自社オウンドメディアを立ち上げたいけれど、何から始めれば良い?
B2B企業のマーケティング担当者や経営企画担当者の多くが、「自社オウンドメディアを立ち上げたい」「どのように進めれば良いか分からない」「成果が出るまでどれくらいかかるのか知りたい」という悩みを抱えています。
この記事では、自社オウンドメディアの立ち上げ方を、目的設定・ペルソナ設計・コンテンツ企画・CMS選定・運用体制構築まで、具体的なステップで解説します。
この記事のポイント:
- オウンドメディアは自社で保有・運営するメディア、特にブログ型のWebサイトを指すことが多い
- 立ち上げ費用は20万円〜300万円が相場、規模とカスタマイズ度合いによって変動
- 成果が出るまで6ヶ月〜1年かかることを前提に、中長期視点で運営する
- KPIはフェーズごとに設定(立ち上げ期:運用基盤構築、成長期:PV・UU増、成熟期:CV増)
- 2024年はリッチメディア化(動画・音声)でCVR1.8倍向上の事例あり
1. 自社オウンドメディアとは何か
自社オウンドメディアの基礎知識を解説します。
(1) オウンドメディアの定義
オウンドメディア(Owned Media)は、企業が自社で保有・運営するメディアの総称です:
広義のオウンドメディア:
- Webサイト全般(コーポレートサイト含む)
- SNSアカウント(企業公式アカウント)
- メールマガジン
- 会員向けアプリ
狭義のオウンドメディア(本記事での定義):
- ブログ型のWebサイト
- ユーザーに有益な情報を提供するメディア
- SEO・コンテンツマーケティングを通じて集客
(2) コーポレートサイトとの違い
オウンドメディアとコーポレートサイトは、発信内容と目的が異なります:
コーポレートサイト:
- 企業情報・IR情報・採用情報などの公式情報を掲載
- 企業の信頼性・透明性を示すことが主な目的
- 発信内容は企業の公式見解に限定される
オウンドメディア:
- ユーザーの悩みや疑問に応える情報を提供
- SEOで検索流入を獲得し、リード獲得・ブランディングを実現
- 発信内容の自由度が高い(業界トレンド、ノウハウ、事例等)
使い分け:
- コーポレートサイト:企業の基本情報を知りたいユーザー向け
- オウンドメディア:業界情報・課題解決方法を探しているユーザー向け
(3) トリプルメディア戦略における位置づけ
オウンドメディアは、トリプルメディア戦略の中核を担います:
トリプルメディア:
- Owned Media(オウンドメディア): 自社で保有・運営するメディア
- Paid Media(ペイドメディア): 費用を支払って利用する広告メディア
- Earned Media(アーンドメディア): SNSなど、ユーザーの自発的な情報拡散により獲得するメディア
連携の例:
- オウンドメディアでコンテンツを作成
- ペイドメディア(広告)で初期流入を獲得
- アーンドメディア(SNS)でユーザーが情報を拡散
- オウンドメディアへの継続的な流入を確保
2. 自社オウンドメディアを立ち上げるメリットと目的設定
自社オウンドメディアを立ち上げるメリットと、目的設定の重要性を解説します。
(1) 主なメリット(ブランディング・リード獲得・広告費削減等)
主なメリット:
ブランディング:
- 専門性・信頼性の向上
- 業界での認知度向上
- 企業のストーリーやビジョンの発信
リード獲得:
- SEOで検索流入を獲得
- 資料ダウンロード・問い合わせフォームでリード獲得
- 質の高いリード(既に自社に興味を持っているユーザー)を獲得
広告費削減:
- オーガニック流入により、広告費を削減
- 一度作成したコンテンツが長期的に流入を生む
- 広告に依存しない集客基盤を構築
採用強化:
- 企業文化・働き方の発信
- 求職者の企業理解を深める
- 採用ブランディング
(2) 目的の明確化(4つの典型的な目的)
運営目的を明確にすることが、成功の第一歩です:
典型的な目的:
- ブランディング: 認知度向上、専門性アピール
- リード獲得: 問い合わせ・資料ダウンロード増加
- 採用強化: 求職者へのアピール、採用コスト削減
- 広告宣伝費削減: オーガニック流入により広告費を削減
目的設定のポイント:
- 複数の目的を設定しても良いが、優先順位を明確にする
- 目的に応じてKGI(最終目標)を設定
- 運営目的が不明確だと、コンテンツの方向性がぶれる
(3) 中長期視点の重要性(成果まで6ヶ月〜1年)
オウンドメディアは中長期施策であり、短期的成果を期待すると失敗します:
成果が出るまでの期間:
- 一般的に6ヶ月〜1年が目安
- SEO効果が出るまで3〜6ヶ月
- リード獲得が安定するまで6ヶ月〜1年
短期的成果を期待すると失敗する理由:
- Googleのインデックスに時間がかかる
- ドメインオーソリティ(サイトの信頼性)の構築に時間がかかる
- コンテンツが蓄積されて初めて効果が出る
中長期視点での運営:
- 焦らず、継続的にコンテンツを作成
- PDCAサイクルで改善を続ける
- 経営層の理解を得て、長期的な投資として位置づける
3. 立ち上げの具体的なステップ
自社オウンドメディアの立ち上げを、6ステップで解説します。
(1) ステップ1:運営目的とKGIの設定
KGI(最終目標)の例:
- リード獲得数:月間100件
- 採用応募数:月間20件
- ブランド認知度:業界内認知率30%
設定のポイント:
- 測定可能な数値目標を設定
- 経営目標と連動させる
- 達成期限を明確にする
(2) ステップ2:ペルソナ設定とターゲット明確化
ターゲットとなる読者像を具体的に設定します:
ペルソナ設定の項目:
- 年齢・性別・職種・役職
- 抱えている課題・悩み
- 情報収集の方法(検索キーワード、SNS等)
- 購買プロセスのどの段階か(認知・検討・決定)
ペルソナ設定の例(B2B SaaS企業の場合):
- 30代、男性、マーケティング担当者
- 課題:リード獲得が頭打ち、広告費が増加
- 情報収集:Google検索「BtoB リード獲得 方法」
- 購買段階:検討段階(ツール比較中)
(3) ステップ3:チーム構築と役割分担
運営チームを編成し、役割を明確にします:
主な役割:
- 編集長:全体戦略・方向性の決定
- ライター:記事執筆(社内 or 外部委託)
- 編集者:記事の品質チェック・校正
- デザイナー:画像・インフォグラフィック作成
- エンジニア:サイト構築・保守
- SEO担当:キーワード調査・SEO施策
チーム規模の目安:
- 小規模(記事月2-5本):2-3名
- 中規模(記事月6-15本):4-6名
- 大規模(記事月16本以上):7名以上
(4) ステップ4:KPI設定(フェーズ別)
フェーズごとにKPIを設定します(詳細は「4. 運用体制の構築とKPI設定」で解説):
立ち上げ期(0-6ヶ月):
- 記事公開数:月10本
- PV:月1万PV
- UU:月5,000UU
成長期(6ヶ月-1年):
- PV:月10万PV
- UU:月5万UU
- オーガニック流入比率:70%
成熟期(1年以降):
- CV(コンバージョン):月100件
- CVR:3%
- リード獲得単価:3,000円
(5) ステップ5:プラットフォーム・CMS選定
CMS(コンテンツ管理システム)を選定します:
主要CMS:
- WordPress: 最も普及、プラグイン豊富、カスタマイズ性高い
- はてなブログPro: 簡単に始められる、SEOに強い
- note: シンプル、SNS連携が容易
- 自社開発CMS: 完全カスタマイズ可能(開発コスト高)
選定のポイント:
- カスタマイズ性(デザイン・機能)
- SEO機能(メタタグ設定、URL構造等)
- 運用のしやすさ(更新頻度・担当者のスキル)
- コスト(初期費用・月額費用)
推奨:
- 初めての場合:WordPress(プラグインで機能拡張可能)
- 簡単に始めたい場合:はてなブログPro、note
(6) ステップ6:コンテンツ企画と制作体制構築
コンテンツを企画し、制作体制を構築します:
コンテンツ企画のポイント:
- ペルソナの課題に応えるテーマを選定
- キーワード調査(検索ボリューム、競合分析)
- カテゴリ設計(3-5カテゴリが目安)
- コンテンツカレンダー作成(3ヶ月先まで計画)
制作体制:
- 社内ライター vs 外部委託の判断
- 編集フロー(企画→執筆→編集→公開)
- 品質基準の設定(文字数、参照元の数等)
(7) 立ち上げ費用の相場(20万円〜300万円)
立ち上げ費用は、規模とカスタマイズ度合いによって変動します:
費用相場:
- 小規模(20万円〜50万円): WordPressテンプレート活用、デザインカスタマイズ少なめ
- 中規模(50万円〜150万円): オリジナルデザイン、機能カスタマイズ
- 大規模(150万円〜300万円以上): 完全オリジナル、高度な機能実装
主な費用項目:
- サイト構築費用(デザイン・開発)
- CMS導入・設定費用
- 初期コンテンツ制作費用(10-20記事)
- ドメイン・サーバー費用
運用費用(月額):
- コンテンツ制作費用:月10万円〜50万円(記事数・外部委託度合いによる)
- サーバー・保守費用:月1万円〜5万円
4. 運用体制の構築とKPI設定
オウンドメディアの運用体制とKPI設定を解説します。
(1) フェーズ別KPI(立ち上げ期・成長期・成熟期)
フェーズごとに適したKPIを設定します:
立ち上げ期(0-6ヶ月):
- 目的:運用基盤の構築、コンテンツ蓄積
- KPI:
- 記事公開数:月10本
- PV:月1万PV
- UU:月5,000UU
成長期(6ヶ月-1年):
- 目的:PV・UU増加、SEO順位向上
- KPI:
- PV:月10万PV
- UU:月5万UU
- オーガニック流入比率:70%
- SNSシェア数:月100件
成熟期(1年以降):
- 目的:CV(コンバージョン)増加、ROI最大化
- KPI:
- CV(問い合わせ・資料DL):月100件
- CVR:3%
- リード獲得単価:3,000円
- リピーター率:30%
(2) SMART基準でのKPI設計
KPI設計にはSMART基準を活用します:
SMART基準:
- Specific(明確性): 曖昧でなく、明確な指標
- Measurable(測定可能): 数値で測定できる
- Achievable(達成可能): 現実的に達成可能な目標
- Relevant(関連性): KGI達成に関連する指標
- Time-bound(期限明確): 達成期限が明確
SMART基準を満たすKPI例:
- 良い例:「6ヶ月後に月間PV 10万達成」
- 悪い例:「アクセスを増やす」(曖昧、期限不明)
(3) 運用チームの編成と役割分担
運用チームの役割分担を明確にします:
主な役割:
- 編集長: 全体戦略、コンテンツ方針の決定
- ライター: 記事執筆(社内 or 外部委託)
- 編集者: 品質チェック、校正、SEO最適化
- デザイナー: アイキャッチ画像、インフォグラフィック作成
- 分析担当: Google Analytics分析、改善施策提案
運用体制の例(中規模チーム):
- 編集長:1名(社内)
- ライター:2名(社内)+ 外部委託(月5本)
- 編集者:1名(社内、編集長兼任も可)
- デザイナー:1名(外部委託)
- 分析担当:1名(社内、マーケター兼任も可)
(4) 定期的な更新と改善サイクル
定期的な更新とPDCAサイクルが重要です:
更新頻度:
- 立ち上げ期:週2-3本(月10本程度)
- 成長期:週3-4本(月15本程度)
- 成熟期:週2本+既存記事リライト(月10本程度)
改善サイクル(PDCA):
- Plan(計画): コンテンツ企画、KPI設定
- Do(実行): 記事作成・公開
- Check(評価): Google Analyticsで分析、KPI達成度確認
- Action(改善): 低パフォーマンス記事のリライト、新規テーマの企画
定期レビュー:
- 週次:PV・UU・CV数の確認
- 月次:KPI達成度確認、改善施策の実施
- 四半期:全体戦略の見直し
5. 成功事例と2024年のトレンド
B2B企業の成功事例と、2024年のトレンドを解説します。
(1) B2B企業の成功事例(ferret:月間350万UU等)
ferret(株式会社ベーシック):
- Webマーケティング情報メディア
- 月間350万UU・550万PV
- BtoBマーケターの約半数が認知
- SEO・コンテンツマーケティングで圧倒的な流入
SmartHR Mag(株式会社SmartHR):
- 人事労務関連の情報メディア
- 採用・労務管理のノウハウを発信
- 自社SaaSへの誘導に成功
成功事例の共通点:
- ペルソナ設定が明確
- 質の高いコンテンツを継続的に発信
- SEOで検索流入を獲得
- 自社サービスへの自然な誘導
(2) 2024年のトレンド(リッチメディア化・AI活用)
2024年のオウンドメディアトレンドを解説します:
リッチメディア化:
- 動画・音声コンテンツの導入が加速
- 滞在時間・CVRの向上(CVR1.8倍向上の事例あり)
- 視覚コンテンツ(インフォグラフィック、図解)の重要性増
AI活用:
- 生成AIによるコンテンツ量産
- パーソナライゼーション(ユーザー行動に応じたコンテンツ出し分け)
- 自動要約・翻訳
検索アルゴリズムの進化:
- Googleコアアップデート対応
- GA4完全移行(2023年7月にUA廃止)
- E-E-A-T(Experience, Expertise, Authoritativeness, Trustworthiness)重視
(3) 動画・音声コンテンツの導入(CVR1.8倍向上)
動画・音声コンテンツの導入効果:
導入のメリット:
- 滞在時間の延長(SEO評価向上)
- CVR向上(CVR1.8倍向上の事例あり)
- 情報伝達力の向上(テキストより理解しやすい)
活用例:
- 記事内に解説動画を埋め込み
- ポッドキャスト配信
- インタビュー動画
注意点:
- 制作コストがかかる
- 動画品質が低いと逆効果
- テキストコンテンツと併用(SEOはテキストが重要)
(4) SNS・UGC連携の強化
SNS・UGC(User Generated Content)との連携が重要です:
SNS連携:
- 記事公開時にSNSでシェア
- SNS専用のコンテンツ作成(Twitter、LinkedIn等)
- インフルエンサーとのコラボレーション
UGC活用:
- ユーザーのレビュー・感想を記事に掲載
- SNSでのユーザー投稿を収集・紹介
- コミュニティ形成(ユーザー同士の交流)
6. まとめ:自社オウンドメディアを成功させるポイント
自社オウンドメディアを成功させるためのポイントをまとめます。
成功のポイント:
- 運営目的を明確にし、KGI・KPIを設定する
- ペルソナを具体的に設定し、ターゲットのニーズに応える
- 成果が出るまで6ヶ月〜1年かかることを前提に、中長期視点で運営する
- フェーズごとにKPIを設定し、PDCAサイクルで改善を続ける
- 2024年トレンド(リッチメディア化・AI活用)を取り入れる
よくある失敗パターン:
- 短期的成果を期待し、3ヶ月で諦める
- 運営目的が不明確で、コンテンツの方向性がぶれる
- コンテンツの質が低く、SEO評価が上がらない
- 更新を停止し、読者が離れる
次のアクション:
- 運営目的とKGIを設定する
- ペルソナを具体的に設定する
- 運営チームを編成し、役割を明確にする
- CMS(WordPress等)を選定し、サイトを構築する
- コンテンツカレンダーを作成し、定期的に記事を公開する
- Google Analyticsで分析し、PDCAサイクルで改善を続ける
自社オウンドメディアを立ち上げ、ブランディング・リード獲得・採用強化を実現しましょう。
