オウンドメディアマーケティングとは?戦略設計と運用のポイント

著者: Decisense編集部公開日: 2025/12/3

オウンドメディアマーケティングを始めたいが、何から手をつけるべきか分からない

B2B企業のマーケティング責任者の多くが、オウンドメディアを活用した戦略の立案・実行を検討していますが、「目標設定はどうすればいい?」「どんな体制で運用すればいい?」「成果が出るまでどれくらいかかる?」といった疑問を抱えています。

この記事では、オウンドメディアマーケティングの定義から戦略設計、コンテンツ制作、配信、効果測定まで、B2B企業の実務担当者が知っておくべきポイントを解説します。

この記事のポイント:

  • オウンドメディアマーケティングは、企業が所有するメディアで情報発信し、顧客との関係を構築するマーケティング手法
  • 約40%の企業が運用中(2024年4月時点)で、ブランド認知向上やリード獲得に効果的
  • 成果が出るまでに最低6ヶ月〜1年、本格的には2-3年の中長期視点が必要
  • 戦略設計(目的・ターゲット・KPI)とSNS連携が成功の鍵
  • ferretは6ヶ月で月間100万PV、現在は月間500万PV超・月間2,500件以上のリード獲得を達成

1. オウンドメディアマーケティングとは:定義と重要性

(1) オウンドメディアマーケティングの定義:自社メディアでの情報発信と顧客関係構築

オウンドメディアマーケティングとは、企業が自身で所有・運営するメディア(Webサイト、ブログ、メールマガジン、会社発行の刊行物など)を通じて情報を発信し、顧客とのコミュニケーションを図りながら、ブランドの認知度や信頼性を高め、最終的に商品やサービスの購入につなげるマーケティング手法です。

Webサイトを通じての情報発信が特徴で、コンテンツ提供を通したユーザーとの関係構築が主な目的となります。広告のような一方的な発信ではなく、ユーザーにとって有益な情報を継続的に提供することで、信頼関係を築いていくアプローチです。

(2) 注目される背景:約40%の企業が運用中(2024年4月時点)

2024年4月時点で、約40%の企業がオウンドメディアを運用しており、今後も増加が見込まれています。注目される背景には、以下のような要因があります:

  • 広告費の高騰: Web広告のクリック単価が上昇し、継続的な広告出稿のコストが増加
  • 顧客の情報収集行動の変化: 購買前に自ら情報を収集する顧客が増加
  • BtoB企業の購買サイクルの長期化: 複数の意思決定者が関与するため、段階的な情報提供が必要

これらの変化により、企業が自らコンテンツを発信し、見込み客を育成する仕組みの重要性が高まっています。

(3) 主なメリット:ブランド認知向上・リード獲得・資産化・SEO効果

オウンドメディアマーケティングの主なメリットは以下の通りです:

ブランド認知度向上:

  • 専門性の高いコンテンツを継続的に発信することで、業界内での認知度が向上
  • 企業の価値観や専門知識を伝えることで、ブランドイメージを構築

リード獲得:

  • 有益な情報を求めて訪問したユーザーから、問い合わせや資料請求などのリードを獲得
  • ferretの事例では、月間2,500件以上のリード獲得を実現

長期的な資産化:

  • オウンドメディアの記事はオンライン上に残り続け、適切なSEO戦略で安定的にアクセスを集める資産となる
  • 広告は出稿を止めれば効果が消えるが、オウンドメディアは蓄積効果がある

SEO効果:

  • 質の高いコンテンツが検索エンジンで上位表示されることで、継続的な流入を獲得
  • ferretは立ち上げから6ヶ月で月間100万PVを達成し、現在は安定的に月間500万PV超を維持

ただし、成果が出るまでに時間がかかるため、短期的な成果を期待せず、中長期的な視点で運用する必要があります。

2. オウンドメディアとコンテンツマーケティング・トリプルメディアの関係

(1) オウンドメディアとコンテンツマーケティングの違い:媒体 vs 戦略

オウンドメディアとコンテンツマーケティングは混同されがちですが、以下のように明確に異なります:

オウンドメディア(Owned Media):

  • 企業が自ら所有するメディアそのもの(媒体)を指す
  • Webサイト、ブログ、メールマガジン、会社発行の刊行物などが該当

コンテンツマーケティング(Content Marketing):

  • コンテンツを活用したマーケティング戦略(施策)を指す
  • 有益な情報提供を通して、最終的にコンバージョンへとつなげることが目的
  • オウンドメディアだけでなく、SNSや動画プラットフォームなど様々な媒体で展開可能

簡潔に言えば、オウンドメディアは「どこで発信するか(媒体)」、コンテンツマーケティングは「何を発信するか(戦略)」という違いがあります。

(2) トリプルメディア戦略:オウンド・ペイド・アーンドの連携

オウンドメディアは、トリプルメディア戦略の一つとして位置づけられます:

オウンドメディア(Owned Media):

  • 企業が所有するメディア
  • 自由にコンテンツを発信できるが、初期の集客には工夫が必要

ペイドメディア(Paid Media):

  • 企業が費用を支払って利用する広告メディア
  • テレビCM、新聞広告、Web広告など
  • 即効性はあるが、出稿を止めれば効果が消える

アーンドメディア(Earned Media):

  • 消費者やメディアによって獲得されるメディア
  • SNS、口コミ、レビューなど
  • 信頼性は高いが、コントロールが難しい

効果的なマーケティングには、これら3つのメディアを連携させることが重要です。例えば、オウンドメディアで発信したコンテンツをSNS(アーンドメディア)で拡散し、必要に応じてWeb広告(ペイドメディア)で補完するといった組み合わせが考えられます。

(3) 全体的なマーケティング戦略の中での位置づけ

オウンドメディアマーケティングを成功させるには、全体的なマーケティング戦略の中での位置づけを明確にすることが重要です:

  • カスタマージャーニーのどの段階をカバーするか: 認知段階、検討段階、購買段階のいずれか、または複数か
  • 他の施策との役割分担: 広告は認知獲得、オウンドメディアは検討段階の情報提供、など
  • コンテンツマーケティング全体の中での役割: オウンドメディア以外のチャネル(SNS、動画など)との連携

これらを明確にすることで、戦略が明確になり、オウンドメディアの効果を最大化できます。

3. オウンドメディアマーケティングの戦略設計

(1) 目的設定:ブランディング・リード獲得・採用・顧客エンゲージメント

オウンドメディアの目的は、企業によって多様です。主な目的には以下のようなものがあります:

ブランド認知度向上:

  • 専門性の高いコンテンツで業界内での認知度を向上
  • 企業の価値観や専門知識を伝える

リード獲得:

  • 問い合わせや資料請求などの見込み客情報を獲得
  • BtoB企業では特に重要な目的

採用促進:

  • 企業文化や働き方を発信し、求職者に魅力を伝える
  • 採用ブランディングの一環として活用

顧客エンゲージメント向上:

  • 既存顧客に有益な情報を提供し、関係性を強化
  • カスタマーサクセスの一環として活用

目的を明確にすることで、コンテンツの方向性やKPIの設定が明確になります。

(2) ターゲット設定:ペルソナの具体化とカスタマージャーニー

ターゲット設定では、以下の要素を具体化します:

ペルソナの設定:

  • 年齢、役職、業種、企業規模などの基本属性
  • 抱えている課題や悩み
  • 情報収集の方法(検索エンジン、SNS、業界メディアなど)

例:「B2B企業のマーケティング責任者(経験3-10年、従業員50-500名規模)。オウンドメディアを活用したマーケティング戦略の立案・実行を検討中だが、目標設定や運用体制に不安がある」

カスタマージャーニーの設計:

  • 認知段階:どのようにして自社を知るか
  • 検討段階:どのような情報を求めているか
  • 購買段階:どのような判断基準で決定するか

各段階に応じたコンテンツを用意することで、見込み客を段階的に育成できます。

(3) KPI設定:PV・セッション・リード数・CVR・エンゲージメント

目的に応じて、以下のようなKPIを設定します:

アクセス指標:

  • PV(ページビュー):記事の閲覧数
  • セッション数:サイトへの訪問回数
  • ユニークユーザー数:訪問者の実人数

エンゲージメント指標:

  • 平均滞在時間:記事の読み込み度
  • 直帰率:1ページのみ見て離脱する割合
  • ページ/セッション:1訪問あたりの閲覧ページ数

コンバージョン指標:

  • リード数:問い合わせ、資料請求などの件数
  • CVR(コンバージョン率):訪問者のうちリードに転換した割合

SEO指標:

  • 検索順位:ターゲットキーワードでの検索順位
  • オーガニック流入数:検索エンジンからの流入数

ferretの事例では、6ヶ月で月間100万PV、現在は月間500万PV超・月間2,500件以上のリード獲得という具体的な数値を達成しています。

4. コンテンツ制作と配信の実践ステップ

(1) コンテンツ戦略:SEO・ユーザーニーズ重視の企画

コンテンツ戦略では、以下のポイントを重視します:

SEOを考慮したキーワード選定:

  • ターゲットが検索するキーワードを調査
  • 検索ボリューム、競合性を考慮して優先順位を決定
  • ロングテールキーワード(具体的な検索語)も狙う

ユーザーニーズの把握:

  • ターゲットが抱える課題や疑問を洗い出し
  • 検索意図(情報収集、比較検討、購買意欲など)に応じたコンテンツを企画

コンテンツの種類:

  • ハウツー記事:具体的な方法を解説
  • 比較記事:複数のツールや手法を公平に比較
  • 事例記事:成功事例や失敗事例を紹介
  • 用語解説記事:専門用語を分かりやすく説明

戦略が明確であれば、オウンドメディアの効果を最大化でき、目標に最短ルートでたどり着くことができます。

(2) 制作体制:社内リソース vs 外注の使い分け

コンテンツ制作の体制は、企業のリソースや目的によって異なります:

社内リソースで対応:

  • メリット:専門知識が深く、ブランドの理解が高い、コストを抑えられる
  • デメリット:他業務との兼務で継続が難しい、制作スキルが不足する場合がある

外注(ライター、制作会社)を活用:

  • メリット:専門的な制作スキル、継続的な制作体制を確保しやすい
  • デメリット:月額20-50万円程度のコストがかかる、専門知識の伝達に時間がかかる

ハイブリッド型:

  • 企画・監修は社内、執筆は外注
  • 初期は外注で立ち上げ、ノウハウが蓄積したら社内化

まずは小規模で始めて拡大するのが現実的です。

(3) 配信・プロモーション:SNS連携・メルマガ・リッチメディア活用

コンテンツを制作しただけでは、読者に届きません。配信・プロモーション施策も重要です:

SNS連携:

  • X(旧Twitter)、LinkedIn、Facebookなどで記事を拡散
  • 2024年のトレンドとして、SNS戦略の強化が重要視されている
  • 初期の拡散とエンゲージメント向上に効果的

メールマガジン:

  • 既存顧客やリードに新着記事を配信
  • 開封率やクリック率を測定し、コンテンツの改善に活用

リッチメディアの活用:

  • 2024年のトレンドとして、動画・音声などのリッチメディアの加速が注目されている
  • 記事に動画や音声を組み込むことで、エンゲージメントが向上

SEOの進化への対応:

  • 検索エンジンのアルゴリズム変化に対応した施策
  • E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼性)を意識したコンテンツ制作

SEOは長期的な資産形成、SNSは初期拡散とエンゲージメント向上に有効なため、両方を連携させるのが2024年のトレンドです。

5. 成功事例と失敗パターンの分析

(1) 成功事例:ferret(6ヶ月で100万PV、現在500万PV超・月間2,500件リード)

ferret(株式会社ベーシック)は、オウンドメディアマーケティングの代表的な成功事例です:

主な実績:

  • 立ち上げから6ヶ月で月間100万PVを達成
  • 現在は安定的に月間500万PV超を維持
  • 月間2,500件以上のリード獲得
  • 40万人以上の会員数

成功要因:

  • マーケティング担当者の課題に寄り添った実用的なコンテンツ
  • SEOを重視したキーワード戦略
  • 継続的な更新と品質維持
  • 会員登録の仕組みによるリード獲得

ただし、ferretの6ヶ月で100万PVという成果は、戦略設計が優れていた成功例であり、通常は1年以上かかることを理解しておく必要があります。

(2) 成功のポイント:明確な戦略・継続的運用・SNS連携・2024年トレンド対応

オウンドメディアマーケティングの成功には、以下のポイントが重要です:

明確な戦略設計:

  • 目的、ターゲット、KPIを明確に設定
  • カスタマージャーニーに沿ったコンテンツ企画

ユーザー重視のコンテンツ:

  • ターゲットの課題や疑問に応える実用的な情報
  • 専門性が高く、信頼できる情報源を引用

SNS連携:

  • コンテンツを積極的にSNSで拡散
  • エンゲージメントを高める施策

継続的な運用:

  • 定期的な更新と品質維持
  • データ分析に基づく改善

2024年トレンドへの対応:

  • リッチメディア(動画・音声)の活用
  • SEOの進化(E-E-A-T重視)への対応
  • SNS戦略の強化
  • 技術的進歩(AIツール活用など)の取り入れ

これらのポイントを押さえることで、成功確率が高まります。

(3) よくある失敗パターン:戦略不明確・短期成果期待・更新停止

オウンドメディアマーケティングでよくある失敗パターンには、以下のようなものがあります:

戦略が不明確:

  • 目的やターゲットが曖昧なまま始める
  • KPIを設定せず、効果測定ができない
  • 結果として、どんなコンテンツを作るべきか分からなくなる

短期的な成果を期待:

  • 最低6ヶ月〜1年、本格的な成果は2-3年の中長期視点が必要
  • 数ヶ月で成果が出ないと判断し、更新を停止してしまう

更新が停止:

  • 継続的なリソース確保ができず、更新が止まる
  • 古い情報のまま放置され、信頼性が低下

SEOのみに偏る:

  • SNS連携やリッチメディア活用を怠る
  • 2024年のトレンドに対応できず、競合に後れを取る

これらの失敗を避けるには、中長期的な視点で戦略を設計し、継続的に運用できる体制を整えることが重要です。

6. まとめ:オウンドメディアマーケティング成功のポイント

オウンドメディアマーケティングは、企業が所有するメディアで情報発信し、顧客との関係を構築するマーケティング手法です。約40%の企業が運用中(2024年4月時点)で、ブランド認知向上やリード獲得に効果的ですが、成果が出るまでに最低6ヶ月〜1年、本格的には2-3年の中長期視点が必要です。

成功のポイント:

  • 明確な戦略設計(目的・ターゲット・KPI)
  • ユーザー重視のコンテンツ制作
  • SNS連携とリッチメディア活用
  • 継続的な運用と改善
  • 2024年トレンド(SEOの進化、技術的進歩)への対応

次のアクション:

  • オウンドメディアの目的を明確にする(ブランディング、リード獲得、採用など)
  • ターゲットペルソナとカスタマージャーニーを設計する
  • KPIを設定し、測定可能な目標を立てる
  • 小規模で始めて、ノウハウを蓄積しながら拡大する
  • 成功事例を参考にしつつ、自社に合った戦略を構築する

戦略が明確であれば、オウンドメディアの効果を最大化でき、目標に最短ルートでたどり着くことができます。中長期的な視点で継続的に運用し、B2B企業のマーケティング活動の効率化とリード獲得の最大化を目指しましょう。

※この記事は2024年11月時点の情報です。トレンドや手法は今後変化する可能性があるため、最新情報は各種メディアや調査レポートをご確認ください。

よくある質問

Q1オウンドメディアマーケティングの立ち上げコストは?

A1CMS構築・デザインで数十万円〜、月額運用コストは外注で月20-50万円程度です。社内リソースで対応すれば削減可能ですが、品質確保が課題となります。まずは小規模で始めて拡大するのが現実的です。

Q2成果が出るまでの期間は?

A2最低6ヶ月〜1年、本格的な成果は2-3年の中長期視点が必要です。ferretは6ヶ月で100万PVを達成しましたが、これは戦略設計が優れていた成功例で、通常は1年以上かかります。

Q3オウンドメディアとコンテンツマーケティング、どちらを優先すべき?

A3オウンドメディアは媒体、コンテンツマーケティングは戦略なので、どちらか一方ではなく両方必要です。まずコンテンツマーケティング戦略を設計し、その実行手段としてオウンドメディアを運用します。

Q4SEOとSNS、どちらを重視すべき?

A4SEOは長期的な資産形成、SNSは初期拡散とエンゲージメント向上に有効です。両方を連携させるのが2024年のトレンドです。まずはSEOで土台を作り、SNSで拡散する戦略が効果的です。

Q5BtoB企業でもオウンドメディアマーケティングは効果的?

A5BtoB企業こそ効果的です。購買サイクルが長いBtoBでは、オウンドメディアで段階的に情報提供し、リードナーチャリングを行うことで商談化率が向上します。ferretなどBtoB成功事例も多くあります。

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Decisense編集部

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