データ統合が必要と言われているけれど、何から始めればいいか分からない...
社内に散在するデータを活用したいと考えているものの、「データ統合って具体的に何をするの?」「どんなツールを使えばいい?」「費用はどれくらいかかる?」といった疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、データ統合の基本概念から主要な手法、ツール選定のポイント、導入ステップまでを、B2B企業の実務担当者向けに解説します。
この記事のポイント:
- データ統合とは、異なる場所や形式で存在するデータを一つのシステムにまとめるプロセス
- ETL(抽出・変換・格納)が最も一般的な手法として広く利用されている
- ツール選定では、統合対象データ、ソースシステム、機能、コスト、サポート体制を確認
- 導入前に目的を明確化し、段階的に進めることが成功の鍵
- 世界市場は2025年に約165億ドル規模、CAGR 13.7%で成長予測
1. データ統合が必要とされる背景
多くのB2B企業では、部門ごとに異なるシステムやツールを導入した結果、データがサイロ化(分散・孤立)している状態に陥っています。営業部門はSFA、マーケティング部門はMAツール、カスタマーサポートは問い合わせ管理システムをそれぞれ運用し、顧客データや取引データがバラバラに存在しているケースが一般的です。
このようなデータサイロ化は以下の問題を引き起こします:
- 分析の困難さ: 部門横断的な分析ができず、全体像が見えない
- 業務の非効率: データ取得に時間がかかり、本来の分析業務に着手できない
- 意思決定の遅延: 最新データの把握に時間を要し、迅速な判断ができない
- セキュリティリスク: データのアクセス管理が複雑化し、ガバナンスが弱まる
データ統合市場調査によると、世界のデータ統合市場は2025年に165億2000万ドル(約2.5兆円)と推定され、2032年には406億1000万ドル(約6.1兆円)に達する見込みです(CAGR 13.7%)。IT・通信業界が市場シェアの36.6%を占め、デジタルトランスフォーメーションの推進に伴い需要が急速に高まっています。
2. データ統合の基礎知識(定義・データ連携との違い)
(1) データ統合の定義
データ統合とは、異なる場所や形式で存在するデータを一つのシステムや形式にまとめるプロセスを指します。分散した状態では見えなかった傾向やパターンが、データを集約することで可視化され、より深い分析が可能になります。
データ統合の目的は単にデータを集めることではなく、データの価値を高めることにあります。統合されるデータの種類が増えるほど、新たな知見が得られる可能性が高まると言われています。
(2) データ連携との違い
データ統合とデータ連携は混同されやすい概念ですが、明確な違いがあります:
| 項目 | データ統合 | データ連携 |
|---|---|---|
| 目的 | 複数のデータソースを一つにまとめる | システム間でデータをやり取りする |
| データの格納 | 統合基盤(DWHなど)に蓄積 | 必ずしも蓄積しない |
| 分析への活用 | 横断的な分析が可能 | リアルタイム連携が主目的 |
データ連携はシステム間の「橋渡し」、データ統合はデータの「集約・一元化」と理解するとわかりやすいでしょう。
(3) データサイロ化がもたらす課題
データサイロ化は以下のような具体的な課題をもたらします:
- 重複作業の発生: 同じデータを複数部門で別々に管理
- データ品質の低下: 更新タイミングのズレによる整合性の問題
- コスト増大: 個別システムの維持管理費用が膨らむ
- ガバナンスの弱体化: アクセス権管理が複雑化し、セキュリティリスクが高まる
3. データ統合の主要手法(ETL・EAI・ESB)
(1) ETL(Extract, Transform, Load)の基本プロセス
ETLはデータ統合において最も一般的な手法です。3つのステップで構成されます:
Extract(抽出): 複数のソースシステム(SFA、MAツール、基幹システムなど)からデータを抽出します。
Transform(変換): 抽出したデータを分析に適した形式に変換します。文字コードの統一、データ形式の標準化、不要データの除外などを行います。
Load(格納): 変換後のデータをデータウェアハウス(DWH)などの統合基盤に格納します。
ETL処理のタスク(データ抽出、複製、フォーマット変換、スクリプト作成、データロード)は工数がかかるため、担当者の負担が課題になるケースもあります。
(2) EAI・ESBによるアプリケーション間連携
EAI(Enterprise Application Integration): 企業内の異なるアプリケーションを統合する技術・ツールです。リアルタイムでのデータ連携が可能で、業務プロセスの自動化にも活用されます。
ESB(Enterprise Service Bus): システム間のデータ連携を仲介するミドルウェアです。各システムがESBを介してやり取りすることで、個別接続の複雑さを軽減できます。
これらはETLと組み合わせて使用されることも多く、リアルタイム連携が求められる場面ではEAI・ESB、バッチ処理での大量データ統合にはETLという使い分けが一般的です。
(3) データウェアハウスとの関係性
データウェアハウス(DWH)は、統合されたデータを蓄積・管理する大規模データベースです。ETLなどで統合されたデータはDWHに格納され、BIツールやデータ分析基盤から参照されます。
近年では、クラウド型DWH(Snowflake、BigQuery、Redshiftなど)の普及により、初期投資を抑えながらスケーラブルなデータ統合基盤を構築できるようになっています。
4. データ統合ツールの選定ポイントと比較
(1) 統合対象データとソースシステムの確認
ツール選定の前に、以下を整理することが重要です:
- どのデータを統合するか: 顧客データ、取引データ、行動データなど
- ソースシステムは何か: SFA、MAツール、基幹システム、Webアプリケーションなど
- どの統合基盤に集約するか: オンプレミスDWH、クラウドDWH、データレイクなど
- どのような分析を行うか: 定型レポート、アドホック分析、機械学習など
(2) ツール選定の評価軸(機能・コスト・サポート)
機能面:
- 対応するデータソースの種類
- ETL/ELTの処理能力
- データ変換・加工の柔軟性
- スケジュール実行・監視機能
コスト面:
- 初期導入費用(ライセンス、構築費用)
- 月額/年額の運用コスト
- データ量・処理量による従量課金の有無
サポート面:
- 日本語サポートの有無
- 導入支援・オンボーディング
- ドキュメント・コミュニティの充実度
(3) 主要データ統合ツールの特徴
代表的なツールの特徴を比較します:
| ツール | 特徴 | 適した企業規模 |
|---|---|---|
| ASTERIA Warp | 国内シェア上位、ノーコードで操作可能 | 中小〜中堅企業 |
| Informatica | グローバル大手、高機能・大規模向け | 大企業 |
| Talend | オープンソース版あり、柔軟性が高い | 中堅〜大企業 |
| Azure Data Factory | Microsoft製品との親和性が高い | Microsoft環境利用企業 |
| AWS Glue | AWS環境でのデータ統合に最適 | AWS利用企業 |
※料金・仕様は変更される可能性があります。最新情報は各社公式サイトをご確認ください。
5. データ統合の導入ステップと課題・対策
(1) 統合対象の決定と目的の明確化
データ統合を成功させるための最初のステップは、目的の明確化です。「データ統合自体を目的化してしまい、統合後の活用方法が定まっていない」というケースは少なくありません。
以下の問いに答えることで、目的を明確にします:
- なぜデータ統合が必要か?(課題の特定)
- 統合後にどのような分析・活用をしたいか?(ゴールの設定)
- どのデータを優先的に統合すべきか?(スコープの決定)
(2) データ加工・集積のプロセス
目的が明確になったら、以下のステップで進めます:
Step 1: 統合対象の決定 優先度の高いデータソースを特定し、統合範囲を決定します。
Step 2: 対象データの加工 データクレンジング(誤り・重複の除去)、フォーマット変換、文字コード統一などを行います。メインフレームとオープン系では文字コード体系が異なるため、変換処理が必要になる場合があります。
Step 3: データの集積 加工されたデータをDWHなどの統合基盤に格納します。
(3) よくある課題と解決策(人材不足・ETL負担)
課題1: 専門人材の不足 データ統合には専門知識が必要ですが、そのような人材が限られています。
→ 解決策: 外部コンサルタントやベンダーサポートの活用。ツール選定・初期構築は外部、運用は内製というハイブリッドアプローチも有効です。
課題2: ETL処理の負担 データ抽出、複製、フォーマット変換、スクリプト作成、データロードといったタスクが膨大になりがちです。
→ 解決策: ノーコード/ローコードツールの活用、ELT(変換をDWH側で行う)への移行検討。
課題3: データ品質の問題 統合するデータの品質が低いと、分析結果の信頼性も低下します。
→ 解決策: データガバナンス体制の構築、品質基準・利用ルールの明確化、統合前後でのデータ検証プロセスの導入。
6. まとめ:データ統合を成功させるポイント
データ統合は、分散したデータを一元化し、企業のデータ活用を加速させるための重要な取り組みです。成功させるためのポイントを整理します:
成功のポイント:
- 目的を明確化してから着手する(統合自体を目的化しない)
- 小規模から始めて段階的に拡大する
- データ品質の確保に注力する(ガバナンス体制の構築)
- 専門人材の確保、または外部リソースの活用を検討する
- ツール選定は自社の環境・予算・目的に合わせて行う
次のアクション:
- 自社のデータサイロ化の現状を棚卸しする
- データ統合の目的と優先度を整理する
- 3〜5社のツールベンダーから情報収集する
- 小規模なPoC(概念実証)から始めることを検討する
データ統合は一朝一夕で完了するものではありませんが、段階的に取り組むことで、データドリブンな意思決定基盤を構築できます。まずは自社の現状把握から始めてみてはいかがでしょうか。
よくある質問:
Q: データ統合とETLの違いは何ですか? A: データ統合は複数のデータを一元化するという概念・目的を指し、ETLはそれを実現するための具体的な手法(抽出・変換・格納のプロセス)です。ETLはデータ統合を実現する手段の一つと位置づけられます。
Q: データ統合にはどれくらいのコストがかかりますか? A: 初期投資(ツール導入費・構築費)と運用コストが発生します。企業規模や既存システムの状況により大きく変動しますが、長期的には開発・メンテナンスコストの削減、業務効率化による効果が期待できます。具体的な費用は各ベンダーへの問い合わせをお勧めします。
Q: データ統合は内製と外注どちらが良いですか? A: 専門人材がいれば内製で柔軟に対応可能です。人材不足の場合は外部コンサルタントやベンダーサポートの活用を検討してください。ツール選定・初期構築は外部に依頼し、運用は内製で行うハイブリッドアプローチも有効な選択肢です。
Q: データ品質をどう担保すればよいですか? A: データクレンジング(誤り・重複の除去)を実施し、データガバナンス体制を構築することが重要です。品質基準・利用ルールを明確化し、統合前後でデータ検証を行うプロセスを導入することで、品質を担保できます。
