MA運用の内製化・外注で成果が出ない構造的な理由
実はMA運用の内製化は、戦略設計だけでなくMA設定・業務フロー構築・運用定着の仕組みまで一体的に支援を受けることで、形だけでなく「本当に回る内製化」を実現できます。
MA(マーケティングオートメーション) とは、リード獲得から育成、商談化までのマーケティング活動を自動化するツール・仕組みです。多くのBtoB企業がMA運用の「外注か内製か」で悩んでいますが、どちらを選んでも成果が出ないケースが少なくありません。
この記事で分かること
- MA内製化と外注の違いと役割分担
- 内製化・外注それぞれのメリット・デメリット
- 自社に合った選択をするための判断基準
- MA内製化準備チェックリスト
マーケティング従事者506名を対象とした調査では、内製化を希望する企業は約6割に達しています。しかし実態を見ると、「すべて内製」は24.5%、「内製メイン」は26.7%にとどまり、「外注メイン・一部内製」が37%で最多となっています。
内製停滞企業の7割以上が開発プロセス未整備という調査結果もあり、SaaS領域で完全内製を実現している企業はわずか6.9%にすぎません。この数字が示すのは、内製化を望んでも実現できていない企業が多いという現実です。
MA内製化と外注の違い|基本的な役割分担を整理
MA運用における内製化と外注は、どちらが正解ということではなく、自社の状況に応じて選択すべきものです。まずは両者の定義と役割分担を整理します。
内製化とは、外部委託していた業務を自社内で行う体制に切り替えることです。ノウハウ蓄積とコスト削減が主な目的となります。
運用代行とは、MAツールの設定・運用・改善を外部専門会社に委託するサービスです。BPOの一種であり、専門知識の活用と立ち上げスピードがメリットです。
MA内製化で自社が担う範囲
内製化した場合、以下の業務を自社で担うことになります。
- 戦略設計: ターゲット設定、カスタマージャーニー設計、KPI設定
- ツール設定: MAツールの初期設定、ワークフロー構築、連携設定
- コンテンツ作成: メール、ホワイトペーパー、ランディングページの制作
- データ分析: 効果測定、レポーティング、改善提案
- 運用実務: 日々の配信作業、リード管理、営業連携
リードナーチャリングとは、見込み顧客を購買検討段階まで育成するマーケティング活動です。メール配信やコンテンツ提供が主な手段となり、MA内製化ではこの運用を自社で回すことになります。
MA外注で委託できる範囲
運用代行で委託可能な業務範囲は、フルアウトソースから一部委託まで選択肢があります。
- フルアウトソース: 戦略から運用まで一括委託
- 運用特化型: 日々の運用・配信作業のみ委託
- スポット支援: 初期設定や特定施策のみ委託
自社のリソースと課題に応じて、委託範囲を決定することが重要です。
MA内製化のメリット・デメリット
MA内製化には明確なメリットがある一方、デメリットやリスクも存在します。客観的に比較し、自社に合った判断をするための材料を整理します。
MA内製化のメリット:ノウハウ蓄積とコスト削減
内製化の最大のメリットは、ノウハウの社内蓄積とコスト削減です。事例として、MA内製化により広告手数料15-20%カット、営業事務コスト年間210万円削減を達成した企業が報告されています(個別企業事例のため一般化には注意が必要です)。
また、別の事例では内製化によりルーティン業務が月20時間削減され、商談化率が5%から10%に向上したという報告もあります。ただし、これらの成果は企業の状況により大きく異なるため、自社で同様の結果が得られるとは限りません。
内製化のメリットをまとめると以下のとおりです。
- ノウハウが社内に蓄積される
- 外部委託費用を削減できる可能性がある
- 施策のスピードが上がる
- マーケティングPDCAを自律的に回せる
MA内製化のデメリット:人材確保と立ち上げコスト
一方で、内製化にはデメリットとリスクも存在します。前述のとおり、SaaS領域で完全内製を実現している企業はわずか6.9%であり、内製停滞企業の7割以上が開発プロセス未整備という課題を抱えています。
内製化の投資額については、SaaS内製化意向のある企業の34.2%が年間1,000万円以上を投資しているという調査結果もあり、初期投資の負担は小さくありません。
よくある失敗パターンとして、MA運用代行から内製化に切り替えても、戦略だけ受け取って設定・実装は自社でやろうとするケースがあります。この場合、ノウハウが移転されず、結局「使いこなせない」状態に陥ってしまいます。戦略設計だけでなく、MA設定・業務フロー構築・運用定着の仕組みまで一体的に支援を受けることが重要です。
MA外注のメリット・デメリット
MA外注(運用代行)にもメリット・デメリットがあります。費用相場を含めて整理します。
MA運用代行の費用相場は、中小・中堅BtoB企業向けで月額15万円〜18万円が標準的な目安とされています(2025年版民間比較サイト調査)。MAツール単体では小規模企業向けで月額5,000〜50,000円、中堅企業向けで50,000〜150,000円ですが、運用代行込みで総額月20万円超が一般的です。
【比較表】MA内製化vs外注比較(コスト・スピード・ノウハウ蓄積)
| 評価軸 | 内製化 | 外注(運用代行) |
|---|---|---|
| 初期コスト | 高(人材採用・育成が必要) | 低〜中 |
| ランニングコスト | 中〜高(人件費) | 中〜高(月額15-18万円目安) |
| 立ち上げスピード | 遅い | 速い |
| ノウハウ蓄積 | ◎(社内に蓄積) | △(社内に残らない) |
| 専門性 | 育成が必要 | 活用可能 |
| 柔軟性 | ◎(即時対応可能) | △(依頼〜実行にタイムラグ) |
| リスク | 人材離職リスク | ブラックボックス化リスク |
MA外注のメリット:専門性の活用と立ち上げスピード
外注の最大のメリットは、専門知識の即時活用と立ち上げスピードです。自社で人材を育成する時間がない場合や、短期間で成果を出す必要がある場合に有効です。
- 専門家のノウハウを即座に活用できる
- 立ち上げスピードが速い
- 社内リソースを本業に集中できる
MA外注のデメリット:ブラックボックス化とノウハウ流出
外注のデメリットは、ブラックボックス化とノウハウが社内に蓄積されないことです。「外注すれば成果が出る」という考えは誤りであり、外注先に依存するとマーケティングPDCAを自律的に回せない状態が続きます。
- 運用がブラックボックス化しやすい
- ノウハウが社内に蓄積されない
- 外注先への依存度が高まる
- コスト削減が難しくなる
MA内製化・外注の判断基準と準備チェックリスト
自社に合った選択をするためには、客観的な判断基準が必要です。内製停滞企業の7割以上が開発プロセス未整備という課題を踏まえ、準備状況を確認するチェックリストを活用してください。
【チェックリスト】MA内製化準備チェックリスト(人材・スキル・体制の3軸診断)
- MA運用を担当できる人材がアサインされている
- 担当者がMAツールの基本操作を習得している(または習得計画がある)
- データ分析・レポーティングができる人材がいる
- コンテンツ制作のリソースが確保できている
- 経営層がMA内製化にコミットしている
- 内製化のための予算が確保されている
- 業務フロー図が整備されている
- リード定義(MQL/SQL基準)が明確になっている
- 営業部門との連携ルールが決まっている
- 効果測定のKPIが設定されている
- MAツールの運用ルールが文書化されている
- データ入力・更新のルールが決まっている
- 定期的なレビュー会議の仕組みがある
- 外部支援が必要な範囲が明確になっている
- 投資回収の目標期間が設定されている
内製化に適した企業の特徴
内製化が向いている企業には、以下の特徴があります。
- MA運用を担当できる人材がいる(または採用・育成できる)
- 経営層がマーケティング内製化にコミットしている
- 中長期的な視点で投資回収を考えられる
- マーケティングPDCAを自律的に回したいという意志がある
外注が適切な企業の特徴
一方、外注が適切な企業には以下の特徴があります。
- 人材リソースが限られている
- 短期間で成果を出す必要がある
- 専門知識を即座に活用したい
- 本業にリソースを集中させたい
現実的には、両者の特徴を持つ企業が多いため、「外注メイン・一部内製」のハイブリッド型から始め、段階的に内製化を進めるアプローチが有効です。
まとめ:MA運用を「本当に回る内製化」にするために
本記事では、MA運用の内製化と外注について、メリット・デメリット、費用相場、判断基準を解説しました。
本記事の要点
- 内製化希望は約6割だが、完全内製を実現している企業は6.9%にすぎない
- 内製停滞企業の7割以上が開発プロセス未整備という課題を抱えている
- 内製化のメリットはノウハウ蓄積とコスト削減、デメリットは初期投資と人材確保
- 外注のメリットは専門性活用とスピード、デメリットはブラックボックス化
- ハイブリッド型から段階的に内製化を進めるアプローチが現実的
MA運用の内製化は、戦略設計だけでなくMA設定・業務フロー構築・運用定着の仕組みまで一体的に支援を受けることで、形だけでなく「本当に回る内製化」を実現できます。
次のアクションとして、本記事のチェックリストを活用して自社の準備状況を確認し、内製化・外注・ハイブリッドのどのアプローチが適切かを検討してみてください。
