ベンチャー企業の特徴と成長戦略|スタートアップとの違いも解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/22

ベンチャー企業への転職や起業を検討しているあなたへ

「大企業の安定した環境から飛び出して、ベンチャー企業で新しいチャレンジをしたい」「起業を考えているけど、成功するベンチャーの特徴を知りたい」――そんな思いを抱くビジネスパーソンが増えています。

しかし、「ベンチャー企業」と「スタートアップ」の違いは何か、どのような成長戦略があるのか、資金調達はどうすればいいのか、など疑問は尽きません。ベンチャー企業への理解が不十分なまま転職や起業を決断すると、期待と現実のギャップに苦しむ可能性もあります。

この記事では、ベンチャー企業の定義、スタートアップとの違い、成功事例、資金調達方法、そして働く・起業する前に知っておくべきポイントまで、実務に役立つ情報を網羅的に解説します。

この記事のポイント:

  • ベンチャー企業は「成長志向」と「イノベーション」を特徴とし、明確な定義はないが和製英語として広く使われる
  • スタートアップとの違いは、ビジネスモデル(既存ベースか革新的か)、成長速度(着実か急成長か)、エグジット戦略(長期経営かイグジット重視か)にある
  • 成功事例としてメルカリ、Preferred Networks、ユーグレナ、社内ベンチャーではスープストックトーキョー、モノタロウ、無印良品などがある
  • 資金調達方法は主に3つ:出資(VC・エンジェル投資家・CVC)、融資(日本政策金融公庫・信用保証協会)、その他(クラウドファンディング・補助金)
  • 2024年はAI・モビリティ・宇宙分野が注目され、SmartHR、ティアフォー、Sakana AIなどが表彰・大型調達を実施

1. ベンチャー企業への注目が高まる背景

ベンチャー企業は、イノベーションと新規事業創出の担い手として、近年ますます注目を集めています。

(1) イノベーションと新規事業創出の重要性

既存の大企業が成熟市場で苦戦する中、新しい技術やビジネスモデルで市場を切り開くベンチャー企業の役割が重要視されています。AI、モビリティ、宇宙、半導体、ESGなど成長分野では、ベンチャー企業が技術革新をリードするケースが増えています。

また、大企業も社内ベンチャー制度を導入し、新規事業創出に力を入れる動きが活発化しています。スープストックトーキョー(三菱商事)、モノタロウ(住友商事)、無印良品(西友)など、社内ベンチャーから生まれた成功事例も少なくありません。

(2) 2024年「すごいベンチャー100」「日本スタートアップ大賞」の注目

2024年、東洋経済編集部は「すごいベンチャー100」を発表し、資金調達額の大きさや事業・技術の独自性などを勘案して有望なベンチャー100社を選定しました。AI、モビリティ、航空・宇宙、半導体、フード・農業、ESG・インパクトなど21のカテゴリーに分類され、幅広い分野で注目企業が紹介されています。

また、経済産業省は「日本スタートアップ大賞2024」で全10社のスタートアップを表彰しました。内閣総理大臣賞にはSmartHR(クラウド人事労務ソフト)、経済産業大臣賞にはティアフォー(自動運転用オープンソースソフトウェア)が選出され、日本を代表するスタートアップとして評価されています。

(3) AI・モビリティ・宇宙など成長分野での活躍

2024年は特にAI分野でベンチャー企業の躍進が目立ちました。Sakana AIは元Google著名AI研究者らが東京を拠点に設立し、2024年にシード段階で約45億円の大型資金調達を実施し、世界的注目を集めています。

宇宙分野でもAstroscaleが東証グロース市場に上場し、宇宙の持続可能性という新たな市場を創出しています。モビリティ分野ではティアフォーが自動運転技術で高い評価を受けるなど、成長分野でのベンチャー企業の活躍が顕著です。

2. ベンチャー企業とは?定義と特徴

ベンチャー企業という言葉は日常的に使われますが、実は明確な定義があるわけではありません。

(1) ベンチャー企業の定義(成長志向とイノベーション)

ベンチャー企業は一般的に「成長志向」と「イノベーション」を特徴とする企業を指します。既存の枠組みにとらわれず、新しい技術やビジネスモデルを開発し、急速な成長を追求する姿勢が特徴と言えます。

(2) 明確な定義はない(「設立○年以内」といった基準なし)

「ベンチャー企業」には「設立○年以内」「従業員○人以下」といった厳密な定義はありません。業界や文脈によって、指す範囲が異なる場合があります。

このため、成長志向や革新性を持つ企業であれば、設立年数や企業規模に関わらず「ベンチャー企業」と呼ばれることがあります。メガベンチャーと呼ばれる企業(従業員数100-1,000人以上、上場済み、売上高250億円以上が目安)も、ベンチャー企業から成長した大企業として分類されます。

(3) 3つの特徴:成長段階にある企業、革新的な事業、VC支援を受けている企業

ベンチャー企業の特徴は、具体的には以下の3つに整理できます:

1. 成長段階にある企業: 売上・従業員数・事業規模が急速に拡大している企業。設立初期から成長期にかけてのフェーズにある企業が該当します。

2. 革新的な事業を行う企業: 新しい技術、サービス、ビジネスモデルで市場に新たな価値を提供する企業。AI、バイオテクノロジー、宇宙開発など、従来にない分野で挑戦している企業が含まれます。

3. ベンチャーキャピタル(VC)から資金支援を受けている企業: VCやエンジェル投資家から出資を受け、成長資金を確保している企業。VCの支援を受けることで、急速な事業拡大が可能になります。

(4) 和製英語であり英語圏ではあまり使われない

「ベンチャー企業」は和製英語であり、英語圏では「スタートアップ」や「スモールビジネス」が一般的に使われます。日本国内では「ベンチャー企業」という用語が定着していますが、国際的なコミュニケーションでは「スタートアップ」を使う方が適切です。

3. ベンチャー企業とスタートアップの違い

ベンチャー企業とスタートアップは混同されがちですが、ビジネスモデル、成長速度、エグジット戦略において違いがあります。

(1) ビジネスモデル:既存ベース vs 革新的モデル

ベンチャー企業: 既存のビジネスモデルをベースに、収益性を高める工夫や市場拡大を狙います。例えば、既存の飲食店ビジネスに新しいコンセプトを加える、既存のECビジネスに独自の物流網を構築する、などが該当します。

スタートアップ: 今までにないイノベーションを起こし、新しいビジネスモデルを構築します。フリマアプリ(メルカリ)、シェアリングエコノミー(Airbnb)、サブスクリプション型SaaS(SmartHR)など、既存の市場を破壊する「ディスラプティブ」な事業が特徴です。

(2) 成長速度:着実な成長 vs 急成長

ベンチャー企業: 早い段階での黒字化と着実な成長を重視します。収益性を確保しながら、持続的に事業規模を拡大していくアプローチが一般的です。

スタートアップ: 短期間で急激な成長を狙います。赤字が継続する期間(「死の谷(Valley of Death)」と呼ばれる)があっても、市場シェア拡大やプロダクト開発を優先し、成長後のイグジットで投資回収を目指します。

(3) エグジット戦略:長期経営 vs イグジット重視

ベンチャー企業: 長期的な企業経営を前提とし、創業者が経営を続けることが多い傾向があります。上場やM&Aを目指す場合もありますが、必須ではありません。

スタートアップ: イグジット(株式公開(IPO)や企業売却(M&A))を明確な目標として設定します。投資家がリターンを得る出口戦略が前提となっており、創業者が経営から退く場合もあります。

(4) 収益性:早期黒字化 vs 死の谷(Valley of Death)

ベンチャー企業: 早期に黒字化を目指し、収益性を重視します。資金調達に依存せず、自己資金や融資で成長するケースも多いです。

スタートアップ: 新しいプロダクトやサービスができるまで赤字が継続することが多く、設立から数年は「死の谷(Valley of Death)」と呼ばれる困難な期間が存在します。この期間を乗り越えるために、VCやエンジェル投資家からの出資が不可欠です。

4. ベンチャー企業の成功事例(独立系・社内ベンチャー)

実際の成功事例から、ベンチャー企業の成長パターンを学びましょう。

(1) メルカリ(2013年創業、フリマアプリで成功)

メルカリは2013年2月に創業されたフリマアプリで、個人間の売買を簡単にするプラットフォームを提供しています。技術活用とUI設計の改善により、ユーザー体験を向上させ、短期間で日本最大級のフリマアプリに成長しました。

成功のポイント:

  • スマートフォンに最適化されたUI/UX
  • 出品・購入の手軽さを徹底追求
  • C2C(個人間取引)市場の創出

(2) Preferred Networks(AI開発、時価総額3,539億円)

Preferred Networksは機械学習・深層学習に特化したAI開発ベンチャーで、2023年1月時点で時価総額3,539億円とされています。自動車の自動運転、製造業の生産性向上、ロボティクスなど、幅広い分野でAI技術を提供しています。

成功のポイント:

  • 高度な技術力と研究開発力
  • トヨタ自動車など大手企業との提携
  • 実用化を重視した事業展開

(3) ユーグレナ(2005年創業、ミドリムシ活用)

ユーグレナは2005年に創業され、ミドリムシ(学名:ユーグレナ)の栄養価に着目し、健康食品やバイオ燃料事業を展開しています。従来にない素材を活用した独自のビジネスモデルで、環境・健康分野に新たな価値を提供しています。

成功のポイント:

  • 独自の研究開発による差別化
  • サステナビリティへの貢献(バイオ燃料開発)
  • 健康食品市場での認知拡大

(4) Sakana AI(2024年シードで約45億円調達)

Sakana AIは元Google著名AI研究者らが東京を拠点に設立したAIベンチャーで、2024年にシード段階で約45億円の大型資金調達を実施しました。AI研究の最先端技術を活用し、世界的注目を集めています。

成功のポイント:

  • 世界トップレベルの研究者による創業
  • シード段階での大型資金調達
  • グローバル市場を見据えた事業展開

(5) 社内ベンチャー成功例:スープストックトーキョー(三菱商事)、モノタロウ(住友商事)、無印良品(西友)

社内ベンチャーは、大企業のリソースを活用しながら新規事業に挑戦できる仕組みです。

スープストックトーキョー(三菱商事): 三菱商事初の社内ベンチャーとして誕生し、ペルソナマーケティング手法を活用して、ターゲット顧客を明確にした店舗展開で成功しました。

モノタロウ(住友商事): 住友商事の社内ベンチャーとして鋼材EC事業からスタートし、間接材ECへピボット(方向転換)して成功。現在は工場・建設現場向けのECプラットフォームとして成長しています。

無印良品(西友): プライベートブランドとして西友の社内ベンチャーで誕生し、シンプルで高品質な商品コンセプトで新たな市場を開拓しました。現在は独立企業として世界展開しています。

5. ベンチャー企業の資金調達方法と成長戦略

ベンチャー企業の成長には、適切な資金調達が不可欠です。

(1) 出資(VC、エンジェル投資家、CVC):返済不要・利息なし

出資は、投資家がベンチャー企業に資金を提供し、株式を取得する方法です。原則として返済不要で利息もかからないため、資金繰りの負担が少ない点が特徴です。

VC(ベンチャーキャピタル): ベンチャー企業に対して出資を行い、成長後のイグジット(株式公開や売却)でリターンを得る投資会社です。資金提供だけでなく、経営支援やネットワーク提供も行います。

エンジェル投資家: 起業家に対して個人で出資を行う投資家で、通常、創業初期段階での支援が多い傾向があります。創業者の経験や人脈を活用したメンタリングも期待できます。

CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル): 事業会社が自社の戦略的目的でベンチャー企業に投資を行う活動です。単なる財務リターンだけでなく、事業シナジーや技術獲得を目的とします。

(2) 融資(日本政策金融公庫、信用保証協会):返済義務・利子あり

融資は、金融機関から資金を借り入れる方法です。返済義務があり利子が発生しますが、株式を手放す必要がないため、経営の自由度を保てる点がメリットです。

日本政策金融公庫: 政府系金融機関で、中小企業・ベンチャー企業向けの融資制度を提供しています。民間金融機関よりも低利で融資を受けられる場合があります。

信用保証協会: 中小企業が金融機関から融資を受ける際に、保証人となる公的機関です。信用力が低いベンチャー企業でも融資を受けやすくなります。

(3) その他(クラウドファンディング、補助金・助成金)

クラウドファンディング: インターネットを通じて不特定多数の人から資金を集める方法です。製品・サービスのプロトタイプを提示し、支援者に先行販売や特典を提供する「購入型」や、出資型のクラウドファンディングがあります。

補助金・助成金: 国や自治体が特定の事業や研究開発に対して支援金を提供する制度です。返済不要ですが、申請・審査プロセスが厳格で、採択率が低い場合もあります。

(4) 日本のベンチャー投資額は米国の100分の1程度

日本のベンチャー投資額は、米国の100分の1程度とされており、資金調達環境には大きな差があります。事業立ち上げ段階のベンチャー企業は売上や利益が十分でなく実績がないため、日本では特に資金調達が困難な傾向があります。

このため、政府系金融機関の活用、補助金・助成金の申請、クラウドファンディングなど、複数の資金調達手段を組み合わせることが推奨されます。

(5) 資金調達の困難さと対策

ベンチャー企業が資金調達で直面する主な課題は以下の通りです:

課題:

  • 実績がないため信用力が低い
  • 成長が不確実でリスクが高い
  • 投資家へのアピールが不十分

対策:

  • ビジネスプランを詳細に作成し、成長見込みを明確にする
  • プロトタイプやMVP(Minimum Viable Product)を作成し、実現可能性を示す
  • ネットワークを活用し、投資家との接点を増やす
  • ピッチイベントやアクセラレータープログラムに参加する

6. まとめ:ベンチャー企業で働く・起業する前に知っておくべきこと

ベンチャー企業は、成長志向とイノベーションを特徴とし、新しい価値を生み出す企業です。スタートアップとの違い、成功事例、資金調達方法を理解することで、転職や起業の判断材料を得ることができます。

働く・起業する前に知っておくべきポイント:

  • メリット: 裁量権が大きい、成長機会が豊富、イノベーションに携われる
  • デメリット: 給与水準が低い場合がある、福利厚生が不十分、倒産リスクがある
  • 企業選びの基準: 成長ステージ、ビジネスモデル、資金状況、経営陣の経験を確認
  • スタートアップとの違いを理解: 自分が求める働き方・成長速度・リスク許容度に合わせて選択
  • 資金調達の重要性: 成長には適切な資金調達が不可欠、複数の手段を組み合わせる

次のアクション:

  • 興味のあるベンチャー企業の公式サイト・最新報道を確認
  • 成長ステージ(シード・アーリー・ミドル・レイター)を把握
  • 資金調達状況や事業計画をチェック
  • 転職エージェントやOB/OG訪問で実態を確認
  • 起業を検討する場合、ビジネスプランと資金調達計画を作成

ベンチャー企業の成長ステージ、資金状況、ビジネスモデルは企業ごとに大きく異なるため、一般論だけでなく個別企業の詳細情報を公式サイトや最新の報道で確認することが重要です。自分に合った環境を見極め、新しいチャレンジに踏み出しましょう。

よくある質問

Q1ベンチャー企業とスタートアップの違いは?

A1ベンチャーは既存ビジネスをベースに着実な成長を目指し長期経営が前提です。スタートアップは革新的ビジネスモデルで急成長とイグジット(IPOやM&A)を狙います。ビジネスモデル、成長速度、エグジット戦略に違いがあります。

Q2ベンチャー企業に明確な定義はある?

A2「設立○年以内」といった厳密な定義はありません。一般的には「成長志向」と「イノベーション」を特徴とし、成長段階にある企業、革新的な事業を行う企業、VC支援を受けている企業を広く指す和製英語です。

Q3どのような資金調達方法がある?

A3主に3つあります。出資(VC・エンジェル投資家・CVCから返済不要で調達)、融資(日本政策金融公庫・信用保証協会から返済義務ありで調達)、その他(クラウドファンディング・補助金・助成金)です。複数の手段を組み合わせるのが一般的です。

Q4日本のベンチャー投資額は海外と比べて?

A4日本のベンチャー投資額は米国の100分の1程度と少ないです。立ち上げ段階では売上や利益が十分でなく実績がないため、日本では特に資金調達が困難な傾向があります。

Q52024年の注目ベンチャーは?

A5内閣総理大臣賞にSmartHR(クラウド人事労務)、経済産業大臣賞にティアフォー(自動運転)が選出されました。Sakana AI(AI研究、シードで約45億円調達)、Astroscale(宇宙ゴミ除去)など、AI・モビリティ・宇宙分野が注目されています。

B

B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

「B2Bデジタルプロダクト実践ガイド」は、デシセンス株式会社が運営する情報メディアです。B2Bデジタルプロダクト企業のマーケティング・営業・カスタマーサクセス・開発・経営に関する実践的な情報を、SaaS、AIプロダクト、ITサービス企業の実務担当者に向けて分かりやすく解説しています。