オウンドメディアとブログの基本理解
「オウンドメディアとブログって何が違うの?」「うちの会社はどっちを始めるべき?」――B2B企業のマーケティング担当者から多く寄せられる疑問です。
オウンドメディアとブログは似ているようで、目的・コンテンツの方向性・運用体制が大きく異なります。オウンドメディアは明確なコンバージョン目的(問い合わせ、資料請求、購入など)を持ち、ターゲットユーザーに行動を起こさせることを目指します。一方、ブログは自社が発信したい内容を発信し、読んでもらうこと自体が目的です。
この記事では、オウンドメディアとブログの定義・違い・使い分け、立ち上げ手順、運用時の注意点までを体系的に解説します。
この記事のポイント:
- オウンドメディアは明確なコンバージョン目的があり「ユーザーファースト」でコンテンツを追加する
- ブログは自社が発信したい内容を発信し、読んでもらうこと自体が目的
- 目的、コンテンツの方向性、運用体制が決定的な3つの違い
- オウンドメディアの立ち上げは9ステップで実施、構築費は100万円〜300万円程度が一般的
- 成果が出るまで半年〜1年程度かかるため、中長期的な視点で運用する必要がある
オウンドメディアとブログの基本理解
(1) オウンドメディアの定義と役割
オウンドメディア(Owned Media)とは、企業が自社で管理・運営するメディアのことです:
広義のオウンドメディア:
- Webサイト、ブログ、メールマガジン、パンフレット、カタログなど、企業が所有するすべてのメディア
マーケティング施策としてのオウンドメディア:
- 企業が運営する「企業ブログ」を指すことが多い
- SEOやコンテンツを活用し、集客、ブランド強化、リード獲得を目指す
オウンドメディアの役割:
- 明確なコンバージョン目的: ターゲットユーザーに起こさせたいアクション(問い合わせ、資料請求、購入など)を設定
- ユーザーファースト: ターゲットユーザーの役に立つ情報を先回りして発信
- 中長期的な資産形成: 質の高いコンテンツを蓄積し、継続的に集客・リード獲得に寄与する資産を構築
(2) ブログの定義と特徴
ブログとは、自社(自分)が発信したい内容を発信し、読んでもらうこと自体を目的とするメディアです:
ブログの特徴:
- 自社が主人公: 会社の最新情報、イベント告知、社員紹介、業界ニュースへの意見など、自社視点のコンテンツが中心
- 読んでもらうことが目的: 特定のコンバージョンを狙うのではなく、読者とのコミュニケーションを重視
- 柔軟な運用: 兼任担当者や個人でも運用可能、短期的な情報発信に適している
ブログのメリット:
- 低コストで始められる(無料ブログサービスも利用可能)
- 社内の専門知識やノウハウを気軽に発信できる
- 企業の人間味や文化を伝えやすい
(3) 2024年のオウンドメディア動向(時代遅れではない)
2024年7月のイベント「2人の編集長が語る『10年続くオウンドメディアの作り方』」では、オウンドメディアが時代遅れではなく、企業のコミュニケーション戦略において欠かせない要素であると結論づけられました。
オウンドメディアが注目される背景:
- BtoB企業との相性: マーケティングプロセスが長期化するBtoB企業において、見込み客との接点を継続的に持つ手段として有効
- コンテンツマーケティングの成熟: 約1,500名のオウンドメディア運営者・編集者・ライターが参加する「オウンドメディア勉強会」コミュニティでコンテンツマーケティンググランプリが開催されるなど、ノウハウが蓄積されている
- 広告費の高騰: Web広告のクリック単価が上昇する中、自社でコンテンツを蓄積する方が中長期的にコストパフォーマンスが高い
(出典: Six Apart ブログ「2人の編集長が語る『10年続くオウンドメディアの作り方』の秘訣」2024年7月)
オウンドメディアとブログの決定的な3つの違い
(1) 目的の違い(コンバージョン獲得 vs 読んでもらうこと)
オウンドメディアの目的:
- 明確なコンバージョン獲得: 問い合わせ、資料請求、購入、メルマガ登録など、ターゲットユーザーに具体的なアクションを起こさせる
- リード獲得・育成: 見込み客を集め、段階的に商談化・受注につなげる
- ブランド強化: 専門性や信頼性を高め、業界での認知度を向上させる
ブログの目的:
- 読んでもらうこと自体が目的: 特定のコンバージョンを狙うのではなく、読者に情報を届けることが目標
- 情報発信・コミュニケーション: 会社の最新情報、業界ニュース、社員の想いなどを発信し、読者とのつながりを深める
(2) コンテンツの方向性の違い(ユーザーファースト vs 自社が主人公)
オウンドメディアのコンテンツ:
- ユーザーファースト: ターゲットユーザーの課題・ニーズに応えるコンテンツを先回りして発信
- SEOを重視: 検索キーワードをリサーチし、検索意図に沿ったコンテンツを作成
- 体系的な情報提供: ハウツー記事、比較記事、事例紹介など、ユーザーの意思決定を支援する情報を提供
ブログのコンテンツ:
- 自社が主人公: 会社のニュース、イベント告知、社員紹介、業界ニュースへの意見など、自社視点のコンテンツが中心
- 柔軟なテーマ: 特定のターゲットに絞らず、幅広いテーマを扱うことができる
- リアルタイム性: 最新情報やトレンドに即座に反応できる
(3) 運用体制の違い(専任チーム vs 兼任・個人)
オウンドメディアの運用体制:
- 専任チームの設置: 企画からライティング、分析まで一貫して担当する専任チームを新設することが推奨される
- 役割分担: 編集長、ライター、SEO担当、デザイナー、分析担当など、明確な役割分担
- 継続的な運用: 定期的にコンテンツを公開し、PDCAサイクルを回す
ブログの運用体制:
- 兼任・個人で運用: マーケティング担当者が兼任で運用したり、個人が担当することが多い
- 柔軟な運用: 記事の公開頻度やテーマを柔軟に調整できる
- 低コスト: 専任チームを設置しないため、人件費を抑えられる
オウンドメディアの立ち上げ手順と運用方法
(1) 立ち上げ9ステップ(目的明確化、体制構築、ペルソナ設定等)
オウンドメディアの立ち上げは以下の9ステップで実施します:
ステップ1: 目的を明確化する
- リード獲得、ブランド強化、採用強化など、何を達成したいのかを明確にする
- KPI(PV数、UU数、CV数など)を設定する
ステップ2: 社内体制を整える
- 専任チームを設置し、編集長、ライター、SEO担当などの役割を明確化する
- 外注を活用する場合は、パートナーとの連携体制を整える
ステップ3: ペルソナを設定する
- 商品やサービスを購入する理想的な顧客像を架空のキャラクターとして設定する
- 年齢、役職、業種、課題、ニーズなど、具体的に定義する
ステップ4: コンテンツ戦略を策定する
- ペルソナのニーズに応えるコンテンツテーマを企画する
- SEOキーワードをリサーチし、検索意図に沿ったコンテンツを設計する
ステップ5: サイトを構築する
- CMSを選定し、サイト構造を設計する(WordPress、Movable Typeなどが一般的)
- サーバー・ドメインを準備する
ステップ6: デザインを開発する
- ブランドイメージに合ったデザインを作成する
- ユーザビリティを重視し、読みやすいレイアウトを設計する
ステップ7: コンテンツを制作する
- コンテンツ戦略に基づいて記事を執筆する
- 画像、図表、動画などを活用し、わかりやすく伝える
ステップ8: 公開する
- サイトを公開し、SNSやメールマガジンで告知する
- Google Search Consoleに登録し、検索エンジンにインデックスさせる
ステップ9: 運用・改善する
- 定期的にコンテンツを公開し、アクセス解析を実施する
- PDCAサイクルを回し、継続的に改善する
(出典: GIG「オウンドメディアの立ち上げ手順9ステップ|費用や成功のコツも事例に基づき解説」2024年)
(2) 立ち上げ費用(100万円〜300万円程度)
オウンドメディアの立ち上げにかかる費用は、規模や要件により変動しますが、一般的には以下の通りです:
初期費用:
- サイト構築費: 100万円〜300万円程度(デザイン、システム開発、CMS導入を含む)
- コンテンツ制作費: 1記事あたり3万円〜10万円(ライター、編集、画像制作を含む)
- サーバー・ドメイン費: 年間数万円
運用費(月額):
- コンテンツ制作費: 月10万円〜50万円(月間記事数により変動)
- 運用・分析費: 月5万円〜20万円(アクセス解析、SEO施策、改善提案を含む)
コスト削減のポイント:
- 初期はWordPressなどのCMSを活用し、サイト構築費を抑える
- 社内ライターを育成し、外注費を削減する
- 無料ツール(Google Analytics、Google Search Consoleなど)を活用する
※執筆時点の参考値です。最新の費用感は複数の制作会社に見積もりを依頼することをおすすめします。
(3) 運用の3つのフェーズ(立ち上げ、成長、最適化)
オウンドメディアの運用は以下の3つのフェーズに分かれます:
フェーズ1: 立ち上げ(0〜6ヶ月)
- コンテンツを定期的に公開し、資産を蓄積する
- SEOの基盤を整え、検索エンジンにインデックスさせる
- アクセス解析を開始し、ユーザー行動を把握する
フェーズ2: 成長(6ヶ月〜1年)
- 検索順位が向上し、オーガニック流入が増加する
- リード獲得が安定化し、商談化につながる
- ユーザーフィードバックを収集し、コンテンツを改善する
フェーズ3: 最適化(1年以降)
- 効果の高いコンテンツに注力し、ROIを最大化する
- リライトやリニューアルで既存コンテンツの価値を向上させる
- データに基づいた戦略的な運用を実現する
(出典: Cone「オウンドメディア運用の成功法則。成果につなげる3つの運用フェーズを解説」2024年)
ブログとオウンドメディアの使い分け判断基準
(1) BtoB企業に適したメディア形態
BtoB企業はマーケティングプロセスが長期化する特性があるため、オウンドメディアと相性が良いとされています:
BtoB企業にオウンドメディアが適している理由:
- 長期的な関係構築: 見込み客との接点を継続的に持ち、段階的に信頼関係を構築できる
- 専門性のアピール: 業界ノウハウや事例を発信し、専門性や信頼性を高められる
- リード獲得・育成: ホワイトペーパーや資料ダウンロードを設置し、見込み客の情報を獲得できる
ブログが適している場合:
- 予算やリソースが限られている
- まずは情報発信を始め、反応を見ながら方向性を決めたい
- 社内の専門知識を気軽に発信したい
(2) リソース・予算に応じた選択
自社のリソース・予算に応じて、以下のように選択することを推奨します:
オウンドメディアを選ぶべきケース:
- 明確なコンバージョン目的(リード獲得、ブランド強化など)がある
- 専任チームを設置できる、または外注予算(月10万円以上)を確保できる
- 半年〜1年の中長期的な視点で取り組める
ブログを選ぶべきケース:
- 予算が限られている(月数万円以下)
- 兼任担当者で運用したい
- まずは情報発信を始め、成果が見えてきたらオウンドメディアへの移行を検討したい
段階的なアプローチ:
- まずブログで情報発信を開始
- アクセス数やリード獲得が増えてきたら、オウンドメディアとして本格化
- 専任チームを設置し、PDCAサイクルを回す体制を構築
(3) 成果が出るまでの期間(半年〜1年)
オウンドメディアは成果が出るまで半年〜1年程度かかるため、中長期的な視点が必要です:
期待される成果のタイムライン:
- 0〜3ヶ月: コンテンツ資産の蓄積、検索エンジンへのインデックス開始
- 3〜6ヶ月: 検索順位の向上、オーガニック流入の増加
- 6〜12ヶ月: リード獲得の安定化、ブランド認知の向上
短期的な成果を求めると失敗するリスク:
- 3ヶ月で成果が出ないと諦めてしまう
- 方向性を見失い、コンテンツの質が低下する
- 専任チームが解散し、運用が停止する
中長期的な視点で取り組むポイント:
- 経営層や関係者に「半年〜1年は必要」と事前に共有する
- 月次レポートで進捗を可視化し、PDCAサイクルを回す
- 短期的な成果(PV数、記事数)と中長期的な成果(CV数、商談化率)を分けて評価する
導入・運用時の注意点とコスト管理
(1) 目的・KPIの明確化の重要性
オウンドメディアを成功させるには、目的とKPIを明確にすることが最も重要です:
目的を明確にする:
- リード獲得、ブランド強化、採用強化など、何を達成したいのかを明確にする
- 複数の目的がある場合は、優先順位をつける
KPIを設定する:
- 定量指標: PV数、UU数、CV数、商談化数など
- 定性指標: ユーザーフィードバック、ブランド認知度の向上など
目的・KPIを明確にしないリスク:
- 方向性を見失い、コンテンツの質が低下する
- 成果が出ているのか判断できず、継続のモチベーションが低下する
- 経営層から「何のためにやっているのか」と問われ、予算を削減される
(2) 中長期的視点でのPDCAサイクル
オウンドメディアは中長期的な視点でPDCAサイクルを回すことが成功の鍵です:
Plan(計画):
- コンテンツ戦略を策定し、どのようなコンテンツをいつ公開するか計画する
- SEOキーワードをリサーチし、検索意図に沿ったコンテンツを設計する
Do(実行):
- コンテンツを制作し、定期的に公開する
- SNSやメールマガジンで告知し、流入を促進する
Check(評価):
- Google Analyticsでアクセス数、滞在時間、離脱率などを分析する
- Google Search Consoleで検索順位、クリック率を確認する
Action(改善):
- 効果の高いコンテンツに注力し、ROIを最大化する
- リライトやリニューアルで既存コンテンツの価値を向上させる
- ユーザーフィードバックを収集し、コンテンツ戦略を見直す
(3) 社内体制の整備とリソース確保
オウンドメディアを本気で運用するには、企画からライティング、分析までかなりの手間とコストが発生します:
社内体制の整備:
- 専任チームを設置し、編集長、ライター、SEO担当などの役割を明確化する
- 外注を活用する場合は、パートナーとの連携体制を整える
- 月次ミーティングで進捗を共有し、課題を解決する
リソース確保:
- 予算を確保し、継続的にコンテンツを制作できる体制を構築する
- 社内ライターを育成し、外注費を削減する
- 無料ツールを活用し、運用コストを抑える
経営層の理解と支援:
- 成果が出るまで半年〜1年かかることを事前に共有する
- 月次レポートで進捗を可視化し、成果を報告する
- 中長期的な投資として捉え、継続的に予算を確保する
まとめ:自社に最適なメディア戦略の選択
オウンドメディアとブログは、目的・コンテンツの方向性・運用体制が大きく異なります。自社の目的・リソース・予算を総合的に判断し、最適なメディア戦略を選択しましょう。
この記事のまとめ:
- オウンドメディアは明確なコンバージョン目的があり、「ユーザーファースト」でコンテンツを追加する
- ブログは自社が発信したい内容を発信し、読んでもらうこと自体が目的
- 目的、コンテンツの方向性、運用体制が決定的な3つの違い
- オウンドメディアの立ち上げは9ステップで実施、構築費は100万円〜300万円程度が一般的
- 成果が出るまで半年〜1年程度かかるため、中長期的な視点で運用する必要がある
次のアクション:
- 自社の目的(リード獲得、ブランド強化、採用強化など)を明確にする
- リソース・予算を整理し、オウンドメディア or ブログを選択する
- 9ステップに沿って立ち上げを進める(目的明確化、体制構築、ペルソナ設定など)
- 中長期的な視点でPDCAサイクルを回し、継続的に改善する
自社に最適なメディア戦略を選択し、コンテンツマーケティングの成功を実現しましょう。
