Account Engagementを導入しても成果が出ない企業の共通課題
Account Engagementは機能を導入するだけでなく、スコアリング設計・Salesforce連携・営業引き渡しルールを一体で整備することで初めて成果につながります。これが本記事の結論です。
Account Engagement(旧Pardot) とは、Salesforceが提供するBtoB特化型マーケティングオートメーション(MA)ツールです。2022年にPardotから名称変更されました。国内BtoBマーケティングオートメーション市場は2023年に753億円の市場規模、前年比11.2%増で拡大しており、導入する企業は増加しています。
しかし、導入したものの思うように活用できていない、営業部門との連携がうまくいっていないという課題を抱える企業は少なくありません。ツールを入れただけで成果が出ると考えるのは誤りであり、活用設計が重要です。
この記事で分かること
- Account Engagementの基本概念と主要機能
- Salesforce連携の仕組みとメリット
- 成果を出すためのスコアリング・グレーディング設計
- デフォルト設定のまま運用すると形骸化する理由
- 自社の活用状況を診断するチェックリスト
Account Engagement(旧Pardot)とは|基本概念と主要機能
Account Engagementは、BtoB企業向けのマーケティングオートメーションツールで、リードの獲得から育成、営業への引き渡しまでを支援します。DataSign社の調査によると、上場企業で利用されているマーケティングオートメーションツールのランキングでNo.1となっています。
国内CRMアプリケーション市場は2023年に2,497億8,600万円、前年比13.4%増で成長しており、Salesforceがトップポジションを維持しています。Account EngagementはこのSalesforceエコシステムの一部として、CRMとシームレスに連携できる点が大きな特徴です。
Account Engagementの主要機能は以下の通りです。
スコアリングは、Web訪問、メール開封などの行動を点数化し、リードの購買意欲を定量評価する機能です。行動に基づいてリードの「温度感」を可視化できます。
グレーディングは、企業規模、役職、業界などの属性に基づいてリードの品質を評価する機能です。ターゲット像との合致度を測ることができます。
ナーチャリングは、見込み客に継続的な情報提供を行い、購買意欲を育成するマーケティング活動です。Account Engagementでは自動化されたシナリオを組むことが可能です。
Salesforce連携の仕組みとメリット
Account EngagementとSalesforceの連携により、マーケティング部門と営業部門の情報断絶を防ぐことができます。マーケティング活動で獲得・育成したリード情報がSalesforce上でシームレスに共有され、営業担当者はリードの行動履歴を確認しながらアプローチできます。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング活動により商談化の可能性が高いと判定された見込み顧客を指します。Account EngagementとSalesforceを連携させることで、MQL判定から営業への引き渡しまでをスムーズに行えます。
連携のメリットは、データの一元管理によりマーケティングと営業の活動が可視化されること、リードの温度感を営業が把握してタイミングよくアプローチできること、どのマーケティング施策が商談・受注につながったかを追跡できることなどが挙げられます。
Account Engagement活用で成果を出すための設計ポイント
成果を出すためには、機能を使うだけでなく、自社のビジネスプロセスに合わせた設計が必要です。Engagement Studioは、Account Engagementのナーチャリング自動化機能で、条件分岐やタイミングを設定してカスタマージャーニーを構築できます。
実際の成果事例として、コニカミノルタジャパンはPardotとSalesforce連携により案件創出数3倍を達成したと報告されています(企業公表値であり、第三者検証はされていません。年度不明のため最新性に注意が必要です)。
また、三菱電機FAシステム事業本部は行動トラッキングとスコアリングの活用により取引量が約2倍に向上したと報告されています。ただし、これらの数値はすべての企業が同程度の効果を得られることを保証するものではありません。
スコアリング・グレーディングの設計
スコアリングとグレーディングは、どちらか一方だけでなく組み合わせて活用することが効果的です。スコアリング(行動による関心度評価)とグレーディング(属性によるフィット度評価)の両面からリードを評価することで、営業に渡すべき優先度を正確に判断できます。
「スコアリング設定をデフォルトのまま運用する」という考え方は誤りです。自社のビジネスプロセス、商材特性、ターゲット顧客に合わせて最適化することが必要です。たとえば、価格ページの閲覧は購買意欲が高いと判断してスコアを高めに設定する、特定の業界・企業規模はグレードを高く設定するなど、自社の商談化パターンを分析した上で設計します。
デフォルト設定のまま運用すると形骸化する理由
機能紹介やデフォルト設定のままで運用を開始し、営業との連携ルールを定めないまま形骸化させてしまう失敗パターンは多くの企業で見られます。この考え方では成果は出ません。
「導入すれば自動的に成果が出る」というのはよくある誤解です。Account Engagementは強力なツールですが、運用設計と営業連携がなければ宝の持ち腐れになります。また、「マーケティング部門だけで完結しようとする」のも失敗の要因です。営業部門との連携設計が不可欠です。
形骸化する典型的なパターンとして、スコアリング基準を設定したが見直しをしていない、MQL判定基準が営業と合意されていない、リードを渡しても営業が活用していない、施策の効果測定をしていないといったケースが挙げられます。
営業部門との連携ルール設計
MQL判定基準を営業部門と事前に合意し、引き渡しルールを明確化することが重要です。どのような条件を満たしたら営業に渡すのか、渡した後は何日以内にフォローするのか、フォロー結果はどのようにフィードバックするのかを明文化します。
マーケティング部門と営業部門が定期的にミーティングを行い、MQL基準の妥当性を検証することも必要です。「マーケから来るリードの質が低い」「営業がリードをフォローしてくれない」という相互の不満は、連携ルールの不備から生じることが多いです。
Account Engagement活用度診断チェックリスト
自社のAccount Engagement活用状況を診断し、改善の方向性を掴むためのチェックリストを用意しました。活用事例として、淵本鋼機はAccount Engagement導入により売上高が2017年5月期30億円から2019年5月期41億円へ37%増加したと報告されています(企業公表値であり、第三者検証はされていません。2017-2019年の事例で、現在のAccount Engagementとは機能差がある可能性があります)。
また、ある不動産会社(全国18拠点)ではAccount Engagement活用によりメール開封率42%、クリック率32%を達成したという事例もあります。ただし、成果は企業の活用状況により異なるため、これらの数値はあくまで参考値です。
以下のチェックリストで自社の活用状況を確認してください。
【チェックリスト】Account Engagement活用度診断チェックリスト
- 導入目的(リード育成/商談化率向上など)を明文化している
- スコアリング基準を自社のビジネスプロセスに合わせて設定している
- グレーディング基準をターゲット顧客像に合わせて設定している
- スコアリング・グレーディング基準を定期的に見直している
- MQL判定基準を営業部門と合意している
- 営業への引き渡しルール(タイミング・方法)を明確化している
- 営業がリードをフォローした結果をマーケにフィードバックしている
- Engagement Studioでナーチャリングシナリオを構築している
- シナリオの分岐条件を自社の顧客行動パターンに合わせて設計している
- メールの開封率・クリック率を定期的に分析している
- どの施策が商談・受注につながったかを追跡している
- マーケティングROIを測定している
- 営業部門と定期的にMQL基準の妥当性を検証している
- 未フォローリードのアラート・リマインドを設定している
- Salesforceとのデータ連携が正常に動作しているか確認している
- 担当者のスキルアップ・トレーニングを実施している
まとめ|Account Engagementは活用設計で成果が決まる
本記事では、Account Engagementの基本概念から、成果を出すための活用設計のポイントを解説しました。
要点を整理します。
- Account Engagementとは: SalesforceのBtoB特化型MAツールで、スコアリング・グレーディング・ナーチャリング機能を持つ
- Salesforce連携のメリット: マーケと営業の情報断絶を防ぎ、リードの引き渡しをスムーズに行える
- 成果を出す設計: スコアリング・グレーディング基準を自社に合わせて最適化する
- 失敗パターン: デフォルト設定のまま運用し、営業連携ルールを定めないと形骸化する
- 改善のポイント: MQL判定基準を営業と合意し、定期的に見直す
繰り返しになりますが、Account Engagementは機能を導入するだけでなく、スコアリング設計・Salesforce連携・営業引き渡しルールを一体で整備することで初めて成果につながります。
本記事のチェックリストを活用して自社の活用状況を診断し、改善の方向性を見つけてください。
