「Salesforce CMSって、普通のCMSと何が違うの?」を解説します
コンテンツ管理システム(CMS)といえばWordPressが有名ですが、Salesforceにも独自のCMS機能があります。「Salesforce CMS」は、顧客ポータルやパートナーサイトを構築するExperience Cloud内のコンテンツ管理機能です。
「WordPressと何が違うの?」「Salesforceを使っていなくても導入できる?」「料金はどうなっている?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。この記事では、Salesforce CMSの概要から機能、WordPressとの違い、導入判断のポイントまで整理してお伝えします。
この記事のポイント:
- Salesforce CMSはExperience Cloud内のヘッドレス型コンテンツ管理機能
- 2022年1月から無料化(ただしSalesforce環境の契約が前提)
- CRM連携により、顧客データに基づいたパーソナライズ配信が可能
- 汎用コーポレートサイトにはWordPress、顧客ポータルにはSalesforce CMSという使い分けが基本
- Salesforce環境を既に利用している企業には有力な選択肢
1. Salesforce CMSとは
Salesforce CMS(Content Management System)は、Salesforceプラットフォーム内でコンテンツを作成・管理・配信するための機能です。
基本的な位置づけ:
- Salesforce Experience Cloud(旧Community Cloud)の一部機能
- 顧客ポータル、パートナーポータル、コミュニティサイトのコンテンツ管理に特化
- ヘッドレスCMSアーキテクチャを採用
主な用途:
- 顧客向けセルフサービスポータルのコンテンツ管理
- パートナー向けドキュメント・ナレッジベースの公開
- コミュニティサイトのFAQ・お知らせ管理
- モバイルアプリへのコンテンツ配信
Salesforce CMSは、一般的なコーポレートサイトやブログを構築するWordPressとは異なり、Salesforce CRMと連携した「顧客データドリブンなコンテンツ配信」を実現するために設計されています。
2. Salesforce CMSの主要機能
(1) ヘッドレス型CMSとWYSIWYGエディタ
Salesforce CMSは「ヘッドレスCMS」という仕組みを採用しています。
ヘッドレスCMSとは: コンテンツ管理(バックエンド)と表示(フロントエンド)を分離したアーキテクチャです。コンテンツはAPI経由で複数のチャネル(Webサイト、モバイルアプリ、コマースサイト)に配信されます。
メリット:
- 1度作成したコンテンツを複数のチャネルで再利用可能
- フロントエンドの表示形式を柔軟に変更できる
- モバイルアプリへの配信も容易
WYSIWYGエディタ: HTMLやCSSの知識がなくても、「見たまま編集」でコンテンツを作成できます。ドキュメント、画像、動画、ナレッジ記事など幅広いコンテンツタイプを管理可能です。
ドラフト機能: 公開済みのコンテンツを編集する際、裏側で編集バージョンを作成できます。公開中のコンテンツを停止せずに更新準備ができるため、運用効率が向上します。
(2) CRM連携によるパーソナライズ配信
Salesforce CMSの最大の特徴は、CRMデータとの連携です。
パーソナライゼーション機能:
- 顧客の属性(業種、契約プラン、購入履歴)に基づいたコンテンツ表示
- ユーザーのログイン状況に応じたコンテンツ出し分け
- 顧客セグメント別のターゲティング配信
具体例:
- プレミアム契約顧客には専用の技術ドキュメントを表示
- 無料プランユーザーにはアップグレード案内を表示
- 業種別に関連するナレッジ記事を優先表示
このようなパーソナライズは、Salesforce CRMに蓄積された顧客データがあって初めて実現できるもので、汎用CMSでは難しい機能です。
3. 料金プランと導入要件
(1) 2022年1月からの無料化の概要
Salesforce CMSは、2022年1月に料金体系が大きく変更されました。
以前の料金:
- 月額10,000ドル/組織
現在の料金:
- 無料(制限なく利用可能)
この変更により、Salesforce環境を利用している企業であれば、追加費用なしでCMS機能を活用できるようになりました。
(2) Experience Cloudとの関係と前提条件
ただし、「無料」には重要な前提条件があります。
前提条件:
- Salesforce環境(Sales Cloud、Service Cloud、Experience Cloud等)の契約が必要
- CMS機能だけを単独で契約することはできない
- コンテンツを表示するにはExperience CloudサイトやAPIを介したフロントエンドが必要
Experience Cloudの料金:
- Customer Community:月額2,000円/ログインまたは5,000円/メンバー(目安)
- Partner Community:月額6,000円/ログインまたは12,000円/メンバー(目安)
※料金は為替レートや契約条件により変動します。最新情報は公式サイトでご確認ください。
つまり、「Salesforce CMSは無料だが、Salesforce環境の契約費用は別途必要」という点を理解しておく必要があります。
4. Salesforce CMSのメリット・デメリット
(1) CRM連携・マルチチャネル配信のメリット
メリット:
1. CRMデータとのシームレスな連携 Salesforce CRM内の顧客データをそのまま活用し、パーソナライズされたコンテンツを配信できます。顧客データとコンテンツの分断がありません。
2. マルチチャネル配信 ヘッドレスCMSのため、1度作成したコンテンツをWebサイト、モバイルアプリ、コマースサイトなど複数のチャネルに配信可能です。
3. コンテンツライフサイクル管理 2024年のアップデートで、スケジュール公開・非公開機能が追加されました。手動公開なしで自動的にコンテンツを管理できます。
4. チームコラボレーション ワークスペースごとに寄稿者、管理者などのロールを設定でき、権限管理が可能です。複数メンバーでの共同編集もスムーズです。
(2) Salesforce環境必須・学習コストのデメリット
デメリット:
1. Salesforce環境が前提 CMS機能だけを単独で利用することはできません。Salesforceを使っていない企業にとっては、導入ハードルが高くなります。
2. 学習コスト Salesforceプラットフォーム全体の理解が必要です。WordPressに比べると、初期の学習コストは高めです。
3. 汎用Webサイトには不向き 顧客ポータル・パートナーポータル向けに設計されているため、一般的なコーポレートサイトやブログにはオーバースペックです。
4. フロントエンド開発が必要 ヘッドレスCMSのため、コンテンツを表示するにはExperience Cloudサイトやカスタムフロントエンドの構築が必要です。
5. WordPress・他CMSとの違いと使い分け
(1) 機能・用途・対象ユーザーの比較
主要なCMSとの比較を整理します。
Salesforce CMS:
- 用途:顧客ポータル、パートナーサイト、コミュニティ
- 特徴:CRM連携、パーソナライゼーション、ヘッドレス
- 料金:無料(Salesforce環境契約が前提)
- 対象:Salesforce導入済み企業
WordPress:
- 用途:コーポレートサイト、ブログ、メディア
- 特徴:オープンソース、豊富なテーマ・プラグイン、低コスト
- 料金:無料(ホスティング費用は別途)
- 対象:汎用的なWebサイトを構築したい企業
- シェア:世界約6割、日本約8割
HubSpot CMS:
- 用途:インバウンドマーケティング連動サイト
- 特徴:MA連携、リード獲得に強い、直感的な編集
- 料金:月額数万円〜
- 対象:マーケティング重視のB2B企業
比較表:
| 項目 | Salesforce CMS | WordPress | HubSpot CMS |
|---|---|---|---|
| 主な用途 | 顧客ポータル | 汎用Webサイト | インバウンドマーケティング |
| CRM連携 | Salesforce連携 | プラグインで対応 | HubSpot CRM連携 |
| 料金 | 無料(環境契約前提) | 無料(ホスティング別) | 月額数万円〜 |
| 学習コスト | 高 | 低〜中 | 中 |
| カスタマイズ性 | 高(開発要) | 高(プラグイン) | 中 |
(2) 汎用サイトにはWordPress、ポータルにはSalesforce CMS
使い分けの基準:
Salesforce CMSを選ぶべきケース:
- 既にSalesforce(Sales Cloud、Service Cloud等)を導入している
- 顧客ポータル・パートナーポータルを構築したい
- CRMデータに基づいたパーソナライズ配信が必要
- セルフサービスサポートサイトを運営したい
WordPressを選ぶべきケース:
- 汎用的なコーポレートサイトを構築したい
- ブログやオウンドメディアを運営したい
- コストを抑えたい
- Salesforceを使っていない、または使う予定がない
HubSpot CMSを選ぶべきケース:
- インバウンドマーケティングに注力している
- HubSpot MAを導入済み、または検討中
- リード獲得を重視したサイトを構築したい
6. まとめ:導入判断のポイント
Salesforce CMSは、Salesforceプラットフォーム内で顧客データと連携したコンテンツ管理を実現する機能です。ただし、すべての企業に適しているわけではありません。
Salesforce CMSを検討すべき企業:
- Salesforce環境を既に利用している
- 顧客ポータル・パートナーサイトを構築したい
- CRMデータに基づいたパーソナライズが必要
- マルチチャネル配信(Web・モバイル)を予定している
他のCMSを検討すべき企業:
- Salesforceを使っていない
- 汎用的なコーポレートサイトを構築したい
- コストを最小限に抑えたい
- 学習コストを抑えて早く立ち上げたい
次のアクション:
- 自社のSalesforce環境の有無を確認する
- 構築したいサイトの用途(ポータル or 汎用サイト)を明確にする
- Salesforce公式ドキュメント(Trailhead)でCMSの概要を学ぶ
- WordPressやHubSpot CMSとも比較検討する
- 同業種・同規模企業の導入事例を調査する
※この記事は2025年時点の情報です。Salesforce CMSの機能は頻繁にアップデートされるため、最新情報は公式ドキュメントやリリースノートでご確認ください。
よくある質問:
Q: Salesforce CMSとWordPressの違いは? A: Salesforce CMSはCRM連携・顧客ポータル向け、WordPressは汎用コーポレートサイト・ブログ向けです。Salesforce CMSはCRMデータに基づいたパーソナライズ配信が強みですが、Salesforce環境が必須です。汎用サイトにはWordPressが適しています。
Q: Salesforce CMSは無料で使える? A: 2022年1月から無料化されました。ただし、Salesforce環境(Experience Cloud等)の契約が前提条件です。CMS機能だけを単独で契約することはできません。
Q: Salesforceを使っていなくてもCMSだけ導入できる? A: できません。Salesforce CMSはSalesforce環境内での利用が前提です。CMS単体で導入したい場合は、WordPressやHubSpot CMSなどの汎用CMSをご検討ください。
Q: Salesforce CMSの導入に必要なスキルは? A: Salesforceプラットフォームの基本的な理解が必要です。コンテンツ作成自体はWYSIWYGエディタで行えますが、ワークスペースの設定やExperience Cloudサイトの構築にはSalesforce管理者のスキルが求められます。Trailheadで基礎を学ぶことをおすすめします。
