複数システムのデータ統合に悩んでいませんか?
「CRM、MA、基幹システム...複数システムにデータが散在していて、統合的に分析できない」「Excel作業で手作業集計に時間がかかりすぎている」「データウェアハウスを構築したいが、どう進めればいいか分からない」――BtoB企業の情報システム部門やデータエンジニアなら、一度は直面する課題です。
データドリブン経営が求められる現代では、複数のデータソースを統合し、分析可能な状態にする「ETL」が不可欠です。ETLは、Extract(抽出)・Transform(変換)・Load(格納)の3つのプロセスで、データ統合と分析基盤構築を実現します。
この記事では、データETLの基本概念から、ELTとの違い、主要ETLツールの選定基準、パイプライン設計のポイントまで徹底解説します。
この記事のポイント:
- ETLはExtract・Transform・Loadの3プロセスで、複数システムのデータを統合
- クラウド時代にはELT(格納後に変換)が主流化、BigQuery・Snowflakeなどのクラウド DWH環境で有効
- ETLツール選定はデータソース対応、ノーコード対応、オンプレミス/クラウド対応が重要
- 業界調査によると、2024年時点で国内企業の23.66%、1,000名以上の大企業では38.16%がETL/データ連携ツールを活用中
- ETLパイプラインは3層構造(Component・Workflow・Pipeline)で設計し、保守性を確保
1. データ統合における課題とETLの重要性
(1) 複数システムにデータが散在する課題
BtoB企業では、複数のシステムにデータが散在しているのが一般的です。
データが散在するシステムの例:
- CRM: 顧客情報、問い合わせ履歴
- SFA: 営業活動履歴、案件進捗
- MA: マーケティング活動、リード獲得データ
- 基幹システム(ERP): 売上データ、在庫データ、財務データ
- Excel: 手入力データ、既存の管理表
これらのデータを統合して分析しない限り、全体像を把握することは困難です。
(2) 手作業による統合の限界
従来は、複数システムからデータをExcelにエクスポートし、手作業で統合していました。
手作業統合の限界:
- 毎月・毎週の集計作業に膨大な時間がかかる
- データ形式のバラツキ(日付形式、文字コードなど)で手作業が必要
- ヒューマンエラーが発生しやすい
- リアルタイムでの統合が困難
- 属人化しやすく、担当者不在時に対応できない
これらの限界を解決するために、ETLが注目されています。
(3) データドリブン経営を支えるETL
データドリブン経営では、複数のデータソースを統合し、迅速に分析・意思決定できることが求められます。
ETLの役割:
- 複数システムのデータを自動的に統合
- 分析可能な形式に変換(データクリーニング、正規化、集計)
- データウェアハウス(DWH)に格納し、BIツールで可視化
- リアルタイムまたは定期的な自動更新
業界調査によると、2024年時点で国内企業の23.66%、1,000名以上の大企業では38.16%がETL/データ連携ツールを活用しているというデータもあります。
2. ETLとは?基本概念と3つのプロセス
(1) ETLの定義
**ETL(Extract, Transform, Load)**とは、データの抽出・変換・格納を行う一連のプロセスです。複数のデータソースからデータを抽出し、分析可能な形式に変換して、データウェアハウスに格納します。
ETLは、データ統合と分析基盤構築の中核技術として、多くの企業で活用されています。
※参照: ITトレンド「ETLとはどんなもの?機能からメリットまでわかりやすく解説」(2024年)
(2) Extract(抽出):データソースからのデータ取得
Extractプロセス:
- 複数のデータソース(CRM、SFA、MA、基幹システム、Excelなど)からデータを取得
- データソースの形式に応じて適切な方法で抽出(API連携、CSV/Excelファイル、データベース接続など)
- 差分抽出または全量抽出を選択
差分抽出と全量抽出:
- 差分抽出: 前回抽出後に更新されたデータのみを取得(効率的)
- 全量抽出: すべてのデータを取得(シンプルだが処理時間がかかる)
(3) Transform(変換):データの加工・整形
Transformプロセス:
- データクリーニング(重複削除、欠損値の補完、異常値の除去)
- データ正規化(単位統一、日付形式統一、文字コード統一)
- データ集計(日次→月次、店舗別→全社)
- データ結合(複数テーブルのJOIN)
- ビジネスルール適用(計算式、区分付与など)
変換処理は、分析の目的に応じて柔軟にカスタマイズできることが重要です。
※参照: アシスト「ETLとは~今さら聞けない!? ETLの基礎~」(2024年)
(4) Load(格納):データウェアハウスへの保存
Loadプロセス:
- 変換後のデータをデータウェアハウス(DWH)に格納
- 格納先は、オンプレミスのDWHまたはクラウドDWH(BigQuery、Snowflake、Redshiftなど)
- 追加(Append)または上書き(Overwrite)を選択
格納後の活用:
- BIツールで可視化(ダッシュボード作成)
- SQLで自由に分析
- 機械学習モデルの学習データとして活用
3. ETLとELTの違い・使い分け
(1) ELTとは(Extract-Load-Transform)
**ELT(Extract-Load-Transform)**は、ETLとは逆の順序で処理を行います:
- Extract: データソースからデータを抽出
- Load: 生データをそのままクラウドDWHに格納
- Transform: クラウドDWH上で変換処理を実行
クラウドDWHの高速な処理能力を活かし、格納後に変換することで、柔軟性と効率性を向上させます。
(2) クラウド時代におけるELTの台頭
クラウド時代には、ELTが主流になりつつあります。
ELTが有効な理由:
- クラウドDWH(BigQuery、Snowflake等)の処理能力が高速
- 生データをそのまま格納し、必要な時に変換できる柔軟性
- データレイクとの親和性が高い
- 変換ロジックの変更が容易(再抽出が不要)
※参照: Google Cloud「What is ETL?」(2024年)
(3) ETLとELTの使い分け基準
ETLが適しているケース:
- オンプレミスのDWH環境
- 複雑な変換処理が必要(ビジネスロジックが複雑)
- データのセキュリティ・ガバナンスが厳格(変換後のデータのみを格納)
- 既存のETLツール・パイプラインが稼働中
ELTが適しているケース:
- クラウドDWH環境(BigQuery、Snowflake、Redshift等)
- 柔軟な分析が求められる(変換ロジックを後から変更したい)
- データレイク構築
- リアルタイム分析(ストリーミングデータ処理)
自社の環境・要件に応じて、ETLとELTを使い分けることが重要です。
(4) データパイプライン・EAIとの関係性
データパイプライン:
- ETL/ELTを含む、データの収集から加工・分析までの自動化された流れ全体を指す
- ETLはデータパイプラインの一部
EAI(Enterprise Application Integration):
- 企業内の複数システムをリアルタイムに連携する技術
- ETLはバッチ処理が中心、EAIはリアルタイム処理が中心
- 最近は、ETLツールがリアルタイム処理にも対応し、境界が曖昧に
※参照: アシスト「ETLとは~今さら聞けない!? ETLの基礎~」(2024年)
4. 主要ETLツールの選定基準と比較
(1) ETLツール選定の5つのポイント
ETLツール選定時は、以下の5つのポイントを確認しましょう:
- データソース対応: 連携したいシステム(CRM、SFA、MA、基幹システム等)との互換性
- ノーコード・ローコード対応: 非エンジニアでも使えるか
- 変換機能: 必要な変換処理に対応する関数が標準搭載されているか
- オンプレミス/クラウド対応: 自社のデータ保管場所に対応しているか
- 日本語サポート: 国産ツールか海外製ツールか(文字コード対応、日本語サポートの有無)
※参照: ITトレンド「【最新ランキング】ETLツールおすすめ比較14選」(2024年)
(2) データソース対応と互換性
ETLツール選定で最優先すべきは、対象となるデータソースとの互換性です。
確認すべきこと:
- CRM(Salesforce、HubSpot等)との連携
- MA(Marketo、Pardot等)との連携
- 基幹システム(SAP、Oracle等)との連携
- Excelファイル、CSVファイルの取り込み
- クラウドDWH(BigQuery、Snowflake等)への格納
互換性がないと、結局カスタム開発が必要になり、効率化の効果が薄れます。
(3) ノーコード・ローコード対応
ノーコード・ローコード対応のETLツールを選ぶと、開発工数を大幅削減できます。
ノーコード対応のメリット:
- 非エンジニアでも基本的な統合作業が可能
- GUI操作でデータフローを設計
- 保守性が向上(コードレビューが不要)
ローコード対応:
- 標準機能で対応できない複雑な処理は、最小限のコードで実装
- PythonやSQLで拡張可能
(4) オンプレミス型とクラウド型の違い
オンプレミス型:
- 自社サーバーにETLツールをインストール
- データを社外に出さずに処理できる(セキュリティ重視)
- 初期費用・保守費用が高額
クラウド型:
- クラウド上でETL処理を実行
- 初期費用が低く、従量課金で利用可能
- スケーラビリティが高い(データ量増加に対応しやすい)
- クラウドDWHとの親和性が高い
自社のデータ保管場所と処理方式を明確にしてから、ツールを選定することが重要です。
(5) 国産ツールと海外製ツールの違い
国産ETLツール:
- 日本語サポートが充実(日本語マニュアル、日本語問い合わせ)
- 日本特有のデータ処理に対応(文字コード、日付形式、ファイル形式)
- 国内企業の導入実績が豊富
海外製ETLツール:
- グローバルで広く使われている(情報が豊富)
- 高度な機能が充実
- 日本語サポートが限定的な場合がある
- 文字コードやファイル形式の地域差に注意
主要なETLツール例(あくまで例示):
- 国産: Waha! Transformer、TROCCO、Reckoner
- 海外製: Talend、Informatica、AWS Glue、dbt
※特定のツールを推奨するものではありません。自社の要件に合ったツールを選定してください。
※参照: Waha! Transformer公式「ETLツールおすすめ10選を比較」(2024年)
5. ETLパイプラインの設計・実装のポイント
(1) ETLパイプラインの3層構造(Component・Workflow・Pipeline)
NTTデータが提唱するETLパイプラインの設計では、3層構造で整理することが推奨されています:
Component Layer(コンポーネント層):
- Extract、Transform、Loadの各処理を個別のコンポーネントとして実装
- 再利用可能な単位で設計
Workflow Layer(ワークフロー層):
- 複数のコンポーネントを組み合わせて、1つのワークフローを構成
- 例: 「顧客データ抽出 → 正規化 → 集計 → DWHへ格納」
Pipeline Layer(パイプライン層):
- 複数のワークフローを統合し、全体のパイプラインを構成
- 依存関係を管理し、順序を制御
この3層構造により、保守性・拡張性が向上します。
※参照: NTTデータ「ETLパイプライン開発の手引き」(2022年)
(2) バッチ処理の効率化
ETLはバッチ処理が中心ですが、効率化のポイントがあります:
差分抽出の活用:
- 全量抽出ではなく、差分のみを抽出して処理時間を短縮
並列処理:
- 複数のデータソースから同時に抽出
- 変換処理を並列化
インクリメンタルロード:
- 追加データのみをロード(全件上書きを避ける)
(3) ジョブ管理と自動実行の設定
ETLパイプラインは、ジョブ管理と自動実行の設定が重要です:
ジョブ管理:
- 各ワークフローの実行状況を監視
- エラー発生時のアラート設定
- リトライ処理の設定
自動実行:
- スケジュール実行(日次、週次、月次)
- イベントトリガー(データ更新時に自動実行)
※参照: Cloud-for-All「ETLパイプラインとは?プロセスの流れや事例などについて解説」(2024年)
(4) ドキュメント化と属人化の防止
ETLパイプラインは、ドキュメント化して属人化を防ぐことが重要です:
ドキュメント化すべき内容:
- データフロー図(どのデータソースからどのDWHへ、どのような変換を行うか)
- 変換ロジックの詳細(ビジネスルール、計算式)
- ジョブスケジュール(いつ実行されるか)
- エラー時の対応手順
自動実行ジョブの管理体制が不十分だと、誰も把握していないジョブが動き続けるリスクがあります。定期的なレビューとドキュメント更新が推奨されます。
6. まとめ:ETL導入を成功させるために
ETL(Extract・Transform・Load)は、複数システムのデータを統合し、分析可能な状態にする中核技術です。クラウド時代には、ELT(格納後に変換)が主流化し、BigQueryやSnowflakeなどのクラウドDWH環境で活用が広がっています。
ETLの3つのプロセス:
- Extract: データソースからデータを抽出
- Transform: データを加工・整形(クリーニング、正規化、集計)
- Load: データウェアハウスに格納
ETLツール選定のポイント:
- データソース対応と互換性(最優先)
- ノーコード・ローコード対応(開発工数削減)
- オンプレミス/クラウド対応(自社環境に合わせる)
- 国産/海外製(日本語サポート、文字コード対応)
ETLパイプライン設計のポイント:
- 3層構造(Component・Workflow・Pipeline)で保守性を確保
- バッチ処理の効率化(差分抽出、並列処理)
- ジョブ管理と自動実行の設定
- ドキュメント化と属人化の防止
次のアクション:
- 自社のデータ統合の課題を洗い出す
- 連携したいデータソースをリストアップする
- 主要なETLツールの資料請求と無料トライアル
- 公式サイトで最新の機能・料金を確認する
ETLを活用し、データドリブンな経営判断を実現しましょう。
※この記事の情報は2024年11月時点のものです。ETLツールの仕様や料金プランは変更される可能性がありますので、導入前に各ベンダーの公式サイトで最新情報をご確認ください。導入効果は企業規模・業種・データ量により異なります。
