マーケティングオートメーションのスコアリング入門|設計・運用の基本

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/9

MAツール導入を検討しているが、スコアリング機能の使い方が分からない...

「MAツールのスコアリング機能を使いたいが、どのように設計すればよいか分からない」「属性スコアと行動スコアの違いは?」「何点以上のリードを営業に引き渡すべきか」——B2B企業のマーケティング担当者の多くが、このような課題を抱えています。

スコアリング(リードスコアリング)とは、見込み顧客の属性や行動に点数をつけて、購買意欲や商談確度を数値化する手法です。MAツールの主要機能の一つですが、設計・運用が難しく、上手く活用できている企業は少ないのが実態です。

この記事では、MAスコアリングの基本概念、仕組み、設計の具体的なステップ、運用のポイント、失敗事例と成功事例を解説します。

この記事のポイント:

  • スコアリングは「属性スコア」(業種・役職など)と「行動スコア」(メール開封・資料DLなど)の2つを組み合わせて設計する
  • 営業部門とマーケティング部門で「何点以上のリードを営業に渡すか」を事前に合意しておく
  • 最初はシンプルに3-5項目程度から始め、運用しながら段階的に精度を高める
  • 営業フィードバックを定期的に取り入れて、現場の感覚に沿ったスコア設計にする
  • スコアリングはあくまで判断材料の一つ。営業現場の感覚と合わせて総合的に評価する

1. マーケティングオートメーション(MA)のスコアリングとは

スコアリングは、見込み顧客(リード)を数値化して優先順位をつける重要な手法です。

(1) スコアリングの定義と目的

スコアリング(リードスコアリング)とは、見込み顧客の属性や行動に点数をつけて、購買意欲や商談確度を数値化する手法です(参考: List Finder)。

目的:

  • リードの優先順位をつけ、営業リソースを効率的に配分する
  • 商談確度の高いリード(ホットリード)を営業に引き渡す
  • マーケティングと営業の連携を強化する

(2) なぜスコアリングが重要なのか

B2B企業では、リード数が増えるほど、営業がすべてのリードに対応するのが困難になります。スコアリングにより、商談確度の高いリードを見極め、営業の成約率を向上させることができます。

スコアリングのメリット:

  • 営業が優先的にアプローチすべきリードが明確になる
  • マーケティング施策の効果測定ができる(スコアの推移を見る)
  • リードナーチャリング(育成)の方向性が決められる

(3) ホットリードの見極め

ホットリードとは、スコアが一定基準に達した、商談可能と判断される見込み度の高いリードです。例えば、100点満点のスコアで80点以上をホットリードと定義し、営業に引き渡す基準とします。

2. スコアリングの基本的な仕組み

スコアリングは、「属性スコア」と「行動スコア」の2つを組み合わせて設計します。

(1) 属性スコア(業種・従業員数・役職など)

属性スコアとは、リードの属性(業種、従業員数、役職など)に基づいて付与するスコアです。

属性スコアの例:

  • 業種が「製造業」: +20点
  • 従業員数が「100名以上」: +15点
  • 役職が「部長以上」: +25点
  • 所在地が「東京都」: +10点

ポイント:

  • 自社の理想的な顧客像(ペルソナ)に近いほど高得点を設定する
  • BANT条件(Budget・Authority・Needs・Timeframe)を考慮する

(2) 行動スコア(メール開封・資料DL・セミナー参加など)

行動スコアとは、リードの行動(メール開封、資料ダウンロード、セミナー参加など)に基づいて付与するスコアです。

行動スコアの例:

  • メール開封: +5点
  • 資料ダウンロード: +15点
  • セミナー参加: +20点
  • Webサイト訪問(価格ページ): +10点

ポイント:

  • 購買意欲の高い行動ほど高得点を設定する
  • 行動の頻度や期間も考慮する(後述)

(3) スコアの減衰と期間の考慮

行動によるスコアリングは「いつ行われたか」(期間)も考慮します。1ヶ月で100点到達と1年かかった100点では見込み度が異なると言われています。

減衰の例:

  • 最終行動から30日経過: -10点
  • 最終行動から90日経過: -30点

このように、時間経過でスコアを減衰させることで、興味が薄れたリードの優先度を下げられます。

(4) BANT条件との関係

BANT条件とは、Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Timeframe(導入時期)の4つの要素です。スコアリングで考慮される重要な属性です。

BANT条件の適用例:

  • 「予算あり」と回答: +30点
  • 「決裁権あり」: +30点
  • 「6ヶ月以内に導入予定」: +20点

3. スコアリング設計の具体的なステップ

スコアリングを設計する5つのステップを紹介します。

(1) ステップ1:営業との合意形成(何点以上を引き渡すか)

やること:

  • 営業部門とマーケティング部門で「何点以上のリードを営業に引き渡すか」を事前に合意する
  • ホットリードの定義を明確にする(例: 100点満点で80点以上)

ポイント:

  • 営業との合意なしで一方的に設計すると、営業からの不満につながる
  • 引き渡し後も営業からのフィードバックを定期的に得て、スコア設計を調整する

(2) ステップ2:属性スコアの設計

やること:

  • 自社の理想的な顧客像(ペルソナ)を明確にする
  • 業種、従業員数、役職、所在地などの属性に点数を設定する

具体例:

  • 業種(製造業): +20点
  • 従業員数(100名以上): +15点
  • 役職(部長以上): +25点

(3) ステップ3:行動スコアの設計

やること:

  • 購買意欲の高い行動をリストアップする
  • 各行動に点数を設定する

具体例:

  • メール開封: +5点
  • 資料ダウンロード: +15点
  • セミナー参加: +20点
  • 価格ページ訪問: +10点

(4) ステップ4:MAツールへの設定

やること:

  • 設計したスコアリングルールをMAツール(Marketo、HubSpot、Pardot、SATORIなど)に設定する
  • タグ設定やフォーム設定のミスがないか検証する

注意点:

  • MAツールの設定ミスやタグの不備で誤った点数が付与されることがある
  • 設定後は必ずテストリードで動作確認を行う

(5) ステップ5:シンプルに始めて段階的にチューニング

やること:

  • 最初からMAツールで細かく設定せず、シンプルに始める(3-5項目程度)
  • 運用しながら定期的にチューニングしていく

ポイント:

  • スコアリングはあくまで判断材料の一つ。営業現場の感覚と合わせて総合的に評価する

4. スコアリング運用のポイントと注意点

スコアリングを運用する際のポイントと注意点を整理します。

(1) 営業フィードバックの取り入れ

ポイント:

  • 営業担当者のフィードバックを取り入れて、現場の感覚に沿ったスコア設計にする
  • 「このリードは商談につながった」「このリードは温度感が低かった」といった実績をもとに調整

(2) 定期的な検証と調整

ポイント:

  • 3ヶ月〜6ヶ月ごとにスコアリングルールを見直す
  • スコアと実際の商談化率・受注率の相関を分析し、精度を高める

(3) スコアリングはあくまで判断材料の一つ

注意点:

  • スコアリングはあくまで判断材料の一つであり、営業現場の感覚や顧客との直接のコミュニケーションと合わせて総合的に評価する
  • スコアが高くても商談につながらないケース、スコアが低くても受注するケースがある

(4) 設定ミス・タグ不備のリスク

注意点:

  • MAツールの設定ミスやタグの不備で誤った点数が付与されることがある
  • 定期的に動作確認を行い、スコアが正しく計算されているか検証する

(5) AIと機械学習による自動スコアリング(2024年トレンド)

2024年現在、AIと機械学習による自動スコアリングが進化しています。大規模データからの予測モデリングも活用され始めています(参考: BowNow)。

AI活用の例:

  • 過去の商談データから、受注につながりやすいリードの特徴をAIが学習し、自動でスコアを付与
  • スコアリングに不安がある場合は、AIに任せる選択肢も検討できる

5. 失敗事例と成功事例

スコアリングの失敗事例と成功事例を紹介します。

(1) 失敗事例:細かく設計しすぎて運用が破綻

事例:

  • 初期から20項目以上の属性・行動をスコアリング対象にした
  • 設定が複雑すぎて、運用が破綻した
  • リードスコアリングを現時点で上手く活用できている企業は少ないのが実態(参考: シャノン

教訓:

  • 最初はシンプルに3-5項目程度から始める
  • 運用しながら段階的に精度を高める

(2) 失敗事例:営業との合意なしで一方的に設計

事例:

  • マーケティング部門が一方的にスコアリングルールを設計し、営業に押し付けた
  • 営業からは「使えないリードばかり」と不満が出た

教訓:

  • 営業部門とマーケティング部門で事前に合意形成をする
  • 引き渡し後も営業からのフィードバックを定期的に得る

(3) 成功事例:シンプル設計から段階的に精度向上

事例:

  • 最初は属性スコア3項目、行動スコア5項目からスタート
  • 3ヶ月ごとに営業フィードバックを反映し、段階的に精度を向上
  • 1年後には商談化率が20%→35%に改善

成功のポイント:

  • シンプルに始めて、段階的にチューニング
  • 営業フィードバックを定期的に反映

(4) 成功事例:営業フィードバックを定期的に反映

事例:

  • 月次で営業とマーケティングが合同MTGを開催
  • 「このリードは商談につながった」「このリードは温度感が低かった」といった実績をスコア設計に反映
  • スコアと実際の商談化率の相関が高まり、営業の信頼を獲得

成功のポイント:

  • 営業とマーケティングの継続的なコミュニケーション
  • データに基づいたスコア調整

6. まとめ:スコアリングを成功させるために

MAスコアリングの基本概念、仕組み、設計の具体的なステップ、運用のポイント、失敗事例と成功事例を解説しました。

スコアリング成功のポイント:

  • 営業部門とマーケティング部門で事前に合意形成をする(何点以上を引き渡すか)
  • 属性スコアと行動スコアを組み合わせて設計する
  • 最初はシンプルに3-5項目程度から始め、運用しながら段階的に精度を高める
  • 営業フィードバックを定期的に取り入れて、現場の感覚に沿ったスコア設計にする
  • スコアリングはあくまで判断材料の一つ。営業現場の感覚と合わせて総合的に評価する

次のアクション:

  • 自社の理想的な顧客像(ペルソナ)を明確にする
  • 営業部門とホットリードの定義を合意する(何点以上を引き渡すか)
  • 属性スコア3項目、行動スコア5項目程度からシンプルに設計する
  • MAツールに設定し、テストリードで動作確認を行う
  • 3ヶ月〜6ヶ月ごとに営業フィードバックを反映し、スコアリングルールを調整する

スコアリングを正しく理解し、営業とマーケティングの連携を強化して、B2B企業のマーケティングを成功させましょう。

よくある質問

Q1スコアリングの評価基準はどのように設定すればよいですか?

A1属性スコア(業種・役職など)と行動スコア(資料DL・メール開封など)を組み合わせます。最初はシンプルに3-5項目程度から始め、運用しながら段階的に精度を高めるのがおすすめです。例えば、属性スコアは業種(+20点)、従業員数(+15点)、役職(+25点)、行動スコアはメール開封(+5点)、資料ダウンロード(+15点)、セミナー参加(+20点)といった設定から始めましょう。

Q2スコアが一定点数に達したリードをどのように営業に引き渡すべきですか?

A2事前に営業部門と「何点以上を引き渡すか」を合意しておくことが重要です。例えば、100点満点で80点以上をホットリードと定義し、営業に引き渡す基準とします。引き渡し後も営業からのフィードバック(「このリードは商談につながった」「このリードは温度感が低かった」)を定期的に得て、スコア設計を調整しましょう。

Q3スコアリングがうまく機能しない場合はどうすればよいですか?

A3設計が複雑すぎないか、営業の感覚とズレていないか、設定ミス・タグ不備がないかを検証しましょう。リードスコアリングを上手く活用できている企業は少ないのが実態です。必要に応じてシンプルな設計(3-5項目)に戻し、営業フィードバックを反映しながら段階的に改善していくアプローチが有効です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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