HubSpot初期設定の重要性と本記事の目的
HubSpot初期設定は手順を学ぶだけでなく、現場で使われる設定と運用体制を整備することで初めて価値を発揮する。これが本記事の結論です。
HubSpotとは、CRM、マーケティング、営業ツールを統合したオールインワンプラットフォームです。世界238,000社が導入しており(2024年時点)、日本でもCRM市場の拡大とともに注目が高まっています。しかし、導入企業の中には「初期設定を完了したが、現場が使わない」「データが入らず、活用できていない」という課題を抱えているケースも少なくありません。実際、CRM設定が「明確でない」組織が31.0%存在するという調査結果もあります。
本記事では、公式ドキュメント通りの手順だけでなく、現場で実際に使われる設定と運用体制の構築方法を解説します。具体的には、以下の内容を提供します。
この記事で分かること
- HubSpot初期設定の基本手順と優先順位
- 現場で使われる設定のポイントと実践的なTips
- 初期設定後の運用定着支援の方法
- 「使われるHubSpot」設定チェックリスト(コピペ可能)
- 初期設定項目の優先順位表(実務で即活用可能)
HubSpotとCRMの基本理解
HubSpotは、CRM、マーケティングオートメーション(MA)、営業支援の3つの主要機能を統合したプラットフォームです。CRMとは、Customer Relationship Managementの略で、顧客関係管理システムを指します。顧客データを一元管理し、営業・マーケティング活動を効率化する役割を担います。
HubSpot導入企業は世界238,000社に達しており(2024年時点)、グローバルで広く普及しています。日本でも、CRM市場は2021年度に4,047億円(前年比121.9%)を記録し、2026年度には9,203億円に達すると予測されています(年平均成長率17.9%)。この市場成長の背景には、データドリブンな営業・マーケティング活動への需要の高まりがあります。
一方で、日本企業のCRM導入率はまだ発展途上です。CRM導入営業組織の割合は36.1%にとどまっており(2023年HubSpot調査)、導入企業の中でも「設定が不明瞭」「現場が使いこなせていない」という課題が顕在化しています。
HubSpotの主要機能
HubSpotの主要機能は、以下の3つに大別されます。
- CRM(顧客管理): 顧客情報、商談履歴、コンタクト履歴を一元管理し、営業チーム全体でデータを共有できます。
- MA(マーケティングオートメーション): マーケティング活動を自動化し、リードの獲得・育成・スコアリングを効率化するツールです。メール配信、Webサイトトラッキング、フォーム作成などの機能が含まれます。
- 営業支援: 商談管理、取引ステージの可視化、タスク管理などにより、営業プロセスを効率化します。
これらの機能がオールインワンで提供されるため、複数ツールを統合する手間が省け、データの一元管理が可能になります。
CRM導入の現状と課題
日本企業のCRM導入率は36.1%と、まだ普及の途上にあります(2023年HubSpot調査)。導入企業の中でも、CRM設定が「明確でない」組織が31.0%存在しており(HubSpot Japan 2023年調査)、タイムゾーンや通貨の不整合がデータ共有失敗の主因となっているケースが見られます。
この課題の背景には、「公式ドキュメント通りに設定すれば使える」という誤解があります。実際には、現場の業務フローに合わせた設定と運用体制の整備が不可欠であり、初期設定で満足してしまうと、せっかく導入したHubSpotが活用されないまま放置される結果となります。
HubSpot初期設定の手順と優先順位
HubSpotの初期設定は、アカウント作成から基本設定、ユーザー追加・権限設定、トラッキング設定まで、複数のステップで構成されます。これらの設定を優先順位に沿って進めることで、現場での運用開始をスムーズにすることができます。
以下の表は、初期設定項目の優先順位を示したものです。実務でそのまま活用できる形式になっているため、コピーして自社の設定チェックリストとしてご利用ください。
【比較表】初期設定項目の優先順位表
| 優先順位 | 設定項目 | 目的 | 所要時間目安 |
|---|---|---|---|
| 高 | アカウント作成・セットアップ | HubSpotの利用開始 | 5分 |
| 高 | 会社情報・基本設定(タイムゾーン、通貨、言語) | データ精度の確保とチーム間の統一 | 10分 |
| 高 | スーパー管理者権限の設定 | セキュリティとアクセス管理の基盤 | 5分 |
| 中 | ユーザー追加・権限設定 | チーム全体での利用開始 | 20分 |
| 中 | トラッキング設定・プライバシー管理 | Webサイト訪問者の行動データ収集 | 30分 |
| 中 | ハウスリストのインポート | 既存顧客データの移行 | 40分 |
| 低 | カスタムプロパティ設定 | 自社業務に合わせたデータ管理 | 30分 |
| 低 | 取引ステージの設定 | 営業プロセスの可視化 | 20分 |
日本の法人営業組織の56.2%がテレワークを導入しており、42.1%がリモート営業ツールを活用しています(2023年HubSpot Japan調査)。このようなリモートワーク環境では、タイムゾーン設定の重要性が増しています。タイムゾーン不整合が原因の「無駄な時間」が約1兆円と推定されており(2023年HubSpot Japan調査、因果関係は推定値で第三者検証なし)、正確な設定が業務効率に直結します。
アカウント作成とセットアップ
HubSpotのアカウント作成は、公式サイトから無料で開始できます。メールアドレスとパスワードを入力するだけで、即座にアカウントが作成されます。基本的なCRM機能は無料プランで利用可能であり、日本語インターフェースが標準対応しているため、日本企業でも使いやすい設計になっています。
アカウント作成後は、ダッシュボードにアクセスし、初期設定ウィザードに従って会社情報を入力します。この段階で、タイムゾーン、通貨、言語の設定を正確に行うことが重要です。
会社情報・基本設定(タイムゾーン、通貨、言語)
会社情報と基本設定は、HubSpotのデータ精度とチーム間のデータ共有に直接影響します。タイムゾーンとは、地域ごとの時刻設定のことで、HubSpotでは正確なデータ分析とメール配信に影響を与えます。
日本企業向けの推奨設定は以下の通りです。
- タイムゾーン: Asia/Tokyo
- 通貨: JPY(日本円)
- 言語: 日本語
タイムゾーン不整合が原因の「無駄な時間」が約1兆円と推定されているため(2023年HubSpot Japan調査、因果関係は推定値で第三者検証なし)、この設定を正確に行うことが業務効率化の第一歩となります。特に、複数拠点でHubSpotを利用する場合や、海外とのやり取りが発生する場合は、タイムゾーン設定がデータ分析やメール配信のタイミングに影響するため、慎重に設定してください。
ユーザー追加・権限設定
ユーザー追加と権限設定は、チーム全体でHubSpotを活用するために不可欠なステップです。スーパー管理者権限とは、HubSpotで全設定にアクセス可能な最高権限のことで、ユーザー追加・権限編集を行えます。
スーパー管理者権限を持つユーザーが、設定アイコンから「ユーザーとチーム」メニューにアクセスし、以下の手順でユーザーを追加します。
- 「ユーザーを追加」ボタンをクリック
- 追加するユーザーのメールアドレスを入力
- 権限レベル(スーパー管理者、マーケティング、営業、顧客対応など)を選択
- 招待メールを送信
権限設定により、集客・営業・顧客対応の各チームが無関係なデータを排除し、業務効率を向上させることが可能になります。ただし、新規権限を追加する際、既存ユーザーの権限がデフォルトでオンになる場合があるため、過剰なアクセス権限が付与されないよう注意が必要です。
現場で使われる設定のポイント
公式ドキュメント通りに設定しても、現場の業務フローに合っていなければ誰も使わない。これは、HubSpot導入における最大の誤解の一つです。初期設定で満足し、運用・改善プロセスを設計していない状態では、せっかくのツールが活用されず、投資が無駄になってしまいます。
現場で使われる設定にするためには、以下のポイントを押さえる必要があります。
- トラッキング設定とプライバシー管理を適切に行い、Webサイト訪問者の行動データを収集する
- ハウスリストを正確にインポートし、既存顧客データを移行する
- カスタムプロパティを設定し、自社の業務に合わせたデータ管理を実現する
これらの設定を、現場の業務フローに合わせてカスタマイズすることで、初めて「使われるHubSpot」が実現します。
トラッキング設定・プライバシー管理
トラッキング設定は、Webサイト訪問者の行動データを収集し、リードの育成やスコアリングに活用するための重要な設定です。HubSpotが提供するトラッキングコードを、Webサイトの全ページに設置することで、訪問者の行動履歴(ページ閲覧、フォーム送信、クリックなど)を自動的に記録できます。
一方で、GDPR(EU一般データ保護規則)やプライバシー規制への対応として、Cookie同意の設定も必要です。HubSpotでは、Cookie同意バナーを簡単に設置でき、訪問者が同意した場合にのみトラッキングを開始する仕組みを構築できます。日本国内でも、個人情報保護法の観点からプライバシーポリシーの明示と同意取得が推奨されるため、適切な設定を行うことが重要です。
ハウスリストのインポート・プロパティ設定
既存の顧客リストをHubSpotに移行する際は、CSVファイルでの一括インポート機能を活用します。インポート時には、以下の点に注意してください。
- 必須項目(メールアドレス、会社名など)が正しく入力されているか確認する
- データの重複を避けるため、インポート前に既存データとの照合を行う
- カスタムプロパティを設定し、自社の業務に合わせたデータ管理を実現する
カスタムプロパティとは、HubSpotの標準項目(名前、メールアドレスなど)に加えて、自社独自のデータ項目を追加する機能です。例えば、業種、従業員数、導入予定時期など、自社の営業・マーケティング活動に必要な情報をカスタムプロパティとして設定することで、より精緻なリード管理が可能になります。
初期設定後の運用定着支援
初期設定を完了しても、現場が使わない・データが入らないという問題は、運用体制と定着支援の不足によって引き起こされます。CRM設定が「明確でない」組織が31.0%存在するという調査結果が示すように(HubSpot Japan 2023年調査)、設定の明確化と運用ルールの整備が不可欠です。
以下のチェックリストは、「使われるHubSpot」を実現するための具体的な施策をまとめたものです。現場での運用開始前に、このチェックリストを活用して、設定と運用体制を確認してください。
【チェックリスト】「使われるHubSpot」設定チェックリスト
- アカウント作成とセットアップが完了している
- タイムゾーン、通貨、言語が正しく設定されている
- スーパー管理者権限が適切なユーザーに付与されている
- 各チーム(マーケティング、営業、顧客対応)のユーザーが追加され、権限が設定されている
- トラッキングコードがWebサイトの全ページに設置されている
- Cookie同意バナーが設置され、プライバシー規制に対応している
- 既存顧客リストがCSVでインポートされ、重複データが排除されている
- カスタムプロパティが設定され、自社の業務に必要なデータ項目が追加されている
- 運用担当者(マーケティング担当者、営業担当者、管理者)の役割分担が明確になっている
- データ入力ルールが整備され、必須項目と入力フォーマットが統一されている
- 週次・月次での定期レビューの実施が決定されている
- HubSpot Academy(無料日本語チュートリアル)を活用した社内教育が計画されている
- 現場からのフィードバック収集の仕組みが構築されている
- 月次での利用状況レビュー(ログイン率、データ入力率など)が実施される予定である
- HubSpotのアップデートに合わせた機能追加・設定変更のプロセスが設計されている
HubSpot Academy(無料日本語チュートリアル)を活用することで、導入率向上が期待できます。現場のメンバーが自主的に学習できる環境を整えることで、設定後の運用定着がスムーズになります。
運用体制の構築
運用体制の構築では、誰が何を担当するかを明確にすることが重要です。以下のような役割分担を設定することで、現場での混乱を避けることができます。
- マーケティング担当者: リードの獲得・育成、メール配信、Webサイトトラッキングの管理
- 営業担当者: 商談管理、取引ステージの更新、顧客情報の入力
- 管理者(スーパー管理者): ユーザー追加・権限設定、カスタムプロパティの追加、システム全体の設定管理
週次・月次での定期レビューを実施し、各担当者の進捗状況やデータ入力状況を確認することも推奨されます。これにより、早期に問題を発見し、改善策を講じることが可能になります。
データ入力ルールの整備
現場がデータを入力しやすいルールを整備することで、データ品質を保つことができます。以下のような実践的なTipsを活用してください。
- 必須項目を最小限に絞る: 入力負担を減らすため、必須項目は最小限(メールアドレス、会社名など)に限定します。
- 入力フォーマットを統一する: 電話番号や住所の入力形式を統一し、データの一貫性を保ちます。
- バリデーションルールを設定する: メールアドレスの形式チェックなど、入力ミスを防ぐためのバリデーションルールを設定します。
これらのルールを現場に周知し、定期的に見直すことで、データ品質の向上と運用の定着を両立できます。
定期的な改善プロセスの設計
初期設定で終わらず、定期的に見直し・改善するプロセスを設計することが、HubSpot活用の成功の鍵です。以下のような改善プロセスを組み込むことを推奨します。
- 月次での利用状況レビュー: ログイン率、データ入力率、メール開封率などのKPIを確認し、利用状況を可視化します。
- 現場からのフィードバック収集: 現場のメンバーから「使いにくい点」「改善してほしい機能」を定期的に収集し、設定に反映します。
- 設定の見直し: HubSpotのアップデートに合わせて、新機能の追加や設定変更を行います。
このような改善プロセスを継続することで、HubSpotを組織で定着させ、データドリブンなマーケティング・営業活動を実現できます。
まとめ:HubSpot初期設定成功の鍵
HubSpot初期設定は手順を学ぶだけでなく、現場で使われる設定と運用体制を整備することで初めて価値を発揮する。この結論を再度強調します。
本記事の要点を以下にまとめます。
- HubSpot初期設定では、タイムゾーン・通貨・言語の正確な設定がデータ精度の基盤となる
- ユーザー追加・権限設定により、チーム全体での円滑な利用が可能になる
- 公式ドキュメント通りの設定ではなく、現場の業務フローに合わせたカスタマイズが不可欠
- 運用体制の構築、データ入力ルールの整備、定期的な改善プロセスの設計が、HubSpot定着の鍵である
- HubSpot Academy(無料日本語チュートリアル)を活用した社内教育が、導入率向上につながる
次のアクションとして、本記事で提供した「【チェックリスト】「使われるHubSpot」設定チェックリスト」と「【比較表】初期設定項目の優先順位表」を活用し、自社の運用体制を構築してください。初期設定で満足せず、運用・改善プロセスを継続的に回すことで、HubSpotを組織で定着させ、データドリブンなマーケティング・営業活動を実現できます。
