MAツールを導入したものの、うまく活用できていない...
マーケティングオートメーション(MA)ツールを導入したB2B企業の多くが、「導入したものの活用できていない」「何に使えばいいか分からない」という課題に直面しています。ツールを入れれば自動的にマーケティングが効率化されると期待していたものの、実際には運用フェーズで苦戦しているのが実態です。
この記事では、MA運用で成果を出すための実践的なノウハウを解説します。運用前の準備、段階的なアプローチ、必要な人員体制、よくある失敗パターンとその対策を具体的に紹介します。
この記事のポイント:
- MAツール導入後、「活用できていない」企業が多い実態がある
- 運用前に目的・目標・リード数・コンテンツ・営業連携の準備が必須
- 基本機能から始めて数年かけて高度な機能を活用する段階的アプローチが有効
- 運用体制は2-5名が標準、マーケ責任者とITリテラシー保有者が最低限必要
- 目標不明確・リード不足・運用設計欠如・人員不足・コンテンツ不足が典型的な失敗パターン
1. マーケティングオートメーション導入後によくある課題
MAツールを導入した企業が直面する典型的な課題を見ていきましょう。
(1) 導入したものの活用できていない実態
「頑張って導入したMAツールが運用できない」という声は多く聞かれます。導入しただけで満足してしまい、実際の運用フェーズで停滞してしまうケースが非常に多いのが実態です。
よくある状態:
- ツールにログインする頻度が減っていく
- 設定した機能をほとんど使っていない
- メール配信すらできていない
- データは蓄積されているが、分析・活用ができていない
これらの状態に陥る理由は、「ツールを導入すれば自動的にマーケティングが効率化される」という誤解にあります。
(2) ツールを入れれば自動化されるという誤解
MAツールは「自動化」という言葉から、「導入すれば勝手に成果が出る」と期待されがちです。しかし、実際には以下のような人的リソースと継続的な運用が不可欠です:
MAツールに必要な人的リソース:
- 目標設計: 何を達成したいのか、KPIをどう設定するか
- リード獲得: MAで育成する見込み顧客をどう集めるか
- コンテンツ制作: メール配信、ホワイトペーパー、ウェビナーなどのコンテンツ作成
- シナリオ設計: 見込み顧客の行動に応じた自動配信の仕組み設計
- 効果測定・改善: 配信結果を分析し、PDCAサイクルを回す
- 営業連携: MAで育成したリードを営業に引き渡し、商談化する
これらすべてに人間の判断と作業が必要であり、「ツールを入れるだけで自動化」というわけではありません。
(3) 運用フェーズで成果を出すために必要なこと
MA運用で成果を出すには、以下の3つが鍵となります:
- 運用前の準備: 目的・目標の明確化、リード数・コンテンツの確保、営業連携体制の構築
- 段階的なアプローチ: 基本機能から始めて、数年かけて高度な機能を活用
- 適切な運用体制: 2-5名のチーム構成、専任マーケターとITリテラシー保有者の配置
これらを順番に見ていきましょう。
2. MA運用を始める前の3つの準備
MA運用を成功させるには、運用開始前の準備が極めて重要です。
(1) 導入目的と目標を明確にする
「何となく効果がありそう」で導入すると、活用方法が分からず放置される原因になります。まずは、MAツールで何を達成したいのかを明確にしましょう。
具体的な目標例:
- リード獲得数: 月間100件 → 200件
- 商談化率: 5% → 10%
- メール開封率: 20% → 40%
- ナーチャリング期間: 平均6ヶ月 → 3ヶ月
目標が明確であれば、「どの機能をどう使うべきか」が見えてきます。また、効果測定の基準も明確になり、PDCAサイクルを回しやすくなります。
(2) リード数・コンテンツを確保する
MAツールは、十分なリード数とコンテンツがあって初めて効果を発揮します。
リード数の目安:
- 最低でも月間数十件以上のリード獲得が必要
- リード数が少ないと、セグメント分析やスコアリングの再現性を検証できない
- 導入前にリード獲得の方法(Web広告、SEO、展示会、ウェビナー等)を確立しておく
コンテンツの確保:
- メール配信用のテンプレート(業界情報、事例紹介、製品紹介等)
- ダウンロード資料(ホワイトペーパー、事例集、チェックリスト等)
- ウェビナー・セミナーの企画
リード数とコンテンツが不足していると、MAツールの機能を活かせず、「導入したものの何もできない」状態に陥ります。
(3) 営業部門との連携体制を構築する
MAツールで育成したリードを営業に引き渡し、商談化する連携体制が不可欠です。
営業連携のポイント:
- リード引き渡しの基準: スコアリングで何点以上になったら営業に渡すか
- 情報共有の方法: MAツールとSFA/CRMを連携し、リードの行動履歴を営業が確認できるようにする
- フィードバックの仕組み: 営業から「このリードは商談化した」「まだ早かった」などのフィードバックをもらい、スコアリング設定を改善
営業とマーケの連携が不足すると、MAで育成したリードが営業活動に活用されず、投資対効果が低下します。
3. MA運用の基本フロー:段階的アプローチで成功する
MA運用は、いきなり高度な機能を使うのではなく、段階的にステップアップするのが鉄則です。
(1) フェーズ1:基本機能(メール配信)から始める
まずは、MAツールの基本機能であるメール配信から始めましょう。
フェーズ1でやること:
- リストに対して一斉メール配信
- 開封率・クリック率の測定
- 配信タイミング(曜日・時間帯)の最適化
- メールコンテンツ(件名、本文、CTA)のA/Bテスト
期待される成果:
- メール配信の基本的なオペレーションが身につく
- どんなコンテンツが反応が良いかデータが蓄積される
- 開封率・クリック率の目安が分かる
このフェーズを数ヶ月〜半年程度続けて、基本的なメール配信に慣れることが重要です。
(2) フェーズ2:リードスコアリングとセグメント配信
基本的なメール配信に慣れたら、次はリードスコアリングとセグメント配信に進みます。
フェーズ2でやること:
- リードスコアリング: メール開封、リンククリック、資料ダウンロード、ウェビナー参加などの行動に点数を設定し、関心度を数値化
- セグメント配信: リードを属性(業種、企業規模、役職等)や行動(興味あるテーマ等)でセグメント分けし、セグメントごとに最適なメールを配信
期待される成果:
- 高スコアのリード(商談化の可能性が高い)を営業に優先的に渡せる
- セグメントごとに最適化されたメールで開封率・クリック率が向上
- 無駄な配信が減り、リードの離脱率が低下
成功事例では、このフェーズで開封率が20%以上向上し、最終的に平均開封率76%を達成した企業もあります(出典: シャノン)。
(3) フェーズ3:シナリオ自動化と高度な機能活用
フェーズ2まで定着したら、いよいよシナリオ自動化に取り組みます。
フェーズ3でやること:
- シナリオ設計: 「ホワイトペーパーをダウンロードしたら、3日後に関連する事例を紹介するメールを自動配信」など、見込み顧客の行動に応じた自動配信の仕組みを設計
- ナーチャリングキャンペーン: 長期的に複数のメールを段階的に配信し、徐々に関心を高める
- AI・予測分析: MAツールに搭載されたAI機能で、どのリードが商談化しやすいかを予測
期待される成果:
- 人手をかけずに、見込み顧客を自動的に育成できる
- ナーチャリング期間が短縮され、商談化までのスピードが向上
- 営業の負担が減り、高スコアのリードに集中できる
成功事例では、案件創出数が従来の2倍に増加した企業もあります(出典: シャノン)。
(4) PDCAサイクルで設計の妥当性を検証する
MA運用は一度設定して終わりではありません。導入後数ヶ月は設計の妥当性を検証しながら、継続的に改善することが重要です。
PDCAサイクルの回し方:
- Plan(計画): スコアリング設定、セグメント分け、シナリオ設計を計画
- Do(実行): 実際にメール配信、シナリオ実行
- Check(評価): 開封率、クリック率、商談化率を測定。営業からのフィードバックを収集
- Act(改善): 効果が低い設定を修正。高スコアでも商談化しないリードのスコア設定を見直す
このサイクルを月次または四半期ごとに回すことで、MAツールの効果を最大化できます。
4. 運用体制の作り方:必要な人員と役割
MA運用には、適切な人員体制が不可欠です。
(1) 推奨体制:2-5名のチーム構成
多くの企業では、2-5名程度の運用チームでMAツールを運用しています。2-3名で運用している企業が最も多い傾向です。
小規模体制(2-3名):
- マーケティング責任者(兼任可): 1名
- 実務担当者(メール配信、効果測定等): 1-2名
中規模体制(3-5名):
- マーケティング責任者: 1名
- メールマーケティング担当: 1名
- 効果測定・分析担当: 1名
- 顧客管理・営業連携担当: 1名
- コンテンツ制作担当: 1名(兼任可)
企業規模や扱うリード数に応じて、体制をスケールさせましょう。
(2) 必須役割:マーケ責任者とITリテラシー保有者
MA運用には、最低限以下の2つの役割が必要です:
マーケティング責任者:
- デジタルマーケティングの基本を理解している
- MAツールの目的・目標を設定し、戦略を立てられる
- 営業部門との連携を推進できる
ITリテラシーを持つ実務担当者:
- MAツールの設定(フォーム作成、メール配信、スコアリング設定等)ができる
- データの抽出・分析ができる
- トラブル時に基本的な対応ができる
この2つの役割が不在だと、運用が属人化したり、技術的な問題で停滞したりするリスクが高まります。
(3) 業務別の担当配置(メールマーケ、効果測定、顧客管理等)
運用が本格化してきたら、業務別に担当を配置することで、各業務の専門性を高められます。
業務別の担当例:
- メールマーケティング担当: メール配信、件名・本文のA/Bテスト、配信タイミング最適化
- 効果測定・分析担当: 開封率・クリック率・商談化率の測定、レポート作成、改善提案
- 顧客管理・営業連携担当: リードのセグメント管理、スコアリング設定、営業へのリード引き渡し
- コンテンツ制作担当: ホワイトペーパー、事例集、ウェビナー企画、メールコンテンツ作成
ただし、小規模体制では1人が複数の業務を兼任することが一般的です。
(4) 外部委託の選択肢とメリット・デメリット
専門知識を持った担当者が社内にいない場合、外部委託は有力な選択肢です。
外部委託のメリット:
- MAツールの専門知識を持つプロに任せられる
- 社内の人員リソースを節約できる
- ベストプラクティスに基づいた運用が期待できる
外部委託のデメリット:
- 運用費用が追加で発生(月額数十万円〜)
- 営業連携やコンテンツ制作は社内で担う必要があり、完全な丸投げは困難
- ノウハウが社内に蓄積されにくい
外部委託を選ぶ場合でも、社内に最低限のマーケティング担当者を配置し、委託先と連携する体制が必要です。
5. MA運用でよくある失敗とその対策
MA運用の典型的な失敗パターンを知り、事前に対策しましょう。
(1) 失敗パターン1:目標不明確で活用方法が分からない
失敗の内容: 「何となく効果がありそう」で導入したものの、「何に使えばいいか分からない」状態に陥る。ツールが放置される。
対策:
- 導入前に目的・目標を明確にする(リード獲得数、商談化率、メール開封率など具体的な数値目標)
- 目標に対してどの機能をどう使うかを事前に設計する
- 定期的に目標達成状況を確認し、PDCAサイクルを回す
(2) 失敗パターン2:リード数不足で効果検証ができない
失敗の内容: リード数が少ないため、セグメント分析やスコアリングの再現性を検証できず、MAの効果を実感できない。
対策:
- 導入前にリード獲得方法を確立する(Web広告、SEO、展示会、ウェビナー等)
- 月間数十件以上のリード獲得を目指す
- リード獲得とMA運用を並行して進める
(3) 失敗パターン3:運用設計がなく誤ったアプローチをする
失敗の内容: リード獲得方法、セグメント分け、アプローチ方法を設計せずに運用開始。誤ったセグメントに誤ったメッセージを配信し、リードの離脱率が上がる。
対策:
- 運用開始前に運用設計を行う(リード獲得方法、セグメント分け、配信シナリオ等)
- ペルソナ(ターゲット顧客像)を明確にし、セグメントごとに最適なメッセージを設計
- 配信前にテスト配信を行い、問題がないか確認
(4) 失敗パターン4:人員・リソース不足で運用が停滞する
失敗の内容: マーケター不在、営業が兼任、専任なしの状態で運用が停滞。運用が属人化し、担当者が退職すると運用が止まる。
対策:
- 最低限マーケ責任者とITリテラシー保有者の2名を配置
- 兼任の場合は、MA運用に割ける時間を明確にし、無理のない運用計画を立てる
- 運用マニュアルを作成し、属人化を防ぐ
- 必要に応じて外部委託を検討
(5) 失敗パターン5:コンテンツ不足でキャンペーンが実施できない
失敗の内容: メール配信用のコンテンツ、ホワイトペーパー、ウェビナーなどのコンテンツが不足し、キャンペーンが実施できない。
対策:
- 導入前にコンテンツを準備する(メールテンプレート、ダウンロード資料等)
- コンテンツ制作担当を配置し、定期的にコンテンツを増やす
- 既存の営業資料や製品資料をダウンロード資料として活用
- 外部ライターにコンテンツ制作を委託する
6. まとめ:MA運用で成果を出すための心構え
MA運用で成果を出すには、正しい期待値と心構えが重要です。
(1) 中長期視点で評価する(半年〜1年)
MAツールは、導入後すぐに売上が劇的に向上するわけではありません。短期的な劇的改善は期待薄です。
現実的な期待値:
- 導入後数ヶ月: 設計の妥当性を検証し、改善を継続
- 導入後半年: 開封率・クリック率が徐々に向上、商談化の兆しが見える
- 導入後1年: 商談化率が目に見えて向上、案件創出数が増加
MA運用は中長期的な投資であり、半年〜1年の視点で評価することが重要です。
(2) 自社の運用リソース・知識レベルに合ったツールを選ぶ
MAツール選定時は、高機能なツールを選ぶのではなく、自社の運用リソース・知識レベルに合ったツールを選ぶことが重要です。
ツール選定のポイント:
- 過剰なスペックのツールは運用負荷を高める
- UIが直感的で、社内の担当者が使いこなせるか
- サポート体制が充実しているか(日本語サポート、オンボーディング支援等)
- 営業・マーケの連携がしやすいか(SFA/CRMとの連携機能)
高機能なツールを選んだものの、運用リソースが不足して使いこなせないケースは非常に多いため、注意が必要です。
(3) 成功事例:開封率76%、案件創出2倍の実績
MA運用に成功した企業の実績を見てみましょう。
成功事例(出典: シャノン):
- 導入後約半年で開封率が20%以上向上
- 最終的に平均開封率76%を達成
- 案件創出数が従来の2倍に増加
- LINE連携によりイベント参加回数も増加
これらの成功事例は、適切な運用体制・PDCAサイクル・営業連携を実現した結果です。ツールを導入しただけでは達成できず、人的リソースと継続的な改善が不可欠であることが分かります。
MA運用で成果を出すための心構えまとめ:
- 「ツールを入れれば自動化される」という誤解を捨てる
- 運用前の準備(目的・目標、リード数、コンテンツ、営業連携)を徹底する
- 基本機能から始めて、数年かけて段階的に高度な機能を活用する
- 2-5名の運用体制を確保し、専任マーケターとITリテラシー保有者を配置
- 中長期視点(半年〜1年)で評価し、PDCAサイクルを回し続ける
次のアクション:
- 自社のMA運用の現状を棚卸しする(目標、リード数、コンテンツ、運用体制)
- 不足している準備・体制を整える
- 基本機能(メール配信)から始めて、段階的にステップアップする
- 営業部門との連携を強化し、MAデータを商談化に活用する
MA運用は一朝一夕にはいきませんが、適切な準備と体制、継続的な改善により、確実に成果を出すことができます。まずは基本機能から始めて、少しずつステップアップしていきましょう。
