YouTubeコンテンツの作り方:企画・制作・運用をB2B企業向けに解説

著者: Decisense編集部公開日: 2025/12/3

なぜB2B企業にYouTubeコンテンツが重要なのか

B2Bデジタルプロダクト企業のマーケティング担当者にとって、「製品の価値を言葉だけで伝えるのは難しい」「技術的な内容を分かりやすく説明したい」「リード獲得の新しいチャネルが欲しい」といった課題は尽きません。

従来のテキストや静止画だけの情報発信では、製品理解を深めることが難しくなっています。そこで注目されているのが、視覚的に訴求力が高く、複雑な内容も分かりやすく伝えられる「YouTube動画コンテンツ」です。

この記事では、B2B企業に適したYouTubeコンテンツの種類から企画立案、制作手法、チャンネル運営、効果測定まで体系的に解説します。

この記事のポイント:

  • YouTubeは日本国内で月間7,370万人が利用、幅広い層にリーチ可能
  • 動画の記憶率はテキストの2倍、製品理解を促進する効果が高い
  • B2Bでは製品デモ・導入事例・ウェビナー・技術解説が有効
  • 内製なら機材費10〜30万円+人件費、外注なら40〜100万円が目安
  • 週1回以上の定期投稿とYouTube SEO対策で長期的な効果を狙う

YouTubeコンテンツの基礎知識

(1) YouTubeコンテンツとは何か(定義と特徴)

YouTubeコンテンツとは、YouTube上に公開される動画のことです。Googleが運営する世界最大の動画共有プラットフォームで、月間アクティブユーザー数は20億人超、日本国内だけで7,370万人(2024年5月時点)が利用しています。

B2B企業にとっての主な特徴:

  • 製品デモや技術解説を視覚的に分かりやすく伝えられる
  • 動画の記憶率はテキストの2倍(視聴者に強く印象付けられる)
  • SEO効果によりGoogle検索にも表示される
  • 自社サイトへの埋め込みでコンテンツ資産として長期活用可能
  • 説明欄のリンクからリード獲得への導線を設計できる

(2) 3種類のコンテンツタイプ(ヘルプ・ハブ・ヒーロー)

YouTubeチャンネルを効果的に運営するため、コンテンツを3つのタイプに分類して制作します。

1. ヘルプコンテンツ(ハウツー系)

  • 視聴者の疑問を解決する動画
  • B2B例: 製品の使い方解説、技術FAQ、トラブルシューティング
  • SEO効果が高く、長期的に検索流入を獲得

2. ハブコンテンツ(定期更新)

  • 定期的に最新情報を伝える動画(週1回程度の投稿推奨)
  • B2B例: 業界ニュース解説、製品アップデート情報、ウェビナー録画
  • チャンネル登録者の継続的な訪問を促す

3. ヒーローコンテンツ(プロモーション)

  • 話題性の高い大型企画動画(バイラル化を狙う)
  • B2B例: 新製品発表会、大規模イベント、著名人インタビュー
  • 認知拡大・ブランディング効果が高い

(3) 企業活用の主な目的(商品販促・ブランディング・採用活動)

B2B企業がYouTubeを活用する主な目的は以下の通りです。

1. 商品・サービスの販促

  • 製品デモで機能を視覚的に訴求
  • 導入事例で効果を実証
  • リード獲得への導線設計

2. ブランド認知拡大・信頼構築

  • 技術解説で専門性をアピール
  • 企業文化を動画で発信
  • 顧客との接点を増やす

3. 採用活動

  • 社員インタビュー・職場紹介
  • 企業理念・ビジョンの発信
  • 求職者へのリーチ拡大

B2B向け動画コンテンツの種類

B2B企業に適した動画コンテンツの種類と、それぞれの活用方法をご紹介します。

(1) 製品紹介・デモンストレーション動画

製品の機能や使い方を視覚的に紹介する動画です。

制作のポイント:

  • 3〜5分程度の短尺に収める(長すぎると離脱率が上がる)
  • 画面操作を録画し、ナレーションで解説
  • 字幕を入れて音なしでも理解できるようにする
  • 冒頭5秒で「何を解決する製品か」を明示

効果:

  • テキストや静止画よりも製品理解が深まる
  • 購買意思決定を支援(「使っているイメージ」が湧く)

(2) 導入事例・お客様の声

実際に製品を導入した企業のインタビュー動画です。

制作のポイント:

  • 課題→導入→効果の流れで構成
  • 具体的な数値(ROI・工数削減率等)を提示
  • 顧客の言葉で語ってもらう(信頼性向上)

効果:

  • 第三者の証言により信頼性が高まる
  • 同じ課題を抱える見込み客に訴求

(3) ウェビナー・セミナーアーカイブ

ウェビナーやセミナーの録画をYouTubeに公開する動画です。

制作のポイント:

  • チャプター分けで必要な部分だけ視聴できるようにする
  • スライド資料を画面共有で表示
  • Q&Aセッションも含めて公開(視聴者の疑問を先回りして解決)

効果:

  • 既存コンテンツを活用でき、制作コストが低い
  • リード獲得(説明欄で資料ダウンロードを案内)

(4) ハウツー・技術解説動画

製品の活用方法や業界の技術トレンドを解説する動画です。

制作のポイント:

  • 1テーマ1動画で簡潔に(シリーズ化も効果的)
  • 図解・画面キャプチャを活用
  • SEOキーワードを意識したタイトル設定

効果:

  • SEO効果により長期的に検索流入を獲得
  • 専門性のアピール・ソートリーダーシップの確立

(5) 企業文化・採用活動動画

社員インタビューや職場紹介など、企業の雰囲気を伝える動画です。

制作のポイント:

  • リアルな社員の声を収録(台本感を出さない)
  • 職場の様子を自然に撮影
  • 企業理念・ビジョンを分かりやすく表現

効果:

  • 採用候補者へのリーチ拡大
  • 企業ブランディング・親近感の醸成

制作の基本(企画・撮影・編集)

(1) 企画立案(目的・ターゲット・メッセージの明確化)

動画制作を開始する前に、明確な企画を立てましょう。

企画で決めるべき項目:

  1. 目的: リード獲得、製品理解促進、ブランド認知等
  2. ターゲット: 企業規模・業種・役職・課題
  3. メッセージ: 視聴者に何を伝えたいか(1動画1メッセージが基本)
  4. 構成: 導入→本編→まとめの流れ
  5. : 3〜5分(製品デモ)、10〜15分(ウェビナー)、30〜60分(セミナー全編)

(2) 台本作成(類似動画から要点抽出)

効率的に台本を作成するため、類似動画を参考にします。

台本作成の手順:

  1. YouTubeで類似動画を検索(競合・類似製品の動画)
  2. 構成・話の流れ・使われている図解を分析
  3. 自社製品に置き換えて台本を作成
  4. 冒頭5秒で視聴者を引きつける工夫(問題提起・結論の予告等)

(3) 撮影・編集の体制(内製・外注の判断)

リソースと予算に応じて、内製・外注を判断します。

内製のメリット・デメリット:

  • メリット: コスト削減、柔軟な修正、社内ノウハウ蓄積
  • デメリット: 機材・編集スキルが必要、制作時間がかかる
  • 必要な機材: カメラ(またはスマートフォン)、照明、マイク(合計10〜30万円)
  • 編集ソフト: Adobe Premiere Pro、Final Cut Pro、DaVinci Resolve(無料版あり)

外注のメリット・デメリット:

  • メリット: 高品質、短期間で完成、専門的な演出
  • デメリット: コストが高い、修正に追加費用
  • 料金目安: 簡易動画40〜100万円、本格製品デモ100〜300万円

(4) 制作コストと期間の目安

制作コストと期間は動画の種類・長さ・品質により大きく異なります。

コスト目安:

制作方法 初期費用 1本あたりコスト 期間
内製(スマホ撮影) ほぼ0円 人件費のみ 1〜2週間
内製(機材購入) 10〜30万円 人件費のみ 1〜2週間
外注(簡易) 0円 40〜100万円 2〜4週間
外注(本格) 0円 100〜300万円 4〜8週間

※2024年時点の一般的な目安です。詳細は制作会社にご確認ください。

(5) YouTube SEO(タイトル・説明文・タグ・サムネイル最適化)

YouTubeで検索上位に表示されるため、SEO対策が重要です。

主要な最適化項目:

1. タイトル(50〜60文字)

  • 主要キーワードを前方に配置
  • 内容が明確に分かるタイトル
  • 例: 「MAツールの選び方|B2B企業向け比較ポイント5選」

2. 説明文(5,000文字まで)

  • 動画の詳細説明(最初の3行が検索結果に表示される)
  • 関連リンク(自社サイト・資料ダウンロードページ等)
  • タイムスタンプ(チャプター分け)

3. タグ設定

  • 主要キーワード・関連キーワードを5〜10個設定
  • 例: MAツール、マーケティングオートメーション、B2B、リード獲得

4. サムネイル

  • 魅力的な静止画像(クリック率に大きく影響)
  • テキストを重ねて内容を明示
  • 1280×720ピクセル、2MB以下

5. 字幕追加

  • 自動生成字幕を確認・修正
  • アクセシビリティ向上・SEO効果

チャンネル運営と効果測定

(1) 投稿頻度と継続のポイント(週1回以上推奨)

YouTubeアルゴリズムは、定期的に投稿しているチャンネルを優遇する傾向があります。

推奨投稿頻度:

  • 理想: 週1回以上
  • B2B現実的: 月2〜4本
  • 初期: 既存のウェビナー・セミナー録画をアーカイブ化して本数確保

継続のポイント:

  • 社内で制作体制を確立(担当者・予算・承認フロー)
  • コンテンツカレンダーを作成(3ヶ月先まで企画)
  • 負担を減らす工夫(スマホ撮影、簡易編集、ウェビナー活用等)

(2) 効果測定指標(再生回数・視聴維持率・登録者数・CV数)

動画の効果を適切に測定するため、以下の指標を追跡します。

主要KPI:

1. 再生回数

  • どれだけの視聴者にリーチしたか
  • B2Bでは数百〜数千回でも十分効果がある場合がある

2. 視聴維持率(平均視聴時間÷動画の長さ)

  • エンゲージメントの重要指標
  • 40%以上が目安(それ以下なら内容・構成を見直し)

3. 登録者数

  • チャンネルのファン獲得状況
  • B2Bでは数百〜数千人規模でも価値がある

4. CV数(コンバージョン数)

  • 説明欄のリンククリック数
  • 資料ダウンロード数・問い合わせ数

測定ツール:

  • YouTube Analytics: 再生回数・視聴維持率・登録者数等
  • Google Analytics: 自社サイトへの流入・CV測定
  • MAツール: リード管理・スコアリング

(3) 自社サイトへの埋め込み活用

YouTube動画を自社サイトに埋め込むことで、コンテンツを多面的に活用できます。

埋め込みのメリット:

  • サイトのコンテンツを充実させる
  • 製品ページに動画デモを配置して理解促進
  • ブログ記事に解説動画を埋め込んでSEO効果向上

(4) リード獲得への導線設計

YouTube動画からリード獲得に繋げるため、明確な導線を設計します。

リード獲得の導線例:

  1. 動画で課題と解決策を提示
  2. 説明欄に「詳細資料ダウンロード」リンクを配置
  3. ランディングページでメールアドレスと引き換えに資料提供
  4. MAツールでナーチャリング

CTA(Call To Action)の配置:

  • 動画の最後にCTAを口頭で伝える
  • 説明欄の冒頭にリンクを配置
  • カード機能・終了画面で関連動画・サイトへ誘導

まとめ:YouTubeコンテンツを成功させるために

YouTubeコンテンツは、B2B企業にとって製品理解促進・リード獲得・ブランディングに有効な施策です。日本国内で月間7,370万人が利用し、動画の記憶率はテキストの2倍という高い訴求力があります。

B2B企業では、製品デモ・導入事例・ウェビナー・技術解説など、専門性を活かしたコンテンツが効果的です。内製なら機材費10〜30万円+人件費、外注なら40〜100万円が制作コストの目安です。

成功のポイント:

  • 目的・ターゲット・メッセージを明確にして企画立案する
  • ヘルプ・ハブ・ヒーローの3種類のコンテンツをバランス良く制作
  • YouTube SEO対策(タイトル・説明文・タグ・サムネイル)を実施
  • 週1回以上(B2Bでは月2〜4本)の定期投稿を継続
  • 視聴維持率・CV数などのKPIを設定し、継続的に改善

次のアクション:

  • 自社の目的に合った動画コンテンツの種類を選定する
  • 内製・外注を判断し、制作体制を確立する
  • 既存のウェビナー・セミナー録画を活用して初期コンテンツを確保
  • YouTube SEO対策を実施してリーチを拡大する
  • 3〜6ヶ月単位で効果測定とPDCA改善を行う

B2Bマーケティングの新しい武器として、YouTubeコンテンツを戦略的に活用しましょう。

よくある質問

Q1B2BとB2Cで動画コンテンツの違いは?

A1B2B企業では製品デモ・技術解説・導入事例・ウェビナーなど専門性を重視したコンテンツが有効です。視聴者は企業の意思決定者や実務担当者です。一方、B2C企業ではエンタメ・ライフスタイル提案・商品レビューが中心で、一般消費者が視聴者となります。

Q2制作コストはどれくらいかかりますか?

A2外注の場合、簡易動画で40〜100万円、本格的な製品デモで100〜300万円が一般的な目安です。内製の場合は機材費(カメラ・照明・マイクで10〜30万円)+人件費が必要です。スマートフォン撮影+無料編集ソフトを使えば、初期費用をほぼゼロに抑えることも可能です。

Q3公開頻度はどれくらいが理想ですか?

A3週1回以上の定期投稿が理想的ですが、B2B企業では月2〜4本でも継続することが重要です。初期は既存のウェビナー・セミナー録画をアーカイブ化することで、低コストで本数を確保できます。YouTubeアルゴリズムは定期投稿を優遇するため、継続性を重視しましょう。

Q4YouTube SEO対策はどうすればいいですか?

A4タイトルにキーワードを含めて50〜60文字で設定し、説明文で詳細情報+関連リンクを記載します(5,000文字まで)。タグ設定、魅力的なサムネイル作成、字幕追加も効果的です。視聴維持率向上のため、冒頭3〜5秒で動画の内容を明示することも重要です。

Q5効果測定はどのように行いますか?

A5YouTube Analyticsで再生回数・視聴維持率・登録者数を確認します。Google Analyticsで自社サイトへの流入を測定し、リード獲得が目的なら説明欄のCTAリンクのクリック数とCV数を追跡します。3〜6ヶ月単位でROIを評価し、継続的に改善することが重要です。

D

Decisense編集部

Decisenseは、B2Bデジタルプロダクト企業向けに、マーケティング・営業・カスタマーサクセス・開発・経営に関する実践的な情報を提供するメディアです。SaaS、AIプロダクト、ITサービス企業の実務担当者に役立つ情報を分かりやすく解説しています。