インサイドセールスの年収は本当に高いのか?
インサイドセールスとは、非対面(電話・メール・Web会議)で顧客とコミュニケーションし、リード育成や商談化を担う営業職です。近年、BtoB企業を中心に需要が高まっており、「高年収」というイメージを持つ方も多いでしょう。しかし、実際には転職市場のデータを見ると、年収相場には大きな幅があります。
キャリア・エックスの転職実績(2019年)によると、インサイドセールスの平均年収は532万円(平均年齢27歳)、最高780万円(28歳)となっています。一方で、JAC Recruitmentの転職実績(2024年)では平均年収は680万円前後で、30代で1,200万円超の事例もあります。この差は何によって生まれるのでしょうか。
この記事で分かること
- インサイドセールスの平均年収と、調査機関による相場の違い
- 年収を左右する要因(業界・企業規模・役職・スキル)
- 年収アップに必要な具体的なスキルとキャリアパス
- MA/SFA実装経験や組織統括経験が年収に与える影響
- インサイドセールスで高年収を実現するための具体的なロードマップ
この記事では、複数の調査データをもとに、インサイドセールスの年収相場を「スキル・経験別」に分解し、年収アップのための具体的な方法を解説します。
インサイドセールスの平均年収と相場
インサイドセールスの平均年収は、調査機関や調査対象により大きく異なります。ここでは複数の調査データを引用し、年収相場の全体像を示します。
主要な調査データ
キャリア・エックスの転職実績(2019年)では、インサイドセールスの平均年収は532万円(平均年齢27歳)、最高780万円(28歳)となっています。これは転職市場における相場であり、実際に転職を経験した方のデータです。
一方、JAC Recruitmentの転職実績(2024年)では、インサイドセールスの平均年収は680万円前後で、30代で1,200万円超の事例もあります。こちらもハイクラス転職に特化した転職エージェントのデータであり、経験豊富な人材の年収相場を反映していると考えられます。
9e-careerの求人分析(2024年)では、インサイドセールスの平均年収は490万円(相場350〜700万円)で、国税庁「令和4年分民間給与実態統計調査」の全業種平均458万円を上回っています。
Indeedの27,300件の給与報告(2026年1月5日更新)によると、インサイドセールスの月給は304,292円(年収換算約365万円、ボーナス除く)となっています。ただし、このデータは基本給のみでボーナスを除外しているため、実際の年収はこれより高くなる可能性があります。
データソースによる年収差の理由
このように年収相場にばらつきがある理由は、以下の点にあります。
- 転職市場相場 vs 在職者の実態: 転職エージェントのデータは転職を検討している人材の年収であり、在職者全体の平均とは異なります
- OTE(On-Target Earnings)の有無: OTE(On-Target Earnings) とは、目標達成時の総報酬で、基本給とインセンティブ(成果報酬)を合算した金額です。外資系企業では一般的ですが、目標未達時には報酬が大幅に下がる可能性があります
- 調査対象の違い: ハイクラス転職に特化したエージェントのデータは、経験豊富な人材の年収を反映しているため、全体平均より高くなる傾向があります
読者の皆さんは、自分のキャリアステージ(未経験・経験者・マネージャー)や転職の有無に応じて、どのデータが参考になるかを判断してください。
役職・経験年数別の年収相場
インサイドセールスの年収は、役職や経験年数によって大きく変わります。Beet Agentの調査(2024年)によると、未経験インサイドセールスは336-400万円、経験者は360-540万円、マネージャーは480-1,080万円の年収相場となっています。
また、スタンバイの求人統計(2025年9月集計)では、インサイドセールスマネージャー級で1,000-1,599万円の高年収求人が目立ちます。マネージャーへの昇格が、年収1,000万円超への大きな分岐点となることが分かります。
【比較表】役職・経験別インサイドセールス年収マトリクス
| 役職・経験 | 年収レンジ | 備考 |
|---|---|---|
| 未経験 | 336-400万円 | 営業経験なし、またはBtoB SaaS未経験 |
| 経験者(1-3年) | 360-540万円 | インサイドセールス経験あり |
| 経験者(3-5年) | 500-700万円 | MA/SFA実装経験、BDRスキルあり |
| マネージャー | 480-1,080万円 | 組織統括経験、チームマネジメント |
| マネージャー(上場準備企業) | 1,000-1,599万円 | IPO準備中企業での高年収求人 |
| 外資系IT企業 | 850-1,270万円(OTE含む) | 目標達成時の報酬、成果主義 |
業界・企業規模による年収差
インサイドセールスの年収は、業界や企業規模によっても大きく異なります。CSjobの調査(2024年)によると、都市部(東京・大阪)のインサイドセールスは500〜800万円、地方は400〜600万円で、SaaS企業では1,000万円超も可能です。
外資系IT企業では特に高年収の事例があります。外資転職.comの調査(年不明)によると、外資系IT企業(Google)のインサイドセールスは850〜1,270万円(OTE含む)で、平社員で1,500万円の事例もあります。ただし、外資系企業のOTEは目標達成時の報酬であり、目標未達時には基本給のみとなるため、成果主義が非常に強いことに注意が必要です。
また、Publickeyの調査(2025年)によると、IT系上場企業の平均年収は、クラウド・通信キャリア系で701-1,150万円(例: ソラコム1,150万円、KDDI1,018万円)となっています。これらのデータから、IT・SaaS業界は他業界と比較して年収水準が高い傾向にあることが分かります。
注意点: 外資系・SaaS企業の高年収事例は、成果主義の度合いが高く、目標達成率が厳しい(目標の70-80%達成で「達成」とみなす企業もある)ため、基本給の高い日系大手企業も選択肢として検討すべきです。また、スタートアップ企業は基本給が低くストックオプション依存のリスクがあることも考慮してください。
インサイドセールスの年収を左右する要因
インサイドセールスの年収差を生む要因は、大きく分けて4つあります。それは、業界・企業規模、役職、経験年数、そしてスキルです。特に、スキル面での差が年収に大きく影響します。
よくある失敗パターン
インサイドセールスを「テレアポの延長」と捉え、スキル開発や実装経験を積まずに年収アップを目指す人が少なくありません。しかし、このアプローチでは結局平均年収付近で停滞してしまいます。
実際、インサイドセールスは「データ分析」「リードクオリフィケーション(見込み度の判定)」「商談設定」が中心であり、テレアポとは求められるスキルが大きく異なります。また、リモートワークで柔軟に働けるイメージがありますが、成果主義が強く、KPI(架電数・商談化率・売上貢献)が厳しく管理される職種です。
年収を左右する4つの要因
- 業界・企業規模: IT・SaaS・外資系企業は高年収、スタートアップは基本給が低い傾向
- 役職: マネージャー昇格で年収が700-1,000万円超に跳ね上がる
- 経験年数: 3-5年の経験者で500-700万円、未経験は336-400万円
- スキル: MA/SFA実装経験、BDR/SDRの役割、データ分析能力が年収に直結
特に、MA(Marketing Automation) やSFA(Sales Force Automation) の実装・運用経験は年収アップに直結します。MA/SFAツール(例: HubSpot、Salesforce)の導入プロジェクトに積極的に関わることで、市場価値を大きく高めることができます。
BDRとSDRの役割とスキル差
インサイドセールスには、大きく分けてBDR(Business Development Representative) とSDR(Sales Development Representative) の2つの役割があります。
BDR(新規開拓型) は、ターゲット企業リストから能動的にアプローチする役割で、高度なリサーチ力やターゲティング能力が求められます。そのため、BDRの方が初期年収は高い傾向にあります。
一方、SDR(反響対応型) は、マーケティング施策で獲得したリードを育成・商談化する役割です。初期年収はBDRより低めですが、成果が出やすいため早期昇給やインセンティブ獲得のチャンスが高いとされています。
どちらの役割も、データ分析能力やツール活用スキル(MA/SFA)が年収アップの鍵となります。
年収アップに必要なスキルとキャリアパス
インサイドセールスで年収をアップさせるためには、具体的にどのようなスキルを開発し、どのようなキャリアパスを選択すべきでしょうか。ここでは、年収アップのための実践的なロードマップを提示します。
JAC Recruitmentの転職実績(2024年)では、インサイドセールスの平均年収は680万円前後で、30代で1,200万円超の事例もあります。このような高年収を実現するためには、以下のスキル開発とキャリアパス設計が重要です。
【チェックリスト】インサイドセールス年収アップロードマップ(スキル・経験別)
基礎スキルの習得(1-2年目)
- MA/SFAツール(HubSpot、Salesforce等)の基本操作を習得する
- データ分析能力(リードスコアリング、商談化率の分析)を身につける
- 商談設定のスキル(ヒアリング、ニーズの引き出し)を磨く
- BtoB SaaSの商材理解を深める
- 月次KPI(架電数・商談化率・売上貢献)を安定して達成する
実装経験の蓄積(3-5年目)
- MA/SFAの導入プロジェクトに積極的に関わる
- データフロー設計やリードステータス定義に携わる
- リードスコアリングモデルの構築・改善に参加する
- 営業・マーケティング横断のKPI設計に関与する
- BDR/SDRの両方の役割を経験し、スキルの幅を広げる
マネジメント経験の獲得(5年目以降)
- チームリーダーやマネージャーへの昇格を目指す
- チームビルディング(採用・育成・評価)のスキルを習得する
- 組織の成果目標(売上・商談化率)を管理する
- クロスファンクショナルな連携(営業・マーケ・CS)を主導する
キャリアチェンジの選択肢(3-5年目以降)
- マーケティング(ABM担当)への転身を検討する
- 営業企画やセールスイネーブルメントへの異動を考える
- カスタマーサクセスへのキャリアチェンジを検討する
最新トレンドへの対応
- AI活用スキル(ChatGPT、生成AIツール)を習得する
- リモートワークでの成果創出能力を証明する
- IPO準備中企業やシリーズB-C企業への転職を検討する
インサイドセールスからのキャリアパス
インサイドセールスからのキャリアアップには、大きく分けて3つの選択肢があります。
1. マーケティング(ABM担当)
ABM(Account Based Marketing) とは、特定の重要顧客(アカウント)に集中してマーケティング・営業活動を行う手法です。インサイドセールスでの顧客理解やデータ分析経験を活かし、ターゲット企業の選定やアプローチ戦略の設計を担当します。年収は20-30%上昇する事例が多いとされています。
2. 営業企画・セールスイネーブルメント
営業組織全体の戦略設計や、営業担当者の育成・支援を担う役割です。インサイドセールスでの実務経験を活かし、営業プロセスの標準化やツール導入、KPI設計などを主導します。「IS→CS→営業企画」のルートでは、3-5年で年収700-900万円到達が標準的とされています。
3. カスタマーサクセス
既存顧客の成功支援を担う役割で、インサイドセールスでのコミュニケーション能力やデータ分析スキルが活かせます。特にSaaS企業では、継続率やアップセルが重要なKPIとなるため、カスタマーサクセスの需要が高まっています。
いずれのキャリアパスも、インサイドセールスでの実務経験とMA/SFAツールの活用スキルが土台となります。自分の強みや興味に応じて、早い段階からキャリアパスを意識したスキル開発を進めることが重要です。
MA/SFA実装経験が年収に与える影響
インサイドセールスで年収を大きく引き上げるためには、MA/SFA実装経験が不可欠です。ここでは、なぜMA/SFA実装経験が年収アップに直結するのか、具体的にどのような実装経験が評価されるのかを解説します。
MA/SFA実装経験が評価される理由
MA/SFAツールは、BtoB企業のマーケティング・営業活動の中核を担うシステムです。しかし、ツールを導入しただけでは成果が出ません。リードの流れ(データフロー)、リードステータスの定義、営業への引き渡しルール、KPI設計など、業務プロセス全体を設計する必要があります。
このような実装設計ができる人材は市場価値が高く、年収アップに直結します。MA/SFAの実装・運用経験は、単なる「ツールを使える」というスキルではなく、「業務プロセス全体を設計・改善できる」という高度な能力の証明となります。
評価される実装経験の具体例
- 設定: MA/SFAの初期設定、カスタムフィールドの定義、ワークフローの構築
- 運用: リードスコアリングモデルの運用・改善、ダッシュボードの構築
- データ分析: 商談化率や売上貢献の分析、ボトルネック特定と改善提案
- 改善提案: 営業・マーケ横断のKPI設計、リード引き渡しルールの最適化
これらの経験を積むためには、MA/SFAの導入プロジェクトに積極的に関わることが重要です。「ツールを使う側」から「ツールを設計・改善する側」にシフトすることで、市場価値を大きく高めることができます。
AI活用スキルの重要性
近年、AI(ChatGPT、生成AIツール)を活用したリード分析やメール自動生成スキルが評価され始めています。AI活用経験者は年収が上昇する事例があるとされており、インサイドセールスにおいても今後ますます重要なスキルとなるでしょう。
組織統括経験と年収の関係
マネジメント経験は、年収1,000万円超への鍵となります。Beet Agentの調査(2024年)によると、マネージャーの年収相場は480-1,080万円ですが、スタンバイの求人統計(2025年9月集計)では、インサイドセールスマネージャー級で1,000-1,599万円の高年収求人が目立ちます。
組織統括経験(チームビルディング、採用、育成)を積むことで、30歳前後でマネージャーに昇格し、年収が700-1,000万円超に跳ね上がるケースが多いとされています。
マネージャーへの昇格のタイミング
一般的に、インサイドセールスでの実務経験を3-5年積み、安定して成果を出し続けることで、マネージャー候補として評価されます。以下のようなスキル・経験が求められます。
- 成果実績: 商談化率や売上貢献で組織トップクラスの成果
- リーダーシップ: チームメンバーの育成や、新人のオンボーディング支援
- 戦略立案: 営業・マーケ横断のKPI設計や、プロセス改善の提案
- ツール活用: MA/SFAの実装・運用経験
特に、BtoB SaaS企業のIPO増加に伴い、インサイドセールスマネージャーの需要が急増しています。上場準備中企業では1,000万円超のオファーも珍しくありません。組織マネジメント経験を早期に積むことが、高年収実現への最短ルートと言えるでしょう。
まとめ:インサイドセールスで高年収を実現するために
インサイドセールスの平均年収は532万円だが、MA/SFA実装経験やBDRスキル、組織統括経験を積むことで680万円超〜1000万円超まで引き上げられる。これが本記事の結論です。
記事のポイント3つ
1. 年収相場を正しく把握する
転職市場のデータを見ると、未経験は336-400万円、経験者は360-540万円、マネージャーは480-1,080万円が相場です。自分のキャリアステージに応じて、どのデータが参考になるかを判断しましょう。また、OTE(目標達成時報酬)含む年収は、目標未達時に大幅に下がる可能性があることに注意してください。
2. スキル開発の重要性
インサイドセールスを「テレアポの延長」と捉えず、データ分析・MA/SFA実装・リードクオリフィケーションなどの高度なスキルを開発することが年収アップの鍵です。特に、MA/SFAの導入プロジェクトに積極的に関わり、「ツールを使う側」から「ツールを設計・改善する側」にシフトすることで、市場価値を大きく高めることができます。
3. キャリアパスの選択
マネージャーへの昇格、マーケティング・営業企画・カスタマーサクセスへのキャリアチェンジなど、複数の選択肢があります。「IS→CS→営業企画」のルートでは、3-5年で年収700-900万円到達が標準的とされています。早い段階から自分の強みや興味に応じたキャリアパス設計を始めましょう。
次のアクション
自分の市場価値を把握し、スキル開発とキャリアパス設計を始めることが重要です。具体的には以下のアクションを推奨します。
- 複数の転職エージェントに登録し、自分の年収相場を確認する
- MA/SFAツールの基本操作を習得し、導入プロジェクトへの参加を打診する
- BDR/SDRの両方の役割を経験し、スキルの幅を広げる
- マネージャー候補として評価されるよう、成果実績とリーダーシップを示す
最新トレンド
2025年はインサイドセールス求人の初年度年収が前年比で上昇しており、人材不足で年収相場が上昇中です。また、AI(ChatGPT、生成AIツール)を活用したリード分析・メール自動生成スキルが評価され始めています。リモートワーク普及で地方在住でも東京水準の年収を得られる事例が増加しており、地方の生活コストで高年収を実現することも可能になっています。
インサイドセールスは、スキル開発とキャリアパス設計次第で、大きく年収を伸ばせる職種です。本記事で紹介したロードマップを参考に、ぜひ高年収の実現を目指してください。
