BtoB企業がコンテンツ戦略で成果を出せない理由
コンテンツ戦略の成功は、戦略立案だけでなく、MA/SFA実装・コンテンツ制作体制・効果測定の仕組みを一貫して整備することで実現します。これが本記事の結論です。
BtoB企業の多くがコンテンツマーケティングに取り組んでいますが、戦略的に整理できておらず成果が見えないという課題を抱えています。コンテンツ未活用理由の34.3%が運用体制不備、31.2%の企業が必要性未認識により未導入という調査結果があります(2025年、PR TIMES調査)。
一方で、BtoB購買プロセスの完了割合は営業接触なしで8割以上となっており(2024年推定)、コンテンツを通じた情報提供の重要性は増し続けています。顧客は営業担当者と接触する前に、Webサイトやコンテンツを通じて情報収集を完了させているのです。
この記事で分かること
- コンテンツ戦略とコンテンツマーケティングの違いとBtoB特有の特徴
- BtoB企業のコンテンツ戦略で成功するための重要要因
- 戦略立案から実装・運用までの一気通貫のプロセス
- 実行体制を構築し戦略を形骸化させない定着化の方法
- MA/SFA実装や効果測定の仕組みまで含めた実践的なアプローチ
コンテンツ戦略とコンテンツマーケティングの違い
コンテンツ戦略とコンテンツマーケティングは混同されがちですが、明確に異なる概念です。コンテンツ戦略とは、「何を、誰に、いつ、どのように」届けるかを設計する戦略レベルの活動を指します。一方、コンテンツマーケティングは、その戦略に基づいて実際にコンテンツを制作・配信・運用する実行施策そのものです。
コンテンツ戦略は、ターゲットペルソナの設定、カスタマージャーニーの設計、コンテンツタイプの選定、配信チャネルの決定、KPI設計など、全体の設計図を描く役割を担います。コンテンツマーケティングは、その設計図に沿って記事を執筆したり、ホワイトペーパーを制作したり、SNSで情報発信したりする具体的な活動です。
コンテンツ戦略の定義
コンテンツ戦略は、企業が顧客に提供する情報の全体像を設計し、ビジネス目標達成に向けた道筋を明確にするものです。単にコンテンツを作ることではなく、「誰のどんな課題を解決するために、どのタイミングで、どのような形式の情報を提供するか」を体系的に設計します。
コンテンツ戦略には、ペルソナ設定、カスタマージャーニーマップ作成、コンテンツタイプの選定、配信チャネルの決定、KPI設定、効果測定の仕組み構築などが含まれます。これらを一貫した戦略として設計することで、コンテンツが単発の施策に終わらず、リード獲得から商談化までの導線として機能するようになります。
BtoB企業におけるコンテンツ戦略の特徴
BtoB企業のコンテンツ戦略は、BtoC企業とは異なる特徴を持っています。BtoB特有の特徴として、検討期間が長期にわたること、意思決定に複数の関係者が関わること、専門性の高い情報が求められることが挙げられます。
近年では、E-E-A-T(Experience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)の略で、Googleが重視するコンテンツ品質評価基準)準拠の専門性・独自性重視が標準になっています。単なるテキスト量産型のコンテンツではなく、実務経験に基づく独自の知見や、業界特有の課題解決事例など、専門性の高いコンテンツが評価される時代になっています。
また、BtoB企業では営業担当者との連携が重要です。コンテンツを通じて獲得したリードを、MA(Marketing Automation:マーケティング活動を自動化するツール)やSFA(Sales Force Automation:営業活動を自動化・効率化するツール)で管理し、適切なタイミングで営業担当者に引き継ぐプロセスが不可欠です。
BtoB企業のコンテンツ戦略成功要因
BtoB企業がコンテンツ戦略で成功するためには、明確なKPI設定、ペルソナとカスタマージャーニーに基づいた設計、適切なコンテンツタイプの選定が重要です。
BtoB企業におけるコンテンツマーケティングのKPIで、UU(ユニークユーザー数:特定期間内にサイトを訪問したユーザーの数(重複除外))が41.4%でトップとなっています(2024年、impress Web担当者Forum調査)。リード獲得施策の27.1%がコンテンツ作成を活用しており(2025年、Syncad調査、n=52)、オーガニックトラフィック増加戦術として、コンテンツ増加52%、コンテンツ改善51%が主要施策となっています(Semrush調査、2025年版)。
コンテンツマーケティングの成果を実感する期間は「3ヶ月~半年未満」または「半年~1年未満」が主流で、満足度は約8割に達するという調査結果があります(2024年、impress Web担当者Forum調査)。短期での成果を期待せず、中長期での取り組みが重要です。
ペルソナ設定とカスタマージャーニーマップ
コンテンツ戦略の起点となるのがペルソナ設定です。ペルソナとは、自社のターゲットとなる顧客像を具体的に描いたものです。役職、業種、企業規模、抱えている課題、情報収集の方法、意思決定プロセスなどを詳細に設定します。
ペルソナ設定では、「誰が」「どのような課題を抱えており」「どのような情報を求めているか」を明確にします。例えば、従業員50-300名のSaaS企業のマーケティング責任者で、MA/SFAは導入済みだがコンテンツとの連携が不十分で活用できていない、といった具体的なペルソナ像を描きます。
カスタマージャーニーマップは、ペルソナが課題認識から情報収集、比較検討、意思決定に至るまでのプロセスを可視化したものです。各段階でペルソナがどのような行動を取り、どのような情報を求めているかを整理します。これにより、各段階で提供すべきコンテンツタイプが明確になります。
顧客ジャーニー段階別のコンテンツタイプ
顧客ジャーニーの各段階で有効なコンテンツタイプは異なります。認知段階ではSEO記事やブログが有効です。課題を認識し始めた段階の顧客に対して、検索エンジン経由で情報を届けることができます。
検討段階ではホワイトペーパーや事例が有効です。具体的な解決策を比較検討している段階の顧客に対して、より詳細な情報を提供します。この段階では、リード情報と引き換えにコンテンツをダウンロードしてもらう形式が一般的です。
決定段階では製品資料や比較表が有効です。意思決定に必要な具体的な情報(機能、価格、導入事例、サポート体制など)を提供します。この段階では、営業担当者との連携が重要になります。
KPI設定と効果測定
コンテンツ戦略のKPI設計では、UU数やCVR(Conversion Rate:コンバージョン率で、訪問者のうち目標行動(資料DL、問い合わせ等)を達成した割合)だけでなく、商談化率まで見ることが重要です。
広告経由リードの商談化率の目安は11~20%、目標値として15%が妥当とされています(2025年、ferret one調査)。CVRが高くても、商談化率が低ければビジネスへの貢献は限定的です。最終的には、商談CPA(商談1件あたりの獲得コスト)で効果を測定することが重要です。
KPI設定では、認知段階(UU数、PV数)、検討段階(資料DL数、CVR)、決定段階(商談化率、受注率)と、各段階での指標を設定します。これにより、どの段階で課題があるかを特定し、改善施策を打つことができます。
コンテンツ戦略の立案から実装までのプロセス
コンテンツ戦略を成功させるには、戦略立案だけでなく実装フェーズまで含めた一気通貫のプロセスが必要です。戦略レポートだけで満足し、実行体制を整えずに走り出すと、戦略が形骸化して成果が出ません。
生成AI活用率は全体で63.6%、コンテンツ作成に27.1%が活用しています(2025年、Syncad調査、n=93)。生成AI活用により年間300万円のコスト削減、1本あたりの制作時間半減を実現した事例もあります(2024-2025年度、才流社事例)。ただし、これは単一企業の事例であり、再現性については各社での検証が必要です。
【フロー図】戦略立案から実装・運用までのフローチャート
flowchart TD
A[ペルソナ設定・カスタマージャーニーマップ作成] --> B[KPI設計・目標設定]
B --> C[コンテンツタイプ選定・配信チャネル決定]
C --> D[MA/SFA設定・リードスコアリング構築]
D --> E[コンテンツ制作フロー構築]
E --> F[効果測定ダッシュボード整備]
F --> G[コンテンツ制作・公開]
G --> H[効果測定・データ分析]
H --> I{目標達成?}
I -->|No| J[改善施策の立案]
J --> G
I -->|Yes| K[運用継続・新規施策検討]
K --> G
戦略立案フェーズ
戦略立案フェーズでは、ペルソナ設定、カスタマージャーニーマップ作成、KPI設計を行います。このフェーズで重要なのは、関係者間で共通認識を持つことです。マーケティング部門、営業部門、経営層が同じペルソナ像とゴールを共有することで、施策の方向性がぶれなくなります。
KPI設計では、最終的なビジネス目標(受注数、売上)から逆算して、各段階で必要な指標を設定します。例えば、年間受注24件を目標とする場合、受注率20%なら商談数120件、商談化率15%ならリード数800件が必要という形で逆算します。
コンテンツタイプと配信チャネルの選定では、ペルソナの情報収集行動に合わせて決定します。検索エンジン経由での情報収集が多いペルソナにはSEO記事、業界イベントへの参加が多いペルソナにはウェビナーやホワイトペーパーが有効です。
実装フェーズ:MA/SFA設定とコンテンツ制作フロー構築
実装フェーズでは、MA/SFA設定、コンテンツ制作フロー構築、効果測定ダッシュボード整備を行います。このフェーズを省略すると、戦略が形骸化する最大の要因となります。
MA設定では、リードスコアリング(リードの行動(資料DL、ページ閲覧等)や属性(企業規模、役職等)をスコア化し、温度感を可視化する仕組み)を構築します。コンテンツのダウンロード、Webページの閲覧、メールの開封など、リードの行動に応じてスコアを加算し、温度感の高いリードを可視化します。
シナリオ設計では、リードの行動に応じた自動メール配信や、営業担当者への通知などを設定します。例えば、ホワイトペーパーをダウンロードしたリードに対して、関連する事例記事を紹介するメールを自動配信するなどの施策を設計します。
SFA連携では、MA側で育成したリードを営業担当者に引き継ぐプロセスを可視化します。どのリードがどのコンテンツを閲覧し、どのようなスコアになっているかを営業担当者が確認できるようにすることで、商談化プロセスがスムーズになります。
コンテンツ制作フローでは、企画→制作→公開→効果測定のサイクルを構築します。誰が企画し、誰が執筆し、誰がレビューし、誰が公開するかを明確にすることで、継続的なコンテンツ制作が可能になります。
効果測定ダッシュボードの整備
データドリブンな運用を可能にするため、効果測定ダッシュボードを整備します。UU数、CVR、商談化率、CACなどの指標を一元管理し、リアルタイムで状況を把握できるようにします。
ダッシュボードでは、全体の数値だけでなく、コンテンツ別、チャネル別、ペルソナ別など、セグメントごとの数値も可視化します。これにより、どのコンテンツが成果に貢献しているか、どのチャネルが効率的かを判断できるようになります。
ダッシュボードは、マーケティング部門だけでなく営業部門や経営層とも共有します。関係者全員が同じデータを見て議論することで、施策の方向性が明確になります。
コンテンツ戦略の実行体制構築と定着化
コンテンツ戦略を形骸化させないためには、組織体制の整備と定期レビューの仕組み化が不可欠です。戦略レポートだけで満足し、実行体制(MA/SFA設定、コンテンツ制作フロー、効果測定ダッシュボード)を整えずに走り出すという失敗パターンを避けなければなりません。
コンテンツ未活用理由の34.3%が運用体制不備となっています(2025年、PR TIMES調査、n=99)。この失敗パターンを回避するため、専任担当者の配置、役割分担の明確化、定期レビューの仕組み化が重要です。
【チェックリスト】コンテンツ戦略実行チェックリスト
- ペルソナ設定が完了している
- カスタマージャーニーマップが作成されている
- KPIが設定され、関係者間で共有されている
- コンテンツタイプと配信チャネルが決定されている
- MAツールが導入され、リードスコアリングが構築されている
- SFAツールとの連携が設定されている
- コンテンツ制作フローが構築されている
- 効果測定ダッシュボードが整備されている
- コンテンツ制作の専任担当者または兼務担当者がアサインされている
- 外部パートナー活用の方針が決定されている
- 月次レビューの実施スケジュールが設定されている
- 四半期ごとのKPIレビュー会議が設定されている
- コンテンツ改善の優先順位付けプロセスが確立されている
- 営業部門との連携体制が構築されている
- 経営層への報告体制が確立されている
- コンテンツ制作予算が確保されている
- 生成AI活用の方針が決定されている
- E-E-A-T準拠のコンテンツ品質基準が設定されている
- コンテンツ公開前のレビュープロセスが確立されている
- コンテンツ改善のPDCAサイクルが回っている
組織体制の整備
コンテンツ戦略を実行するための社内体制を整備します。理想的には専任担当者を配置することですが、兼務の場合は工数を明確に確保することが重要です。コンテンツ制作に月間どれだけの時間を割けるかを明確にし、その範囲内で実行可能な計画を立てます。
外部パートナー活用の判断基準として、社内リソースの状況、専門性の必要度、スピード感などを考慮します。社内で専門知識が不足している領域、継続的に大量のコンテンツ制作が必要な場合、短期間で成果を出す必要がある場合などは、外部パートナーの活用を検討します。
役割分担では、企画、執筆、編集、公開、効果測定の各工程で担当者を明確にします。兼務の場合でも、誰がどの工程を担当するかを明確にすることで、属人化を防ぎ、継続的な運用が可能になります。
定期レビューとPDCAサイクル
継続的な改善のため、定期レビューとPDCAサイクルの仕組みを構築します。コンテンツマーケティングの成果を実感する期間は「3ヶ月~半年未満」または「半年~1年未満」が主流で、満足度は約8割に達するという調査結果があります(2024年、impress Web担当者Forum調査)。短期での成果を期待せず、中長期での取り組みが重要です。
月次レビューでは、KPIの達成状況、公開したコンテンツの成果、改善が必要なコンテンツの特定などを行います。四半期レビューでは、より大きな戦略の見直しを行います。ペルソナやカスタマージャーニーが適切か、コンテンツタイプの選定は正しいか、KPI設定は妥当かなどを検証します。
コンテンツ改善の優先順位付けでは、効果測定データに基づいて判断します。アクセス数は多いがCVRが低いコンテンツ、検索順位は高いが離脱率が高いコンテンツなど、改善の余地が大きいコンテンツから優先的に取り組みます。
まとめ:コンテンツ戦略成功のカギは実装・運用体制の整備
BtoB企業のコンテンツ戦略で成果を出すためには、戦略立案だけでなく実装・運用体制の整備が不可欠です。ペルソナ設定やカスタマージャーニーマップ作成といった戦略レベルの活動と、MA/SFA実装、コンテンツ制作フロー構築、効果測定ダッシュボード整備といった実装レベルの活動を、一気通貫で進めることが成功の鍵となります。
コンテンツ戦略の成功は、戦略立案だけでなく、MA/SFA実装・コンテンツ制作体制・効果測定の仕組みを一貫して整備することで実現します。戦略レポートだけで満足するのではなく、実行体制を整えることが重要です。
運用体制不備が34.3%の未活用要因となっている現状を踏まえ、専任担当者の配置、役割分担の明確化、定期レビューの仕組み化に取り組みましょう。コンテンツマーケティングの成果実感には3ヶ月~1年程度の期間が必要ですが、適切な体制を整えることで、満足度約8割という高い成果が期待できます。
次のアクションとして、本記事で紹介したチェックリストで現状診断を行い、フローに沿って実装を開始してください。戦略倒れにならないコンテンツ戦略の実現に向けて、一歩ずつ前進していきましょう。
