「MAツールを入れたのに、Webサイトの訪問者が誰かわからない...」
マーケティングオートメーション(MA)ツールを導入したものの、Webサイトとの連携がうまくいかず、訪問者の行動データを活用できていない——そんな課題を抱えているB2Bマーケティング担当者は少なくありません。
「どのページを見た人がコンバージョンしやすいのか」「資料請求した人はその前にどんな行動をとっていたのか」——これらを把握できれば、より効果的なリードナーチャリングが可能になります。
この記事では、MAツールとWebサイトを連携させる具体的な方法と、訪問者行動データを活用した施策の実践方法を解説します。
この記事のポイント:
- MAツールとWebサイトの連携で、訪問者の行動データを収集・活用できる
- 連携の基本はトラッキングタグの設置とフォーム連携
- 閲覧行動に基づくスコアリングでリードの優先順位付けが可能
- 3rd Party Cookie廃止に備え、1st Party Cookie活用とコンテンツマーケティング強化が必要
- ツール導入前にコンテンツ制作体制とスコアリング設計を整えることが重要
1. なぜMAツールとWebサイトの連携が重要なのか
B2Bマーケティングにおいて、Webサイトは見込み客との重要な接点です。しかし、Webサイト単体では「誰が」「どのページを」「どれくらい見たか」を個別に把握することが困難です。
MAツールとWebサイトを連携させることで、以下のようなことが可能になります。
連携で実現できること:
- 匿名訪問者を「顔の見える見込み客」に変換
- 閲覧ページ・滞在時間などの行動データを収集
- 行動データに基づくリードスコアリング
- 閲覧履歴に応じたパーソナライズメール配信
- 営業へのホットリード通知
例えば、「料金ページを3回以上閲覧した見込み客」「導入事例ページを見た後に資料請求した人」といった行動パターンを把握することで、営業がアプローチすべきタイミングを見極められるようになります。
連携なしで起きる問題:
- 誰がどのページを見たかわからない
- リードの関心度を判断できない
- 一律のメール配信しかできない
- 営業とマーケティングの連携が困難
MAツールの効果を最大化するためには、Webサイトとの連携が不可欠といえるでしょう。
2. MAツール×Webサイト連携の基本的な仕組み
(1) Webトラッキングの仕組み(Cookie活用)
MAツールがWebサイト訪問者の行動を追跡する基本的な仕組みは、Cookie(クッキー)の活用です。
トラッキングの流れ:
- 訪問者がWebサイトにアクセス
- MAツールのトラッキングタグが動作
- 訪問者のブラウザにCookieを付与
- 以降の訪問時、同一人物として識別
- 閲覧ページ、滞在時間などの行動データを記録
Cookie の種類:
| 種類 | 発行元 | 用途 | 今後の動向 |
|---|---|---|---|
| 1st Party Cookie | 訪問先サイト | ログイン状態維持、閲覧履歴保存 | 継続利用可能 |
| 3rd Party Cookie | 他サイト | リターゲティング広告、クロスサイト追跡 | 利用制限が進行中 |
MAツールのWebトラッキングは主に1st Party Cookieを使用するため、3rd Party Cookieの利用制限が進んでも基本的な機能は維持されます。ただし、プライバシー対応については後述の注意点を確認してください。
(2) フォーム連携によるリード情報取得
Cookieだけでは訪問者は「匿名」のままです。訪問者を「顔の見える見込み客」に変換するには、フォーム入力が必要です。
個人特定の仕組み:
- 訪問者がフォームに情報を入力(氏名、メールアドレス、企業名など)
- Cookieと入力情報が紐付け
- 以降の訪問は個人として識別可能
- 過去の匿名行動データも紐付け
フォーム設計のポイント:
- 入力項目は必要最小限に(企業名・氏名・メールアドレスが基本)
- 項目が多いとコンバージョン率が下がる
- 段階的に情報を取得する設計も有効
フォーム入力が増えるほど、「顔の見える見込み客」が増え、MAツールの活用幅が広がります。
(3) ページ閲覧行動のスコアリング
リードスコアリングとは、見込み客の行動や属性を数値化し、優先順位を付ける手法です。MAツールでは、Webサイトの閲覧行動をスコアリングに活用できます。
スコアリング設計例:
| 行動 | スコア | 理由 |
|---|---|---|
| トップページ閲覧 | +1 | 興味関心の入口 |
| 製品ページ閲覧 | +5 | 具体的な製品への関心 |
| 料金ページ閲覧 | +10 | 購買検討段階 |
| 導入事例ページ閲覧 | +10 | 導入検討段階 |
| 資料請求フォーム送信 | +30 | 明確な興味表明 |
| 問い合わせフォーム送信 | +50 | 商談可能性が高い |
スコアリングの活用:
- 一定スコア到達時に営業へ自動通知
- スコア別のセグメントメール配信
- 高スコアリードの優先的なフォロー
スコアリング設計は、自社のカスタマージャーニーに合わせてカスタマイズすることが重要です。
3. 具体的な連携設定の手順
(1) トラッキングタグの設置方法
MAツールをWebサイトに連携させる第一歩は、トラッキングタグの設置です。
基本的な設置方法:
- MAツール管理画面でトラッキングコードを取得
- WebサイトのHTMLに貼り付け(通常はタグの直前)
- 全ページに設置(共通テンプレートに配置すると効率的)
- 動作確認
トラッキングコードの例(イメージ):
<!-- MAツールのトラッキングコード -->
<script>
// MAツール固有のスクリプトがここに入る
</script>
実際のコードはMAツールごとに異なります。各ツールの公式ドキュメントを参照してください。
(2) CMS・Google Tag Managerとの連携
多くの企業ではWordPressなどのCMSや、Google Tag Manager(GTM)を使用しています。これらと連携することで、設置作業が簡単になります。
WordPressの場合:
- ヘッダー・フッターにコードを追加するプラグインを使用
- MAツール専用のプラグインを使用(ある場合)
- テーマのheader.phpを直接編集(上級者向け)
Google Tag Managerの場合:
- GTMでカスタムHTMLタグを作成
- MAツールのトラッキングコードを入力
- トリガーを「全ページ」に設定
- 公開
GTMを使用すると、Webサイトのコードを直接編集せずにタグを管理できるため、マーケティング担当者でも設定変更しやすくなります。
(3) ランディングページ・フォームの作成
多くのMAツールには、ランディングページ(LP)やフォームを作成する機能が搭載されています。
MAツールでLP・フォームを作成するメリット:
- Web制作担当者や制作会社に依頼せずに作成可能
- フォーム送信後のリード情報がMAに自動登録
- A/Bテストが容易
- 閲覧データがMAに直接連携
作成のポイント:
- ファーストビューで価値を伝える
- フォーム項目は必要最小限に
- 送信ボタンは明確なCTAに
- モバイル対応を確認
MAツールのLP作成機能を活用することで、キャンペーンごとに迅速にページを作成し、効果測定しやすくなります。
4. 活用事例:リードナーチャリングの効率化
(1) 閲覧行動に基づくステップメール配信
訪問者の閲覧行動に応じて、パーソナライズされたメールを自動配信する施策です。
配信シナリオ例:
| トリガー | 配信内容 | タイミング |
|---|---|---|
| 製品Aのページを閲覧 | 製品Aの詳細資料案内 | 翌日 |
| 料金ページを複数回閲覧 | 導入事例・ROI資料案内 | 3日後 |
| 導入事例を閲覧後、離脱 | 無料相談の案内 | 1週間後 |
| 資料ダウンロード後、未行動 | ウェビナー案内 | 2週間後 |
ポイント:
- 行動に即した内容で関連性を高める
- 一律配信より開封率・クリック率が向上しやすい
- 過度な配信頻度は逆効果
閲覧行動を起点としたステップメールにより、One to Oneマーケティングを自動化できます。
(2) パーソナライズコンテンツの表示
Webサイト上で、訪問者の属性や行動履歴に応じて異なるコンテンツを表示する施策です。
パーソナライズ例:
- 初回訪問者には「サービス概要」を表示
- リピーターには「導入事例」「料金」を優先表示
- 特定業種の訪問者には業種別の事例を表示
- 資料ダウンロード済みの訪問者には「無料相談」を案内
実装方法:
- MAツールのパーソナライズ機能を使用
- ポップアップで特定条件のユーザーにメッセージ表示
- バナーやCTAの出し分け
パーソナライズは高度な機能ですが、適切に設計すればコンバージョン率の改善が期待できます。
5. 導入時の注意点とプライバシー対応
(1) 3rd Party Cookie利用制限への対応
ブラウザベンダー各社による3rd Party Cookieの利用制限が進む中、クロスサイトでのユーザー追跡はますます困難になっています。
影響:
- クロスサイトでのユーザー追跡が困難に
- リターゲティング広告の精度低下
- MAツールによる外部サイトでの行動追跡が制限
対応策:
- 1st Party Cookieを活用したトラッキングは継続可能
- 自社サイト内でのフォーム連携を強化
- コンテンツマーケティングで自社サイトへの流入を増やす
- メールアドレスベースでのリード管理を重視
MAツールの主要機能は1st Party Cookieで動作するため、大きな影響は限定的とされていますが、今後の動向には注意が必要です。
(2) GDPR・Cookieポリシーへの準拠
個人情報保護規制への対応は必須です。
対応すべき事項:
- Cookieポリシーの策定・公開: Cookie利用の目的、種類、第三者提供の有無を明記
- 同意取得の仕組み: Cookie利用への同意を取得するバナー等を設置
- オプトアウト手段の提供: ユーザーがCookie利用を拒否できる仕組みを用意
GDPRの対象:
- EU/EEA域内のユーザーにサービス提供する場合
- EU/EEA域内のユーザーの行動をモニタリングする場合
日本国内向けのサービスでも、改正個人情報保護法への対応が必要です。MAツールの利用規約と合わせて確認してください。
(3) コンテンツ制作体制の整備
MAツール導入後に多くの企業が直面する課題が、「コンテンツが足りない」という問題です。
よくある失敗:
- MAツールを導入したが、配信するコンテンツがない
- スコアリングを設計したが、スコアに応じたコンテンツがない
- パーソナライズを設定したが、表示するコンテンツのバリエーションがない
必要な準備:
- コンテンツ制作のリソース確保(内製 or 外注)
- コンテンツカレンダーの策定
- 既存コンテンツの棚卸し・再活用
MAツールは「仕組み」を提供するものであり、その仕組みを動かすための「燃料」であるコンテンツがなければ効果は出ません。ツール導入前に体制を整備することが重要です。
6. まとめ:連携を成功させるためのポイント
MAツールとWebサイトの連携は、B2Bマーケティングの効果を大きく高める可能性があります。ただし、「ツールを導入すれば解決する」というものではなく、適切な設計と運用体制が必要です。
連携成功のポイント:
- トラッキングタグを正しく設置し、行動データを収集
- フォーム連携で「匿名訪問者」を「顔の見える見込み客」に変換
- カスタマージャーニーに基づくスコアリング設計
- 閲覧行動に応じたパーソナライズ施策の実行
- 3rd Party Cookie利用制限への対応とプライバシー準拠
- コンテンツ制作体制の整備
次のアクション:
- 現在のWebサイトにMAツールのトラッキングタグが設置されているか確認
- フォームとMAツールの連携状況を確認
- カスタマージャーニーマップを作成/見直し
- スコアリングルールを設計/見直し
- Cookieポリシーを確認/更新
まずは基本的な連携(トラッキング・フォーム)から始め、効果を測定しながら段階的に高度な施策へ拡張していくアプローチがおすすめです。各MAツールの設定方法の詳細は、公式ドキュメントを参照してください。
よくある質問:
Q: 既存のWebサイトにMAツールを後から導入できますか? A: 可能です。トラッキングタグをWebページに追加するだけで、基本的なデータ収集は開始できます。CMSやGoogle Tag Managerを使えば、比較的簡単に設置できます。ただし、フォーム連携など一部の機能はサイト側の改修が必要な場合もあります。
Q: 3rd Party Cookieの利用制限が進んでもMAツールのトラッキングは機能しますか? A: 1st Party Cookieを活用したトラッキングは引き続き機能します。MAツールの主要機能(自社サイト内でのトラッキング、フォーム連携など)は1st Party Cookieで動作するため、基本的な機能への影響は限定的です。ただし、クロスサイトでの追跡精度は低下するため、自社サイト内でのフォーム連携やコンテンツマーケティング強化が重要になります。
Q: MAツール導入に必要な事前準備は何ですか? A: コンテンツ制作体制の整備、カスタマージャーニーマップに基づくスコアリング設計、Cookieポリシーの策定が必須です。ツールを導入しただけでは効果は出ないため、運用体制を先に整えることが重要です。
Q: WebサイトリニューアルとMAツール導入、どちらを先にすべきですか? A: 可能であれば同時に検討することをおすすめします。サイトリニューアル時にMAツールとの連携を前提とした設計(フォーム設計、コンテンツ構成、トラッキング設計など)を行うことで、運用効率が向上します。
Q: どのMAツールを選ぶべきですか? A: 企業規模、予算、必要な機能によって最適なツールは異なります。HubSpotは中小企業向けで使いやすさに定評があり、Pardot(Account Engagement)はSalesforceとの連携に強み、Marketoは大企業向けで高機能です。無料トライアルで実際に試すことをおすすめします。
