マーケティング担当者の新たな悩み:ユーザー生成コンテンツをどう活用する?
BtoB企業のマーケティング担当者の多くが、コンテンツマーケティング施策の多様化を検討しています。特に、「ユーザー生成コンテンツ(UGC)」という言葉を耳にする機会が増えましたが、「BtoB領域でどう活用すればいいのか」「法的リスクはないのか」「効果をどう測定するのか」といった疑問を抱えている方も少なくありません。
この記事では、UGCの基礎知識から具体的な活用手法、効果測定、法的リスクへの対策まで、BtoB企業の実務担当者が知っておくべき情報を包括的に解説します。
この記事のポイント:
- UGCは消費者の92%が企業広告よりも信頼するコンテンツ形態
- BtoB領域ではカスタマーレビュー、導入事例、ユーザーコミュニティが主な活用方法
- 2023年10月施行のステマ規制、著作権・肖像権への対応が必須
- UGCは3ヶ月でCVRが30%低下するため、継続的な効果測定と改善サイクルが重要
- Cookie規制強化により2024年以降UGCの重要性がさらに増している
1. なぜUGC(ユーザー生成コンテンツ)が注目されるのか
UGCがマーケティング施策として注目される背景には、消費者の情報収集行動の変化と、企業広告に対する信頼度の低下があります。
(1) 消費者の情報収集行動の変化とSNSの普及
2023年時点で日本のSNS利用者数は105.8百万人に達しており、10-40代の50%以上がSNSを商品検討時の情報源として利用しています。従来のテレビCMや企業ウェブサイトよりも、実際の利用者の声を重視する傾向が強まっています。
(2) 企業広告よりもUGCが信頼される理由
消費者の約92%が企業の広告よりも他のユーザーの口コミやレビューを信頼するというデータがあります(MarkeZine調査)。企業発信の情報は「売りたいバイアス」がかかっていると認識されやすい一方、UGCは実際の利用者によるリアルな体験談として受け止められ、客観性が高いと評価されます。
(3) Cookie規制強化とUGCの重要性
2024年以降、Cookie規制の強化により従来のターゲティング広告の効果が低下しています。このような環境下で、ユーザーが自発的に生成するコンテンツは、企業が追跡しなくても自然に拡散され、信頼性の高い情報源として機能するため、マーケティング戦略上の重要性が増しています。
2. UGCの基礎知識:定義・種類・企業広告との違い
UGCを効果的に活用するためには、まずその定義と種類を正しく理解する必要があります。
(1) UGC(User Generated Content)の定義
UGCとは、ユーザーや消費者が自発的に作成したコンテンツの総称です。2000年代中頃のWeb 2.0の流行と共に使われるようになった概念で、「生産消費者(プロシューマー)」により制作・提供される作品を指します。
企業が制作した広告やオウンドメディアのコンテンツとは異なり、ユーザー自身の意思で作成される点が最大の特徴です。
(2) UGCの主な種類(SNS投稿・レビュー・ブログ・動画)
UGCには以下のような種類があります:
SNS投稿:
- Twitter(X)、Instagram、Facebookなどでのユーザー投稿
- ハッシュタグを活用したキャンペーン投稿
レビュー・評価:
- ECサイトや比較サイトでの商品レビュー
- BtoB領域ではSaaS比較サイト(IT review、Boxilなど)のユーザーレビュー
ブログ・記事:
- 個人ブログでの体験談、使用感レポート
動画:
- YouTubeでの製品レビュー、使い方解説
- TikTokでの短尺動画
(3) CGM・ULSSASなど関連用語の整理
CGM(Consumer Generated Media): UGCとほぼ同義で、消費者が生成するメディア全般を指します。
ULSSAS: UGCを起点とした消費者行動フレームワークです。UGC(ユーザー生成コンテンツ)→ Like(いいね)→ Search1(SNS検索)→ Search2(Google検索)→ Action(購入)→ Spread(拡散)という流れで消費者が行動するモデルです。
(4) UGCが企業広告より効果的な理由
UGCが企業広告よりも効果的とされる理由は以下の通りです:
- 客観性: 企業の「売りたい」バイアスがかかっていない
- リアルさ: 実際の利用者の生の声として受け止められる
- 共感性: 同じ立場の消費者目線で書かれている
- 情報の具体性: 実際の使用感、メリット・デメリットが率直に語られる
3. UGCマーケティングの具体的手法と実践ステップ
UGCをマーケティングに活用するには、計画的なアプローチが必要です。
(1) ハッシュタグキャンペーンの設計と実施
ハッシュタグキャンペーンは、特定のハッシュタグを使った投稿を促す施策です。
設計のポイント:
- ユーザーが投稿したくなる明確なインセンティブ(プレゼント、リポスト、掲載など)
- 覚えやすく、独自性のあるハッシュタグ
- 投稿のハードルを下げる(写真1枚でOK、簡単なコメントでOKなど)
成功事例: Daniel Wellingtonは顧客の投稿を公式アカウントでリポストし、ゲーミフィケーション要素(投稿数によるランク付けなど)を追加することで、大量のUGC生成に成功しています。
(2) UGC活用ツールの選定と活用
UGCを効率的に収集・管理・効果測定するには、専用ツールの活用が推奨されます。
主なツール:
- Letro
- YOTPO
- EmbedSocial
これらのツールはCTR/CVRを分析するダッシュボード機能を提供しており、どのUGCが効果的かを可視化できます。
(3) UGC収集から公式サイト掲載までの流れ
ステップ1: UGC収集
- ハッシュタグ検索でSNS投稿を収集
- レビューサイトからのレビュー取得
ステップ2: 許諾取得
- 投稿者に連絡し、広告利用の許諾を得る(著作権・肖像権対策)
- 「広告」表示を明示する旨を伝える(ステマ規制対策)
ステップ3: 公式サイトへの掲載
- 商品ページ、LPへの掲載
- 「広告」ラベルの表示(ステマ規制対応)
ステップ4: 効果測定
- CTR、CVRの分析
- 改善サイクルの実施
(4) BtoB領域でのUGC活用(カスタマーレビュー・導入事例)
BtoB領域では、BtoC領域とは異なるUGC活用方法があります。
カスタマーレビュー:
- IT review、BoxilなどのSaaS比較サイトでのユーザーレビュー
- 公式サイトでの導入企業によるレビュー掲載
導入事例インタビュー:
- 既存顧客へのインタビュー記事
- 導入前の課題、導入後の効果を具体的に記載
ユーザーコミュニティでの事例共有:
- ユーザー会、オンラインコミュニティでの活用事例共有
- 他のユーザーとの交流を通じたノウハウ蓄積
信頼性担保のポイント:
- 導入企業名を明示(実在する企業であることの証明)
- 具体的な数値データ(導入前後の変化、ROIなど)
- 第三者による認証(ISO認証、プライバシーマークなど)
4. UGCの効果測定と継続的な改善サイクル
UGCマーケティングの効果を最大化するには、継続的な効果測定と改善が不可欠です。
(1) CTR・CVRによる効果測定の方法
UGC活用ツールのダッシュボードを使い、以下の指標を測定します:
CTR(Click Through Rate / クリック率):
- UGCが表示された際にクリックされる割合
- どのUGCがユーザーの興味を引いているかを測定
CVR(Conversion Rate / コンバージョン率):
- UGCを見た訪問者が購入や問い合わせに至る割合
- 最終的な成果への貢献度を測定
(2) UGCの劣化現象とその対策(3ヶ月で0.7に低下)
UGCは時間経過とともに効果が低下する「劣化現象」があります。初期のCVRを1.0とすると、3ヶ月後には0.7まで低下するというデータがあります。
劣化の原因:
- 同じUGCを見飽きる
- 情報の鮮度が落ちる(「この投稿は1年前のもの」と認識される)
- 製品・サービスのアップデートにより情報が古くなる
対策:
- 3ヶ月ごとに新しいUGCを収集・掲載
- 効果の低いUGCを入れ替える
- 季節・トレンドに合わせたUGCを優先表示
(3) 効果測定から改善までのPDCAサイクル
Plan(計画):
- ハッシュタグキャンペーンの企画
- 目標CTR・CVRの設定
Do(実行):
- キャンペーン実施、UGC収集
Check(評価):
- CTR・CVRの測定、効果分析
Act(改善):
- 効果の低いUGCの入れ替え
- キャンペーン設計の見直し
このサイクルを3ヶ月ごとに回すことが推奨されます。
5. UGC活用時の法的リスクと対策(ステマ規制・著作権)
UGC活用には法的リスクが伴います。適切な対策を講じることで、リスクを最小化できます。
(1) ステマ規制(2023年10月施行)への対応
2023年10月から、ステルスマーケティング(ステマ)が景品表示法の規制対象となりました。
ステマとは: 広告であることを隠して宣伝すること。消費者の信頼を損ない、法的ペナルティのリスクがあります。
対策:
- UGCを広告利用する際は「広告」「PR」「プロモーション」などのラベルを明示
- 投稿者に金銭や商品を提供した場合は必ず開示
- 自社従業員の投稿を広告利用する場合も開示が必要
(2) 著作権・肖像権の侵害リスクと許諾取得
SNS投稿を無断で広告利用することは、著作権・肖像権の侵害となります。
リスク:
- 投稿者から訴訟を起こされる可能性
- 損害賠償請求のリスク
対策:
- 必ず投稿者の許諾を得る(DMやメールで連絡)
- 許諾取得の記録を保管する
- 肖像権については、写っている本人全員の許諾が必要
(3) 薬機法など業界規制への配慮
化粧品・医薬品分野では、効能効果の表現に関する規制(薬機法)があります。
リスク:
- ユーザーのレビューに「病気が治った」などの表現があった場合、企業がそれを広告利用すると薬機法違反となる可能性
対策:
- レビュー掲載前に表現をチェック
- 不適切な表現は削除または修正を依頼
- 業界団体のガイドラインを確認
(4) やらせ投稿のリスクと信頼性担保
企業が金銭や商品を提供して肯定的な投稿を依頼する「やらせ投稿」は、消費者の信頼を損なうだけでなく、ステマ規制違反となります。
リスク:
- 景品表示法違反による行政処分
- 消費者からの信頼喪失
- SNSでの炎上リスク
対策:
- やらせ投稿は絶対に行わない
- 商品提供や報酬を伴う投稿は必ず「広告」と明示
- ユーザーの自発的な投稿を尊重する姿勢を示す
6. まとめ:UGCマーケティング成功のポイント
UGC(ユーザー生成コンテンツ)は、消費者の92%が企業広告よりも信頼するコンテンツ形態であり、BtoB領域でもカスタマーレビュー、導入事例、ユーザーコミュニティなどの形で活用できます。
UGCマーケティング成功のポイント:
- ハッシュタグキャンペーンで計画的にUGCを生成
- UGC活用ツールでCTR・CVRを測定し、効果的なコンテンツを特定
- 3ヶ月ごとに効果測定と改善サイクルを実施(UGCは劣化する)
- ステマ規制、著作権・肖像権への適切な対応
- 薬機法など業界規制への配慮
次のアクション:
- 自社のターゲット顧客がどのSNSを利用しているかを調査する
- ハッシュタグキャンペーンの企画を検討する
- UGC活用ツールの無料トライアルを試す
- 法務部門とステマ規制・著作権対応の方針を確認する
Cookie規制強化により、UGCの重要性は2024年以降さらに増しています。適切な法的対応を行いながら、ユーザーの自発的な声を活用することで、信頼性の高いマーケティング施策を実現しましょう。
