複数システムのデータ統合に時間がかかりすぎる...
BtoB企業のデータエンジニア・情報システム担当者の多くが「複数システムに点在するデータを統合したい」「データ統合に膨大な工数がかかっている」という課題を抱えています。営業データ、マーケティングデータ、財務データなどが別々のシステムに保管され、経営判断やデータ分析に活用できていない企業が多いのが現状です。
この記事では、ETL(Extract-Transform-Load)の基礎知識から、ETLツールの主要機能・選定ポイント・導入ステップまで、実務担当者の目線で解説します。
この記事のポイント:
- ETLはデータを「抽出(Extract)→変換(Transform)→ロード(Load)」する3段階のデータ統合プロセス
- ETLツールにより、手作業のデータ統合を自動化でき、工数を大幅削減できる
- クラウドデータウェアハウス時代にはELT(Extract-Load-Transform)も選択肢に
- 日本企業の23.66%が既にETL/データ統合ツールを使用している
- アダプター数・ローコード対応・クラウド連携がツール選定の重要ポイント
1. ETLが求められる背景:データ統合の課題
BtoB企業では、複数システムに点在するデータの統合が大きな課題になっています。
(1) 複数システムに点在するデータの統合課題
企業では、業務ごとに異なるシステムが導入されており、データが分散しています。
データが点在する例:
- 営業データ: SFA(Salesforce、HubSpot等)
- マーケティングデータ: MA(Marketo、Pardot等)
- 顧客データ: CRM(Dynamics 365等)
- 財務データ: 会計システム(freee、マネーフォワード等)
- ECサイトデータ: Shopify、BASE等
これらのデータを統合し、経営判断やデータ分析に活用したいという需要が高まっています。
統合が必要な理由:
- 経営層が全社横断的にデータを俯瞰し、意思決定したい
- マーケティング施策の効果(リード獲得→商談化→受注)を測定したい
- 顧客の購買パターンを分析し、最適なアプローチ方法を立案したい
しかし、システムごとにデータ形式(CSV、JSON、XML等)、文字コード(UTF-8、Shift_JIS等)、属性定義が異なるため、統合には高度な技術が必要です。
(2) 手作業・個別開発によるデータ統合の限界
従来は、手作業や個別開発でデータを統合していましたが、以下の課題がありました。
手作業によるデータ統合の課題:
- データをExcelにコピー&ペーストで統合する作業に膨大な時間がかかる
- 手作業のため、ヒューマンエラー(入力ミス、重複、欠損等)が発生する
- データ量が増えるほど、作業時間が指数関数的に増加する
個別開発によるデータ統合の課題:
- システムごとに個別にプログラムを開発する必要があり、開発コストが膨大
- プログラムのメンテナンスに継続的な工数がかかる
- データソースが追加されるたびに、プログラムを改修する必要がある
これらの課題を解決するために、ETLツールが注目されています。
2. ETLとは:データ統合の基礎知識
(1) ETLの定義:Extract-Transform-Loadとは
ETL(Extract, Transform, Load)は、データを入力ソースから「抽出(Extract)」し、「変換・加工(Transform)」し、出力先に「ロード(Load)」する、データ統合の3段階プロセスです。
ETLの3段階プロセス:
- Extract(抽出): さまざまなデータソース(データベース、SaaS、API、Excelファイル等)からデータを取得
- Transform(変換): 抽出したデータのフォーマット、文字コード、属性などを変換・加工し、統一されたデータ形式にする
- Load(ロード): 変換したデータをターゲットデータベース(データウェアハウス、データレイク等)に書き出す
ETLは、数十年にわたってデータ統合の礎となっており、ビジネスインテリジェンス(BI)やデータアナリティクスの基盤を提供しています(IBM「What is ETL?」より)。
(2) データアナリティクス・BIの基盤としての役割
ETLは、BI(ビジネスインテリジェンス)やデータアナリティクスの基盤として重要な役割を果たします。
ETLがBIの基盤となる理由:
- 複数システムのデータを統合し、一元的に分析できる状態にする
- データウェアハウス(DWH)に統合されたデータをBIツール(Tableau、PowerBI等)で可視化できる
- 経営層・現場担当者が全社横断的にデータを俯瞰し、意思決定できる
ETLがなければ:
- データが各システムに点在し、全体像が把握できない
- 手作業でデータを統合する必要があり、リアルタイムな分析ができない
- データの不整合・重複・欠損が混入し、分析結果の信頼性が低下する
(3) ETLツールとは何か
ETLツールは、ETLの3段階プロセス(抽出・変換・ロード)を自動化するソフトウェアです。
ETLツールの役割:
- 複数のデータソース(SaaS、データベース、API、ファイル等)からデータを自動抽出
- データのクレンジング(不整合・重複・欠損の修正)・変換・統一を自動実行
- データウェアハウスやデータレイクへの自動ロード
- 定期的に実行(日次・週次・月次)し、データを最新状態に保つ
主要ETLツールの例:
- Talend(オープンソース、高機能)
- Informatica(エンタープライズ向け、実績豊富)
- TROCCO(国内企業、ノーコード・クラウドネイティブ)
- AWS Glue(AWS環境向け、サーバーレス)
- Azure Data Factory(Azure環境向け、クラウドネイティブ)
日本企業の23.66%が既にETL/データ統合ツールを使用しています(ASPIC「ETLツールの比較15選」より)。
3. ETLツールの主要機能と処理フロー
(1) Extract(抽出):データソースからのデータ取得
Extract(抽出)は、さまざまなデータソースからデータを取得する工程です。
主なデータソース:
- データベース: MySQL、PostgreSQL、Oracle、SQL Server等
- SaaSアプリケーション: Salesforce、HubSpot、Google Analytics、Shopify等
- クラウドストレージ: AWS S3、Azure Blob Storage、Google Cloud Storage等
- ファイル: Excel、CSV、JSON、XML等
- API: RESTful API、SOAP API等
抽出方法:
- フルロード: データソース全体を毎回抽出(初回導入時)
- 増分ロード: 前回抽出以降の差分データのみを抽出(日次・週次更新)
- Change Data Capture(CDC): データソースの変更をリアルタイムで検知し、変更分のみを抽出
ETLツールのメリット:
- アダプター・コネクタにより、主要なデータソースに簡単に接続できる
- 抽出処理を自動化でき、手作業が不要
- スケジュール設定により、定期的に最新データを取得できる
(2) Transform(変換):データの加工・クレンジング・統一
Transform(変換)は、抽出したデータのフォーマット、文字コード、属性などを変換・加工し、統一されたデータ形式にする工程です。
主な変換処理:
- データクレンジング: 不整合、重複、欠損を検出・修正
- フォーマット変換: データ型の統一(日付形式、数値形式、文字列形式等)
- 文字コード変換: UTF-8、Shift_JIS等の文字コードを統一
- データマッピング: ソースデータの属性名をターゲットデータの属性名にマッピング(例: 「顧客名」→「company_name」)
- 集計・計算: 合計、平均、カウント等の集計処理
- データ結合: 複数のデータソースを結合(JOIN)
例: ECサイトのデータ統合 ECサイトでは、顧客の来店回数、購入商品、平均購入金額といったデータが異なるツール(Shopify、Google Analytics、決済システム等)に点在します。ETLツールでこれらのデータを統一されたフォーマットに変換し、統合することで、顧客の購買パターンを分析できます。
(3) Load(ロード):データウェアハウスへの書き出し
Load(ロード)は、変換したデータをターゲットデータベース(データウェアハウス、データレイク等)に書き出す工程です。
主なロード先:
- データウェアハウス(DWH): BigQuery(Google)、Snowflake、Redshift(AWS)、Synapse(Azure)等
- データレイク: AWS S3、Azure Data Lake、Google Cloud Storage等
- データベース: PostgreSQL、MySQL、Oracle等
ロード方法:
- フルロード: データウェアハウス全体を毎回上書き
- 増分ロード: 差分データのみを追加(Append)
- Upsert(Insert or Update): 既存データがあれば更新、なければ追加
ETLツールのメリット:
- ロード処理を自動化でき、手作業が不要
- エラーハンドリング機能により、ロード失敗時に自動リトライ・通知
(4) 自動化とエラーハンドリング
ETLツールは、抽出・変換・ロードの一連のプロセスを自動化し、エラーハンドリング機能を提供します。
自動化のメリット:
- データ収集・統合を定期的に実行(日次・週次・月次)し、常に最新データを保持
- 手作業のヒューマンエラーを削減できる
- データエンジニアの工数を大幅に削減できる
エラーハンドリング:
- データソース接続エラー、変換エラー、ロードエラー等を自動検知
- エラー発生時に自動リトライ
- エラー内容を通知(メール、Slack等)
- エラーログを記録し、原因調査をサポート
事例: 大阪ガス株式会社 大阪ガスでは、ETLツール「TROCCO®」の導入により、データ分析やより高度なプロダクトに時間を割けるようになりました。オンプレミスETLからクラウドETLに移行した結果、エラー件数が0になり、連携作業時間が40%削減されました(CTCエスピー「ETLの基礎知識と成功のポイント」より)。
4. ETLとELTの違いと使い分け
(1) ETLとELTの処理順序の違い
ETLとELT(Extract-Load-Transform)は、処理順序が異なります。
ETL(Extract → Transform → Load):
- データソースからデータを抽出
- ETLツール内でデータを変換・加工
- 変換済みデータをデータウェアハウスにロード
ELT(Extract → Load → Transform):
- データソースからデータを抽出
- 生データ(Raw Data)をデータウェアハウスに直接ロード
- データウェアハウス内でSQL等を使ってデータを変換・加工
(2) クラウドデータウェアハウス時代のELTの台頭
クラウドデータウェアハウス(BigQuery、Snowflake、Redshift等)の登場により、ELTが注目されています。
ELTが注目される理由:
- クラウドデータウェアハウスは大量データを高速に処理できる
- 生データを先にロードし、後からクラウドの処理能力で変換する方が効率的
- データウェアハウス内でSQLを使って柔軟に変換できる
市場動向:
- 2023-2024年にかけてクラウドETLは市場シェア60-65%を占める
- クラウドパイプラインツールは約71%のシェアを獲得している
(3) ETLとELTの使い分け基準
ETLとELTは、データ環境や要件に応じて使い分けます。
ETLが適している場合:
- 変換処理が複雑・高度で、専用のETLツールが必要
- セキュリティ要件で、生データを外部(データウェアハウス)に保管できない
- オンプレミスのデータウェアハウスを使用している
- データソースとデータウェアハウスのネットワーク帯域が限られている(変換後のデータ量を削減してから転送)
ELTが適している場合:
- クラウドデータウェアハウス(BigQuery、Snowflake等)を使用している
- 大量データを高速にロードしたい
- 変換ロジックを後から柔軟に変更したい(生データが保管されているため)
- データアナリストがSQL等で自由に変換・分析したい
5. ETLツール選定のポイントと導入ステップ
(1) ツール選定のポイント(アダプター数・ローコード対応・クラウド連携)
ETLツール選定時は、以下のポイントを確認します。
1. アダプター・コネクタの数:
- 自社が使用しているデータソース(Salesforce、HubSpot、Google Analytics等)に対応しているか
- 主要なクラウドサービス(AWS、Azure、GCP)に対応しているか
2. ローコード・ノーコード対応:
- ドラッグ&ドロップでデータフローを構築できるか
- プログラミングの専門知識がなくても使えるか
3. クラウド連携:
- クラウドデータウェアハウス(BigQuery、Snowflake、Redshift等)との連携が簡単か
- クラウドネイティブな設計で、スケーラビリティが高いか
4. コスト:
- 初期費用、月額費用、データ量に応じた従量課金等を確認
- 無料トライアルで試用できるか
5. サポート体制:
- 日本語サポートの有無(海外ツールは要確認)
- オンボーディング支援(初期設定・運用立ち上げ支援)
- コミュニティ・ドキュメントの充実度
(2) オンプレミスETL vs クラウドETL
オンプレミスETLとクラウドETLは、それぞれ以下の特徴があります。
オンプレミスETL:
- 自社サーバーにETLソフトウェアをインストール
- 初期投資(サーバー購入、ライセンス)が必要
- インフラ管理・メンテナンスに継続的な工数がかかる
- セキュリティ要件が厳しい企業に適している
クラウドETL:
- クラウド上でETLサービスを利用(AWS Glue、Azure Data Factory、TROCCO等)
- 初期投資が不要(従量課金モデル)
- インフラ管理不要、スケーラビリティが高い
- エラー件数削減、連携作業時間削減(事例では40%削減)が期待できる
(3) 導入ステップと成功事例
ETLツールの導入は、以下のステップで進めます。
導入ステップ:
- 要件定義: データソース、ターゲット、変換ロジック、更新頻度を明確化
- ツール選定: アダプター数、ローコード対応、クラウド連携、コストを比較
- PoC(概念実証): 無料トライアルで小規模データを使って試用
- 本番導入: データフローを構築し、スケジュール設定
- 運用・監視: エラーログを確認し、改善を継続
成功事例: 大阪ガス株式会社 大阪ガスでは、オンプレミスETLからクラウドETL(TROCCO®)に移行した結果、以下の効果が得られました:
- エラー件数: 削減(0件に)
- 連携作業時間: 40%削減
- データ分析や高度なプロダクトに時間を割けるようになった
(4) 導入コストと期間の目安
ETLツールの導入コストと期間は、企業規模や要件により異なります。
コスト目安:
- オープンソースETL(Talend Open Studio等): 無料(ただし運用・メンテナンスに工数)
- クラウドETL(TROCCO、AWS Glue等): 月数万円〜(データ量・実行回数により変動)
- エンタープライズETL(Informatica等): 月数十万円〜
期間目安:
- PoC(概念実証): 1〜2週間
- 本番導入: 1〜3ヶ月(データソース数・変換ロジックの複雑さによる)
※ツール仕様・料金プランは変更される可能性があります。最新情報は各社公式サイトをご確認ください(この記事は2024-2025年時点の情報です)。
6. まとめ:データ統合の最適解を見つける
ETL(Extract-Transform-Load)は、データを「抽出→変換→ロード」する3段階のデータ統合プロセスです。ETLツールを導入することで、手作業のデータ統合を自動化でき、工数を大幅に削減できます。クラウドデータウェアハウス時代にはELT(Extract-Load-Transform)も選択肢になります。
導入成功のポイント:
- データソース、ターゲット、変換ロジック、更新頻度を明確にする
- アダプター数、ローコード対応、クラウド連携、コストを比較する
- 無料トライアルでPoCを実施し、効果を検証する
- オンプレミスETLとクラウドETLを要件に応じて使い分ける
次のアクション:
- 自社のデータ統合課題を整理する
- 主要ETLツール(Talend、Informatica、TROCCO、AWS Glue等)の公式サイトで機能・料金を確認する
- 無料トライアルで小規模データを使って試用する
- PoCで効果を検証し、本番導入を決定する
自社に合ったETLツールで、データ統合を自動化し、データドリブン経営を実現しましょう。
