インサイドセールス組織を立ち上げたいが、戦略的なアプローチが分からない...
B2B企業の営業マネージャーや経営者の中には、「インサイドセールスを導入したいが、どのような戦略で進めればいいか分からない」「組織設計やKPI設定のポイントが知りたい」「成功パターンを参考にしたい」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、インサイドセールス戦略の立て方を、市場動向、構成要素、導入手順、KPI設計、成功・失敗パターンまで体系的に解説します。戦略レベルから実践レベルまで、成果を出すための具体的な進め方をご紹介します。
この記事のポイント:
- インサイドセールスは長期的な関係構築と見込み顧客の育成を目的とし、テレアポとは異なる
- 日本国内の導入率は40.4%(2021年12月時点)で前年比+7.0ポイント増加し、市場は拡大傾向
- インサイドセールス戦略はターゲット設計・アプローチ設計・組織設計・KPI設計の4要素で構成
- 導入は目的明確化→役割分担設定→体制構築→ツール導入→運用改善の5ステップで進める
- KPIは受注目標から逆算して設定し、定期的な見直しと部門間のすり合わせが成功の鍵
1. インサイドセールスとは|市場動向と戦略的な位置づけ
インサイドセールスの定義と、日本国内の市場動向を整理します。
(1) インサイドセールスの定義とテレアポとの違い
インサイドセールスとは、メール・電話・Web会議等を使った非対面の営業活動のことです。内勤型営業とも呼ばれます。
インサイドセールスの特徴:
- 長期的な関係構築と見込み顧客の育成(リードナーチャリング)が目的
- 顧客のニーズや検討状況を把握し、適切なタイミングで商談化する
- CRM・SFA・MAツールなどを活用してデータドリブンに活動する
テレアポとの違い: 一方、テレアポ(テレフォンアポイントメント)は短期的なアポイント獲得が目的です。数をこなすことを重視し、すぐにアポイントを取れない相手には深追いしない傾向があります。インサイドセールスは単なる「電話営業」ではなく、顧客の購買プロセスに寄り添った戦略的な活動であることが重要な違いです(出典:Salesforce「インサイドセールスとは?基礎知識や役割、成功事例」2024年)。
(2) 日本国内の導入率(40.4%)と市場動向
HubSpot Japanが2021年12月に実施した「法人営業とインサイドセールスに関するデータ集 2022年版」によれば、日本国内のインサイドセールス導入率は40.4%で、前年比+7.0ポイント増加しています(出典:HubSpot Japan「法人営業とインサイドセールスに関するデータ集 2022年版」2022年)。
市場拡大の背景:
- コロナ禍をきっかけに、非対面営業のニーズが急増
- デジタルツールの普及により、遠隔でも効果的なコミュニケーションが可能に
- BtoB企業が営業効率化・リード育成の強化を重視する傾向
2024年には、AI活用がインサイドセールス業界の重要テーマとなっており、電話音声の要約・解析、メール文面自動生成、顧客情報リサーチなどでの活用が拡大しています(出典:スマートキャンプ「インサイドセールス業界レポート2024-2025」2024年)。
(3) SDR(反響型)とBDR(新規開拓型)の役割
インサイドセールスは大きく2つのタイプに分類されます:
SDR(Sales Development Representative):反響型インサイドセールス
- マーケティング部門が獲得したリード(資料ダウンロード、セミナー参加者など)をフォローする
- 見込み顧客の関心度を高め、商談化のタイミングを見極める
- KPIは架電数、着電率、商談化率などが中心
BDR(Business Development Representative):新規開拓型インサイドセールス
- マーケティングリード以外の潜在顧客にアプローチする
- ターゲットリストを作成し、能動的にコンタクトを取る
- KPIは新規リード獲得数、初回商談数などが中心
企業の事業フェーズや戦略により、SDRとBDRのどちらを重視するか、または両方を展開するかが異なります(出典:Salesforce「インサイドセールスとは?基礎知識や役割、成功事例」2024年)。
2. インサイドセールス戦略の構成要素|4つの設計領域
インサイドセールス戦略は、以下の4つの設計領域で構成されます。
(1) ターゲット設計|理想顧客像(ICP)の明確化
まず、どのような顧客をターゲットとするかを明確にします。
理想顧客像(ICP: Ideal Customer Profile)の設定項目:
- 業種・業界(製造業、SaaS企業、小売業など)
- 企業規模(従業員数、売上規模など)
- 課題・ニーズ(どのような課題を抱えているか)
- 意思決定者(経営者、部門責任者、現場担当者など)
- 購買プロセス(検討期間、決裁プロセスの複雑さなど)
ターゲットが明確になることで、どのようなアプローチが効果的か、どのようなコンテンツを用意すべきかが見えてきます。
(2) アプローチ設計|コミュニケーション方法とコンテンツ
ターゲットに対して、どのようにコミュニケーションを取るかを設計します。
コミュニケーション方法:
- 電話(初回コンタクト、定期的なフォロー)
- メール(情報提供、資料送付、セミナー案内)
- Web会議(詳細な説明、デモンストレーション)
コンテンツ設計:
- 顧客の購買プロセスに応じたコンテンツを用意する(認知段階:課題啓発コンテンツ、検討段階:ソリューション比較資料、購入段階:導入事例など)
- 各段階で提供する情報を整理し、シナリオを設計する
(3) 組織設計|役割分担とチーム体制
マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの役割分担を明確にします。
基本的な役割分担:
- マーケティング部門: リード獲得(広告、セミナー、コンテンツマーケティング等)
- インサイドセールス: リード育成〜案件化(顧客の関心度を高め、商談化のタイミングを見極める)
- フィールドセールス: 商談〜クロージング(訪問またはWeb会議で提案・契約)
重要なポイント: 「商談」の定義など、共通認識を形成しておくことが成功の鍵です。例えば、「初回ヒアリングまでがインサイドセールスの担当」「予算・決裁者が明確になった時点でフィールドセールスに引き継ぐ」など、具体的な基準を設けます。
(4) KPI設計|目標設定と評価指標
KPI(重要業績評価指標)を設定し、活動の成果を測定できるようにします。詳細は次の章で解説します。
3. インサイドセールス導入の5ステップ
実際にインサイドセールスを導入する際の具体的な手順を解説します(出典:SALES ROBOTICS「インサイドセールスを立ち上げるための5つの手順」2023年)。
(1) ステップ1:目的の明確化(リード育成、商談化率向上、受注増加など)
まず、インサイドセールスを導入する目的を明確にします。
目的の例:
- リード育成の強化(マーケティングが獲得したリードを効率的に育成する)
- 商談化率の向上(質の高いリードをフィールドセールスに引き継ぐ)
- 受注数・受注額の増加(営業プロセス全体の効率化により受注を増やす)
- 営業の地理的制約の解消(全国・海外の顧客にもアプローチ可能にする)
目的が不明確なまま見切り発車で分業化を進めると、失敗の原因となります。
(2) ステップ2:役割分担の設定(マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスの連携)
マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの役割分担を設定します。
役割分担の例:
- マーケティング:リード獲得まで
- インサイドセールス:リード育成〜案件化(BANT情報[Budget/Authority/Needs/Timeframe]の確認まで)
- フィールドセールス:商談〜契約締結
連携のポイント: 部門間で「どの段階で引き継ぐか」「どの情報を共有するか」を明確にし、定期的なミーティングで連携を強化します。
(3) ステップ3:体制構築(人材配置・チーム編成)
インサイドセールスチームを構築します。
人材要件:
- コミュニケーションスキル(顧客と信頼関係を築く力)
- 顧客ニーズ把握力(課題を引き出し、適切な提案をする力)
- 論理的思考力(データ分析、優先順位付け)
- ツール活用力(CRM・SFA・MAツールを使いこなす力)
チーム編成: 初期は少人数(1〜3名)から始め、成果を確認しながら拡大するのが堅実です。
(4) ステップ4:ツール導入(CRM、SFA、MAツール、Web会議、IP電話)
インサイドセールス活動を支援するツールを導入します。
主要ツール:
- CRM(顧客情報管理): 顧客情報を一元管理
- SFA(営業支援): 営業活動の記録・分析
- MAツール(マーケティングオートメーション): リードスコアリング、メール配信自動化
- Web会議ツール: Zoom、Microsoft Teams、Google Meetなど
- IP電話システム: 架電履歴の記録、録音機能
ツールは一度にすべて導入するのではなく、最小限から始めて必要に応じて追加するのが推奨されます。
(5) ステップ5:運用と改善(定期的なレビューと最適化)
運用を開始したら、定期的にレビューを行い、改善を重ねます。
レビューのポイント:
- KPIの達成状況(目標に対する進捗)
- 課題の洗い出し(架電しても繋がらない、商談化率が低いなど)
- 改善施策の実行(トークスクリプトの見直し、アプローチタイミングの調整など)
PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回し、継続的に最適化していくことが重要です。
4. インサイドセールスのKPI設計と運用のポイント
KPI設計の具体的な方法と運用のポイントを解説します。
(1) KGIからの逆算によるKPI設定方法
KPI設定は、最終目標(KGI: Key Goal Indicator)から逆算して行います(出典:才流「インサイドセールスのKPI項目と設定手順【SDR・BDR】」2024年)。
逆算の例:
- KGI(最終目標): 月間受注目標10件
- 商談から受注までの転換率: 50%
- 必要な商談数: 10件 ÷ 0.5 = 20件
- 着電から商談までの転換率: 20%
- 必要な着電数: 20件 ÷ 0.2 = 100件
- 架電から着電までの転換率: 30%
- 必要な架電数: 100件 ÷ 0.3 = 約333件
このように逆算することで、目標を達成するために必要な行動量が明確になります。
(2) SDRのKPI|架電数、着電率、商談化率
SDR(反響型インサイドセールス)の主なKPIは以下の通りです:
行動量KPI:
- 架電数(1日あたり、1週間あたり)
- メール送信数
成果KPI:
- 着電率(架電数に対して実際に話せた割合)
- 商談化率(着電数に対して商談化した割合)
- 商談数
SDRはマーケティングが獲得したリードをフォローするため、リードの質にも成果が左右されます。マーケティング部門との連携が重要です。
(3) BDRのKPI|新規リード獲得数、初回商談数
BDR(新規開拓型インサイドセールス)の主なKPIは以下の通りです:
行動量KPI:
- ターゲットリスト作成数
- 架電数・メール送信数
成果KPI:
- 新規リード獲得数(初回コンタクト成功数)
- 初回商談数
- 商談化率
BDRはマーケティングリード以外にアプローチするため、ターゲット選定の精度が成果を左右します。
(4) 部門間のKPIすり合わせ(マーケティング・フィールドセールスとの連携)
KPIは各部門で独立して設定するのではなく、部門間ですり合わせることが重要です。
すり合わせのポイント:
- マーケティング部門のKPI(リード獲得数)とインサイドセールスのKPI(商談化数)が連動しているか
- インサイドセールスのKPI(商談化数)とフィールドセールスのKPI(受注数)が連動しているか
- 各部門の目標が全体の事業目標に整合しているか
定期的なミーティングで進捗を共有し、必要に応じてKPIを調整することが推奨されます。
5. インサイドセールスの成功・失敗パターンと対策
実際の成功事例と失敗パターンを紹介し、対策を解説します。
(1) 成功パターン|受注率2倍以上増加、リードタイム1/2短縮の事例
電通B2Bイニシアティブがまとめた「インサイドセールス成功導入事例11選」では、以下のような成果が報告されています(出典:電通B2Bイニシアティブ「インサイドセールス成功導入事例11選」2024年):
成功事例の例:
- 受注率が2倍以上に増加(インサイドセールスが質の高いリードをフィールドセールスに引き継いだことで、商談の成約率が向上)
- リードタイムが1/2に短縮(迅速なフォローアップにより、顧客の検討期間が短縮)
- 商談数が14件/日に達成(効率的な架電・メールフォローにより、1人あたりの商談数が増加)
成功要因:
- 目的と役割分担を明確にしてから導入した
- マーケティング・フィールドセールスとの連携が強固だった
- KPIを定期的に見直し、改善を重ねた
(2) 失敗パターン1:見切り発車の分業化(役割分担が不明確)
営業組織の分業化を急ぎすぎて、役割分担が不明確なまま進めてしまうケースです。
問題点:
- インサイドセールスとフィールドセールスの間で「どこまでがインサイドセールスの担当か」が曖昧
- リードの引き継ぎがスムーズにいかず、顧客対応が遅れる
- 部門間で責任の押し付け合いが発生する
対策: 導入前に、役割分担を明確にし、引き継ぎ基準を具体的に設定する。定期的なミーティングで連携を強化する。
(3) 失敗パターン2:BtoBマーケティング全体の方針との不整合
インサイドセールスだけを導入しても、BtoBマーケティング全体の方針と整合していなければ効果は出にくいです。
問題点:
- マーケティングが獲得するリードの質・量がインサイドセールスの想定と合わない
- 全体のカスタマージャーニー(顧客の購買プロセス)が設計されていない
対策: インサイドセールス導入前に、BtoBマーケティング全体の戦略を整理し、各部門の役割を明確にする。
(4) 失敗パターン3:KPI設定しっぱなし(定期的な見直し不足)
KPIを設定したものの、定期的な見直しを行わず、事業環境の変化に対応できないケースです。
問題点:
- 市場環境や競合状況が変化しても、KPIがそのまま
- 現実的でない目標を追い続け、チームのモチベーションが低下
対策: 四半期ごとにKPIをレビューし、必要に応じて調整する。事業目標の変更があった場合は、すぐにKPIも見直す。
(5) 2024年のトレンド|AI活用の進化(音声要約・メール自動生成・顧客リサーチ)
スマートキャンプの「インサイドセールス業界レポート2024-2025」によれば、2024年はAI活用がインサイドセールス業界の重要テーマとなっています(出典:スマートキャンプ「インサイドセールス業界レポート2024-2025」2024年)。
AI活用の具体例:
- 電話音声の要約・解析(会話内容を自動でテキスト化し、重要ポイントを抽出)
- メール文面の自動生成(顧客の状況に応じた適切なメールを生成)
- 顧客情報のリサーチ(企業情報・ニュースを自動収集し、アプローチの参考にする)
- マルチモーダルAI(音声・テキスト・画像の複合分析による深い顧客理解)
AI活用の注意点: AIは「生成(Generation)」よりも「確認・理解・カスタマイズ(3C)」から始めることが推奨されています。AIが生成した内容をそのまま使うのではなく、人間が確認・編集することで品質を保ちます。
6. まとめ|成果を出すインサイドセールス戦略のポイント
インサイドセールス戦略は、ターゲット設計・アプローチ設計・組織設計・KPI設計の4つの構成要素から成り立ちます。導入は目的明確化から始め、役割分担、体制構築、ツール導入、運用改善の5ステップで進めることが推奨されます。
成功のための重要ポイント:
- 目的を明確にし、見切り発車の分業化を避ける
- マーケティング・フィールドセールスとの役割分担を明確にし、「商談」の定義など共通認識を形成する
- KPIは受注目標から逆算して設定し、定期的に見直す
- 部門間でKPIをすり合わせ、全体の事業目標に整合させる
- AI活用は確認・理解・カスタマイズから始め、人間が品質を保つ
次のアクション:
- 自社のインサイドセールス導入目的を整理する(リード育成、商談化率向上、受注増加など)
- マーケティング・フィールドセールスとの役割分担を明確にする
- 最小限のKPIを設定し、運用を開始する
- 定期的にレビューを行い、改善を重ねる
インサイドセールス戦略は、一度設計したら終わりではありません。事業環境の変化や市場動向に応じて、継続的に最適化していくことが成功への道です。まずは小さく始めて、自社に合ったやり方を見つけていきましょう。
※この記事は2024年11月時点の情報をもとに作成しています。インサイドセールスの手法やツールは進化を続けているため、最新情報は各種公式サイト・信頼できるメディアでご確認ください。
