スコアリング機能不全の現状とMA/SFA実装不備の見落とし
多くの人が見落としがちですが、スコアリングが機能しない原因は、ルール設計だけでなく、MA/SFA実装と運用体制の不備にあり、一気通貫の実装・運用支援によって初めて効果を発揮します。
MAツールを導入してスコアリングルールを設計したものの、営業部門から「使えない」「質が低い」と言われ、塩漬けリードが増え続けている。そんな課題を抱えているマーケティング責任者は少なくありません。実際、生成AI活用企業においてもリードスコアリングの活用は3.7%にとどまり、スコアリング普及率が低い実態が明らかになっています(2025年版BtoB企業リード獲得実態調査、IDEATECH)。
また、2025年のBtoB企業経営者調査(n=52)では、リードの質が理想通り獲得できていないと48.6%が回答(2024年比+7.6ポイント増)し、フォローアップ不十分が28.8%を占めています(2025年BtoB企業経営者のリード獲得実態調査、キャッチボール)。これらのデータが示すように、スコアリングルールを作っても形骸化し、実際の営業活動に活かされていない企業が多いのです。
この記事で分かること
- スコアリングが機能しない3大原因とその診断方法
- 効果的なスコアリング設計の基本(属性・行動・活性度の評価軸)
- MA/SFA実装と運用体制整備の重要性
- 実装・運用支援による改善アプローチと成功事例
- 自社だけで改善が難しい場合の専門家活用のポイント
スコアリングとは?機能しない企業が陥る典型パターン
リードスコアリングとは、見込み顧客の属性や行動に基づいて購買意欲を数値化し、営業アプローチの優先順位を決定する仕組みです。属性スコア(企業規模、業種、役職、所在地など静的な属性情報)と行動スコア(Webサイト閲覧、資料ダウンロード、メール開封、セミナー参加など動的な行動履歴)を組み合わせて評価します。
しかし、多くの企業が「スコアリングルールさえ正しく設計すれば自動的に機能する」という誤解に陥っています。これは典型的な失敗パターンです。実際には、ルール設計だけでは不十分で、MA/SFAツールでの具体的な実装、営業部門との運用体制整備、継続的なPDCA運用が伴わなければ、スコアリングは機能しません。
この失敗パターンに陥ると、塩漬けリード(スコアが高いにもかかわらず営業フォローされず放置されたリード、または活動実態がないのに高スコアのまま残存しているリード)が増え続け、営業部門からの信頼を失い、結果的にスコアリング自体が形骸化してしまいます。マーケティング部門単独でスコア基準を設定し営業意見を無視すると、「質が低い」と不信を招き、誰もスコアを見なくなるというのが現実です。
スコアリングが機能しない主な原因
スコアリングが機能しない主な原因は3つあります。1つ目は初期設定の放置と運用PDCA欠如、2つ目は行動スコア過信と属性スコアの軽視、3つ目は営業部門との連携不足とSLA未構築です。これらの原因は単独ではなく、複合的に絡み合ってスコアリング機能不全を引き起こします。
自社のスコアリングが機能していない原因を把握するため、以下のチェックリストで診断してみてください。
【チェックリスト】スコアリング機能不全診断チェックリスト
- 初期設定のまま3ヶ月以上スコアリングルールを見直していない
- デフォルトのスコア配点を変更せずに運用している
- 3ヶ月以上活動がないリードのスコアリセット運用がない
- スコアリングルールの定期的な見直し(PDCA)体制がない
- 行動スコアのみで評価し、属性スコアを設定していない
- 非ターゲット層(従業員数・業種等)の除外設定がない
- 属性と行動の合計閾値で営業移管を判断していない
- 営業部門とスコア基準について合意形成していない
- マーケティング部門単独でスコアリングルールを決定した
- 営業部門への定期的なスコアリング結果レビューがない
- SLA(マーケ・営業間のサービスレベル合意)を設定していない
- 過去の受注データをスコアリング設計に反映していない
- スコア80点以上のリードの営業移管基準が曖昧
- KPIを設定せずにスコアリングを運用している
- MA/SFAツールの設定を専門家の支援なしで行った
- スコアリング結果と実際の商談化率の乖離を測定していない
- 営業から「スコアが当てにならない」と言われたことがある
- 塩漬けリード(高スコアだが放置)が増え続けている
このチェックリストで5個以上該当する場合、スコアリング機能不全に陥っている可能性が高いと言えます。以下で各原因を詳しく見ていきましょう。
原因1:初期設定の放置と運用PDCA欠如
初期設定のまま放置することでスコアリングが機能不全に陥る理由は、過去の行動履歴が残存し続けることで「熱心でないリード」を過大評価してしまうからです。例えば、半年前に資料をダウンロードしただけで、その後一切アクションがないリードでも、高スコアのままリストに残り続けます。これが塩漬けリードを生む最大の原因です。
効果的なスコアリング運用では、初期設定は5-10項目に絞り一律10点配点から開始し、PDCAで調整するのが推奨されます。また、3ヶ月以上活動なしのリードは「休眠」扱いでスコアリセット運用が標準的です。初期設定をデフォルトのまま放置すると、スコアの精度が徐々に低下し、営業部門からの信頼を失うことになります。
原因2:行動スコア過信と属性スコアの軽視
行動スコアのみを重視し属性スコアを軽視すると、非ターゲット層が高スコア扱いされ営業負荷が増大します。例えば、従業員100名未満の小規模企業や、ターゲット外の業種の担当者が熱心にWebサイトを閲覧し資料をダウンロードした場合、行動スコアだけでは高評価となってしまいます。営業がアプローチしても成約に繋がらず、「マーケティングが渡すリードは質が低い」という不信感を生みます。
属性スコアと行動スコアを併用し、合計閾値で営業移管判断を行うのが効果的です。例えば、以下のような配点設定が一般的です(ただし、これはあくまで目安であり、業種・企業規模・リード母数により調整が必要です)。
(例)スコアリング配点の目安
- 従業員100名未満: -10点
- 従業員100-300名: +10点
- 従業員300名以上: +20点
- ターゲット業種一致: +20点
- 資料ダウンロード: +30点
- メール開封: +10点
- セミナー参加: +40点
※実際の成果は業種・企業規模により大きく変動します
原因3:営業部門との連携不足とSLA未構築
営業連携不足がスコアリング不信を招く最大の理由は、マーケティング部門と営業部門の「ホットリード」の定義がずれているからです。前述の調査では、フォローアップ不十分が28.8%を占めており、営業連携の課題が顕著です。また、新規開拓手法でKPIを設定していない企業が59.0%存在し、スコアリング運用の基盤が不足しています(BtoB営業実態調査2025、Mail Marketing Lab)。
営業部門との過去受注データ共有と定期レビューによるPDCAがスコアリング成功の鍵です。SLA(Service Level Agreement) とは、マーケティング部門と営業部門の間で交わすサービスレベル合意で、リード対応時間や引き渡し基準などを明確化します。
一般的には、スコア80点以上は即営業対応、50-79点はナーチャリング、49点以下は保留といった基準が目安ルールとして使われています。このような明確な基準を営業部門と合意し、SLAとして文書化することで、スコアリングが実際の営業活動に活かされるようになります。
スコアリング設計の基本と実装・運用のポイント
スコアリング設計の基本は、属性・行動・活性度の3つの評価軸をバランスよく組み合わせることです。ルール設計だけでなく、MA/SFAツールでの具体的な実装設定と、営業部門との運用体制整備が伴って初めて機能します。
以下の比較表で、機能するスコアリングと機能しないスコアリングの違いを確認してください。
【比較表】機能するスコアリングと機能しないスコアリングの比較
| 項目 | 機能するスコアリング | 機能しないスコアリング |
|---|---|---|
| 設計方針 | シンプル設計(5-10項目)から開始 | 初期から複雑な設計 |
| 評価軸 | 属性+行動+活性度をバランスよく併用 | 行動スコアのみに偏重 |
| 属性フィルタ | 非ターゲット層を除外設定 | 属性フィルタなし |
| スコアリセット | 3ヶ月以上活動なしでリセット | 過去スコアが残存し続ける |
| 営業合意 | SLAで基準を明文化・合意 | マーケ単独で決定 |
| 移管基準 | 明確な閾値(80点以上等) | 曖昧な基準 |
| PDCA | 定期レビュー・受注データ反映 | 初期設定のまま放置 |
| KPI設定 | 商談化率・受注率を測定 | KPI未設定 |
| 実装体制 | MA/SFA専門家が設定支援 | 自社のみで試行錯誤 |
| 運用体制 | マーケ・営業の定期ミーティング | 部門間の連携なし |
属性・行動・活性度の評価軸
スコアリング設計の3つの評価軸を正しく理解することが重要です。
属性スコアは、企業規模、業種、役職、所在地など、見込み顧客の静的な属性情報に基づいて付与されるスコアです。例えば、ターゲット業種一致で+20点、決裁権者の役職で+30点といった設定が一般的です。属性スコアは変動しにくいため、リードの「質」を評価する基準となります。
行動スコアは、Webサイト閲覧、資料ダウンロード、メール開封、セミナー参加など、見込み顧客の動的な行動履歴に基づいて付与されるスコアです。行動スコアは購買意欲の高まりを示す指標として重要ですが、単独では非ターゲット層も高評価してしまうため、属性スコアと併用することが不可欠です。
活性度スコアは、継続的なサイト訪問やエンゲージメント頻度など、見込み顧客の関心度の継続性を評価するスコアです(行動スコアに含まれることが多い)。活性度が低下したリード(3ヶ月以上活動なし等)はスコアをリセットし、ナーチャリング対象に戻すことで、営業が追うべきリストの精度を保ちます。
MA/SFA実装での具体的な設定方法
MA/SFAツールでのスコアリング実装では、ルール設計だけでなく、ツールの設定と営業移管の自動化が重要です。
リソース限定的な企業では複雑設計を避け、迅速フォロー優先でシンプル設計から始めるべきです。具体的には、以下のステップで進めます。
- ターゲット属性の定義(業種・規模・役職等)
- 非ターゲット層の除外設定(例:学生・個人事業主等をスコア0で失格)
- 行動スコアの配点設定(資料DL=+30点、メール開封=+10点等)
- 営業移管の閾値設定(例:80点以上で自動通知)
- スコアリセットルールの設定(例:90日間活動なしで-50点)
営業移管の閾値設定では、SLAで合意した基準(例:スコア80点以上は24時間以内に営業が初回接触)をMA/SFAツールに実装し、自動通知やタスク生成を設定します。これにより、高スコアリードが放置されることを防ぎます。
定期的な見直しとPDCAの重要性も強調しておきます。月次または四半期ごとに、スコアリング結果と実際の商談化率・受注率を比較し、ルールを調整していくことが、スコアリングを機能させ続ける鍵です。
MA/SFA実装支援による機能回復のアプローチ
自社でスコアリングルールを設計し、MA/SFAツールに設定しても、期待通りに機能しないケースが多いのが現実です。ルール設計と実装・運用は別のスキルセットが必要であり、専門家の支援を受けることで機能回復が可能になります。
実際、あるMA導入企業では、スコアリング(属性+行動軸)導入によりセッション数536%アップ(1,727→9,257)、CV数317%アップ、売上240%アップを達成した事例があります(デジタルマーケティング事例、BowNow)。また、別のMA導入企業では、行動軸中心のスコアリング設計によりCV数232%アップ(268→622)、セッション206%アップ(8,422→17,387)を達成しています(同出典)。
ただし、これらの数値はMAツールベンダー事例のため再現性は保証されません。成果は業種・企業規模・リード母数・運用体制により大きく異なります。とはいえ、適切な実装・運用支援を受けることで、スコアリングが機能し、成果につながる可能性は高まります。
自社設定が機能しない理由
自社でスコアリングルールを設定しても機能しない根本原因は、MA/SFA実装の専門知識不足と、営業部門との運用体制整備の難しさにあります。
MA/SFAツールは多機能であり、スコアリングルールの設定、自動化フロー、営業移管のトリガー設定など、複雑な設定が必要です。マニュアルを読んでも、どの機能をどう組み合わせれば自社の業務に最適化できるかは分かりにくく、試行錯誤に時間がかかります。結果的に、初期設定のまま放置され、スコアリングが形骸化します。
また、営業部門との運用体制整備も容易ではありません。マーケティング部門単独でスコア基準を設定し営業意見を無視すると、「質が低い」と不信を招き活用されません。過去の受注データを分析し、営業と合意形成し、SLAを文書化し、定期レビューの場を設けるといった一連のプロセスは、マーケティング担当者だけでは手が回らないのが実情です。
さらに、継続的なPDCA運用のリソース不足も大きな課題です。スコアリング結果と商談化率の乖離を測定し、ルールを調整し、MA/SFAツールの設定を更新し、営業にフィードバックするというサイクルを回すには、専任の担当者と専門知識が必要ですが、多くの企業ではそのリソースを確保できていません。
実装・運用支援による改善事例
実装・運用支援による具体的な改善アプローチは、スコアリングルール設計からMA/SFA設定、営業連携支援、PDCA運用支援までを一気通貫で提供することです。
前述のように、スコアリング導入により大幅な成果向上を達成した企業では、属性と行動のバランスを取ったスコア設計、MA/SFAツールの効果的設定、営業部門とのSLA構築、定期的なレビューと調整というプロセスを、専門家の支援を受けて実施しています。
実装・運用支援の具体的な内容としては、以下のようなものが挙げられます。
- MA/SFAツールの初期設定と最適化(スコアリングルール、自動化フロー、営業移管トリガー等)
- 過去の受注データ分析に基づくスコア基準の設計
- 営業部門とのSLA策定支援(移管基準、対応時間、レビュー頻度等の合意形成)
- 定期的なスコアリング結果レビューと改善提案(月次・四半期での調整)
- 営業部門へのフィードバックとルール調整の実行支援
このような一気通貫の支援を受けることで、自社だけでは難しかったスコアリング機能の回復と、継続的な成果向上が可能になります。
まとめ:一気通貫の実装・運用支援でスコアリングを機能させる
スコアリングが機能しない原因は、ルール設計だけでなく、MA/SFA実装と運用体制の不備にあります。初期設定の放置と運用PDCA欠如、行動スコア過信と属性スコアの軽視、営業部門との連携不足とSLA未構築という3大原因が、複合的にスコアリング機能不全を引き起こします。
スコアリング設計の基本は、属性・行動・活性度の3つの評価軸をバランスよく組み合わせ、MA/SFAツールでの具体的な実装設定と、営業部門との運用体制整備を同時に進めることです。シンプル設計から開始し、過去受注データを反映し、SLAで基準を明文化し、定期的なPDCAで調整していくことが成功の鍵となります。
自社だけでスコアリングを改善するのが難しい場合は、MA/SFA実装と運用体制整備を一気通貫で支援する専門家の活用を検討してください。スコアリングルール設計からツール設定、営業連携支援、PDCA運用支援までをトータルでサポートすることで、スコアリングが実際に機能し、商談化率の向上につながります。
まずは本記事で紹介した診断チェックリストで自社の状況を確認し、どこに課題があるかを把握することから始めてみてください。そして、必要に応じて専門家の実装・運用支援を活用することで、スコアリングを機能させ、営業部門からの信頼を取り戻し、塩漬けリードを減らして成果を出していきましょう。
