オウンドサイトとはオウンドメディアとの違いと活用方法

著者: Decisense編集部公開日: 2025/12/3

オウンドサイトとオウンドメディア、違いがよく分からない...

B2B企業のマーケティング担当者の多くが、「オウンドサイト」と「オウンドメディア」という用語の違いに悩んでいます。「どちらも自社で運営するWebサイトなのに、何が違うの?」「自社に必要なのはどちら?」といった疑問は尽きません。

この記事では、オウンドサイトとオウンドメディアの定義の違い、活用方法、構築費用から最新トレンドまで、実践的な情報を解説します。

この記事のポイント:

  • オウンドサイトは企業が所有するWebサイト全体、オウンドメディアはその中の情報発信機能
  • ホームページは会社情報公開、オウンドメディアは購買行動を促すマーケティング目的
  • 構築費用は50万円〜300万円、月間運用コストは90〜130万円が目安
  • 東証プライム企業の40%がオウンドメディアを運用中(2024年調査)
  • 成果が出るまで半年〜1年、長期的視点での運営が重要

1. オウンドサイトとは何か

オウンドサイトとは、企業が自ら所有・運営するWebサイト全体を指す用語です。

(1) オウンドサイトの定義(企業が所有・運営するWebサイト)

オウンドサイト(Owned Site)は、企業が所有権を持ち、自ら運営・管理するWebサイトです。外部のプラットフォーム(FacebookページやYouTubeチャンネル等)とは異なり、ドメイン、サーバー、コンテンツのすべてを企業が管理できる点が特徴です。

オウンドサイトの特徴:

  • 企業が独自ドメイン(例: example.com)を保有
  • サーバーやCMS(コンテンツ管理システム)を自社で管理
  • 掲載内容・デザイン・機能を自由にコントロール可能
  • 外部プラットフォームのアルゴリズム変更の影響を受けにくい

(2) オウンドサイトの種類(コーポレートサイト、サービスサイト等)

オウンドサイトには様々な種類があります。

1. コーポレートサイト(企業公式サイト):

  • 会社概要、事業内容、IR情報、採用情報などを掲載
  • 企業の信頼性を担保する「名刺」的な役割
  • 例: トヨタ自動車、ソニーグループの公式サイト

2. サービスサイト・プロダクトサイト:

  • 特定の製品・サービスに特化した情報提供
  • 機能紹介、料金プラン、導入事例、問い合わせフォーム
  • 例: SalesforceのCRMサービスサイト

3. ECサイト(オンラインショップ):

  • 商品販売を目的としたサイト
  • 商品一覧、カート機能、決済システム
  • 例: ユニクロオンラインストア

4. 採用サイト:

  • 求人情報、企業文化、社員インタビューなど
  • 採用候補者向けの情報発信
  • 例: メルカリの採用サイト

5. ブログ・オウンドメディア:

  • 情報発信・コンテンツマーケティングを目的とした記事型サイト
  • 業界ノウハウ、ハウツー記事、事例紹介
  • 例: サイボウズ式、ferret

(3) オウンドサイトの目的(情報公開 vs マーケティング)

オウンドサイトの目的は種類により異なります。

情報公開目的:

  • コーポレートサイト: 企業の基本情報を公開し、信頼性を担保
  • IR情報: 投資家向けの財務情報・経営方針の開示
  • 採用情報: 求職者向けの求人情報・企業文化の発信

マーケティング目的:

  • リード獲得: 見込み顧客の情報取得
  • ブランディング: 業界での認知度向上、専門家としてのポジション確立
  • 顧客エンゲージメント: 既存顧客との関係性強化
  • 売上向上: ECサイトでの直接販売

この「目的の違い」が、オウンドサイトとオウンドメディアを区別する重要なポイントになります。

2. オウンドサイトとオウンドメディアの違い

オウンドサイトとオウンドメディアは混同されやすい用語ですが、明確な違いがあります。

(1) 定義上の違い(Webサイト全体 vs 情報発信機能)

オウンドサイト: 企業が所有するWebサイト全体を指す広い概念。コーポレートサイト、サービスサイト、ECサイト、ブログなどすべてを含みます。

オウンドメディア: オウンドサイトの中で、特に情報発信・コンテンツマーケティングを目的とした機能・セクションを指します。企業ブログ、記事型メディア、メールマガジンなどが該当します。

関係性: オウンドサイト(全体)⊃ オウンドメディア(情報発信機能)

例:

  • トヨタ自動車の公式サイト = オウンドサイト
  • その中の「トヨタイムズ」(記事型メディア)= オウンドメディア

(2) 目的の違い(会社情報公開 vs 購買行動促進)

ホームページ(コーポレートサイト)の目的:

  • 会社概要、事業内容、IR情報などの基本情報を公開
  • 企業の信頼性を担保する「公式な情報源」としての役割
  • 更新頻度は低め(四半期決算、新製品発表時など)

オウンドメディアの目的:

  • 購買行動を促すマーケティング施策
  • 見込み顧客の興味・関心を引き、リード獲得につなげる
  • ブランディング、顧客教育、エンゲージメント強化
  • 更新頻度は高め(週1本〜毎日)

この「目的の違い」が、ホームページとオウンドメディアを区別する本質的な差です。

(3) コンテンツ運用の違い(静的情報 vs 頻繁な更新・蓄積)

ホームページ(コーポレートサイト):

  • 静的な情報が中心(会社概要、沿革、役員情報など)
  • 変更が必要な時のみ更新
  • コンテンツの蓄積は限定的

オウンドメディア:

  • 動的なコンテンツ(記事、ブログ、動画など)
  • 頻繁な追加・更新・蓄積が前提
  • SEO効果を高めるため、継続的にコンテンツを増やしていく
  • 記事が資産として長期的に価値を持つ

オウンドメディアは「コンテンツを頻繁に追加・更新・蓄積していく」点が大きな特徴です。

(4) ホームページとの関係性

ホームページ(広義): 企業のWebサイト全体を指すこともあれば、トップページのみを指すこともある曖昧な用語。

整理すると:

  • オウンドサイト = 企業が所有するWebサイト全体(広義のホームページと同義)
  • コーポレートサイト = 会社情報を掲載する公式サイト(狭義のホームページ)
  • オウンドメディア = オウンドサイトの中の情報発信機能(マーケティング目的)

3. オウンドサイトの構築方法と費用

オウンドサイトを構築する際の費用と方法を解説します。

(1) 構築費用の目安(50万円〜300万円)

オウンドサイトの構築費用は規模・機能により大きく変動します。

シンプルなWebサイト(コーポレートサイト):

  • 費用: 50万円〜100万円
  • ページ数: 10〜20ページ
  • 機能: 会社概要、事業紹介、問い合わせフォーム
  • 制作期間: 1〜2ヶ月

中規模のオウンドメディア:

  • 費用: 100万円〜200万円
  • ページ数: 30〜50ページ
  • 機能: ブログ機能、カテゴリ分類、検索機能、CMS導入
  • 制作期間: 2〜3ヶ月

大規模なオウンドメディア・ECサイト:

  • 費用: 200万円〜300万円以上
  • ページ数: 100ページ以上
  • 機能: 高度なCMS、会員機能、決済システム、MAツール連携
  • 制作期間: 3〜6ヶ月

※2025年時点の目安です。最新の料金は制作会社に確認してください。

(2) 月間運用コスト(90〜130万円)

オウンドメディアを継続的に運営する場合、月間運用コストが発生します。

運用コストの内訳:

  • コンテンツ制作(記事執筆): 50〜80万円/月
  • デザイン・画像制作: 10〜20万円/月
  • SEO対策: 10〜20万円/月
  • サーバー・ドメイン費用: 1〜3万円/月
  • CMS保守・アップデート: 5〜10万円/月
  • 分析・改善: 10〜20万円/月

合計: 月額90〜130万円

※記事本数・外注割合により大きく変動します。社内リソースを活用できる場合は大幅にコストを削減できます。

(3) CMSプラットフォーム活用(専門技術不要)

CMS(Content Management System)を使えば、専門技術がなくてもコンテンツ管理が可能です。

代表的なCMSプラットフォーム:

WordPress(世界シェア1位):

  • 無料で利用可能(プラグイン・テーマは一部有料)
  • 豊富なテーマ・プラグインで機能拡張が容易
  • 日本語情報が充実、初心者でも使いやすい

Movable Type:

  • 国産CMSで日本企業に人気
  • セキュリティ・サポート体制が充実
  • ライセンス費用が必要

HubSpot CMS:

  • MAツールと統合されたCMS
  • リード獲得・管理機能が充実
  • 月額料金制

CMSを使えば、ワープロソフト感覚で記事投稿できるため、エンジニアがいない企業でも運営可能です。

(4) 構築プロセス(企画・準備・運用の3段階)

オウンドサイトの立ち上げは3つの段階に分かれます。

1. 企画段階(1〜2ヶ月):

  • 目的設定(ブランディング、リード獲得、採用など)
  • ターゲット設定(ペルソナ設計)
  • KPI・KGI設定
  • チーム形成(責任者、ライター、デザイナー)
  • 戦略計画(コンテンツカレンダー作成)

2. 準備段階(2〜3ヶ月):

  • サイト設計(情報設計、ワイヤーフレーム)
  • デザイン制作
  • CMS導入・設定
  • 初期コンテンツ作成(10〜20記事)
  • テスト・検証

3. 運用段階(継続的):

  • 定期的なコンテンツ公開(週1本〜)
  • アクセス解析・効果測定
  • SEO最適化
  • 改善サイクル(PDCAの実行)

チーム形成、目的設定、戦略計画が初期ステップとして不可欠です。

4. オウンドサイト運用の成功事例と市場動向

オウンドメディア市場の現状と成功事例を見ていきましょう。

(1) 成功事例(ferret:6ヶ月で100万PV達成)

ferret(株式会社ベーシック):

  • 目的: リード獲得・ブランディング
  • 対象: Webマーケティング担当者
  • 成果: 立ち上げから6ヶ月で月間100万PV達成、現在は500万PV超
  • 成功要因: 実務に役立つ具体的なノウハウ記事、SEOを意識したキーワード戦略、継続的な更新

その他の成功事例:

  • 北欧、暮らしの道具店: 月間1,600万アクセス、ライフスタイル提案型のコンテンツ
  • サイボウズ式: 働き方・チームワークをテーマにしたブランディング・採用目的
  • LIG Blog: デザイン・Web制作会社のブログ、高い専門性と個性的な発信

(2) 東証プライム企業の40%が運用中(2024年調査)

2024年2月の調査によると、オウンドメディアの導入状況は以下の通りです。

導入率:

  • 東証プライム市場企業(620社): 約40%
  • 東証スタンダード市場企業(1,613社): 約20%

業界別導入率:

  • 食品業界: 85%(最も高い)
  • 情報通信・サービス業: 高い導入率
  • 製造業: 中程度の導入率

オウンドメディアはB2B企業にとって「必要不可欠」なマーケティング施策になりつつあります。

(3) 市場規模(国内1兆円、米国4兆円超)

2025年時点で、コンテンツマーケティング市場は大きく成長しています。

国内市場:

  • 約1兆円規模に拡大
  • DX推進に伴いコンテンツマーケティングへの投資が加速
  • MA(マーケティングオートメーション)市場も2022年に前年比14.7%成長、2023年は14.9%成長予測

米国市場:

  • 既に4兆円超の規模
  • 日本市場の4倍以上の成熟度

国内でもDX推進に伴い、オウンドメディア・コンテンツマーケティングへの投資が今後さらに増加すると予測されています。

(4) 効果実感率(82.1%が効果ありと回答)

株式会社宣伝会議の調査(2024年)によると、オウンドメディア運営企業の82.1%が「効果がある」と回答しています。

主な効果:

  • ブランド認知度の向上
  • リード獲得数の増加
  • 検索エンジンでの上位表示
  • 採用応募者数の増加
  • 顧客エンゲージメントの向上

一方で、適切な戦略なしでは成果が出にくいという課題もあります。目的・KPIの明確化、戦略設計、運用、改善を繰り返していくことが重要です。

5. オウンドサイトの活用戦略(2025年トレンド)

2025年のオウンドサイト活用における最新トレンドを紹介します。

(1) ユーザー中心のデザイン(シンプルなメニュー構造)

2025年のトレンドとして、ユーザー中心のデザインが重視されています。

ユーザー中心設計のポイント:

  • シンプルなメニュー構造(3階層以内)
  • 直感的なナビゲーション
  • モバイルファーストデザイン(スマホでの閲覧を優先)
  • ページ表示速度の最適化(3秒以内の読み込み)
  • アクセシビリティへの配慮(障がい者も利用しやすい設計)

成功事例: ある企業は2025年7月までに月間オーガニック検索トラフィック73,000件超、訪問者15万人超を達成しました。成功要因は、ユーザーが求める情報にすぐアクセスできるシンプルな設計です。

(2) 検索機能の強化

コンテンツが蓄積されるにつれ、サイト内検索機能の重要性が高まっています。

検索機能強化のポイント:

  • サイト内検索ボックスの設置(ヘッダー部分に常設)
  • 検索結果の精度向上(関連性の高い記事を優先表示)
  • カテゴリ・タグによる絞り込み機能
  • 人気記事・関連記事のレコメンド機能

ユーザーが目的の情報に素早くアクセスできることで、滞在時間延長・直帰率低下につながります。

(3) DX推進とコンテンツマーケティングの連携

経済産業省のDX(Digital Transformation)定義によると、DXとは「データとデジタル技術を活用して製品・サービス・ビジネスモデルを変革すること」です。

オウンドメディアとDXの連携:

  • マーケティングデータの蓄積・分析(GAデータ、MAツール連携)
  • AIを活用したコンテンツ最適化(タイトル・見出しのA/Bテスト)
  • パーソナライゼーション(ユーザー属性に応じたコンテンツ出し分け)
  • 業務プロセスのデジタル化(コンテンツ制作フローの効率化)

DX推進に伴い、コンテンツマーケティングへの投資が加速しています。

(4) 長期的視点での運営(半年〜1年で成果)

オウンドメディアの成果は半年〜1年かかることが一般的です。短期的な成果を求める場合には向いていません。

運営タイムライン:

0〜3ヶ月(立ち上げ期):

  • 初期コンテンツの蓄積(20〜30記事)
  • 記事公開ペースの確立
  • アクセス解析の設定
  • 効果はまだ限定的

3〜6ヶ月(成長期):

  • 検索エンジンでの評価が徐々に向上
  • 一部の記事で上位表示開始
  • PV数が徐々に増加
  • 改善サイクルの確立

6ヶ月〜1年(成果期):

  • 安定したアクセス数の獲得
  • リード獲得・問い合わせの増加
  • コンテンツ資産が蓄積され、相乗効果が発生
  • ROI(投資対効果)が見え始める

成功事例のferretも、6ヶ月で100万PVを達成しましたが、これは例外的に早い成果です。一般的には1年程度の継続を前提に計画することが推奨されます。

6. まとめ:自社に合ったオウンドサイト戦略のポイント

オウンドサイトとオウンドメディアの違いを理解し、自社の目的に合った戦略を立てることが重要です。

オウンドサイトとオウンドメディアの違い:

  • オウンドサイト = 企業が所有するWebサイト全体
  • オウンドメディア = その中の情報発信機能(マーケティング目的)
  • ホームページ = 会社情報公開、オウンドメディア = 購買行動促進

成功のポイント:

  • 目的を明確にする(ブランディング、リード獲得、採用など)
  • ターゲット読者のニーズを深く理解する
  • 構築費用・運用コストを事前に試算する(構築50〜300万円、運用90〜130万円/月)
  • CMSプラットフォームを活用し、社内リソースで運営できる体制を構築する
  • 長期的視点で運営する(半年〜1年で成果を判断)

次のアクション:

  • 自社に必要なのはコーポレートサイト(情報公開)かオウンドメディア(マーケティング)かを判断する
  • 目的・KPI・KGIを明確に設定する
  • 成功事例を3〜5社調査し、参考になるポイントを抽出する
  • 構築費用・運用コストを試算し、経営層の承認を得る
  • 社内リソースと外注のバランスを検討し、運用体制を構築する

自社の目的に合ったオウンドサイト・オウンドメディア戦略で、長期的な成長を実現しましょう。

※この記事は2025年11月時点の情報です。最新の市場動向・費用は各種調査会社・制作会社に確認してください。

よくある質問

Q1オウンドサイトとオウンドメディアの違いは何か?

A1オウンドサイトは企業が所有するWebサイト全体(コーポレートサイト、サービスサイト、ECサイト等を含む広い概念)です。オウンドメディアはその中の情報発信機能で、購買行動を促すマーケティング目的を持ちます。ホームページは会社情報公開が主目的ですが、オウンドメディアはリード獲得・ブランディング・顧客エンゲージメントなどのマーケティング目的です。この目的の違いが本質的な差です。

Q2オウンドサイト構築にかかる費用はどれくらい?

A2構築費用は50万円〜300万円、月間運用コストは90〜130万円が目安です(2025年時点)。シンプルなWebサイトなら50万円程度から可能です。CMSプラットフォーム(WordPress、Movable Type等)を使えば専門技術なしでも構築できます。ただし、記事本数・外注割合により大きく変動するため、最新の料金は制作会社に確認してください。

Q3オウンドサイトで成果が出るまでどのくらいかかる?

A3一般的に半年〜1年程度かかります。立ち上げから3ヶ月は初期コンテンツの蓄積期間、3〜6ヶ月で一部の記事が上位表示開始、6ヶ月〜1年で安定したアクセス数とリード獲得が見え始めます。ferretの事例では6ヶ月で月間100万PV達成しましたが、これは例外的に早い成果です。株式会社宣伝会議の調査では82.1%が効果ありと回答していますが、短期的な成果を求める場合は不向きです。

Q4BtoB企業にもオウンドメディアは有効か?

A4有効です。2024年2月の調査によると、東証プライム市場企業の40%がオウンドメディアを運用中で、BtoB企業の導入も増加傾向にあります。長期的なリード獲得、ブランディング強化、専門性のアピールに効果的です。成果が出るまで半年〜1年かかりますが、コンテンツが資産として蓄積されるため、投資対効果は時間とともに向上します。

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Decisense編集部

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