BtoBマーケティングとは?基本戦略から実践手法まで徹底解説

著者: Decisense編集部公開日: 2025/12/3

BtoBマーケティングの重要性と市場環境

B2B市場では、顧客の購買プロセスがデジタル化し、従来の営業手法だけでは成果を上げにくくなっています。Webサイトやオンラインメディアで情報収集する企業が増え、営業担当者との初回接触時にはすでに検討が進んでいるケースが一般的になりました。

こうした環境で成果を出すには、マーケティング活動を通じて見込み顧客を獲得し、育成し、営業に引き渡す一連のプロセスが不可欠です。

この記事のポイント:

  • BtoBマーケティングは企業間取引における顧客価値創出の戦略とプロセス
  • BtoCとの違いは複数の意思決定者・長い検討期間・合理的判断
  • 主要手法はオンライン(SEO・Web広告・SNS)とオフライン(展示会・セミナー)の組み合わせ
  • リードジェネレーション→ナーチャリング→分類のプロセスを踏む
  • 2024年はAI・ABM・動画コンテンツが主要トレンド

(1) デジタル時代のBtoB購買プロセスの変化

BtoB企業の購買担当者は、営業担当者と接触する前に、Webサイト・ブログ記事・ホワイトペーパー・比較サイトなどで情報を収集しています。業界では一般的に、初回接触時にはすでに検討プロセスの60-70%が完了していると言われています。

この変化により、マーケティング部門が果たす役割が拡大しました。営業が接触する前の段階で、自社の認知度を高め、信頼を構築し、購買意欲を喚起することが求められています。

(2) マーケティングと営業の連携強化の必要性

BtoBマーケティングで成果を出すには、マーケティング部門と営業部門の連携が不可欠です。

連携の重要性:

  • マーケティングが獲得した見込み顧客を営業が適切にフォローする
  • 営業が得た顧客の声をマーケティング施策に反映する
  • 共通のKPI(リード獲得数、商談化率、成約率)を設定し、評価する

連携が不足すると、マーケティングが獲得したリードが放置されたり、営業が求めるリードの質と乖離したりする問題が発生します。

(3) 2024年の成功事例(BtoBマーケ大賞受賞企業)

2024年、日経クロストレンドが初めて「BtoBマーケティング大賞」を開催し、優れた成果を上げた企業が表彰されました。

受賞企業の成果:

  • NTTコミュニケーションズ(戦略部門賞): 新規受注額116%達成
  • 三洋電機(プロセス改革部門賞): 新規案件金額を5倍に増加

(出典: 日経クロストレンド「発表『BtoBマーケ大賞2024』激戦を勝ち抜いた受賞企業7社は?」)

これらの事例は、BtoBマーケティングの戦略的取り組みが具体的な成果につながることを示しています。

BtoBマーケティングとは何か

(1) BtoBマーケティングの定義と目的

BtoBマーケティングとは、企業間取引において顧客価値を創出する戦略や仕組み、そのプロセスのことです。

主な目的:

  • 見込み顧客(リード)の獲得
  • 見込み顧客との関係育成
  • 営業部門への質の高いリード提供
  • 企業の認知度向上とブランド構築

(出典: 才流「BtoBマーケティングとは?戦略の立て方とプロセス【基礎知識編・用語解説付き】」)

目的は単に「製品を売ること」ではなく、「顧客の課題を理解し、価値を提供し、長期的な関係を構築すること」です。

(2) BtoCマーケティングとの違い(意思決定プロセス・購入基準)

BtoBマーケティングとBtoCマーケティングには、いくつかの重要な違いがあります。

ターゲット:

  • BtoB: 企業(複数の意思決定者)
  • BtoC: 個人消費者

検討期間:

  • BtoB: 数週間〜数ヶ月(場合により1年以上)
  • BtoC: 数分〜数日

購入基準:

  • BtoB: 合理的判断(ROI、費用対効果、導入実績)
  • BtoC: 感情や直感(デザイン、ブランドイメージ)

意思決定者:

  • BtoB: 複数(担当者・上司・経営層・情報システム部門等)
  • BtoC: 個人または家族

(出典: 三井住友銀行「BtoBマーケティングとは?BtoCとの違いや具体的な手法を解説」)

これらの違いにより、BtoBマーケティングでは長期的な関係構築と複数のステークホルダーへのアプローチが重要になります。

(3) BtoB特有の特性(複数意思決定者・長い検討期間・合理的判断)

BtoBマーケティングには、BtoCにはない特有の特性があります。

複数の意思決定者: 企業の購買プロセスには、担当者・上司・経営層・IT部門・法務部門など、複数の関係者が関わります。それぞれの関心事や評価基準が異なるため、各ステークホルダーに応じた情報提供が必要です。

長い検討期間: BtoB商材は高額で、導入後の影響が大きいため、慎重な検討が行われます。調査→比較検討→選定→発注のプロセスに数ヶ月かかることが一般的です。

合理的判断: 感情的な購入決定は少なく、ROI(投資対効果)・導入実績・費用・サポート体制などが評価されます。

(4) デマンドジェネレーション(需要創出)の重要性

BtoBマーケティングでは、「デマンドジェネレーション(需要創出)」というフレームワークが重視されます。

デマンドジェネレーションの3つのプロセス:

  1. リードジェネレーション: 見込み顧客の獲得
  2. リードナーチャリング: 見込み顧客との関係育成
  3. リード分類(リードクオリフィケーション): 購買可能性に応じた優先順位付け

このプロセスを通じて、見込み顧客を「購入に近い状態」まで育成し、営業部門に引き渡します。

BtoBマーケティングの主要な手法と戦略

(1) オンライン手法(SEO・Web広告・SNS・ホワイトペーパー・ウェビナー)

BtoBマーケティングのオンライン手法には、以下のようなものがあります。

SEO(検索エンジン最適化):

  • オーガニック検索からの質の高いリードを獲得
  • Adobe Marketo EngageがSEO対策に注力し、成果を上げた事例がある

Web広告(リスティング広告・ディスプレイ広告):

  • 特定のキーワードやターゲット層に広告を配信
  • 即効性があり、短期間でリード獲得が可能

SNSマーケティング:

  • LinkedIn、Twitter、FacebookなどのSNSで情報発信
  • BtoBではLinkedInが特に有効

ホワイトペーパー:

  • 専門的な情報や課題解決策をまとめた資料
  • 才流の事例では、高品質なホワイトペーパー4本で5,856件のリードを獲得(1本あたり平均1,464件)

ウェビナー:

  • オンラインセミナーで専門知識を提供
  • リアルタイムでの質疑応答が可能で、関係構築に有効

(出典: Sansan「BtoBマーケティングの手法17選|成果を高めるポイントも解説」、HubSpot「BtoBマーケティングの成功事例15選|事例から見る成功のポイントも解説」)

(2) オフライン手法(展示会・セミナー・DM・テレマーケティング)

オフライン手法も依然として重要です。

展示会・カンファレンス:

  • 業界イベントでの出展、名刺交換
  • 短期間で多数のリードを獲得できる

セミナー・勉強会:

  • 自社主催のセミナーで専門知識を提供
  • 参加者との直接対話で関係構築が可能

ダイレクトメール(DM):

  • ターゲット企業に資料を郵送
  • デジタル施策との組み合わせで効果向上

テレマーケティング:

  • 電話でのアプローチ
  • 見込み顧客の状況確認やアポイント獲得に有効

(3) コンテンツマーケティングの重要性

BtoBマーケティングでは、コンテンツマーケティングが特に重要です。

コンテンツの種類:

  • ブログ記事(SEO対策、専門知識の提供)
  • ホワイトペーパー(詳細な調査結果、課題解決策)
  • 事例紹介(導入実績、成果の具体例)
  • 動画コンテンツ(製品デモ、ショート動画)

コンテンツマーケティングの効果:

  • 見込み顧客の信頼を獲得
  • 検索エンジンからの流入を増加
  • 営業資料としても活用可能

(4) 自社に合った手法の選定方法

BtoBマーケティングの手法は77種類以上存在すると言われています。すべてを実施するのは現実的ではなく、自社に合った手法を選定することが重要です。

選定の基準:

  • ターゲット層: 顧客がどこで情報を収集しているか
  • 予算: 初期費用と運用コストを考慮
  • リソース: 社内の人員・スキルで実施可能か
  • 商材の特性: 高額商材か、導入までの期間が長いか

(出典: 才流「BtoBマーケティングの手法大全 – 社内会議で使える77個の施策アイデア」)

まずは1-2つの手法から始め、効果を測定しながら徐々に拡大していくアプローチが推奨されます。

リード獲得からナーチャリングまでのプロセス

(1) 戦略設計(ターゲット設定・市場分析)

BtoBマーケティングの最初のステップは、戦略設計です。

ターゲット設定:

  • どの業界・企業規模をターゲットにするか
  • 意思決定者のペルソナ(役職・課題・情報収集方法)を明確化

市場分析:

  • 市場規模、成長性、競合状況を調査
  • 自社の強み・弱みを分析(SWOT分析等)

KPI設定:

  • リード獲得数、リード単価、商談化率、成約率、ROIを設定

戦略設計が不十分だと、的外れなターゲットにアプローチしたり、効果測定ができなくなったりします。

(2) リードジェネレーション(見込み顧客の獲得)

リードジェネレーションは、見込み顧客を獲得する活動です。

主な手法:

  • Webサイトからの問い合わせ・資料請求
  • ホワイトペーパーのダウンロード
  • ウェビナーへの参加申し込み
  • 展示会での名刺交換
  • Web広告からの流入

質の高いリード獲得のポイント:

  • ターゲット層に刺さるコンテンツを提供
  • 入力フォームの項目を最適化(多すぎると離脱率が上がる)
  • リードの質を測る指標(リードスコアリング)を設定

(3) リードナーチャリング(関係育成と購買意欲向上)

リードナーチャリングは、獲得した見込み顧客との関係を育成し、購買意欲を高める活動です。

主な手法:

  • メールマーケティング(定期的な情報提供)
  • リターゲティング広告(Webサイト訪問者に広告配信)
  • インサイドセールスによる電話フォロー
  • 事例紹介、ウェビナーへの招待

ナーチャリングのポイント:

  • 顧客の検討フェーズ(認知→興味→検討→購入)に応じた情報提供
  • 一方的な売り込みではなく、価値のある情報を提供
  • 適切な頻度とタイミング(週1回程度が一般的)

BtoBでは検討期間が長いため、継続的なナーチャリングが不可欠です。

(4) リード分類(優先順位付けと営業連携)

リード分類(リードクオリフィケーション)は、見込み顧客を購買可能性に応じて分類し、優先順位をつける活動です。

分類の基準:

  • 属性スコア: 企業規模、業界、役職等
  • 行動スコア: Webサイト訪問回数、資料ダウンロード、メール開封等
  • BANT: Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(ニーズ)、Timeframe(導入時期)

営業連携:

  • スコアの高いリード(ホットリード)を営業に引き渡す
  • スコアの低いリード(コールドリード)は引き続きナーチャリング
  • 営業からのフィードバックを受け、スコアリング基準を改善

リード分類により、営業は購買意欲の高い見込み顧客に集中でき、成約率が向上します。

デジタル時代のBtoBマーケティングと2024年トレンド

(1) AIと自動化の活用(リードスコアリング・コンテンツ配信)

2024年、BtoBマーケティングではAIと自動化の活用が加速しています。

AIの活用例:

  • リードスコアリング: 見込み顧客の購買可能性をAIが自動評価
  • 行動ベースのコンテンツ配信: 顧客の行動履歴に応じて最適なコンテンツを自動配信
  • チャットボット: Webサイト訪問者の質問に自動対応

自動化のメリット:

  • 効率化(手作業の削減)
  • パーソナライゼーション(各顧客に最適な情報提供)
  • スピード向上(リアルタイム対応)

(出典: Campaign Japan「2024年のBtoBマーケティング界に新たな局面をもたらす10大トレンド」)

(2) ABM(アカウントベースドマーケティング)の台頭

ABM(Account-Based Marketing)は、特定の企業に対してカスタマイズされたマーケティングメッセージを展開する手法です。

ABMの特徴:

  • 広範なリード獲得ではなく、ターゲット企業を絞り込む
  • 各企業に最適化されたコンテンツ・メッセージを提供
  • マーケティングと営業が一体となってアプローチ

ABMが有効なケース:

  • 高額商材(数百万円以上)
  • エンタープライズ企業向けの提案
  • 意思決定者が複数いる複雑な購買プロセス

ABMは従来のマーケティング手法よりも効率的で、ROIが高いとされています。

(3) 動画コンテンツとショート動画(15-60秒)の活用

動画コンテンツの重要性が増しています。特に15-60秒のショート動画が注目されています。

動画コンテンツの種類:

  • 製品デモ動画
  • 事例紹介動画
  • 専門家へのインタビュー
  • ショート動画(SNSで拡散しやすい)

動画のメリット:

  • 視覚的に理解しやすい
  • 短時間で多くの情報を伝えられる
  • SNSでの拡散性が高い

(出典: Campaign Japan「2024年のBtoBマーケティング界に新たな局面をもたらす10大トレンド」)

(4) 効果測定とKPI設定(ROI・リード獲得数・成約率等)

BtoBマーケティングでは、効果測定が不可欠です。

主要なKPI:

  • リード獲得数: 月間・四半期ごとの獲得件数
  • リード単価: マーケティング費用 ÷ リード獲得数
  • 商談化率: 商談に至ったリード数 ÷ 総リード数
  • 成約率: 成約件数 ÷ 商談件数
  • ROI: (売上 - 費用) ÷ 費用

効果測定のポイント:

  • 各フェーズ(認知→興味→検討→購入)に応じたKPIを設定
  • 定期的にデータを確認し、PDCAサイクルを回す
  • 営業部門と共通のKPIを設定し、連携強化

効果測定により、どの施策が成果を上げているかを把握し、予算配分を最適化できます。

まとめ:BtoBマーケティングで成功するために

BtoBマーケティングは、企業間取引において顧客価値を創出する戦略とプロセスです。BtoC との違いを理解し、複数の意思決定者・長い検討期間・合理的判断といったBtoB特有の特性に対応することが重要です。

成功のポイント:

  • 戦略設計(ターゲット設定・市場分析・KPI設定)を丁寧に行う
  • オンライン手法とオフライン手法を組み合わせる
  • リードジェネレーション→ナーチャリング→分類のプロセスを確実に実行
  • AIと自動化、ABM、動画コンテンツなど最新トレンドを取り入れる
  • 効果測定を継続的に行い、PDCAサイクルを回す

次のアクション:

  • 自社のターゲット層と市場環境を分析する
  • 1-2つの手法から始め、小さく試して効果を測定する
  • マーケティング部門と営業部門の連携体制を構築する
  • 業界の最新トレンドをキャッチアップし、自社に適用できるか検討する

BtoBマーケティングの基本を押さえ、自社に合った戦略を実行することで、リード獲得と売上向上を実現しましょう。

よくある質問

Q1BtoBマーケティングとBtoCマーケティングの違いは?

A1BtoBは企業間取引で複数の意思決定者が関わり、検討期間が長く合理的判断が重視されます。BtoCは企業と個人の取引で、感情や直感で購入決定される傾向が強いです。マーケティングプロセスに時間がかかる点が大きな違いです。

Q2BtoBマーケティングは何から始めるべき?

A2まず戦略設計(ターゲット設定・市場分析)から始め、次にリードジェネレーション(見込み顧客獲得)に取り組みます。自社の商材や業界特性に合った手法を選定することが重要です。

Q3BtoBマーケティングの効果測定のKPIは?

A3リード獲得数、リード単価、商談化率、成約率、ROI(投資対効果)が主要KPIです。各フェーズ(認知→興味→検討→購入)に応じた指標を設定し、継続的に測定・改善することが重要です。

Q42024年のBtoBマーケティングトレンドは?

A4AIと自動化、ABM(アカウントベースドマーケティング)、動画コンテンツ(特に15-60秒のショート動画)の活用が主要トレンドです。データ活用とパーソナライゼーションがより重要になっています。

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Decisense編集部

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