リード獲得から受注まで、どこで見込み客が離脱しているかわかりますか?
「広告でリードは集まるのに、なかなか商談につながらない」 「営業に引き渡したリードの成約率が低い」
B2B企業のマーケティング・営業担当者の多くが、こうした課題を抱えています。パーチェスファネルは、顧客が購買に至るまでのプロセスを可視化し、どの段階で離脱が発生しているかを把握するためのフレームワークです。
この記事では、パーチェスファネルの基礎知識から、各段階での施策、他のファネルモデルとの違いまで、B2B SaaS企業の実務で活用できる形で解説します。
この記事のポイント:
- パーチェスファネルは「認知→興味→比較・検討→購入」の4段階で購買プロセスを図式化したもの
- 各段階で見込み客が絞り込まれ、漏斗(ファネル)のような形になる
- ボトルネック(離脱率が高い段階)を特定し、優先的に改善することが重要
- 購入後の行動を含めるにはインフルエンスファネルやダブルファネルを活用
- 自社の製品・ターゲットに合わせてファネルの段階設定をカスタマイズする
1. なぜパーチェスファネルが注目されるのか
パーチェスファネルが注目される背景には、マーケティング・営業活動の効率化ニーズがあります。
ボトルネックの可視化: 見込み客がどの段階で離脱しているかを数値で把握できます。感覚的な判断ではなく、データに基づいて改善すべきポイントを特定できます。
マーケティングと営業の連携強化: ファネルの各段階で「どの部門が何をすべきか」を明確にすることで、マーケティング部門と営業部門の連携がスムーズになります。特にB2Bでは、リードの引き渡しタイミングと品質が成約率に大きく影響します。
施策の効果測定: 各段階での施策が、次の段階への移行率にどう影響したかを測定できます。「広告を打ったが効果があったのか?」「ウェビナーは商談につながったのか?」といった疑問にデータで答えられます。
予算配分の最適化: 離脱率が高い段階に投資を集中させることで、限られたマーケティング予算を効率的に活用できます。
2. パーチェスファネルの基礎知識:定義と4つの段階
(1) パーチェスファネルとは何か(認知→興味→検討→購入)
パーチェスファネル(Purchase Funnel)は、顧客が購買に至るまでのプロセスを4つの段階で図式化したフレームワークです。「パーチェス(purchase)」は購買、「ファネル(funnel)」は漏斗という意味です。
4つの段階:
認知(Awareness)
- 見込み客が製品・サービスの存在を知る段階
- 広告、コンテンツマーケティング、展示会などで接点を作る
興味・関心(Interest)
- 製品・サービスに興味を持ち、情報を収集し始める段階
- ブログ記事、ホワイトペーパー、メールマガジンなどで情報提供
比較・検討(Consideration)
- 購入を具体的に検討し、競合製品と比較する段階
- 事例、製品デモ、無料トライアル、見積もりなどを提供
購入(Purchase)
- 実際に購入を決定する段階
- 商談、契約交渉、導入支援など
各段階を経るごとに見込み客の数は減少し、漏斗のような形になります。この形状がファネル(漏斗)と呼ばれる理由です。
(2) AIDAモデルとの関係
パーチェスファネルは、19世紀末にアメリカの広告研究者セント・エルモ・ルイス(St Elmo Lewis)が提唱したAIDAモデルの発展形とされています。
AIDAモデル:
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Desire(欲求)
- Action(行動)
AIDAモデルは消費者の心理プロセスを表したものですが、パーチェスファネルはこれをマーケティング実務で活用できる形に発展させたものといえます。
日本では「AIDMA」(AにMemory=記憶を加えたもの)も広く知られていますが、いずれも消費者の購買プロセスを段階的に捉える点で共通しています。
3. 各段階での施策とボトルネック改善の進め方
(1) 認知・興味段階でのコンテンツ施策
ファネルの上部(認知・興味段階)では、まだ購買意欲が低い見込み客が対象です。
認知段階の施策:
- リスティング広告・ディスプレイ広告
- SEO対策によるオーガニック流入
- SNSでの情報発信
- 展示会・イベントへの出展
- プレスリリース配信
興味段階の施策:
- ブログ記事・オウンドメディア
- ホワイトペーパー・eBook
- ウェビナー開催
- メールマガジン配信
- 業界レポート・調査データの提供
ポイント: 潜在層に対しては、いきなり製品を売り込むのではなく、まずは価値ある情報を提供することが重要です。「この会社は役立つ情報をくれる」という信頼関係を築くことで、次の段階への移行率が高まります。
(2) 比較・検討段階でのリードナーチャリング
ファネルの中間部(比較・検討段階)では、購買意欲が高まった見込み客を商談につなげる施策が重要です。
比較・検討段階の施策:
- 導入事例・お客様の声
- 製品デモ・無料トライアル
- 競合比較資料(公平な視点で)
- 見積もり・料金表の提供
- 個別相談会・セミナー
B2Bでの注意点: B2Bは検討期間が長く、複数の意思決定者が関与することが多いです。そのため、この段階でのリードナーチャリング(見込み客育成)が特に重要です。
- 定期的なフォローアップメール
- 業界動向や活用事例の継続的な情報提供
- MAツールを活用したスコアリング
- 営業へのタイムリーな引き渡し
(3) 離脱率が高い段階の特定と改善優先順位
パーチェスファネル活用の核心は、ボトルネックの特定と改善です。
改善の進め方:
各段階の数値を把握する
- 認知数(サイト訪問者数など)
- 興味数(ホワイトペーパーDL数、メルマガ登録数など)
- 検討数(問い合わせ数、デモ申込数など)
- 購入数(成約数)
各段階間の移行率を計算する
- 認知→興味: 〇%
- 興味→検討: 〇%
- 検討→購入: 〇%
離脱率が高い段階を特定する
- 最も移行率が低い段階がボトルネック
- 例: 興味→検討が5%なら、この段階に課題がある
優先順位をつけて改善施策を実行する
- ボトルネックの前段階の施策から見直す
- 小さな改善から始め、効果を検証する
ポイント: 離脱率が高い段階を特定したら、その前の段階で行っている施策から優先的に改善します。例えば「検討→購入」の離脱率が高い場合、検討段階で提供している情報(事例、デモなど)の質や量を見直します。
4. 他のファネルモデルとの違いと使い分け
(1) インフルエンスファネル(購入後の行動)との違い
パーチェスファネルは購入までのプロセスを可視化しますが、購入後の顧客行動は含まれていません。購入後の行動を図式化したものがインフルエンスファネルです。
インフルエンスファネルの段階:
- 継続利用
- リピート購入
- 紹介・口コミ
- ファン化・発信
使い分け:
- 新規顧客獲得が課題: パーチェスファネルで認知→購入のプロセスを改善
- 既存顧客からの売上拡大が課題: インフルエンスファネルで購入後の行動を改善
(2) ダブルファネル(購入前後を統合)の活用シーン
ダブルファネルは、パーチェスファネルとインフルエンスファネルを縦につなげたモデルです。購入前から購入後までの顧客行動を一貫して可視化できます。
ダブルファネルの構造:
[認知] ← パーチェスファネル
↓
[興味]
↓
[検討]
↓
[購入] ← 接点
↓
[継続] ← インフルエンスファネル
↓
[紹介]
↓
[発信]
活用シーン:
- SaaSなど継続課金モデルのビジネス
- 既存顧客からの紹介が重要な事業
- LTV(顧客生涯価値)を重視する戦略
5. 活用時の注意点とよくある失敗パターン
(1) 画一的なモデル適用の危険性
パーチェスファネルの4段階(認知→興味→検討→購入)は一般的なモデルですが、自社の製品やターゲットに合わせてカスタマイズすることが重要です。
失敗例:
- BtoC向けのファネルをそのままBtoBに適用
- 高単価商材と低単価商材で同じ段階設定を使用
- ターゲットの購買行動を調査せずにモデルを適用
対策:
- 自社の顧客がどのようなプロセスで購買に至るか調査する
- 既存顧客へのヒアリングを行う
- 段階の名称や数を自社に合わせて調整する
(2) 顧客行動の多様化への対応
近年、「マーケティングファネルは古い」という議論もあります。その背景には、顧客行動の多様化があります。
従来のファネルモデルの限界:
- SNSや口コミによる非線形な購買プロセス
- 認知と購入が同時に起こるケース(衝動買い)
- 検討段階を飛ばして購入するケース
- 複数のチャネルを行き来する複雑な行動
対応策:
- ファネルを唯一の正解とせず、参考フレームワークとして活用
- 顧客行動データを継続的に分析し、実態に合わせてモデルを更新
- カスタマージャーニーマップなど他のフレームワークと併用
6. まとめ:パーチェスファネル活用のチェックリスト
パーチェスファネルは、顧客の購買プロセスを可視化し、ボトルネックを特定するための有効なフレームワークです。ただし、画一的なモデルをそのまま適用するのではなく、自社の状況に合わせたカスタマイズが重要です。
パーチェスファネル活用チェックリスト:
- 自社のターゲット顧客の購買プロセスを把握しているか
- 各段階の数値(認知数、興味数、検討数、購入数)を測定できているか
- 各段階間の移行率を計算し、ボトルネックを特定しているか
- ボトルネック改善のための施策を優先順位をつけて実行しているか
- MAツールやCRMでファネル分析を効率化しているか
- 購入後の行動も含めて顧客管理を行っているか(ダブルファネルの活用)
次のアクション:
- 自社のファネル各段階の数値を収集・整理する
- 移行率を計算し、ボトルネックを特定する
- 改善施策を1つ選び、小規模で試行する
- 効果を検証し、次の改善サイクルにつなげる
パーチェスファネルは完璧なモデルではありませんが、マーケティング・営業活動を改善するための出発点として有効です。まずは自社の現状を可視化することから始めてみてください。
