HubSpotレポートを作ったのに使われない理由
最も重要なのは、HubSpotレポートは作成方法を学ぶだけでなく、現場で使われる設計と運用体制を整備することで初めて価値を発揮することです。
HubSpotを導入して、レポートやダッシュボードを作成したものの、「現場が見ない」「データはあるが意思決定に活かせない」という課題を抱える企業は少なくありません。見栄えの良いダッシュボードを作っても、現場の意思決定に紐づいていなければ誰も見ません。レポート作成で満足してしまい、運用・改善プロセスを設計していない状態では、HubSpotの真の価値は引き出せないのです。
この記事では、HubSpotレポート機能の「作り方」だけでなく、組織で「使われる設計」と「定着させる運用体制」まで解説します。MA/SFA導入済みだが活用できていない企業のマーケティング責任者・営業責任者の方に向けて、データドリブンな意思決定を実現するための具体的なアプローチを提供します。
この記事で分かること
- HubSpotレポート機能の基本概要と作成手順
- 現場で使われるレポート設計のチェックリスト
- 組織でレポートを定着させる運用体制の構築方法
- レポート定例会議のアジェンダテンプレート
- データドリブンな意思決定を実現するための実践ノウハウ
HubSpotレポート機能の基本概要
HubSpotレポート機能は、マーケティング・営業・カスタマーサービスのデータを可視化し、KPIを追跡するための強力なツールです。2024年10月時点でHubSpotレポートテンプレートは226種用意されており、幅広い業種・業務に対応しています。
HubSpotのレポート機能は、大きく「レポートライブラリー(標準レポート)」と「カスタムレポートビルダー」の2つに分かれます。さらに、複数のレポートを1つの画面にまとめて表示する「ダッシュボード」機能があり、HubSpotでは最大300件のカスタムダッシュボードを作成できます。
これらの機能を活用することで、リード獲得数、商談進捗、顧客対応状況など、組織全体のKPIを一元的に管理できます。ただし、プランによってレポート作成可能数や機能制限が異なるため、自社のプランで利用可能な範囲を確認することが重要です。
標準レポート(レポートライブラリー)とは
レポートライブラリーとは、HubSpotが提供する事前設定済みのレポートテンプレート集です。2024年10月時点で226種のテンプレートがあり、リード獲得、商談管理、メールパフォーマンスなど、主要なKPI追跡に必要なレポートがあらかじめ用意されています。
テンプレート使用により標準レポート作成時間は5-10分程度とされており、カスタムレポート作成(15-30分程度)と比較して大幅に時間を短縮できます。基本的なKPI追跡にはテンプレートを優先的に活用することで、効率的にレポート運用を開始できます。
テンプレートは業種別・部門別に分類されており、自社の業務に近いテンプレートを選ぶことで、すぐに実務に活用できる形でレポートを作成できます。
カスタムレポートとダッシュボード
カスタムレポートビルダーとは、HubSpotで複数のデータソースを組み合わせ、ドラッグ&ドロップで独自のレポートを作成できるツールです。テンプレートでは対応できない、自社固有のKPIや複雑な分析が必要な場合に活用します。
ダッシュボードは、複数のレポートを1つの画面にまとめて表示し、重要な指標を一目で確認できる機能です。HubSpotでは最大300件のカスタムダッシュボードを作成できるため、部門別(マーケティング、営業、カスタマーサービス)に分けて作成し、各部門の目標に対する成果を明確に追跡することが可能です。
カスタムレポート作成には15-30分程度かかるとされていますが、複数のデータソースを組み合わせた詳細な分析が必要な場合には、この時間を投資する価値があります。ただし、「カスタムレポート=高度で難しい」と思われがちですが、実際には基本的なKPIであればテンプレートで十分対応できる場合が多いため、まずはテンプレートから始めることをお勧めします。
カスタムレポート作成時には、プライマリーデータソース(最初に選択する主要なデータソース。コンタクト、取引、会社など)とセカンダリーデータソース(プライマリーデータソースと関連付けて追加できる補助的なデータソース)を設定します。この2つのデータソースの関連性を必ず確認し、不整合によるレポート歪みを防ぐことが重要です。
HubSpotレポート作成の基本手順
HubSpotレポートの作成手順は、標準レポート(テンプレート)、カスタムレポート、ダッシュボードの3つに分かれます。それぞれの作成方法を理解することで、自社の目的に合ったレポート運用が可能になります。
テンプレート使用により標準レポート作成時間は5-10分程度、カスタムレポート作成は15-30分程度が目安です。ただし、実際の作成時間はレポートの複雑さによって異なります。
標準レポート(テンプレート)の作成手順
標準レポート(テンプレート)は、以下の手順で作成できます。
- レポートライブラリーにアクセス: HubSpotのメニューから「レポート」→「レポートライブラリー」を選択
- テンプレート検索: 業種別・部門別のカテゴリーから、または検索バーでキーワード検索して、目的に合ったテンプレートを探す
- テンプレート選択: 226種のテンプレートから適切なものを選び、プレビューで内容を確認
- レポート作成: 「このレポートを作成」をクリックし、必要に応じてフィルター条件を調整
- 保存: レポート名を設定し、保存
テンプレートを使用すれば5-10分程度で作成できるため、まずは主要なKPI(リード獲得数、商談数、受注率など)をテンプレートで可視化することから始めるとよいでしょう。
カスタムレポートの作成手順
カスタムレポートは、以下の手順で作成します。
- カスタムレポートビルダーにアクセス: HubSpotのメニューから「レポート」→「カスタムレポートビルダー」を選択
- プライマリーデータソースの選択: レポートのベースとなるデータソース(コンタクト、取引、会社、チケットなど)を選択
- セカンダリーデータソースの追加(任意): 複数のデータを組み合わせる場合、セカンダリーデータソースを追加。この際、プライマリーとセカンダリーの関連性を必ず確認
- チャート形式の選択: 棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、ピボットテーブル(データを行と列に配置して集計・分析できる表形式のレポート)などから選択
- 軸とメトリクスの設定: X軸、Y軸、メトリクス(指標)を設定
- フィルター適用: 期間、担当者、ステージなどでデータを絞り込み
- 保存: レポート名を設定し、保存
カスタムレポート作成には15-30分程度かかりますが、自社固有のKPIを追跡する際には不可欠です。ただし、データソースの不整合によるレポート歪みのリスクがあるため、設定後は実際のデータと照らし合わせて検証することが重要です。
ダッシュボードの作成と配置調整
ダッシュボードは、複数のレポートを1つの画面にまとめて表示する機能です。以下の手順で作成できます。
- ダッシュボードライブラリーにアクセス: HubSpotのメニューから「レポート」→「ダッシュボード」を選択
- 新規作成: 「ダッシュボードを作成」をクリック
- レポート追加: 作成済みのレポート(標準またはカスタム)を選択し、ダッシュボードに追加
- 配置調整: ドラッグ&ドロップで配置を変更し、見やすいレイアウトに調整
- 共有設定: チーム間でのデータ漏洩リスクを防ぐため、共有設定を忘れずに確認
- 保存: ダッシュボード名を設定し、保存
HubSpotでは最大300件のカスタムダッシュボードを作成できるため、部門別(マーケティング、営業、カスタマーサービス)に分けて作成することで、各部門の目標に対する成果を明確に追跡できます。
使われるレポート設計のポイント
レポートを作成しただけでは、組織で活用されるようにはなりません。「見栄えの良いダッシュボードを作っても、現場の意思決定に紐づいていなければ誰も見ない」という失敗パターンを避けるためには、現場で使われる設計が不可欠です。
HubSpot自社調査によると、マーケティング担当者の90%が「HubSpotでより良いパーソナライズができるようになった」と回答し、営業担当者の86%が「リードの質が向上した」と回答しています(実績は市場・業種・規模などの要因によって異なります)。これらの成果は、レポートを正しく設計し、組織で活用した結果です。
以下のチェックリストを活用し、使われるレポート設計を実現しましょう。
【チェックリスト】使われるレポート設計チェックリスト
設計段階
- 現場の意思決定に直結するKPIを設定する(抽象的な指標ではなく、具体的なアクションに繋がる指標)
- 部門別(マーケティング、営業、カスタマーサービス)に目標KPIを整理する
- レポートの目的を明確にする(誰が・何のために・どう使うか)
- 現場担当者にヒアリングし、必要な指標を洗い出す
- テンプレートで対応できるKPIはテンプレートを優先的に活用する
- カスタムレポートが必要な場合、プライマリーとセカンダリーデータソースの関連性を確認する
作成段階
- 見やすいチャート形式を選択する(棒グラフ、折れ線グラフ、ピボットテーブルなど)
- フィルター設定で期間・担当者・ステージなどを適切に絞り込む
- ダッシュボードは部門別に分けて作成する
- ドラッグ&ドロップで配置を調整し、重要な指標を上部に配置する
- 共有設定を確認し、必要なメンバーのみがアクセスできるようにする
運用段階
- レポート定例会議を設計し、PDCAを回す仕組みを作る
- レポートを見ることで具体的なアクションが決まる運用にする
- 現場からのフィードバックを収集し、レポートを継続的に改善する
- 見られない・使われないレポートは削除または統合する
- 定期的にレポートの活用状況を確認し、改善点を洗い出す
このチェックリストを基に、自社のレポート設計を見直すことで、現場で使われるレポート運用が実現できます。
現場の意思決定に紐づくKPI設定
レポートが使われるための第一歩は、現場の意思決定に直結するKPI設定です。抽象的な指標(「ブランド認知度」「顧客満足度」など)ではなく、具体的なアクションに繋がる指標を設定することが重要です。
例えば、マーケティング部門であれば「月間リード獲得数」「MQL転換率」「メール開封率」など、営業部門であれば「商談数」「受注率」「平均商談期間」など、カスタマーサービス部門であれば「チケット対応時間」「顧客満足度(CSAT)」「解決率」などが該当します。
これらのKPIは、「数値が悪化したら何をするか」が明確に定義されている必要があります。例えば、「MQL転換率が低下したら、リードスコアリングの基準を見直す」「受注率が低下したら、営業プロセスの改善ミーティングを実施する」といった具体的なアクションが紐づいていることが、レポートが使われる条件です。
部門横断でのデータ活用設計
マーケティング・営業・カスタマーサービス横断でのデータ活用が、BtoB企業におけるデータドリブン意思決定の重要性として注目されています。HubSpot自社調査によると、マーケティング担当者の90%が「HubSpotでより良いパーソナライズができるようになった」と回答し、営業担当者の86%が「リードの質が向上した」と回答しています(実績は市場・業種・規模などの要因によって異なります)。
部門横断でのデータ活用を実現するためには、各部門が共通のKPIを持ち、データを共有する仕組みが必要です。例えば、マーケティング部門が獲得したリードが、営業部門でどの程度商談化・受注しているかを追跡することで、リード品質の改善につながります。
ダッシュボードは部門別に分けて作成しつつ、部門横断で共有すべきKPI(リードから受注までの転換率、顧客獲得単価など)は、全社ダッシュボードにまとめて表示することが効果的です。
組織でレポートを定着させる運用体制
レポートを作成した後、最も重要なのは運用体制の整備です。レポート作成で満足してしまい、運用・改善プロセスを設計していない企業が多いのが現状です。
組織でレポートを定着させるためには、定例会議での活用とレポートの継続的な改善プロセスが不可欠です。以下では、レポート定例会議の設計方法と、レポートの改善プロセスについて解説します。
レポート定例会議の設計
レポートを定例会議で活用し、PDCAを回す仕組みを作ることが、組織での定着に直結します。会議の頻度・参加者・アジェンダを明確に設計することで、レポートが「見られる」から「使われる」へと変わります。
以下のテンプレートを活用し、自社の定例会議を設計しましょう。
【テンプレート】レポート定例会議アジェンダテンプレート
会議名: {{部門名}}レポートレビュー会議
頻度: 週次 / 月次(目的に応じて設定)
参加者:
- {{部門責任者}}
- {{実務担当者1}}
- {{実務担当者2}}
- {{データ分析担当者}}(任意)
アジェンダ:
前回アクションの振り返り(5分)
- 前回決定したアクションの進捗確認
- 完了・未完了の報告
今週/今月のKPI確認(10分)
- {{KPI1}}の推移と目標達成度
- {{KPI2}}の推移と目標達成度
- {{KPI3}}の推移と目標達成度
課題の特定と原因分析(15分)
- KPIが悪化している場合、原因を分析
- データから見える課題を特定
改善アクションの決定(15分)
- 課題に対する具体的なアクションを決定
- 担当者と期限を明確にする
レポートの改善提案(5分)
- 現在のレポートで不足している指標はないか
- 見にくい・使いにくい箇所はないか
- 次回までに改善する項目を決定
次回会議: {{日時}}
差し込み変数:
- {{部門名}}: マーケティング、営業、カスタマーサービスなど
- {{部門責任者}}: 部門のマネージャー・責任者名
- {{実務担当者1}}, {{実務担当者2}}: 実務を担当するメンバー名
- {{データ分析担当者}}: データ分析を専門とするメンバー名(任意)
- {{KPI1}}, {{KPI2}}, {{KPI3}}: 部門の主要KPI名
- {{日時}}: 次回会議の日時
このテンプレートを自社の状況に合わせてカスタマイズし、定例会議を実施することで、レポートが組織で活用される仕組みが整います。
レポートの改善プロセス
レポートを作って終わりではなく、継続的に改善する仕組みを整備することが重要です。見られない・使われないレポートは、削除または統合し、現場が本当に必要とする指標に集中することで、レポート運用の効率が高まります。
レポート改善のポイントは以下の通りです。
- 定期的な活用状況の確認: ダッシュボードの閲覧数、レポートのダウンロード数などを確認し、使われていないレポートを特定
- 現場からのフィードバック収集: 定例会議で「このレポートは見にくい」「この指標が足りない」といったフィードバックを収集
- レポートの統合・削減: 類似したレポートを統合し、ダッシュボードをシンプルに保つ
- 新しいKPIの追加: 事業の成長に応じて、新しいKPIを追加し、レポートを進化させる
継続的な改善プロセスを回すことで、レポートは組織の成長と共に進化し、常に現場で使われる状態を保つことができます。
まとめ:HubSpotレポートで組織のデータ活用を実現するために
HubSpotレポート機能は、マーケティング・営業・カスタマーサービスのデータを可視化し、データドリブンな意思決定を実現するための強力なツールです。しかし、レポートを作成しただけでは、組織で活用されるようにはなりません。
この記事で解説した重要なポイントを整理します。
- レポート作成の基本を習得する: 標準レポート(テンプレート)とカスタムレポートの使い分けを理解し、まずはテンプレートから始める
- 使われる設計を実現する: 現場の意思決定に直結するKPI設定、部門横断でのデータ活用設計を行う
- 運用体制を整備する: レポート定例会議を設計し、PDCAを回す仕組みを作る
- 継続的に改善する: 現場からのフィードバックを収集し、レポートを進化させる
HubSpotレポートは作成方法を学ぶだけでなく、現場で使われる設計と運用体制を整備することで初めて価値を発揮します。
まずは、この記事で紹介したチェックリストとテンプレートを活用し、自社のレポート運用を見直すことから始めましょう。データドリブンな意思決定を実現することで、マーケティング・営業・カスタマーサービスの成果を最大化できます。
