MAとカスタマージャーニー|顧客体験を最適化する連携活用法

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/11

カスタマージャーニーとは|顧客体験の可視化

B2Bデジタルプロダクト企業のマーケティング担当者の中には、「MAツールを導入したが、効果的なシナリオが設計できない」「顧客接点ごとの施策をどう自動化すればよいか分からない」といった悩みを抱えている方が少なくありません。

MAツールの効果を最大化するには、カスタマージャーニーを理解し、それに基づいたシナリオ設計が不可欠です。カスタマージャーニーを可視化することで、適切なタイミングで適切な情報を提供できるようになります。

この記事では、カスタマージャーニーの基本から、MAツールを活用した設計・運用方法、BtoB特有のポイントまでを詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • カスタマージャーニーは顧客が商品を認知してから購入・継続利用するまでの道のりを可視化したもの
  • MAツールのシナリオ設計にはカスタマージャーニーマップが必須
  • BtoBは意思決定者が複数、検討期間が長い、組織的な承認プロセスがある
  • カスタマージャーニーマップは完璧を求めず、PDCAを回しながら段階的に精度を上げる
  • 認知→興味→検討→購入→活用の各フェーズで異なるMA施策を設計

(1) カスタマージャーニーの定義

カスタマージャーニーとは、顧客が商品・サービスを認知してから購入・継続利用するまでの一連のプロセス(道のり)です(SATORI「カスタマージャーニーマップとは?基本と正しい作り方」)。

カスタマージャーニーマップは、このカスタマージャーニーを可視化した図表であり、顧客の行動・思考・感情を時系列で整理します。

カスタマージャーニーマップの構成要素:

  • 横軸: 購買フェーズ(認知→興味・関心→比較検討→購入→導入・活用)
  • 縦軸: 顧客の行動・思考・感情
  • タッチポイント: 顧客と企業が接触する接点(Webサイト、メール、セミナー、営業など)

カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客の心理状態や行動パターンが可視化され、どのタイミングでどのような施策が必要かが明確になります。

(2) BtoBとBtoCのカスタマージャーニーの違い

BtoBとBtoCでは、カスタマージャーニーが大きく異なります(LeadGrid「BtoBカスタマージャーニーとは?メリットや作成方法を詳しく解説」)。

BtoC(一般消費者向け):

  • 個人が意思決定
  • 検討期間が短い(数日〜数週間)
  • 感情的な判断が購買に影響

BtoB(企業向け):

  • 意思決定者が複数(DMU: Decision Making Unit)
  • 検討期間が長い(数ヶ月〜1年)
  • 組織的な承認プロセスが存在
  • 合理的な判断基準(ROI・導入効果)が重視される

BtoBでは、情報収集者と意思決定者が異なることが多く、稟議プロセスも考慮する必要があります。このため、カスタマージャーニーマップもBtoC以上に複雑になります。

(3) カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップは、顧客の「行動」「思考」「感情」を時系列で可視化したものです。

行動:

  • Webサイト訪問、資料ダウンロード、セミナー参加、営業との商談など

思考:

  • 「どのツールが良いか比較したい」「導入効果が知りたい」「社内稟議を通すための材料が欲しい」

感情:

  • 不安、期待、焦り、満足など

これらを整理することで、顧客の心理状態に合わせた施策が設計できます。

MAとカスタマージャーニーの関係

MAツールを効果的に活用するには、カスタマージャーニーマップが不可欠です。

(1) なぜMAツールにカスタマージャーニーマップが必要なのか

MAツールは、見込み客の行動に応じて自動でコンテンツを配信したり、営業に引き渡したりする仕組みです。しかし、「どのタイミングで」「どのようなコンテンツを」配信すればよいかを判断するには、顧客の購買プロセスを理解する必要があります(メディックス「MAにカスタマージャーニーマップが欠かせない理由」)。

カスタマージャーニーマップがあれば、以下のことが明確になります。

カスタマージャーニーマップで明確になること:

  • 顧客がどの段階にいるか(認知・検討・購入など)
  • その段階で顧客が求めている情報は何か
  • どのタッチポイントで接触すべきか
  • どのタイミングで営業に引き渡すべきか

これにより、シナリオ設計の精度が高まり、リードナーチャリング(見込み客の育成)の効果を最大化できます。

(2) シナリオ設計の精度を高める

MAツールのシナリオとは、顧客の行動に応じた自動配信ルールです。例えば、「資料をダウンロードした人に3日後にセミナー案内を送る」といったルールを設定します。

カスタマージャーニーマップがあれば、シナリオ設計が以下のように精度の高いものになります。

カスタマージャーニーマップなしの場合:

  • 「とりあえず資料DL後にメールを送ろう」
  • タイミング・内容が曖昧

カスタマージャーニーマップありの場合:

  • 「資料DL → 興味・関心フェーズに移行 → 3日後にセミナー案内 → 1週間後に導入事例配信」
  • 顧客の行動・心理に合わせた精度の高いシナリオ

カスタマージャーニーマップが、MAツールのシナリオ設計の設計図となるのです。

(3) 適切なタイミングで適切な情報を提供

カスタマージャーニーマップを活用することで、適切なタイミングで適切な情報を提供できます。

悪い例(タイミングがずれている):

  • 認知フェーズの顧客に「今すぐ購入」のメール → 興味がなく離脱
  • 購入検討中の顧客に「製品紹介」のメール → 既に知っているため不要

良い例(タイミングが適切):

  • 認知フェーズ → 「〇〇とは何か?」の基礎解説記事
  • 興味・関心フェーズ → 「導入のメリット」のホワイトペーパー
  • 比較検討フェーズ → 「他社との比較」「導入事例」
  • 購入フェーズ → 「無料トライアル」「営業への引き渡し」

このように、顧客の状態に合わせた情報提供ができれば、コンバージョン率が大幅に向上します。

カスタマージャーニーマップの作成手順

カスタマージャーニーマップの作成手順を5ステップで解説します(SATORI「カスタマージャーニーマップとは?基本と正しい作り方」)。

(1) ステップ1:ペルソナ設定

まず、ターゲット顧客の具体的な人物像(ペルソナ)を設定します。

ペルソナに含める項目:

  • 名前、年齢、性別
  • 勤務先情報(業種、企業規模、部署、役職)
  • 課題・悩み
  • 情報収集方法(Google検索、SNS、業界メディアなど)
  • 購買決定プロセス(誰の承認が必要か)

例:

  • 名前:山田太郎
  • 年齢:35歳
  • 役職:製造業・マーケティング部 課長
  • 課題:Webからのリード獲得が不足、MAツールの導入を検討中
  • 情報収集:Google検索、業界メディア、LinkedIn
  • 決裁:部長承認が必要、年間予算500万円

ペルソナを明確にすることで、顧客の行動・思考・感情がリアルに想像できるようになります。

(2) ステップ2:購買フェーズの設定(認知→興味・関心→比較検討→購入→導入・活用)

次に、カスタマージャーニーマップの横軸となる購買フェーズを設定します。

典型的なBtoB購買フェーズ:

  1. 認知: 課題に気づき、解決策を探し始める
  2. 興味・関心: 製品・サービスに興味を持ち、情報収集を開始
  3. 比較検討: 複数のツールを比較し、絞り込む
  4. 購入: 稟議を通し、契約
  5. 導入・活用: 導入後の運用、カスタマーサクセス

業種や商材によってフェーズは異なりますが、まずは基本的な5フェーズで設定し、必要に応じてカスタマイズします。

(3) ステップ3:顧客の行動・思考・感情の洗い出し

各購買フェーズにおける顧客の「行動」「思考」「感情」を洗い出します。

認知フェーズの例:

  • 行動: Google検索「MAツール 選び方」、業界メディア閲覧
  • 思考: 「MAツールって何?」「うちの会社に必要?」
  • 感情: 不安、分からない

比較検討フェーズの例:

  • 行動: 複数ツールの資料請求、ウェビナー参加、営業との商談
  • 思考: 「どのツールが自社に合うか」「導入コストはどれくらい?」「稟議を通すための材料が欲しい」
  • 感情: 焦り、期待、慎重

これらを整理することで、顧客の心理状態が可視化され、施策が設計しやすくなります。

(4) ステップ4:タッチポイントの整理

各購買フェーズで顧客と接触するタッチポイントを整理します。

タッチポイントの例:

  • Webサイト訪問
  • ブログ記事閲覧
  • ホワイトペーパーダウンロード
  • セミナー・ウェビナー参加
  • メール受信
  • 営業との商談
  • 無料トライアル

これらのタッチポイントを、購買フェーズごとに配置します。例えば、認知フェーズではWebサイト・ブログ、比較検討フェーズではウェビナー・営業商談、購入フェーズでは無料トライアル、といった具合です。

(5) 完璧を求めず段階的に精度を上げる

カスタマージャーニーマップは、最初から完璧を求める必要はありません。まずは最小限の項目で作成し、PDCAを回しながら順次項目を埋めていくのが有効です(イノベーション「カスタマージャーニーをMAツールに活用しよう」)。

推奨アプローチ:

  • 1〜2週間で最小限のマップを作成
  • MAツールで実際にシナリオを運用
  • 顧客の反応を見ながら、マップを改善
  • 定期的(四半期ごと)にマップを見直し

完璧なマップを作ることよりも、実際に運用しながら精度を高めていくことが重要です。

MAを活用したフェーズ別施策の設計

カスタマージャーニーマップができたら、各購買フェーズでMAツールをどのように活用するかを設計します(Probance「カスタマージャーニー戦略の革新!MA活用で顧客体験を変える」)。

(1) 認知フェーズ:コンテンツ配信・SNS広告

顧客の状態:

  • 課題に気づき始めた段階
  • 解決策を探している

MAツールでできること:

  • ブログ記事・基礎解説コンテンツの配信
  • SNS広告でのリーチ拡大
  • SEO対策でのオーガニック流入獲得

シナリオ例:

  • Webサイト訪問者に対して、基礎解説記事をポップアップ表示
  • メールマガジン登録者に、週1回の業界トレンド情報を配信

(2) 興味・関心フェーズ:ホワイトペーパー提供・セミナー案内

顧客の状態:

  • 製品・サービスに興味を持ち、情報収集を開始

MAツールでできること:

  • ホワイトペーパー・導入ガイドの提供
  • セミナー・ウェビナーの案内
  • リードスコアリングで興味度を数値化

シナリオ例:

  • ブログ記事を3回以上閲覧した人に、ホワイトペーパーのダウンロード案内を送る
  • ホワイトペーパーをダウンロードした人に、3日後にセミナー案内を送る

(3) 比較検討フェーズ:導入事例・ウェビナー・スコアリング

顧客の状態:

  • 複数のツールを比較し、絞り込んでいる
  • 稟議を通すための材料を集めている

MAツールでできること:

  • 導入事例・ROI試算資料の提供
  • 製品比較ウェビナーの開催
  • スコアリングで営業への引き渡しタイミングを判断

シナリオ例:

  • ウェビナーに参加した人に、導入事例集を送る
  • スコア80点以上(高関心度)の人を営業に自動通知
  • 1週間以内に営業が商談アプローチ

(4) 購入フェーズ:営業への引き渡し・トライアル案内

顧客の状態:

  • 購入を決断し、稟議プロセスに入っている

MAツールでできること:

  • 営業への引き渡し(MQL → SQL)
  • 無料トライアルの案内
  • 契約書・見積書の送付

シナリオ例:

  • 無料トライアル申込者に対して、営業が即座にフォローアップ
  • 契約書送付後、3日以内に営業がフォロー電話

(5) 導入・活用フェーズ:オンボーディング・カスタマーサクセス

顧客の状態:

  • 契約完了、導入・運用開始

MAツールでできること:

  • オンボーディングメールの自動配信
  • 活用tips・事例の定期配信
  • アップセル・クロスセルの提案

シナリオ例:

  • 契約後、1週間ごとに活用tipsを配信(全5回)
  • 導入3ヶ月後に満足度アンケート送信
  • 高評価の顧客にアップグレードプランを提案

BtoB特有のカスタマージャーニー設計のポイント

BtoBのカスタマージャーニーには、BtoCとは異なる特有のポイントがあります。

(1) 複数意思決定者(DMU)への対応

BtoBでは、意思決定者が複数いることが一般的です(DMU: Decision Making Unit)。情報収集者と意思決定者が異なるため、それぞれに対応した施策が必要です(LeadGrid「BtoBカスタマージャーニーとは?メリットや作成方法を詳しく解説」)。

例:

  • 情報収集者: マーケティング担当者(課長クラス) → 製品比較・導入事例
  • 意思決定者: マーケティング部長・経営層 → ROI試算・稟議資料

重要人物2〜3人分のカスタマージャーニーパターンを作成することが推奨されます。

(2) 検討期間の長さと営業部門との連携

BtoBの検討期間は数ヶ月〜1年と長いため、MAツール単独では完結しません。営業部門との連携が不可欠です。

連携のポイント:

  • MAツール導入前に、営業とマーケティングが一緒にカスタマージャーニーマップを作成
  • 共通認識を醸成し、実行力を高める
  • どのタイミングで営業に引き渡すか(MQL → SQL)を明確化

(3) 組織的な承認プロセスの考慮

BtoBでは、稟議プロセス・予算承認フローが存在します。このプロセスを考慮したカスタマージャーニーマップが必要です。

例:

  • 担当者 → 課長 → 部長 → 役員承認(予算100万円以上の場合)
  • 各段階で必要な情報(ROI試算、導入事例、契約書雛形など)を用意

(4) 重要人物2〜3人分のパターン作成

BtoBでは、ペルソナを1人だけ設定するのではなく、重要人物2〜3人分のカスタマージャーニーパターンを作成することが推奨されます。

例:

  • パターン1:マーケティング担当者(情報収集者)
  • パターン2:マーケティング部長(意思決定者)
  • パターン3:経営層(最終承認者)

それぞれに対応したコンテンツ・施策を用意します。

まとめ:効果的なMA活用のために

カスタマージャーニーは、顧客が商品・サービスを認知してから購入・継続利用するまでの一連のプロセスを可視化したものです。MAツールの効果を最大化するには、カスタマージャーニーマップに基づいたシナリオ設計が不可欠です。

カスタマージャーニーマップは、横軸に購買フェーズ(認知→興味・関心→比較検討→購入→導入・活用)、縦軸に顧客の行動・思考・感情を設定します。これにより、適切なタイミングで適切な情報を提供でき、リードナーチャリングの効果を最大化できます。

BtoBでは、意思決定者が複数、検討期間が長い、組織的な承認プロセスがあるという特徴があります。重要人物2〜3人分のカスタマージャーニーパターンを作成し、営業部門と連携しながら施策を設計しましょう。

カスタマージャーニーマップは、最初から完璧を求める必要はありません。まずは1〜2週間で最小限のマップを作成し、MAツールで実際にシナリオを運用しながら、PDCAを回して段階的に精度を上げていくのが推奨されます。

次のアクション:

  • ペルソナを具体的に設定し、社内で共有する
  • 購買フェーズごとに顧客の行動・思考・感情を洗い出す
  • タッチポイントを整理し、カスタマージャーニーマップを作成する
  • MAツールのシナリオに落とし込み、実際に運用してみる
  • 定期的(四半期ごと)にマップを見直し、改善する

カスタマージャーニーマップを活用して、MAツールの効果を最大化し、顧客体験を最適化しましょう。

よくある質問

Q1カスタマージャーニーとは何ですか?

A1顧客が商品・サービスを認知してから購入・継続利用するまでの一連のプロセス(道のり)です。カスタマージャーニーマップは、顧客の行動・思考・感情を時系列で可視化した図表で、横軸に購買フェーズ(認知→興味・関心→比較検討→購入→導入・活用)、縦軸に顧客の行動・思考・感情を設定します。

Q2なぜMAツールにカスタマージャーニーマップが必要なのですか?

A2MAのシナリオ設計の設計図となり、精度の高い自動配信ルールが作成できます。適切なタイミングで適切な情報を提供することで、リードナーチャリング(見込み客の育成)の効果を最大化できます。マップで整理したタッチポイントや顧客の行動を、MAツールのトリガー・配信タイミング・コンテンツに落とし込みます。

Q3BtoBとBtoCのカスタマージャーニーの違いは?

A3BtoBは意思決定者が複数(DMU: Decision Making Unit)、検討期間が長い(数ヶ月〜1年)、組織的な承認プロセスがあります。BtoCは個人が意思決定し、検討期間が短い(数日〜数週間)、感情的な判断が購買に影響します。BtoBでは、情報収集者と意思決定者が異なることが多く、稟議プロセスも考慮する必要があります。

Q4カスタマージャーニーマップの作成にどれくらい時間がかかりますか?

A41〜2週間程度が目安ですが、完璧を求めず段階的に精度を上げるアプローチが有効です。まずは最小限の項目で作成し、MAツールで実際にシナリオを運用しながら、PDCAを回して順次項目を埋めていきましょう。定期的(四半期ごと)にマップを見直し、改善することが重要です。

Q5MAツールのシナリオ設計とカスタマージャーニーマップの関係は?

A5カスタマージャーニーマップがシナリオ設計の設計図となります。マップで整理したタッチポイントや顧客の行動を、MAツールのトリガー・配信タイミング・コンテンツに落とし込みます。例えば、「資料DL → 興味・関心フェーズに移行 → 3日後にセミナー案内 → 1週間後に導入事例配信」といった具合です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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