている
- 定期的なレビュー・改善のタイミングが決まっている
- 現場からのフィードバックを収集する仕組みがある
運用ルールとして特に重要なのは、更新のタイミングと担当者を明確にすることです。自動更新を設定していても、レポートの条件変更やコンポーネントの見直しは人の手が必要です。
また、定期的なレビューの機会を設けることも効果的です。月に一度、実際にダッシュボードを使っているメンバーから「何が見にくいか」「何が足りないか」をヒアリングし、改善を重ねることで、現場にとって本当に役立つダッシュボードへと育てていくことができます。
ダッシュボード活用を支援する専門家の役割
自社だけでダッシュボードの設計・運用を完結しようとすると、限界があるのも事実です。特に以下のようなケースでは、業務プロセスを理解した専門家への相談が有効です。
- 何をKPIとして設定すべきか分からない
- 既存のダッシュボードが活用されていない原因が特定できない
- 営業プロセスの可視化をどう設計すればよいか分からない
- Salesforceの機能を十分に活かしきれていない
専門家に相談することで、単なる「作り方」の支援ではなく、業務プロセスに合ったKPI設計や運用ルールの整備まで含めた支援を受けられます。結果として、現場で実際に活用されるダッシュボードを構築できる可能性が高まります。
まとめ:ダッシュボード定着は設計と運用で決まる
本記事では、Salesforceダッシュボードが現場で活用されない原因と、定着させるための設計・運用のポイントを解説しました。
要点の整理:
- ダッシュボードとレポートは目的が異なる(俯瞰 vs 詳細分析)
- 「作り方」だけを学んで構築すると、誰も見ないダッシュボードになりやすい
- グラフ配置数は7±2個を目安に、情報過多を避ける
- 「誰が何を判断するために使うか」を明確にすることが設計の出発点
- 運用ルールの整備と定期的な改善が定着の鍵
今日からできるアクション:
- 現在のダッシュボードを「チェックリスト」で点検する
- 実際に使っている(または使っていない)現場メンバーにヒアリングする
- 用途が不明確なダッシュボードを整理・統合する
Salesforceダッシュボードは作成手順を覚えるだけでは現場に定着しません。業務プロセスに合ったKPI設計と運用ルールの整備が不可欠であり、それを実現するには専門家の支援が有効です。まずは本記事のチェックリストを活用して、現状のダッシュボードを見直すところから始めてみてください。
