ETLとは?データ連携の基礎からツール選定まで徹底解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/19

複数システムのデータ統合に時間がかかりすぎる...

BtoB企業のデータエンジニア・情報システム担当者の多くが「複数システムに点在するデータを統合したい」「データ統合に膨大な工数がかかっている」という課題を抱えています。営業データ、マーケティングデータ、財務データなどが別々のシステムに保管され、経営判断やデータ分析に活用できていない企業が多いのが現状です。

この記事では、ETL(Extract-Transform-Load)の基礎知識から、ETLツールの主要機能・選定ポイント・導入ステップまで、実務担当者の目線で解説します。

この記事のポイント:

  • ETLはデータを「抽出(Extract)→変換(Transform)→ロード(Load)」する3段階のデータ統合プロセス
  • ETLツールにより、手作業のデータ統合を自動化でき、工数を大幅削減できる
  • クラウドデータウェアハウス時代にはELT(Extract-Load-Transform)も選択肢に
  • 日本企業の23.66%が既にETL/データ統合ツールを使用している
  • アダプター数・ローコード対応・クラウド連携がツール選定の重要ポイント

1. ETLが求められる背景:データ統合の課題

BtoB企業では、複数システムに点在するデータの統合が大きな課題になっています。

(1) 複数システムに点在するデータの統合課題

企業では、業務ごとに異なるシステムが導入されており、データが分散しています。

データが点在する例:

  • 営業データ: SFA(Salesforce、HubSpot等)
  • マーケティングデータ: MA(Marketo、Pardot等)
  • 顧客データ: CRM(Dynamics 365等)
  • 財務データ: 会計システム(freee、マネーフォワード等)
  • ECサイトデータ: Shopify、BASE等

これらのデータを統合し、経営判断やデータ分析に活用したいという需要が高まっています。

統合が必要な理由:

  • 経営層が全社横断的にデータを俯瞰し、意思決定したい
  • マーケティング施策の効果(リード獲得→商談化→受注)を測定したい
  • 顧客の購買パターンを分析し、最適なアプローチ方法を立案したい

しかし、システムごとにデータ形式(CSV、JSON、XML等)、文字コード(UTF-8、Shift_JIS等)、属性定義が異なるため、統合には高度な技術が必要です。

(2) 手作業・個別開発によるデータ統合の限界

従来は、手作業や個別開発でデータを統合していましたが、以下の課題がありました。

手作業によるデータ統合の課題:

  • データをExcelにコピー&ペーストで統合する作業に膨大な時間がかかる
  • 手作業のため、ヒューマンエラー(入力ミス、重複、欠損等)が発生する
  • データ量が増えるほど、作業時間が指数関数的に増加する

個別開発によるデータ統合の課題:

  • システムごとに個別にプログラムを開発する必要があり、開発コストが膨大
  • プログラムのメンテナンスに継続的な工数がかかる
  • データソースが追加されるたびに、プログラムを改修する必要がある

これらの課題を解決するために、ETLツールが注目されています。

2. ETLとは:データ統合の基礎知識

(1) ETLの定義:Extract-Transform-Loadとは

ETL(Extract, Transform, Load)は、データを入力ソースから「抽出(Extract)」し、「変換・加工(Transform)」し、出力先に「ロード(Load)」する、データ統合の3段階プロセスです。

ETLの3段階プロセス:

  1. Extract(抽出): さまざまなデータソース(データベース、SaaS、API、Excelファイル等)からデータを取得
  2. Transform(変換): 抽出したデータのフォーマット、文字コード、属性などを変換・加工し、統一されたデータ形式にする
  3. Load(ロード): 変換したデータをターゲットデータベース(データウェアハウス、データレイク等)に書き出す

ETLは、数十年にわたってデータ統合の礎となっており、ビジネスインテリジェンス(BI)やデータアナリティクスの基盤を提供しています(IBM「What is ETL?」より)。

(2) データアナリティクス・BIの基盤としての役割

ETLは、BI(ビジネスインテリジェンス)やデータアナリティクスの基盤として重要な役割を果たします。

ETLがBIの基盤となる理由:

  • 複数システムのデータを統合し、一元的に分析できる状態にする
  • データウェアハウス(DWH)に統合されたデータをBIツール(Tableau、PowerBI等)で可視化できる
  • 経営層・現場担当者が全社横断的にデータを俯瞰し、意思決定できる

ETLがなければ:

  • データが各システムに点在し、全体像が把握できない
  • 手作業でデータを統合する必要があり、リアルタイムな分析ができない
  • データの不整合・重複・欠損が混入し、分析結果の信頼性が低下する

(3) ETLツールとは何か

ETLツールは、ETLの3段階プロセス(抽出・変換・ロード)を自動化するソフトウェアです。

ETLツールの役割:

  • 複数のデータソース(SaaS、データベース、API、ファイル等)からデータを自動抽出
  • データのクレンジング(不整合・重複・欠損の修正)・変換・統一を自動実行
  • データウェアハウスやデータレイクへの自動ロード
  • 定期的に実行(日次・週次・月次)し、データを最新状態に保つ

主要ETLツールの例:

  • Talend(オープンソース、高機能)
  • Informatica(エンタープライズ向け、実績豊富)
  • TROCCO(国内企業、ノーコード・クラウドネイティブ)
  • AWS Glue(AWS環境向け、サーバーレス)
  • Azure Data Factory(Azure環境向け、クラウドネイティブ)

日本企業の23.66%が既にETL/データ統合ツールを使用しています(ASPIC「ETLツールの比較15選」より)。

3. ETLツールの主要機能と処理フロー

(1) Extract(抽出):データソースからのデータ取得

Extract(抽出)は、さまざまなデータソースからデータを取得する工程です。

主なデータソース:

  • データベース: MySQL、PostgreSQL、Oracle、SQL Server等
  • SaaSアプリケーション: Salesforce、HubSpot、Google Analytics、Shopify等
  • クラウドストレージ: AWS S3、Azure Blob Storage、Google Cloud Storage等
  • ファイル: Excel、CSV、JSON、XML等
  • API: RESTful API、SOAP API等

抽出方法:

  • フルロード: データソース全体を毎回抽出(初回導入時)
  • 増分ロード: 前回抽出以降の差分データのみを抽出(日次・週次更新)
  • Change Data Capture(CDC): データソースの変更をリアルタイムで検知し、変更分のみを抽出

ETLツールのメリット:

  • アダプター・コネクタにより、主要なデータソースに簡単に接続できる
  • 抽出処理を自動化でき、手作業が不要
  • スケジュール設定により、定期的に最新データを取得できる

(2) Transform(変換):データの加工・クレンジング・統一

Transform(変換)は、抽出したデータのフォーマット、文字コード、属性などを変換・加工し、統一されたデータ形式にする工程です。

主な変換処理:

  • データクレンジング: 不整合、重複、欠損を検出・修正
  • フォーマット変換: データ型の統一(日付形式、数値形式、文字列形式等)
  • 文字コード変換: UTF-8、Shift_JIS等の文字コードを統一
  • データマッピング: ソースデータの属性名をターゲットデータの属性名にマッピング(例: 「顧客名」→「company_name」)
  • 集計・計算: 合計、平均、カウント等の集計処理
  • データ結合: 複数のデータソースを結合(JOIN)

例: ECサイトのデータ統合 ECサイトでは、顧客の来店回数、購入商品、平均購入金額といったデータが異なるツール(Shopify、Google Analytics、決済システム等)に点在します。ETLツールでこれらのデータを統一されたフォーマットに変換し、統合することで、顧客の購買パターンを分析できます。

(3) Load(ロード):データウェアハウスへの書き出し

Load(ロード)は、変換したデータをターゲットデータベース(データウェアハウス、データレイク等)に書き出す工程です。

主なロード先:

  • データウェアハウス(DWH): BigQuery(Google)、Snowflake、Redshift(AWS)、Synapse(Azure)等
  • データレイク: AWS S3、Azure Data Lake、Google Cloud Storage等
  • データベース: PostgreSQL、MySQL、Oracle等

ロード方法:

  • フルロード: データウェアハウス全体を毎回上書き
  • 増分ロード: 差分データのみを追加(Append)
  • Upsert(Insert or Update): 既存データがあれば更新、なければ追加

ETLツールのメリット:

  • ロード処理を自動化でき、手作業が不要
  • エラーハンドリング機能により、ロード失敗時に自動リトライ・通知

(4) 自動化とエラーハンドリング

ETLツールは、抽出・変換・ロードの一連のプロセスを自動化し、エラーハンドリング機能を提供します。

自動化のメリット:

  • データ収集・統合を定期的に実行(日次・週次・月次)し、常に最新データを保持
  • 手作業のヒューマンエラーを削減できる
  • データエンジニアの工数を大幅に削減できる

エラーハンドリング:

  • データソース接続エラー、変換エラー、ロードエラー等を自動検知
  • エラー発生時に自動リトライ
  • エラー内容を通知(メール、Slack等)
  • エラーログを記録し、原因調査をサポート

事例: 大阪ガス株式会社 大阪ガスでは、ETLツール「TROCCO®」の導入により、データ分析やより高度なプロダクトに時間を割けるようになりました。オンプレミスETLからクラウドETLに移行した結果、エラー件数が0になり、連携作業時間が40%削減されました(CTCエスピー「ETLの基礎知識と成功のポイント」より)。

4. ETLとELTの違いと使い分け

(1) ETLとELTの処理順序の違い

ETLとELT(Extract-Load-Transform)は、処理順序が異なります。

ETL(Extract → Transform → Load):

  1. データソースからデータを抽出
  2. ETLツール内でデータを変換・加工
  3. 変換済みデータをデータウェアハウスにロード

ELT(Extract → Load → Transform):

  1. データソースからデータを抽出
  2. 生データ(Raw Data)をデータウェアハウスに直接ロード
  3. データウェアハウス内でSQL等を使ってデータを変換・加工

(2) クラウドデータウェアハウス時代のELTの台頭

クラウドデータウェアハウス(BigQuery、Snowflake、Redshift等)の登場により、ELTが注目されています。

ELTが注目される理由:

  • クラウドデータウェアハウスは大量データを高速に処理できる
  • 生データを先にロードし、後からクラウドの処理能力で変換する方が効率的
  • データウェアハウス内でSQLを使って柔軟に変換できる

市場動向:

  • 2023-2024年にかけてクラウドETLは市場シェア60-65%を占める
  • クラウドパイプラインツールは約71%のシェアを獲得している

(3) ETLとELTの使い分け基準

ETLとELTは、データ環境や要件に応じて使い分けます。

ETLが適している場合:

  • 変換処理が複雑・高度で、専用のETLツールが必要
  • セキュリティ要件で、生データを外部(データウェアハウス)に保管できない
  • オンプレミスのデータウェアハウスを使用している
  • データソースとデータウェアハウスのネットワーク帯域が限られている(変換後のデータ量を削減してから転送)

ELTが適している場合:

  • クラウドデータウェアハウス(BigQuery、Snowflake等)を使用している
  • 大量データを高速にロードしたい
  • 変換ロジックを後から柔軟に変更したい(生データが保管されているため)
  • データアナリストがSQL等で自由に変換・分析したい

5. ETLツール選定のポイントと導入ステップ

(1) ツール選定のポイント(アダプター数・ローコード対応・クラウド連携)

ETLツール選定時は、以下のポイントを確認します。

1. アダプター・コネクタの数:

  • 自社が使用しているデータソース(Salesforce、HubSpot、Google Analytics等)に対応しているか
  • 主要なクラウドサービス(AWS、Azure、GCP)に対応しているか

2. ローコード・ノーコード対応:

  • ドラッグ&ドロップでデータフローを構築できるか
  • プログラミングの専門知識がなくても使えるか

3. クラウド連携:

  • クラウドデータウェアハウス(BigQuery、Snowflake、Redshift等)との連携が簡単か
  • クラウドネイティブな設計で、スケーラビリティが高いか

4. コスト:

  • 初期費用、月額費用、データ量に応じた従量課金等を確認
  • 無料トライアルで試用できるか

5. サポート体制:

  • 日本語サポートの有無(海外ツールは要確認)
  • オンボーディング支援(初期設定・運用立ち上げ支援)
  • コミュニティ・ドキュメントの充実度

(2) オンプレミスETL vs クラウドETL

オンプレミスETLとクラウドETLは、それぞれ以下の特徴があります。

オンプレミスETL:

  • 自社サーバーにETLソフトウェアをインストール
  • 初期投資(サーバー購入、ライセンス)が必要
  • インフラ管理・メンテナンスに継続的な工数がかかる
  • セキュリティ要件が厳しい企業に適している

クラウドETL:

  • クラウド上でETLサービスを利用(AWS Glue、Azure Data Factory、TROCCO等)
  • 初期投資が不要(従量課金モデル)
  • インフラ管理不要、スケーラビリティが高い
  • エラー件数削減、連携作業時間削減(事例では40%削減)が期待できる

(3) 導入ステップと成功事例

ETLツールの導入は、以下のステップで進めます。

導入ステップ:

  1. 要件定義: データソース、ターゲット、変換ロジック、更新頻度を明確化
  2. ツール選定: アダプター数、ローコード対応、クラウド連携、コストを比較
  3. PoC(概念実証): 無料トライアルで小規模データを使って試用
  4. 本番導入: データフローを構築し、スケジュール設定
  5. 運用・監視: エラーログを確認し、改善を継続

成功事例: 大阪ガス株式会社 大阪ガスでは、オンプレミスETLからクラウドETL(TROCCO®)に移行した結果、以下の効果が得られました:

  • エラー件数: 削減(0件に)
  • 連携作業時間: 40%削減
  • データ分析や高度なプロダクトに時間を割けるようになった

(4) 導入コストと期間の目安

ETLツールの導入コストと期間は、企業規模や要件により異なります。

コスト目安:

  • オープンソースETL(Talend Open Studio等): 無料(ただし運用・メンテナンスに工数)
  • クラウドETL(TROCCO、AWS Glue等): 月数万円〜(データ量・実行回数により変動)
  • エンタープライズETL(Informatica等): 月数十万円〜

期間目安:

  • PoC(概念実証): 1〜2週間
  • 本番導入: 1〜3ヶ月(データソース数・変換ロジックの複雑さによる)

※ツール仕様・料金プランは変更される可能性があります。最新情報は各社公式サイトをご確認ください(この記事は2024-2025年時点の情報です)。

6. まとめ:データ統合の最適解を見つける

ETL(Extract-Transform-Load)は、データを「抽出→変換→ロード」する3段階のデータ統合プロセスです。ETLツールを導入することで、手作業のデータ統合を自動化でき、工数を大幅に削減できます。クラウドデータウェアハウス時代にはELT(Extract-Load-Transform)も選択肢になります。

導入成功のポイント:

  • データソース、ターゲット、変換ロジック、更新頻度を明確にする
  • アダプター数、ローコード対応、クラウド連携、コストを比較する
  • 無料トライアルでPoCを実施し、効果を検証する
  • オンプレミスETLとクラウドETLを要件に応じて使い分ける

次のアクション:

  • 自社のデータ統合課題を整理する
  • 主要ETLツール(Talend、Informatica、TROCCO、AWS Glue等)の公式サイトで機能・料金を確認する
  • 無料トライアルで小規模データを使って試用する
  • PoCで効果を検証し、本番導入を決定する

自社に合ったETLツールで、データ統合を自動化し、データドリブン経営を実現しましょう。

よくある質問

Q1ETLとELTはどう使い分けるべきですか?

A1クラウドデータウェアハウス(BigQuery、Snowflake等)を使う場合はELTが有効です。大量データを高速にロードし、クラウドの処理能力で変換します。一方、変換処理が複雑・高度な場合や、セキュリティ要件で元データを外部に保管できない場合はETLが適しています。

Q2クラウドETLのメリットは何ですか?

A2オンプレミスETLと比較して、エラー件数の削減(事例では0件に)、連携作業時間の40%削減、インフラ管理不要、スケーラビリティの高さが挙げられます。初期投資も抑えられます。

Q3ETLツールを使うのに専門知識は必要ですか?

A3ローコード・ノーコード対応のETLツール(TROCCO、Talend等)は、ドラッグ&ドロップでデータフローを構築でき、プログラミング不要です。ただし、データ構造やSQL基礎知識は理解しておくと効果的に活用できます。

Q4ETLとEAI、BIツールの違いは何ですか?

A4ETLは定期的にデータウェアハウスへデータを集約し経営戦略に活かします。EAIはリアルタイムでアプリケーション間を連携させ日常業務を効率化します。BIツールはETLで統合したデータを可視化・分析します。ETL+EAI+BIを組み合わせると効果的です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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