オウンドメディアマーケティングを始めたいが、何から手をつけるべきか分からない
B2B企業のマーケティング責任者の多くが、オウンドメディアを活用した戦略の立案・実行を検討していますが、「目標設定はどうすればいい?」「どんな体制で運用すればいい?」「成果が出るまでどれくらいかかる?」といった疑問を抱えています。
この記事では、オウンドメディアマーケティングの定義から戦略設計、コンテンツ制作、配信、効果測定まで、B2B企業の実務担当者が知っておくべきポイントを解説します。
この記事のポイント:
- オウンドメディアマーケティングは、企業が所有するメディアで情報発信し、顧客との関係を構築するマーケティング手法
- 約40%の企業が運用中(2024年4月時点)で、ブランド認知向上やリード獲得に効果的
- 成果が出るまでに最低6ヶ月〜1年、本格的には2-3年の中長期視点が必要
- 戦略設計(目的・ターゲット・KPI)とSNS連携が成功の鍵
- ferretは6ヶ月で月間100万PV、現在は月間500万PV超・月間2,500件以上のリード獲得を達成
1. オウンドメディアマーケティングとは:定義と重要性
(1) オウンドメディアマーケティングの定義:自社メディアでの情報発信と顧客関係構築
オウンドメディアマーケティングとは、企業が自身で所有・運営するメディア(Webサイト、ブログ、メールマガジン、会社発行の刊行物など)を通じて情報を発信し、顧客とのコミュニケーションを図りながら、ブランドの認知度や信頼性を高め、最終的に商品やサービスの購入につなげるマーケティング手法です。
Webサイトを通じての情報発信が特徴で、コンテンツ提供を通したユーザーとの関係構築が主な目的となります。広告のような一方的な発信ではなく、ユーザーにとって有益な情報を継続的に提供することで、信頼関係を築いていくアプローチです。
(2) 注目される背景:約40%の企業が運用中(2024年4月時点)
2024年4月時点で、約40%の企業がオウンドメディアを運用しており、今後も増加が見込まれています。注目される背景には、以下のような要因があります:
- 広告費の高騰: Web広告のクリック単価が上昇し、継続的な広告出稿のコストが増加
- 顧客の情報収集行動の変化: 購買前に自ら情報を収集する顧客が増加
- BtoB企業の購買サイクルの長期化: 複数の意思決定者が関与するため、段階的な情報提供が必要
これらの変化により、企業が自らコンテンツを発信し、見込み客を育成する仕組みの重要性が高まっています。
(3) 主なメリット:ブランド認知向上・リード獲得・資産化・SEO効果
オウンドメディアマーケティングの主なメリットは以下の通りです:
ブランド認知度向上:
- 専門性の高いコンテンツを継続的に発信することで、業界内での認知度が向上
- 企業の価値観や専門知識を伝えることで、ブランドイメージを構築
リード獲得:
- 有益な情報を求めて訪問したユーザーから、問い合わせや資料請求などのリードを獲得
- ferretの事例では、月間2,500件以上のリード獲得を実現
長期的な資産化:
- オウンドメディアの記事はオンライン上に残り続け、適切なSEO戦略で安定的にアクセスを集める資産となる
- 広告は出稿を止めれば効果が消えるが、オウンドメディアは蓄積効果がある
SEO効果:
- 質の高いコンテンツが検索エンジンで上位表示されることで、継続的な流入を獲得
- ferretは立ち上げから6ヶ月で月間100万PVを達成し、現在は安定的に月間500万PV超を維持
ただし、成果が出るまでに時間がかかるため、短期的な成果を期待せず、中長期的な視点で運用する必要があります。
2. オウンドメディアとコンテンツマーケティング・トリプルメディアの関係
(1) オウンドメディアとコンテンツマーケティングの違い:媒体 vs 戦略
オウンドメディアとコンテンツマーケティングは混同されがちですが、以下のように明確に異なります:
オウンドメディア(Owned Media):
- 企業が自ら所有するメディアそのもの(媒体)を指す
- Webサイト、ブログ、メールマガジン、会社発行の刊行物などが該当
コンテンツマーケティング(Content Marketing):
- コンテンツを活用したマーケティング戦略(施策)を指す
- 有益な情報提供を通して、最終的にコンバージョンへとつなげることが目的
- オウンドメディアだけでなく、SNSや動画プラットフォームなど様々な媒体で展開可能
簡潔に言えば、オウンドメディアは「どこで発信するか(媒体)」、コンテンツマーケティングは「何を発信するか(戦略)」という違いがあります。
(2) トリプルメディア戦略:オウンド・ペイド・アーンドの連携
オウンドメディアは、トリプルメディア戦略の一つとして位置づけられます:
オウンドメディア(Owned Media):
- 企業が所有するメディア
- 自由にコンテンツを発信できるが、初期の集客には工夫が必要
ペイドメディア(Paid Media):
- 企業が費用を支払って利用する広告メディア
- テレビCM、新聞広告、Web広告など
- 即効性はあるが、出稿を止めれば効果が消える
アーンドメディア(Earned Media):
- 消費者やメディアによって獲得されるメディア
- SNS、口コミ、レビューなど
- 信頼性は高いが、コントロールが難しい
効果的なマーケティングには、これら3つのメディアを連携させることが重要です。例えば、オウンドメディアで発信したコンテンツをSNS(アーンドメディア)で拡散し、必要に応じてWeb広告(ペイドメディア)で補完するといった組み合わせが考えられます。
(3) 全体的なマーケティング戦略の中での位置づけ
オウンドメディアマーケティングを成功させるには、全体的なマーケティング戦略の中での位置づけを明確にすることが重要です:
- カスタマージャーニーのどの段階をカバーするか: 認知段階、検討段階、購買段階のいずれか、または複数か
- 他の施策との役割分担: 広告は認知獲得、オウンドメディアは検討段階の情報提供、など
- コンテンツマーケティング全体の中での役割: オウンドメディア以外のチャネル(SNS、動画など)との連携
これらを明確にすることで、戦略が明確になり、オウンドメディアの効果を最大化できます。
3. オウンドメディアマーケティングの戦略設計
(1) 目的設定:ブランディング・リード獲得・採用・顧客エンゲージメント
オウンドメディアの目的は、企業によって多様です。主な目的には以下のようなものがあります:
ブランド認知度向上:
- 専門性の高いコンテンツで業界内での認知度を向上
- 企業の価値観や専門知識を伝える
リード獲得:
- 問い合わせや資料請求などの見込み客情報を獲得
- BtoB企業では特に重要な目的
採用促進:
- 企業文化や働き方を発信し、求職者に魅力を伝える
- 採用ブランディングの一環として活用
顧客エンゲージメント向上:
- 既存顧客に有益な情報を提供し、関係性を強化
- カスタマーサクセスの一環として活用
目的を明確にすることで、コンテンツの方向性やKPIの設定が明確になります。
(2) ターゲット設定:ペルソナの具体化とカスタマージャーニー
ターゲット設定では、以下の要素を具体化します:
ペルソナの設定:
- 年齢、役職、業種、企業規模などの基本属性
- 抱えている課題や悩み
- 情報収集の方法(検索エンジン、SNS、業界メディアなど)
例:「B2B企業のマーケティング責任者(経験3-10年、従業員50-500名規模)。オウンドメディアを活用したマーケティング戦略の立案・実行を検討中だが、目標設定や運用体制に不安がある」
カスタマージャーニーの設計:
- 認知段階:どのようにして自社を知るか
- 検討段階:どのような情報を求めているか
- 購買段階:どのような判断基準で決定するか
各段階に応じたコンテンツを用意することで、見込み客を段階的に育成できます。
(3) KPI設定:PV・セッション・リード数・CVR・エンゲージメント
目的に応じて、以下のようなKPIを設定します:
アクセス指標:
- PV(ページビュー):記事の閲覧数
- セッション数:サイトへの訪問回数
- ユニークユーザー数:訪問者の実人数
エンゲージメント指標:
- 平均滞在時間:記事の読み込み度
- 直帰率:1ページのみ見て離脱する割合
- ページ/セッション:1訪問あたりの閲覧ページ数
コンバージョン指標:
- リード数:問い合わせ、資料請求などの件数
- CVR(コンバージョン率):訪問者のうちリードに転換した割合
SEO指標:
- 検索順位:ターゲットキーワードでの検索順位
- オーガニック流入数:検索エンジンからの流入数
ferretの事例では、6ヶ月で月間100万PV、現在は月間500万PV超・月間2,500件以上のリード獲得という具体的な数値を達成しています。
4. コンテンツ制作と配信の実践ステップ
(1) コンテンツ戦略:SEO・ユーザーニーズ重視の企画
コンテンツ戦略では、以下のポイントを重視します:
SEOを考慮したキーワード選定:
- ターゲットが検索するキーワードを調査
- 検索ボリューム、競合性を考慮して優先順位を決定
- ロングテールキーワード(具体的な検索語)も狙う
ユーザーニーズの把握:
- ターゲットが抱える課題や疑問を洗い出し
- 検索意図(情報収集、比較検討、購買意欲など)に応じたコンテンツを企画
コンテンツの種類:
- ハウツー記事:具体的な方法を解説
- 比較記事:複数のツールや手法を公平に比較
- 事例記事:成功事例や失敗事例を紹介
- 用語解説記事:専門用語を分かりやすく説明
戦略が明確であれば、オウンドメディアの効果を最大化でき、目標に最短ルートでたどり着くことができます。
(2) 制作体制:社内リソース vs 外注の使い分け
コンテンツ制作の体制は、企業のリソースや目的によって異なります:
社内リソースで対応:
- メリット:専門知識が深く、ブランドの理解が高い、コストを抑えられる
- デメリット:他業務との兼務で継続が難しい、制作スキルが不足する場合がある
外注(ライター、制作会社)を活用:
- メリット:専門的な制作スキル、継続的な制作体制を確保しやすい
- デメリット:月額20-50万円程度のコストがかかる、専門知識の伝達に時間がかかる
ハイブリッド型:
- 企画・監修は社内、執筆は外注
- 初期は外注で立ち上げ、ノウハウが蓄積したら社内化
まずは小規模で始めて拡大するのが現実的です。
(3) 配信・プロモーション:SNS連携・メルマガ・リッチメディア活用
コンテンツを制作しただけでは、読者に届きません。配信・プロモーション施策も重要です:
SNS連携:
- X(旧Twitter)、LinkedIn、Facebookなどで記事を拡散
- 2024年のトレンドとして、SNS戦略の強化が重要視されている
- 初期の拡散とエンゲージメント向上に効果的
メールマガジン:
- 既存顧客やリードに新着記事を配信
- 開封率やクリック率を測定し、コンテンツの改善に活用
リッチメディアの活用:
- 2024年のトレンドとして、動画・音声などのリッチメディアの加速が注目されている
- 記事に動画や音声を組み込むことで、エンゲージメントが向上
SEOの進化への対応:
- 検索エンジンのアルゴリズム変化に対応した施策
- E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼性)を意識したコンテンツ制作
SEOは長期的な資産形成、SNSは初期拡散とエンゲージメント向上に有効なため、両方を連携させるのが2024年のトレンドです。
5. 成功事例と失敗パターンの分析
(1) 成功事例:ferret(6ヶ月で100万PV、現在500万PV超・月間2,500件リード)
ferret(株式会社ベーシック)は、オウンドメディアマーケティングの代表的な成功事例です:
主な実績:
- 立ち上げから6ヶ月で月間100万PVを達成
- 現在は安定的に月間500万PV超を維持
- 月間2,500件以上のリード獲得
- 40万人以上の会員数
成功要因:
- マーケティング担当者の課題に寄り添った実用的なコンテンツ
- SEOを重視したキーワード戦略
- 継続的な更新と品質維持
- 会員登録の仕組みによるリード獲得
ただし、ferretの6ヶ月で100万PVという成果は、戦略設計が優れていた成功例であり、通常は1年以上かかることを理解しておく必要があります。
(2) 成功のポイント:明確な戦略・継続的運用・SNS連携・2024年トレンド対応
オウンドメディアマーケティングの成功には、以下のポイントが重要です:
明確な戦略設計:
- 目的、ターゲット、KPIを明確に設定
- カスタマージャーニーに沿ったコンテンツ企画
ユーザー重視のコンテンツ:
- ターゲットの課題や疑問に応える実用的な情報
- 専門性が高く、信頼できる情報源を引用
SNS連携:
- コンテンツを積極的にSNSで拡散
- エンゲージメントを高める施策
継続的な運用:
- 定期的な更新と品質維持
- データ分析に基づく改善
2024年トレンドへの対応:
- リッチメディア(動画・音声)の活用
- SEOの進化(E-E-A-T重視)への対応
- SNS戦略の強化
- 技術的進歩(AIツール活用など)の取り入れ
これらのポイントを押さえることで、成功確率が高まります。
(3) よくある失敗パターン:戦略不明確・短期成果期待・更新停止
オウンドメディアマーケティングでよくある失敗パターンには、以下のようなものがあります:
戦略が不明確:
- 目的やターゲットが曖昧なまま始める
- KPIを設定せず、効果測定ができない
- 結果として、どんなコンテンツを作るべきか分からなくなる
短期的な成果を期待:
- 最低6ヶ月〜1年、本格的な成果は2-3年の中長期視点が必要
- 数ヶ月で成果が出ないと判断し、更新を停止してしまう
更新が停止:
- 継続的なリソース確保ができず、更新が止まる
- 古い情報のまま放置され、信頼性が低下
SEOのみに偏る:
- SNS連携やリッチメディア活用を怠る
- 2024年のトレンドに対応できず、競合に後れを取る
これらの失敗を避けるには、中長期的な視点で戦略を設計し、継続的に運用できる体制を整えることが重要です。
6. まとめ:オウンドメディアマーケティング成功のポイント
オウンドメディアマーケティングは、企業が所有するメディアで情報発信し、顧客との関係を構築するマーケティング手法です。約40%の企業が運用中(2024年4月時点)で、ブランド認知向上やリード獲得に効果的ですが、成果が出るまでに最低6ヶ月〜1年、本格的には2-3年の中長期視点が必要です。
成功のポイント:
- 明確な戦略設計(目的・ターゲット・KPI)
- ユーザー重視のコンテンツ制作
- SNS連携とリッチメディア活用
- 継続的な運用と改善
- 2024年トレンド(SEOの進化、技術的進歩)への対応
次のアクション:
- オウンドメディアの目的を明確にする(ブランディング、リード獲得、採用など)
- ターゲットペルソナとカスタマージャーニーを設計する
- KPIを設定し、測定可能な目標を立てる
- 小規模で始めて、ノウハウを蓄積しながら拡大する
- 成功事例を参考にしつつ、自社に合った戦略を構築する
戦略が明確であれば、オウンドメディアの効果を最大化でき、目標に最短ルートでたどり着くことができます。中長期的な視点で継続的に運用し、B2B企業のマーケティング活動の効率化とリード獲得の最大化を目指しましょう。
※この記事は2024年11月時点の情報です。トレンドや手法は今後変化する可能性があるため、最新情報は各種メディアや調査レポートをご確認ください。
