「オウンド」って何?マーケティング用語がよく分からない...
マーケティング担当者になったばかりの方が、「オウンド」「ペイド」「アーンド」といった用語に戸惑うことは珍しくありません。「オウンドって何の略?」「どういう意味?」「ホームページとどう違うの?」といった疑問は、誰もが通る道です。
この記事では、オウンドメディアの基本概念、トリプルメディア戦略の全体像、効果的な活用方法まで、初心者にも分かりやすく解説します。
この記事のポイント:
- オウンド(Owned)=「所有する」という意味の英語
- オウンドメディアは自社が所有・運営するメディア(Webサイト、ブログ等)
- トリプルメディア(オウンド・ペイド・アーンド)を統合的に活用することが重要
- コンテンツが蓄積される資産型であることがペイド(広告)との大きな違い
- 東証プライム企業の40%がオウンドメディアを運営中(2024年調査)
1. オウンドメディアとは何か
まずは、オウンドメディアの基本定義を理解しましょう。
(1) オウンドメディアの基本定義
オウンドメディア(Owned Media)とは、企業が自社で所有・運用するメディアのことです。
含まれるもの:
- Webサイト・企業ブログ
- コーポレートサイト
- メールマガジン
- アプリ
- 会員サイト・カスタマーポータル
- パンフレット・カタログ(印刷物も含む)
特徴:
- 企業が独自ドメインを保有し、完全にコントロールできる
- 掲載内容・デザイン・機能を自由に設計できる
- 広告費がかからず、コンテンツが資産として蓄積される
- 外部プラットフォームのアルゴリズム変更の影響を受けにくい
(2) ホームページとの違い
ホームページとオウンドメディアの関係:
広義では、ホームページ(企業公式サイト)もオウンドメディアに含まれます。ただし、一般的には以下のように使い分けられることが多いです。
ホームページ(コーポレートサイト):
- 会社概要、事業紹介、IR情報、採用情報などの基本情報を掲載
- 「名刺」のような役割
- 更新頻度は低め(四半期決算、新製品発表時など)
オウンドメディア(狭義):
- ブログ形式の記事コンテンツを継続的に発信
- 顧客に役立つ情報(ハウツー、業界トレンド、事例紹介など)
- 更新頻度は高め(週1本〜毎日)
- マーケティング目的(リード獲得、ブランディング)
関係性: コーポレートサイト(ホームページ)の一部にオウンドメディア(ブログセクション)を設置するケースが一般的です。
2. オウンド(Owned)の意味と語源
「オウンド」という言葉の意味を理解することで、概念が明確になります。
(1) Owned = 所有する
Ownedは英語で「所有する」という意味です。
- Own(動詞): 所有する、持つ
- Owned(過去分詞・形容詞): 所有された、自分のもの
- Owned Media: 所有されたメディア = 自社が所有するメディア
対比:
- Rented Media(借りているメディア): SNSプラットフォーム、YouTubeチャンネルなど
- Paid Media(支払っているメディア): 広告枠
(2) 自社で管理・運営できるメディア
Ownedの本質は「自社で完全にコントロールできる」点にあります。
自社コントロールのメリット:
- 掲載内容を自由に決められる(外部の審査不要)
- デザイン・レイアウトを自由に変更できる
- データ・顧客情報を自社で保有できる
- プラットフォームの仕様変更に左右されない
外部プラットフォームのリスク:
- FacebookやInstagramは、運営企業(Meta)のアルゴリズム変更で突然リーチが低下することがある
- プラットフォームが終了すれば、蓄積したコンテンツも失われる
- オウンドメディアは自社資産であり、そのようなリスクがない
3. トリプルメディア戦略の全体像
オウンドメディアは、トリプルメディア戦略の一部として位置づけられます。
(1) オウンドメディア(Owned Media):自社所有
特徴:
- 自社が所有・運営するメディア
- コンテンツが蓄積される(資産型)
- 広告費がかからない(運営コストのみ)
- 成果が出るまで時間がかかる(半年〜1年)
メリット:
- 長期的な資産となる
- ブランディング・信頼構築に有効
- SEOで検索流入を獲得できる
デメリット:
- 立ち上げに時間とコストがかかる
- 継続的なコンテンツ制作が必要
- 拡散力が弱い
(2) ペイドメディア(Paid Media):広告出稿
特徴:
- 費用を払って広告を掲載するメディア
- リスティング広告、ディスプレイ広告、SNS広告など
- 即効性がある(広告を出せば即アクセス増加)
- 費用を止めれば効果もなくなる
メリット:
- 短期間で多くのユーザーにリーチできる
- ターゲティングが精緻(年齢・性別・興味関心で絞り込み)
- 効果測定がしやすい
デメリット:
- 継続的なコストがかかる
- 広告ブロッカーの普及で効果が低下傾向
- ユーザーの広告離れが進んでいる
(3) アーンドメディア(Earned Media):SNS・口コミ
特徴:
- ユーザーや第三者が情報発信するメディア
- SNS(X、Instagram、Facebook等)、口コミサイト、レビューサイト
- 企業が直接コントロールできない
- 信頼性が高い(「企業の宣伝」ではなく「第三者の評価」)
メリット:
- 拡散力が強い(シェア・リツイート)
- 信頼性が高い(第三者の声)
- コストがかからない(ユーザーが自発的に発信)
デメリット:
- 企業がコントロールできない(ネガティブ情報も拡散される)
- 炎上リスクがある
- 情報が流れやすく、蓄積されにくい
(4) 3つのメディアの連携方法
トリプルメディアは、それぞれの弱点を補い合うように連携させることが重要です。
連携の例:
1. ペイド広告 → オウンドメディア:
- 広告で認知獲得し、オウンドメディアで詳細情報を提供
- 広告で興味を持ったユーザーをオウンドメディアに誘導
2. オウンドメディア → アーンド(SNS):
- オウンドメディアで作成した記事をSNSで拡散
- SNS投稿に記事URLを添付し、オウンドメディアへ誘導
3. アーンド(SNS) → オウンドメディア:
- SNSで話題になった内容をオウンドメディアで深掘り記事化
- ユーザーの声を拾い、FAQ記事を作成
4. オウンドメディア → ペイド広告:
- オウンドメディアで反応の良かったコンテンツを広告化
- 成果の出たコンテンツに広告費を投下して拡散
4. オウンドメディアの具体例と特徴
実際のオウンドメディアの形態を見ていきましょう。
(1) Webサイト・ブログ
最も一般的な形態:
- 企業公式サイト内にブログセクションを設置
- WordPress等のCMS(コンテンツ管理システム)で運営
- 記事を継続的に公開し、SEO流入を獲得
成功事例:
- ferret: Webマーケティング情報発信、6ヶ月で月間100万PV達成
- サイボウズ式: 働き方・チームワークをテーマ、ブランディング・採用に成功
- 北欧、暮らしの道具店: ライフスタイル提案型、月間1,600万アクセス
(2) メールマガジン
顧客との定期的な接点:
- 会員登録したユーザーに定期的に情報発信
- 新着記事のお知らせ、限定情報、セミナー案内など
- 開封率・クリック率で効果測定が可能
活用のポイント:
- オウンドメディアの記事要約をメルマガで配信し、本文へ誘導
- Webサイト訪問者をメルマガ登録に誘導し、継続的な関係構築
(3) アプリ・会員サイト
より深いエンゲージメント:
- 専用アプリや会員限定サイトで情報提供
- プッシュ通知で新着情報を配信
- 顧客データを蓄積し、パーソナライズ化
活用例:
- ECサイトの会員向けコンテンツ
- SaaS製品のカスタマーポータル(使い方ガイド、FAQ等)
(4) コンテンツが蓄積できる点がペイドとの違い
オウンドメディアの最大の特徴は、コンテンツが蓄積される「資産型」である点です。
ペイド広告との比較:
ペイド広告:
- 費用を払っている期間だけ効果がある
- 予算を止めれば、即座に効果もなくなる
- 一時的な施策
オウンドメディア:
- 一度作成したコンテンツは半永久的に残る
- 過去記事も検索エンジン経由で継続的にアクセスされる
- 記事が蓄積されるほど、SEO効果とトラフィックが向上
- 長期的な資産
投資対効果(ROI)の違い:
- 広告: 投下した費用に対し、その期間だけ効果が出る
- オウンドメディア: 初期投資は必要だが、時間とともに投資対効果が向上
5. オウンドメディアを成功させる運用のポイント
90%のオウンドメディアは失敗すると言われています。成功させるためのポイントを押さえましょう。
(1) 目的を明確にする(認知・リード獲得・ブランディング)
まず、「何のためにオウンドメディアを運営するのか」を明確にします。
目的の例:
- ブランディング: 業界での認知度向上、専門家としてのポジション確立
- リード獲得: 見込み顧客の情報取得、問い合わせ増加
- 採用: 応募者数増加、採用候補者の質向上
- 顧客教育: 既存顧客向けに製品の使い方を発信、満足度向上
目的が不明確だと、コンテンツの方向性がブレて、効果が薄れます。
(2) KGI・KPIを設定する
KGI(最終目標)とKPI(中間指標)を設定し、定期的に進捗をチェックします。
KGI(Key Goal Indicator)の例:
- 年間リード獲得数100件
- 採用応募者数を前年比150%に
- ブランド認知度を業界内で上位3社に
KPI(Key Performance Indicator)の例:
- 月間PV数: 10万PV
- 月間記事公開数: 月20本
- 平均滞在時間: 3分以上
- コンバージョン率: 2%
KPIをモニタリングし、達成できていない場合は改善策を検討します。
(3) 運用体制を整える(書く人・テーマ・時間・管理者)
継続的にコンテンツを発信するため、運用体制を整えます。
必要な要素:
- 書く人: 社内ライター、または外部ライター
- 書くテーマ: コンテンツカレンダーで3ヶ月先まで計画
- 書く時間: 専任者の業務時間確保、または外注
- 全体を管理する人: 編集長・責任者を配置
社内リソースで賄えない場合:
- 外部ライターに記事執筆を依頼
- デザイナーに画像制作を依頼
- SEOコンサルに戦略策定を依頼
完全外注ではなく、社内担当者を配置しつつ部分的に外注するバランスが推奨されます。
(4) 中長期的な視点で取り組む
オウンドメディアは中長期的な施策であり、半年〜1年が成果の目安です。
時期別の効果:
- 0-3ヶ月: 効果が限定的(アクセスほぼゼロも覚悟)
- 3-6ヶ月: 徐々に検索流入が増え始める
- 6ヶ月〜1年: 安定したアクセス・リード獲得が見込める
短期的な成果を期待すると挫折しやすいため、1年単位で予算を計画することが重要です。
6. まとめ:トリプルメディアの効果的な活用方法
オウンドメディアをトリプルメディア戦略の中で効果的に活用しましょう。
(1) どのメディアを優先すべきか
目的により優先順位が変わります。
即効性を求めるなら: ペイド広告
- 新製品発表、キャンペーン告知など、短期間で多くのユーザーにリーチ
信頼構築・ブランディングなら: オウンドメディア
- 長期的な資産となり、専門性・信頼性を構築
拡散を狙うなら: アーンド(SNS)
- シェア・リツイートで広く拡散、話題化
中長期的な視点では: オウンドメディアが優先度が高いと言えます。コンテンツが蓄積される資産型であり、投資対効果が時間とともに向上するためです。
(2) バランスの取り方
3つのメディアをバランスよく活用することが理想です。
推奨バランス:
- オウンドメディア: 基盤として必ず構築(月1-2本からでOK)
- ペイド広告: 初期認知獲得、または特定キャンペーン時に活用
- アーンド(SNS): オウンドメディアの記事をSNSで拡散、相乗効果を狙う
リソースが限られている場合:
- まずオウンドメディアを小規模で始める(月1-2本)
- 成果が見え始めたら、ペイド広告で拡散
- SNSは無料で始められるため、並行して活用
(3) 統合マーケティング戦略の考え方
トリプルメディアを個別に運用するのではなく、統合的に設計します。
統合戦略の例:
- オウンドメディアで質の高い記事を作成
- SNSで記事を拡散し、初期トラフィックを獲得
- 反応の良かった記事にペイド広告を投下し、さらに拡散
- オウンドメディアに流入したユーザーをメルマガ登録に誘導
- メルマガで継続的に関係を構築し、リード化
次のアクション:
- 自社の目的を明確にする(ブランディング、リード獲得、採用など)
- トリプルメディアの現状を棚卸しする(どのメディアを使っているか、どこが弱いか)
- オウンドメディアを未導入なら、月1-2本の小規模スタートを検討
- 社内担当者を1名配置し、運用体制を整える
- KGI・KPIを設定し、効果測定の仕組みを作る
トリプルメディアを統合的に活用し、効果的なマーケティングを実現しましょう。
※この記事は2025年11月時点の情報です。マーケティング用語や手法は変化するため、最新情報は専門書や業界メディアで確認してください。
