SaaS営業の商談数が伸び悩んでいて、成長が停滞している...
SaaS企業の営業責任者の多くが、商談数の確保に課題を抱えています。「マーケティングが獲得したリードが商談化しない」「フィールドセールスが商談に時間を割けていない」「リードが放置されて機会損失が発生している」といった悩みは尽きません。
この記事では、SaaSビジネスにおけるインサイドセールス戦略を、The Model型組織設計、立ち上げ手順、KPI設計、採用・育成まで、実践的に解説します。
この記事のポイント:
- インサイドセールスは非対面で見込み客を育成し、フィールドセールスへバトンを渡す役割(導入企業の43.6%が商談数増加を報告)
- SaaSは検討期間が長く長期的関係構築が必要なため、インサイドセールスと相性が良い
- The Model型分業体制により、効率化31.5%・最適配置30.7%を実現(2024年調査)
- 立ち上げ時は小規模チームでスタートし、商談化基準をフィールドセールスと事前にすり合わせる
- 2024年調査で離職検討率74.1%と高く、適切な教育体制・評価制度が定着化の鍵
1. SaaSビジネスにおけるインサイドセールスの重要性
SaaS企業にとって、インサイドセールスが重要な理由を解説します。
(1) インサイドセールスとは(非対面営業の特徴)
インサイドセールス(Inside Sales)は、電話・メール・チャット等の非対面チャネルを使って営業活動を行う役割です。
主な特徴:
- 見込み客(リード)に電話・メールでアプローチ
- 課題ヒアリング・情報提供を通じて関心度を高める
- 受注確度が高まったリードをフィールドセールスにバトンタッチ
- 移動時間がゼロで、1日に多数のリードと接点を持てる
(出典: SaaS のインサイドセールスの役割 効果を徹底的に高めるには?)
(2) なぜSaaS企業に向いているのか
SaaSビジネスは、以下の理由からインサイドセールスと相性が良いです:
SaaSの特性:
- サブスクリプションモデル: 月額・年額課金で、長期的な関係構築が重要
- 検討期間が長い: 導入検討から契約まで数ヶ月〜半年以上かかることが多い
- LTV(Life Time Value)重視: 初回契約だけでなく、継続率・アップセル・クロスセルが重要
- CAC(Customer Acquisition Cost)の最適化: リード獲得から受注までのコストを最小化したい
インサイドセールスを導入すると、長期的なリードナーチャリング(見込み客育成)が効率的に実施でき、フィールドセールスは受注確度の高い商談にリソースを集中できます。
(出典: SaaSビジネス成功の要となるインサイドセールスとは)
(3) フィールドセールスとの違い
インサイドセールスとフィールドセールスの役割の違いは以下の通りです:
| 項目 | インサイドセールス | フィールドセールス |
|---|---|---|
| アプローチ方法 | 電話・メール・チャット(非対面) | 対面訪問・商談 |
| 主な役割 | リードナーチャリング、受注確度の向上 | クロージング、受注 |
| KPI | 商談化数、商談化率、有効商談数 | 受注数、受注率、売上 |
| 接触リード数 | 1日20-50件以上 | 1日1-3件程度 |
The Model型分業体制では、両者が連携して営業プロセス全体を最適化します。
2. インサイドセールスの役割とThe Model
インサイドセールスの具体的な役割と、The Model型分業体制について解説します。
(1) リードナーチャリング(見込み客育成)
インサイドセールスの主要な役割は、リードナーチャリング(見込み客の育成)です。
リードナーチャリングの流れ:
- マーケティングが獲得したリードに電話・メールでアプローチ
- 課題ヒアリング・情報提供を繰り返し、関心度を高める
- ホワイトペーパー・ウェビナー・デモなどのコンテンツを提供
- 受注確度が高まったタイミングでフィールドセールスにバトンタッチ
このプロセスにより、フィールドセールスは受注確度の高い商談に集中でき、成約率が向上します。
(2) マーケティングとフィールドセールスの橋渡し
インサイドセールスは、マーケティングとフィールドセールスの橋渡し役を担います。
具体的な役割:
- マーケティングが獲得したリードの温度感を確認し、「今すぐ客」と「そのうち客」を見極める
- 「今すぐ客」はフィールドセールスに、「そのうち客」は継続的にナーチャリング
- フィールドセールスから「まだタイミングではない」と判断されたリードをインサイドセールスが再度育成
- マーケティングにリードの質に関するフィードバックを提供
この橋渡し機能により、部門間の情報共有が促進され、営業効率が向上します。
(出典: SaaSビジネス成功の要となるインサイドセールスとは)
(3) The Model型分業体制のメリット
The Modelは、マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス→カスタマーサクセスの4部門分業体制です。
The Model型分業のメリット:
- 効率化: 各部門が専門特化し、生産性が向上(効率化31.5%)
- 最適配置: 適材適所で人材を配置(最適配置30.7%)
- 属人化の解消: プロセスが標準化され、担当者が変わっても継続可能
- データドリブン: 各ステップのKPIを可視化し、ボトルネックを特定
(出典: SaaSのあるべき営業組織の体制とは?分業のメリットや注意点も含めて解説)
ただし、分業化自体が目的化すると、部門間の対立や情報サイロが発生し、組織全体の営業生産性が低下するリスクがあります。後述する「部門間の情報共有ルール」が重要です。
(4) SDRとBDRの違い
インサイドセールスには、SDR(Sales Development Representative)とBDR(Business Development Representative)の2種類があります。
SDR:
- マーケティングが獲得したリード(問い合わせ、ダウンロード、セミナー参加等)に対してアプローチ
- 「反響型営業」とも呼ばれる
- 関心度が一定ある見込み客が対象
BDR:
- 企業リストから新規開拓を行う(コールドコール、メール営業等)
- 「新規開拓型営業」とも呼ばれる
- 全く接点のない見込み客が対象
SaaS企業では、SDRとBDRの役割を分けることで、より効果的なリードナーチャリングが可能になります。
3. インサイドセールス組織の立ち上げ手順
インサイドセールス組織を立ち上げる際の具体的な手順を解説します。
(1) 目的の明確化と商談化基準の設定
インサイドセールス立ち上げの最初のステップは、目的の明確化です。
明確にすべき事項:
- インサイドセールスに期待する成果(商談数増加、成約率向上、LTV最大化等)
- 「商談化の条件」を定義(どのような状態になったらフィールドセールスにバトンタッチするか)
- フィールドセールスと事前にすり合わせ、認識齟齬を防ぐ
商談化基準の例:
- BANT条件(Budget: 予算、Authority: 決裁権、Needs: 課題、Timeframe: 導入時期)が揃っている
- デモ・トライアルを希望している
- 複数の担当者が関与している
商談化の基準が不明確だと、フィールドセールスとの認識齟齬で「質の低い商談」が増え、成約率が下がります。
(出典: インサイドセールスの立ち上げを成功に導く5つの手順を徹底解説)
(2) 小規模チームでのスタート
立ち上げ時は、小規模チーム(1-3名程度)でスタートし、成功パターンを確立してから拡大することが推奨されます。
小規模スタートのメリット:
- トライアル&エラーで最適な運用方法を見つけやすい
- 初期投資を抑えられる
- 属人化を避けて、プロセスを標準化しやすい
(出典: インサイドセールスを立ち上げるための5つの手順【事例あり】)
(3) フィールドセールス経験者をマネージャーに配置
インサイドセールスのマネージャーには、フィールドセールス経験者を配置すると成功しやすいと言われています。
理由:
- 営業プロセス全体を理解しており、インサイドセールスとフィールドセールスの連携をスムーズに設計できる
- 「どのような商談なら受注できるか」を理解しているため、商談化基準を適切に設定できる
- フィールドセールスとの信頼関係を築きやすい
(4) 部門間の情報共有ルール策定
The Model型分業体制では、部門間の情報共有が極めて重要です。
情報共有ルールの例:
- SFA/MAツール(Salesforce、HubSpot、Mazrica等)で活動ログと顧客データを一元管理
- 週次または月次で部門間のミーティングを実施し、リードの状況をレビュー
- フィールドセールスがクロージングした商談のフィードバックをインサイドセールスに共有
- マーケティングにリードの質に関するフィードバックを提供
情報共有の仕組みが整っていないと、部門間の情報サイロが発生し、逆効果になる可能性があります。
(出典: 『分業化した営業組織がうまく回らない』──SaaS企業の課題、セールスフォース流の解決策は)
4. KPI設計とツール活用
インサイドセールスのKPI設計とツール活用について解説します。
(1) 主要KPI(商談化数・商談化率・有効商談数)
インサイドセールスの主要KPIは以下の通りです:
主要KPI:
- 商談化数: インサイドセールスがフィールドセールスに渡した商談の数
- 商談化率: 接触したリードのうち、商談化した割合(例: 100件アプローチして10件商談化なら10%)
- 有効商談数: フィールドセールスが「質の高い商談」と評価した件数
- 接触数: 電話・メール等で接触したリードの数
- 応答率: 電話をかけて応答があった割合
KPI設計のポイント:
- 「商談化数」だけでなく「商談化率」「有効商談数」も重視(質と量のバランス)
- フィールドセールスの受注率・売上も追跡し、インサイドセールスの貢献度を可視化
(出典: インサイドセールスを立ち上げるための5つの手順【事例あり】)
(2) SFA/MAツールの活用
インサイドセールスでは、SFA(Sales Force Automation)/MA(Marketing Automation)ツールが不可欠です。
主要ツール:
- Salesforce: 世界シェアNo.1のCRM/SFA、カスタマイズ性が高い
- HubSpot: 無料プランあり、中小企業に適している
- Mazrica: 国産SFA、直感的なUI/UX
- Marketo / Pardot: MAツール、マーケティングとの連携に強い
ツール活用のポイント:
- 顧客データ・活動ログをすべて記録し、部門間で共有
- 自動レポート・ダッシュボードでKPIをリアルタイムで可視化
- リードスコアリング機能で、受注確度の高いリードを優先的にアプローチ
(3) データに基づく改善サイクル
KPIを定期的にレビューし、データに基づく改善サイクルを回すことが重要です。
改善サイクルの例:
- 週次または月次でKPIをレビュー
- ボトルネックを特定(例: 応答率が低い、商談化率が低い等)
- 改善アクションを実施(例: アプローチ時間帯の変更、トークスクリプトの改善等)
- 効果を測定し、さらに改善
5. 採用・育成と定着化の課題
インサイドセールスの採用・育成と、2024年の定着化課題について解説します。
(1) 必要なスキル(ヒアリング力・仮説構築力・データ分析力)
インサイドセールスに求められるスキルは以下の通りです:
主要スキル:
- ヒアリング力: 顧客の課題を引き出し、本音を聞き出す
- 仮説構築力: 限られた情報から顧客のニーズを推測する
- データ分析力: KPIを分析し、改善アクションを立案する
- コミュニケーション力: 電話・メール・チャットで効果的に情報を伝える
- 忍耐力: 断られることが多いため、メンタルタフネスが求められる
(2) 2024年調査:離職検討率74.1%の背景
2024年の調査によると、インサイドセールス担当者の74.1%が離職を検討した経験があると回答しています。
主な離職要因:
- 高品質コンテンツ不足: 顧客に提供する資料・ホワイトペーパーが不足している
- フォロー遅延: マーケティングが獲得したリードをタイムリーにフォローできない
- 効果的なターゲティング不足: アプローチすべきリードの優先順位が不明確(2024年上半期、目標未達の要因として40.8%)
- 評価制度の不備: 成果が正当に評価されない
(出典: 【インサイドセールス担当者の本音】2024年上半期目標未達成の要因、インサイドセールス業界レポート2024-2025)
(3) 定着化のための施策(教育体制・評価制度)
インサイドセールスの定着化には、以下の施策が有効です:
教育体制:
- ロールプレイング・トークスクリプト作成
- 優秀なメンバーのトーク録音・共有
- 定期的なフィードバック・1on1ミーティング
評価制度:
- KPIに基づく客観的な評価(商談化数、商談化率、有効商談数等)
- フィールドセールスの受注率・売上への貢献度も評価
- キャリアパス明示(インサイドセールス→フィールドセールス→マネージャー等)
リソース配分:
- 高品質なコンテンツ(ホワイトペーパー、事例、デモ動画等)を整備
- MAツールでリードスコアリングを実施し、優先順位を明確化
6. まとめ:インサイドセールスで営業成果を最大化するために
SaaSビジネスにおけるインサイドセールス戦略のポイントをまとめます。
成功のポイント:
- The Model型分業体制を構築: マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス→カスタマーサクセスの連携を強化
- 商談化基準を明確化: フィールドセールスと事前にすり合わせ、部門間の認識齟齬を防ぐ
- 小規模スタートで成功パターンを確立: 1-3名でスタートし、成果が出てから拡大
- KPIをデータドリブンで管理: 商談化数・商談化率・有効商談数を可視化し、改善サイクルを回す
- 教育体制・評価制度を整備: 離職率74.1%の背景を踏まえ、定着化施策を実施
次のアクション:
- インサイドセールス導入の目的を明確にし、商談化基準を定義する
- フィールドセールスと協議し、部門間の情報共有ルールを策定する
- SFA/MAツールを導入し、KPIを可視化する
- 小規模チームでスタートし、成功パターンを確立してから拡大する
SaaS企業にとって、インサイドセールスは営業成果を最大化するための重要な戦略です。段階的に体制を整備し、The Model型分業体制の効果を最大限に引き出しましょう。
