なぜデータ統合が必要なのか
B2B企業のデータエンジニアやマーケティングマネージャーの多くが、「CRM・MA・SFA・会計システムにデータが散在していて全体像が見えない」「レポート作成のためのデータ収集に時間がかかりすぎる」といった課題を抱えています。データ統合により、散在するデータを一元管理し、業務効率化・データ分析の高速化・データ品質の向上を実現できます。
世界のデータ統合市場は2025年に165.2億ドル、2032年には406.1億ドル(年平均成長率13.7%)に成長すると予測されており、デジタルトランスフォーメーション(DX)の前段として欠かせない施策となっています。この記事では、データ統合の基礎知識から手法・ツール選定・導入課題まで、実務担当者が判断に必要な情報を整理してご紹介します。
この記事のポイント:
- データ統合は散在・点在するデータを形式統一して集約すること、データサイロ化を解消し一元管理を実現
- ETL(バッチ処理・大量データ統合)、EAI(リアルタイム連携)、iPaaS(クラウドベース統合)の3つの主要手法
- ツール選定はデータ種類・処理スピード・コスト・導入規模を考慮
- 導入課題はシステムの複雑化・データ整合性・人材確保
- 成功事例:Netflix(パーソナライズ推薦)、Walmart(在庫管理・価格設定最適化)
データ統合の基礎知識
(1) データ統合とは何か
データ統合とは、自社や関係企業に散在・点在するデータを形式統一して集約することです。分散した状態では見えなかったものが、集めることで見えるようになります。
データ統合で実現できること:
- 複数のデータソース(CRM、MA、SFA、会計システム等)からデータを抽出
- 異なる形式・構造のデータを統一フォーマットに変換
- 統合されたデータを単一のデータベース(データウェアハウス等)に格納
- 全ユーザーが効率的にデータを取得できる環境を整備
データ統合により、統合用データベースのSQLだけを把握していればよい状態になり、データ分析の効率が大幅に向上します。
(2) データサイロ化の問題とその解消
データサイロとは、異なる部門やシステムに散在しているデータが孤立している状態です。
データサイロ化による問題:
- 部門ごとにデータが分断され、全社的な分析ができない
- 同じデータが複数のシステムに重複して存在し、整合性が取れない
- データ収集のために複数システムにアクセスする必要があり、時間がかかる
- 管理担当者の負担が増加する
データ統合による解消: データ統合により、部門間の壁を取り払い共通のデータ基盤をもとに議論・分析を行える体制を整えられます。DX(デジタルトランスフォーメーション)の前段として、データサイロ化の解消は欠かせない施策です。
主な手法とツールの違い
(1) ETL:バッチ処理による大量データ統合
ETL(Extract, Transform, Load)は、データ抽出・変換・ロードの3つのプロセスで構成される手法です。
ETLの特徴:
- 大量データの定期的な統合処理(バッチ指向)
- データウェアハウス(DWH)に保存し、BIツールで分析しやすい形に変換
- 日次・週次・月次などの定期的なデータ更新が一般的
ETLが向いている用途:
- 形式変換したいデータの容量が多く、処理スピードを重視する場合
- 定期的なレポート作成・月次分析など、リアルタイム性が不要な場合
- 過去データの集約・履歴分析
主なETLツール:
- Informatica PowerCenter(エンタープライズ向け)
- Talend(オープンソース・商用版あり)
- Power Query(Microsoft製、Excel・Power BI連携)
(2) EAI:リアルタイムなシステム間連携
EAI(Enterprise Application Integration)は、企業内のシステム間でビジネスプロセスやデータを連携させる仕組みです。
EAIの特徴:
- リアルタイムなデータ処理(イベント指向)
- 残高照会や受発注処理といったリアルタイム処理が得意
- システム間のメッセージング・イベント駆動型アーキテクチャ
EAIが向いている用途:
- 複数システムで常に最新情報を共有したい場合
- リアルタイムな在庫管理・受発注処理
- 即座に他システムに反映する必要があるデータ連携
主なEAIツール:
- MuleSoft Anypoint Platform(API連携重視)
- IBM App Connect(エンタープライズ向け)
(3) iPaaS・データ仮想化の活用
iPaaS(Integration Platform as a Service): クラウドベースのデータ統合プラットフォームで、複数のクラウドサービスやオンプレミスシステムを統合します。
iPaaSの特徴:
- 初期費用を抑えて小規模から始められる
- SaaS間の連携が容易(Salesforce、HubSpot、Slack等)
- 設定がノーコード・ローコードで可能なツールが多い
データ仮想化: 物理的にデータを移動・複製せずに、異なるデータソースからデータを統合して提供する技術です。
データ仮想化の特徴:
- データの複製が不要なため、ストレージコストを削減
- 常に最新のデータにアクセス可能
- データ移動・変換の時間が不要
データ統合ツールの選定ポイント
(1) データ種類・形式への対応
ツール選定時は、表データ・画像・動画などデータの種類や保存形式に対応しているかチェックが必要です。
確認すべきポイント:
- 構造化データ(RDB)・半構造化データ(JSON、XML)・非構造化データ(画像、動画)への対応
- 文字コード体系の違い(メインフレームデータとオープンシステムの変換)
- データ名称・日付形式の多様性への対応
推奨ツール:
- SQL(構造化データの操作)
- Tableau Prep(データ準備・クレンジング)
- Informatica PowerCenter(多様なデータ形式に対応)
- Talend(オープンソース・柔軟なデータ変換)
(2) 処理スピードとリアルタイム性の要件
処理スピードとリアルタイム性の要件に応じて、適切な手法を選択します。
バッチ処理(ETL)が適切な場合:
- 大量データを定期的に処理(日次、週次、月次)
- 過去データの集約・履歴分析
- リアルタイム性が不要なレポート作成
リアルタイム処理(EAI、API)が適切な場合:
- 在庫管理・受発注処理など、即座に他システムに反映が必要
- ユーザーアクションに応じた即座のレスポンス
- イベント駆動型のビジネスプロセス
(3) コストと導入規模の見極め
コストは、ツール費用・人件費・インフラ費用で大きく変動します。
コスト見積もりのポイント:
- ツールのライセンス費用(サブスクリプション or 買い切り)
- 初期導入費用(システム構築、データマッピング設計)
- 運用費用(保守、人件費、インフラ)
- クラウドベースのiPaaSなら初期費用を抑えて小規模から始められる
導入規模別の選択肢:
- 小規模(従業員50人未満): iPaaS(Zapier、Integromat等)で低コスト導入
- 中規模(従業員50-500人): Talend、Informatica Cloud等のクラウドETL
- 大規模(従業員500人以上): Informatica PowerCenter、IBM DataStage等のエンタープライズETL
導入時の課題と対策
(1) システムの複雑化とデータ整合性
データ統合では、異なるソースや形式のデータを統合するため、データの整合性・一貫性を保つための複雑なデータマッピング・変換手続きが必要です。
課題:
- データ形式の多様性(文字コード、日付形式、データ名称の違い)
- システム上の制限からデータ名称・日付を最低限のデータボリュームで表現している場合がある
- データの重複・欠損・不整合の発生
対策:
- データマッピング・変換ルールの明確化(ドキュメント化)
- データ品質チェックの自動化(バリデーションルールの設定)
- 段階的な統合(小規模なパイロットプロジェクトから始める)
(2) 人材確保と専門知識の壁
データ統合には専門知識を持つ人材が必要です。
必要なスキル:
- SQL・データモデリング・ETLツール操作の基礎知識
- データマッピング・変換ルール設計には業務知識も必要
- データ品質管理・データガバナンスの理解
対策:
- 外部専門家・コンサルタントの活用(初期導入支援)
- 社内人材の教育・トレーニング(ツールベンダーの研修プログラム活用)
- ノーコード・ローコードツールの採用(技術的ハードルを下げる)
注意点: 計画の複雑性と人材確保が課題となるため、入念な計画(必要なデータ、ソースシステム、統合インフラ、分析の種類等)が必要ですが、最初から理想的なデータ統合像を描くのは困難です。段階的にスコープを拡大していくアプローチが推奨されます。
まとめ:データ統合基盤構築の第一歩
データ統合は、散在するデータを一元管理し、業務効率化・データ分析の高速化・データ品質の向上を実現する施策です。DXの前段として欠かせない取り組みとなっています。
データ統合成功のポイント:
- ETL・EAI・iPaaSの違いを理解し、用途に応じて選択
- データ種類・処理スピード・コスト・導入規模を考慮してツールを選定
- 小規模なパイロットプロジェクトから始め、段階的にスコープを拡大
- データマッピング・変換ルールを明確化し、データ品質チェックを自動化
- 外部専門家の活用と社内人材の教育を並行
次のアクション:
- 現状のデータ散在状況を整理する(どのシステムに何のデータがあるか)
- 統合の目的・ゴールを明確化する(どの分析をしたいのか)
- 小規模なパイロットプロジェクトで手法・ツールを試す
- ツールベンダーの無料トライアル・デモを活用して操作性を確認
- 成功事例(Netflix、Walmart等)を参考に、自社に適用できるパターンを検討
データ統合は複雑な取り組みですが、小さく始めて検証を繰り返すアプローチで、データ活用の効果を最大化しましょう。
※ツールの仕様・機能は更新される可能性があります。最新情報は各ツールの公式サイトでご確認ください(この記事は2025年1月時点の情報です)。
