SNS運用の悩みは尽きない...
「SNSコンテンツを投稿しているけれど、思うように反応が得られない」「何を投稿すればいいか毎回悩んでいる」——B2Bデジタルプロダクト企業のマーケティング担当者の多くが、SNSコンテンツ運用に課題を感じています。
B2BとB2Cでは適したSNSプラットフォームも投稿内容も大きく異なり、単に投稿を続けるだけでは効果が出にくいのが実情です。また、炎上リスクやステマ規制(2023年10月施行)への対応も求められます。
この記事では、B2B企業向けにSNSコンテンツの種類、プラットフォーム選定、企画・制作・運用の実務的な手順を解説します。
この記事のポイント:
- SNSコンテンツには形式別(テキスト・画像・動画等)と発信方式別(単発型・連載型等)の分類がある
- B2BはLinkedIn中心、X(旧Twitter)補助の戦略が効果的(B2CとはSNS選定基準が異なる)
- 日常業務・季節イベント・現場の声からコンテンツアイデアを発想できる
- コンテンツカレンダーと社内承認フローで炎上リスクを管理
- エンゲージメント率・リンククリック数・リード獲得数で効果測定を行う
1. SNSコンテンツとは:B2Bマーケティングにおける重要性
(1) B2B企業がSNSコンテンツに注力する背景
SNSコンテンツとは、X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、LinkedIn、TikTokなどのソーシャルメディア上に投稿する情報(テキスト・画像・動画など)を指します。
近年、B2B企業がSNSコンテンツに注力する背景として、以下の理由が挙げられます:
- 検索エンジン集客が困難な場合の代替手段: SEO競争が激しい領域では、SNSを通じた情報発信が有効です
- 効果測定の容易性: インプレッション数、エンゲージメント率、リンククリック数などを容易に測定できます
- 低コスト運用の可能性: 無料でアカウント作成が可能で、有料オプションを使わなければコスト不要です
実際、87%のSNSマーケターが「消費者は検索エンジンよりもSNSを通じてブランドを発見する」と報告しています(2025年調査)。
(2) SNSマーケティングとコンテンツマーケティングの違い
SNSマーケティングとコンテンツマーケティングは混同されがちですが、以下の違いがあります:
SNSマーケティング: SNSプラットフォームを通じて顧客にアプローチし、ブランド認知度向上や購買意欲促進、ファン獲得を目指すWebマーケティング施策。公式アカウント運用、SNSキャンペーン、インフルエンサーマーケティングなどの手法を含みます。
コンテンツマーケティング: ブログ記事、ホワイトペーパー、動画、ウェビナーなど、価値あるコンテンツを提供することで見込み客を育成し、最終的に顧客化を目指す施策。SNSはコンテンツを配信するチャネルの一つとして位置づけられます。
B2B企業では、コンテンツマーケティングで作成したホワイトペーパーや専門記事をSNSで拡散する、といった組み合わせが効果的です。
2. SNSコンテンツの基礎知識(定義・種類・形式)
(1) SNSコンテンツの定義と範囲
SNSコンテンツは、以下のような幅広い投稿を含みます:
- 自社の製品・サービス紹介
- 業界ニュース・トレンド解説
- 社内の取り組み・舞台裏
- ユーザー事例・成功事例
- イベント・ウェビナー告知
- 社員インタビュー
(2) 形式別の分類(テキスト・画像・動画・インフォグラフィック)
SNSコンテンツは形式によって以下のように分類されます:
テキスト投稿:
- X(旧Twitter)の短文投稿、LinkedInの長文投稿
- 手軽に作成でき、即時性が高い
- 画像・動画と組み合わせるとエンゲージメントが向上
画像投稿:
- InstagramやFacebookでのビジュアル投稿
- インフォグラフィック(統計データを視覚化)も含む
- B2Bでは製品画面、グラフ、組織図などが活用される
動画投稿:
- TikTok、Instagram Reels、YouTubeなど
- 2025年はショート動画(15秒〜3分程度)がトレンドをリード
- 製品デモ、社員インタビュー、業界解説などに適している
(3) 発信方式別の分類(単発型・連載型・リアルタイム型)
発信方式による分類も重要です:
単発型: 1回完結の投稿(新製品発表、イベント告知など)
連載型: シリーズ化された投稿(「毎週月曜の業界ニュース解説」など)。フォロワーの定期訪問を促進
リアルタイム型: ライブ配信、Xのリアルタイム実況など。即時性と臨場感が特徴
B2B企業では、連載型で専門知識を定期発信し、単発型でイベント告知を行う組み合わせが一般的です。
3. B2B企業に適したプラットフォーム選定
(1) B2BとB2Cで異なるSNS選定の基準
B2BとB2Cでは、適したSNSプラットフォームが大きく異なります:
B2B企業:
- LinkedIn中心(業界ニュース、専門知識、ホワイトペーパー)
- X(旧Twitter)補助(情報収集、即時性)
- ターゲットは経営層・実務担当者
- 専門性・信頼性が重視される
B2C企業:
- Instagram、TikTok中心(ビジュアル、エンタメ性)
- LINE(親しい人との連絡)
- ターゲットは一般消費者
- 親しみやすさ・共感性が重視される
プラットフォームの特性を理解せずに同じ内容を投稿すると効果が薄れるため、ターゲット層に応じて戦略を変える必要があります。
(2) LinkedIn中心の戦略(業界ニュース・専門知識)
B2B企業にとって、LinkedInは最も効果的なプラットフォームです:
LinkedInの強み:
- 利用者の多くがビジネス目的で閲覧
- 業界ニュース、専門知識、ホワイトペーパーの共有に適している
- 企業ページ、個人プロフィール両方で情報発信が可能
投稿内容の例:
- 自社の調査レポート・ホワイトペーパー
- 業界トレンド解説
- 製品アップデート情報
- 社員の専門知識シェア
(3) X(旧Twitter)補助活用(情報収集・即時性)
Xは情報収集と即時性の観点で補助的に活用できます:
Xの特徴:
- リアルタイム性が高い
- 業界ニュースの速報、イベント実況に適している
- 日本のユーザーは「情報収集」目的で利用する傾向
投稿内容の例:
- 業界ニュースの速報
- ウェビナー・イベントのリアルタイム実況
- 短い質問・アンケート
LinkedInで詳細な専門記事を投稿し、Xでそのサマリーと記事リンクを拡散する、といった連携が効果的です。
(4) 新興プラットフォーム(Threads等)の可能性
2025年現在、新興・再興プラットフォームも注目されています:
Threads: Metaが提供するテキスト中心SNS。2025年1月時点で月間アクティブユーザー3.2億人を達成。Xの代替として注目される
mixi2: 日本国内で再興の動き
Lemon8、Pinterest: ビジュアル中心だがB2Bでも活用の余地あり
ただし、新興プラットフォームはアルゴリズムや仕様が頻繁に変更されるため、メインではなく実験的に活用するのが適切です。
4. 効果的なSNSコンテンツ企画と制作の手順
(1) ターゲット設定とペルソナ設計
効果的なSNSコンテンツ運用には、ターゲット設定(ペルソナ設計)が不可欠です。ペルソナ設計とは、製品やサービスを利用する典型的なユーザー像を詳細に設定した架空の人物プロフィールです。
ペルソナ設計の項目例:
- 年齢、役職、業種
- 抱えている課題
- 情報収集の方法(どのSNSを利用するか)
- 意思決定のプロセス
単に投稿を続けるだけでは不十分で、ターゲット設定、コンテンツ制作、エンゲージメント向上の3つの基本戦略を計画的に運用する必要があります。
(2) 日常業務からのアイデア発想(営業の質問・現場の声・舞台裏)
SNSコンテンツのアイデアが尽きた時は、日常業務に目を向けましょう。営業スタッフからの質問、現場の声、舞台裏の話などには、SNSコンテンツのヒントが豊富に含まれています。
アイデア発想の例:
- 営業スタッフがよく受ける質問 → FAQコンテンツ
- 新機能のリリース準備 → 開発の舞台裏紹介
- カスタマーサポートの事例 → ユーザーの課題解決ストーリー
(3) 季節イベント・記念日の活用
季節イベントや記念日を活用することで、自然とエンゲージメントが高まり、話題性のあるアカウント運営が可能になります。
活用例:
- 年末年始:今年の振り返り、来年の目標
- 決算期:業界動向解説
- 業界イベント:参加レポート、キーノート要約
(4) 保存・シェアされるコンテンツの作り方
日本のユーザーは「いいね」よりも「保存」や「シェア」を重視する傾向があるため、保存したくなる、長期間見返したくなる投稿を作成することが重要です。
保存・シェアされやすいコンテンツ:
- チェックリスト形式(「製品選定の5つのポイント」など)
- 統計データのインフォグラフィック
- ステップバイステップのガイド
5. 運用体制と効果測定(カレンダー・リスク管理・KPI)
(1) コンテンツカレンダーによる一元管理
コンテンツカレンダーとは、SNS投稿の日時、内容、担当者を一元管理するスケジュール表です。複数人での運用でも一貫性を維持できます。
コンテンツカレンダーの項目例:
- 投稿日時
- プラットフォーム(LinkedIn、X等)
- 投稿内容(テーマ、見出し)
- 担当者
- 承認状況
(2) 社内承認フロー(炎上リスク・ステマ規制対応)
炎上リスクや不適切な表現がブランドイメージを損なう可能性があるため、公開前のチェック体制が必須です。
承認フローの例:
- 担当者が投稿案を作成
- 上長が内容を確認(炎上リスク、コンプライアンス違反のチェック)
- 法務・広報部門が最終確認(必要に応じて)
- 投稿
また、ステマ規制(2023年10月施行)への対応も重要です。インフルエンサーに依頼する場合は、広告であることを明示する必要があります。
(3) エンゲージメント指標(いいね・保存・シェア・リンククリック)
SNSコンテンツの効果測定には、以下の指標を追跡します:
主要指標:
- エンゲージメント率(いいね、コメント、保存、シェアの合計÷リーチ数)
- リンククリック数
- リーチ・インプレッション
- フォロワー増加率
B2B企業では、最終的にリード獲得数・商談化率とのつながりを追跡することが重要です。
(4) 内製vs外注の判断基準
SNSコンテンツの制作を内製するか外注するかは、リソースと目的によります:
内製が適している場合:
- 専任1名以上を確保できる
- 即時性・現場感を活かしたい
- 社内の専門知識を発信したい
外注が適している場合:
- リソース不足(兼任で月数時間しか割けない)
- 専門的なデザイン・動画編集が必要
- 一定品質を維持したい
実務的には、企画・承認は社内で行い、制作のみ外注する折衷案が効果的な場合もあります。
6. まとめ:B2B向けSNSコンテンツ運用のポイント
SNSコンテンツ運用では、B2BとB2Cで適したプラットフォームと投稿内容が大きく異なります。B2B企業はLinkedIn中心、X補助の戦略が効果的です。
コンテンツ企画では、日常業務・季節イベント・現場の声からアイデアを発想し、保存・シェアされるコンテンツを目指しましょう。運用面では、コンテンツカレンダーで一元管理し、社内承認フローで炎上リスクを回避します。
次のアクション:
- ターゲットペルソナを明確にする
- LinkedInとXのアカウントを開設(未開設の場合)
- コンテンツカレンダーを作成し、1ヶ月分の投稿を計画する
- エンゲージメント率とリード獲得数を定期的に測定する
計画的な運用と効果測定を継続することで、SNSコンテンツをB2Bマーケティングの重要なチャネルとして育てることができます。
※この記事は2025年12月時点の情報です。SNSプラットフォームのアルゴリズムや仕様は頻繁に変更されるため、最新情報は各プラットフォームの公式サイトでご確認ください。
