データETLとは?基本概念から実践的な導入方法まで徹底解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/18

複数システムのデータ統合に悩んでいませんか?

「CRM、MA、基幹システム...複数システムにデータが散在していて、統合的に分析できない」「Excel作業で手作業集計に時間がかかりすぎている」「データウェアハウスを構築したいが、どう進めればいいか分からない」――BtoB企業の情報システム部門やデータエンジニアなら、一度は直面する課題です。

データドリブン経営が求められる現代では、複数のデータソースを統合し、分析可能な状態にする「ETL」が不可欠です。ETLは、Extract(抽出)・Transform(変換)・Load(格納)の3つのプロセスで、データ統合と分析基盤構築を実現します。

この記事では、データETLの基本概念から、ELTとの違い、主要ETLツールの選定基準、パイプライン設計のポイントまで徹底解説します。

この記事のポイント:

  • ETLはExtract・Transform・Loadの3プロセスで、複数システムのデータを統合
  • クラウド時代にはELT(格納後に変換)が主流化、BigQuery・Snowflakeなどのクラウド DWH環境で有効
  • ETLツール選定はデータソース対応、ノーコード対応、オンプレミス/クラウド対応が重要
  • 業界調査によると、2024年時点で国内企業の23.66%、1,000名以上の大企業では38.16%がETL/データ連携ツールを活用中
  • ETLパイプラインは3層構造(Component・Workflow・Pipeline)で設計し、保守性を確保

1. データ統合における課題とETLの重要性

(1) 複数システムにデータが散在する課題

BtoB企業では、複数のシステムにデータが散在しているのが一般的です。

データが散在するシステムの例:

  • CRM: 顧客情報、問い合わせ履歴
  • SFA: 営業活動履歴、案件進捗
  • MA: マーケティング活動、リード獲得データ
  • 基幹システム(ERP): 売上データ、在庫データ、財務データ
  • Excel: 手入力データ、既存の管理表

これらのデータを統合して分析しない限り、全体像を把握することは困難です。

(2) 手作業による統合の限界

従来は、複数システムからデータをExcelにエクスポートし、手作業で統合していました。

手作業統合の限界:

  • 毎月・毎週の集計作業に膨大な時間がかかる
  • データ形式のバラツキ(日付形式、文字コードなど)で手作業が必要
  • ヒューマンエラーが発生しやすい
  • リアルタイムでの統合が困難
  • 属人化しやすく、担当者不在時に対応できない

これらの限界を解決するために、ETLが注目されています。

(3) データドリブン経営を支えるETL

データドリブン経営では、複数のデータソースを統合し、迅速に分析・意思決定できることが求められます。

ETLの役割:

  • 複数システムのデータを自動的に統合
  • 分析可能な形式に変換(データクリーニング、正規化、集計)
  • データウェアハウス(DWH)に格納し、BIツールで可視化
  • リアルタイムまたは定期的な自動更新

業界調査によると、2024年時点で国内企業の23.66%、1,000名以上の大企業では38.16%がETL/データ連携ツールを活用しているというデータもあります。

2. ETLとは?基本概念と3つのプロセス

(1) ETLの定義

**ETL(Extract, Transform, Load)**とは、データの抽出・変換・格納を行う一連のプロセスです。複数のデータソースからデータを抽出し、分析可能な形式に変換して、データウェアハウスに格納します。

ETLは、データ統合と分析基盤構築の中核技術として、多くの企業で活用されています。

※参照: ITトレンド「ETLとはどんなもの?機能からメリットまでわかりやすく解説」(2024年)

(2) Extract(抽出):データソースからのデータ取得

Extractプロセス:

  • 複数のデータソース(CRM、SFA、MA、基幹システム、Excelなど)からデータを取得
  • データソースの形式に応じて適切な方法で抽出(API連携、CSV/Excelファイル、データベース接続など)
  • 差分抽出または全量抽出を選択

差分抽出と全量抽出:

  • 差分抽出: 前回抽出後に更新されたデータのみを取得(効率的)
  • 全量抽出: すべてのデータを取得(シンプルだが処理時間がかかる)

(3) Transform(変換):データの加工・整形

Transformプロセス:

  • データクリーニング(重複削除、欠損値の補完、異常値の除去)
  • データ正規化(単位統一、日付形式統一、文字コード統一)
  • データ集計(日次→月次、店舗別→全社)
  • データ結合(複数テーブルのJOIN)
  • ビジネスルール適用(計算式、区分付与など)

変換処理は、分析の目的に応じて柔軟にカスタマイズできることが重要です。

※参照: アシスト「ETLとは~今さら聞けない!? ETLの基礎~」(2024年)

(4) Load(格納):データウェアハウスへの保存

Loadプロセス:

  • 変換後のデータをデータウェアハウス(DWH)に格納
  • 格納先は、オンプレミスのDWHまたはクラウドDWH(BigQuery、Snowflake、Redshiftなど)
  • 追加(Append)または上書き(Overwrite)を選択

格納後の活用:

  • BIツールで可視化(ダッシュボード作成)
  • SQLで自由に分析
  • 機械学習モデルの学習データとして活用

3. ETLとELTの違い・使い分け

(1) ELTとは(Extract-Load-Transform)

**ELT(Extract-Load-Transform)**は、ETLとは逆の順序で処理を行います:

  • Extract: データソースからデータを抽出
  • Load: 生データをそのままクラウドDWHに格納
  • Transform: クラウドDWH上で変換処理を実行

クラウドDWHの高速な処理能力を活かし、格納後に変換することで、柔軟性と効率性を向上させます。

(2) クラウド時代におけるELTの台頭

クラウド時代には、ELTが主流になりつつあります。

ELTが有効な理由:

  • クラウドDWH(BigQuery、Snowflake等)の処理能力が高速
  • 生データをそのまま格納し、必要な時に変換できる柔軟性
  • データレイクとの親和性が高い
  • 変換ロジックの変更が容易(再抽出が不要)

※参照: Google Cloud「What is ETL?」(2024年)

(3) ETLとELTの使い分け基準

ETLが適しているケース:

  • オンプレミスのDWH環境
  • 複雑な変換処理が必要(ビジネスロジックが複雑)
  • データのセキュリティ・ガバナンスが厳格(変換後のデータのみを格納)
  • 既存のETLツール・パイプラインが稼働中

ELTが適しているケース:

  • クラウドDWH環境(BigQuery、Snowflake、Redshift等)
  • 柔軟な分析が求められる(変換ロジックを後から変更したい)
  • データレイク構築
  • リアルタイム分析(ストリーミングデータ処理)

自社の環境・要件に応じて、ETLとELTを使い分けることが重要です。

(4) データパイプライン・EAIとの関係性

データパイプライン:

  • ETL/ELTを含む、データの収集から加工・分析までの自動化された流れ全体を指す
  • ETLはデータパイプラインの一部

EAI(Enterprise Application Integration):

  • 企業内の複数システムをリアルタイムに連携する技術
  • ETLはバッチ処理が中心、EAIはリアルタイム処理が中心
  • 最近は、ETLツールがリアルタイム処理にも対応し、境界が曖昧に

※参照: アシスト「ETLとは~今さら聞けない!? ETLの基礎~」(2024年)

4. 主要ETLツールの選定基準と比較

(1) ETLツール選定の5つのポイント

ETLツール選定時は、以下の5つのポイントを確認しましょう:

  1. データソース対応: 連携したいシステム(CRM、SFA、MA、基幹システム等)との互換性
  2. ノーコード・ローコード対応: 非エンジニアでも使えるか
  3. 変換機能: 必要な変換処理に対応する関数が標準搭載されているか
  4. オンプレミス/クラウド対応: 自社のデータ保管場所に対応しているか
  5. 日本語サポート: 国産ツールか海外製ツールか(文字コード対応、日本語サポートの有無)

※参照: ITトレンド「【最新ランキング】ETLツールおすすめ比較14選」(2024年)

(2) データソース対応と互換性

ETLツール選定で最優先すべきは、対象となるデータソースとの互換性です。

確認すべきこと:

  • CRM(Salesforce、HubSpot等)との連携
  • MA(Marketo、Pardot等)との連携
  • 基幹システム(SAP、Oracle等)との連携
  • Excelファイル、CSVファイルの取り込み
  • クラウドDWH(BigQuery、Snowflake等)への格納

互換性がないと、結局カスタム開発が必要になり、効率化の効果が薄れます。

(3) ノーコード・ローコード対応

ノーコード・ローコード対応のETLツールを選ぶと、開発工数を大幅削減できます。

ノーコード対応のメリット:

  • 非エンジニアでも基本的な統合作業が可能
  • GUI操作でデータフローを設計
  • 保守性が向上(コードレビューが不要)

ローコード対応:

  • 標準機能で対応できない複雑な処理は、最小限のコードで実装
  • PythonやSQLで拡張可能

(4) オンプレミス型とクラウド型の違い

オンプレミス型:

  • 自社サーバーにETLツールをインストール
  • データを社外に出さずに処理できる(セキュリティ重視)
  • 初期費用・保守費用が高額

クラウド型:

  • クラウド上でETL処理を実行
  • 初期費用が低く、従量課金で利用可能
  • スケーラビリティが高い(データ量増加に対応しやすい)
  • クラウドDWHとの親和性が高い

自社のデータ保管場所と処理方式を明確にしてから、ツールを選定することが重要です。

(5) 国産ツールと海外製ツールの違い

国産ETLツール:

  • 日本語サポートが充実(日本語マニュアル、日本語問い合わせ)
  • 日本特有のデータ処理に対応(文字コード、日付形式、ファイル形式)
  • 国内企業の導入実績が豊富

海外製ETLツール:

  • グローバルで広く使われている(情報が豊富)
  • 高度な機能が充実
  • 日本語サポートが限定的な場合がある
  • 文字コードやファイル形式の地域差に注意

主要なETLツール例(あくまで例示):

  • 国産: Waha! Transformer、TROCCO、Reckoner
  • 海外製: Talend、Informatica、AWS Glue、dbt

※特定のツールを推奨するものではありません。自社の要件に合ったツールを選定してください。

※参照: Waha! Transformer公式「ETLツールおすすめ10選を比較」(2024年)

5. ETLパイプラインの設計・実装のポイント

(1) ETLパイプラインの3層構造(Component・Workflow・Pipeline)

NTTデータが提唱するETLパイプラインの設計では、3層構造で整理することが推奨されています:

Component Layer(コンポーネント層):

  • Extract、Transform、Loadの各処理を個別のコンポーネントとして実装
  • 再利用可能な単位で設計

Workflow Layer(ワークフロー層):

  • 複数のコンポーネントを組み合わせて、1つのワークフローを構成
  • 例: 「顧客データ抽出 → 正規化 → 集計 → DWHへ格納」

Pipeline Layer(パイプライン層):

  • 複数のワークフローを統合し、全体のパイプラインを構成
  • 依存関係を管理し、順序を制御

この3層構造により、保守性・拡張性が向上します。

※参照: NTTデータ「ETLパイプライン開発の手引き」(2022年)

(2) バッチ処理の効率化

ETLはバッチ処理が中心ですが、効率化のポイントがあります:

差分抽出の活用:

  • 全量抽出ではなく、差分のみを抽出して処理時間を短縮

並列処理:

  • 複数のデータソースから同時に抽出
  • 変換処理を並列化

インクリメンタルロード:

  • 追加データのみをロード(全件上書きを避ける)

(3) ジョブ管理と自動実行の設定

ETLパイプラインは、ジョブ管理と自動実行の設定が重要です:

ジョブ管理:

  • 各ワークフローの実行状況を監視
  • エラー発生時のアラート設定
  • リトライ処理の設定

自動実行:

  • スケジュール実行(日次、週次、月次)
  • イベントトリガー(データ更新時に自動実行)

※参照: Cloud-for-All「ETLパイプラインとは?プロセスの流れや事例などについて解説」(2024年)

(4) ドキュメント化と属人化の防止

ETLパイプラインは、ドキュメント化して属人化を防ぐことが重要です:

ドキュメント化すべき内容:

  • データフロー図(どのデータソースからどのDWHへ、どのような変換を行うか)
  • 変換ロジックの詳細(ビジネスルール、計算式)
  • ジョブスケジュール(いつ実行されるか)
  • エラー時の対応手順

自動実行ジョブの管理体制が不十分だと、誰も把握していないジョブが動き続けるリスクがあります。定期的なレビューとドキュメント更新が推奨されます。

6. まとめ:ETL導入を成功させるために

ETL(Extract・Transform・Load)は、複数システムのデータを統合し、分析可能な状態にする中核技術です。クラウド時代には、ELT(格納後に変換)が主流化し、BigQueryやSnowflakeなどのクラウドDWH環境で活用が広がっています。

ETLの3つのプロセス:

  • Extract: データソースからデータを抽出
  • Transform: データを加工・整形(クリーニング、正規化、集計)
  • Load: データウェアハウスに格納

ETLツール選定のポイント:

  • データソース対応と互換性(最優先)
  • ノーコード・ローコード対応(開発工数削減)
  • オンプレミス/クラウド対応(自社環境に合わせる)
  • 国産/海外製(日本語サポート、文字コード対応)

ETLパイプライン設計のポイント:

  • 3層構造(Component・Workflow・Pipeline)で保守性を確保
  • バッチ処理の効率化(差分抽出、並列処理)
  • ジョブ管理と自動実行の設定
  • ドキュメント化と属人化の防止

次のアクション:

  • 自社のデータ統合の課題を洗い出す
  • 連携したいデータソースをリストアップする
  • 主要なETLツールの資料請求と無料トライアル
  • 公式サイトで最新の機能・料金を確認する

ETLを活用し、データドリブンな経営判断を実現しましょう。

※この記事の情報は2024年11月時点のものです。ETLツールの仕様や料金プランは変更される可能性がありますので、導入前に各ベンダーの公式サイトで最新情報をご確認ください。導入効果は企業規模・業種・データ量により異なります。

よくある質問

Q1ETLとは何ですか?

A1Extract(抽出)、Transform(変換)、Load(格納)の略で、複数のデータソースからデータを抽出し、分析可能な形式に変換して、データウェアハウスに格納する一連のプロセスです。データ統合と分析基盤構築の中核技術として、業界調査によると、2024年時点で国内企業の23.66%、1,000名以上の大企業では38.16%が活用しています。

Q2ETLツールとELTツールの違いは何ですか?

A2ETLは変換後に格納、ELTは格納後に変換します。クラウドDWH(BigQuery、Snowflake等)の高速な処理能力を活かせるELTが主流化しています。オンプレミス環境や複雑な変換が必要な場合はETLが適しています。自社の環境・要件に応じて使い分けることが重要です。

Q3ETLツールの選定基準は何ですか?

A3対象データソース(CRM、SFA、MA、基幹システム等)との互換性が最優先です。次に、ノーコード・ローコード対応で開発工数を削減できるか、変換に必要な関数が標準搭載されているか、オンプレミス/クラウド対応、日本語サポート(国産vs海外製)を確認します。

Q4ETL導入のコストはどれくらいですか?

A4オープンソース製品(Talend Open Studio等)は無料から始められます。商用製品は数十万円〜数百万円/年が一般的です。クラウド型は従量課金が多く、データ量により変動します。最新の料金は各ベンダーの公式サイトでご確認ください。

Q5非エンジニアでもETLツールは使えますか?

A5ノーコード・ローコード対応のETLツールを選べば、非エンジニアでも基本的なデータ統合作業が可能です。GUI操作でデータフローを設計できます。ただし、複雑な変換処理や大規模データ処理にはデータエンジニアの知見が必要になる場合があります。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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