HubSpot初期設定で失敗する企業に共通する課題
HubSpot設定の答えは明確で、HubSpotの初期設定の成功は、基本設定の完了だけでなく、MA/SFA連携を見据えた全体設計と運用定着のための設定チェックリストを整備することで実現します。
この記事で分かること
- HubSpot初期設定で失敗する企業の共通課題と、なぜ公式マニュアル通りでは不十分なのか
- HubSpotの各Hub(CRM/Marketing/Sales/Service/Operations)の違いと、自社に必要な機能の選び方
- アカウント作成から基本設定、MA/SFA連携設定までの全体フローと注意点
- 運用定着のための設定チェックリスト(基本設定・連携設定・運用準備の3軸)
- HubSpot導入で期待できる効果と、内製化までの期間目安
HubSpotを導入したものの、初期設定の項目が多く、何から手を付ければよいか分からない――こうした悩みを抱えるマーケティング部長・IS責任者は少なくありません。公式マニュアル通りに設定を進めれば使えるようになる、と考えていませんか。しかし、HubSpotの初期設定を公式マニュアル通りに進めれば使えるようになる、と考え、MA/SFA連携設定や運用ルール整備を後回しにすると、ツールが活用されず現場に定着しない失敗パターンに陥ります。
HubSpotとは、CRMを基盤とした統合カスタマープラットフォームです。マーケティング・営業・カスタマーサービス・Web管理を一元化し、インバウンドマーケティングを実現するためのツールとして、多くのBtoB企業に導入されています。しかし、設定が不十分だと、せっかくのツールが活用されず、現場で使われないまま放置されることになります。
本記事では、HubSpot初期設定の全体フローから、MA/SFA連携を見据えた設定設計、運用定着のためのチェックリストまで、実践的な方法を具体的なツールとともに提供します。読み終えた瞬間から、自社で実装を開始できる状態を目指します。
HubSpotとは?各Hub(CRM/Marketing/Sales/Service/Operations)の概要
HubSpotの基本機能と各Hubの違いを理解することで、自社に必要な機能を適切に選択できます。HubSpotは、CRMを基盤とした統合カスタマープラットフォームで、マーケティング・営業・カスタマーサービス・Web管理を一元化します。
インバウンドマーケティングとは、見込み客に有益なコンテンツを提供し、自然に自社を見つけてもらうマーケティング手法です。HubSpotはこの手法を提唱し、実現するためのツール群を提供しています。従来の広告中心のアウトバウンドマーケティングと異なり、コンテンツを通じて見込み客との信頼関係を構築する点が特徴です。
HubSpotは以下の5つの主要なHubで構成されています。
Marketing Hubは、HubSpotのマーケティング自動化ツールです。メールマーケティング、リード管理、分析機能を提供し、リード獲得から育成までを一元管理できます。
Sales Hubは、HubSpotの営業支援ツールです。営業パイプライン管理、メール追跡、商談管理機能を提供し、営業活動の効率化と可視化を実現します。
Service Hubは、HubSpotのカスタマーサービスツールです。問い合わせ管理、ナレッジベース、チケット管理機能を提供し、カスタマーサポートの品質向上を支援します。
Operations Hubは、HubSpotのデータ同期・自動化ツールです。複数システム間のデータ連携やワークフロー自動化を実現し、部門間のデータサイロを防ぎます。
無料版と有料版の違いについて、よくある誤解があります。無料版はCRM機能(コンタクト管理、商談管理、メール追跡等)が利用可能ですが、Marketing/Sales/Service Hubは有料プランが必要です。BtoB企業のHubSpot導入は、無料CRMからスタートし、有料Hub(Marketing Hub Starter: 月額数万円〜)で本格運用に移行する段階的アプローチが推奨されます。無料CRMで全機能が使えると誤解しがちですが、ROI最大化には有料Hub導入が前提となります。
HubSpot初期設定の全体フロー
HubSpot初期設定の全体フローを理解することで、効率的に設定を進めることができます。基本的な設定の流れは、アカウント作成、ユーザー追加・権限設定、会社情報の登録、基本設定(タイムゾーン・通貨設定等)の順で進めます。
以下に、各Hub(CRM/Marketing/Sales/Service)の機能比較表を提供します。この表を参考に、自社に必要なHubを選択してください。
【比較表】HubSpot各Hub機能比較表
| Hub名 | 主要機能 | 適した企業規模 | 価格帯(目安) | 用途 |
|---|---|---|---|---|
| 無料CRM | コンタクト管理、商談管理、メール追跡、ミーティング予約、レポート作成 | すべての規模 | 無料 | 顧客情報の基本管理、営業活動の可視化 |
| Marketing Hub | メールマーケティング、ランディングページ作成、フォーム作成、リードスコアリング、マーケティングオートメーション、ABテスト、ブログ管理 | 50名以上 | Starter: 月額数万円〜、Professional: 月額10万円以上 | リード獲得・育成、マーケティング活動の自動化 |
| Sales Hub | 営業パイプライン管理、Eメール追跡・通知、コールトラッキング、ミーティングスケジューラー、見積書作成、営業レポート | 20名以上 | Starter: 月額数万円〜、Professional: 月額10万円以上 | 営業活動の効率化、商談管理、営業プロセスの標準化 |
| Service Hub | チケット管理、ヘルプデスク、ナレッジベース、顧客フィードバック、ライブチャット、チャットボット | 10名以上 | Starter: 月額数万円〜、Professional: 月額10万円以上 | カスタマーサポート、問い合わせ対応の効率化 |
| Operations Hub | データ同期、データ品質管理、プログラマブルオートメーション、他システム連携(Salesforce、Slack等) | 100名以上 | Professional: 月額10万円以上 | 複数システム間のデータ連携、ワークフロー自動化 |
各Hubは独立して導入可能で、段階的に機能を拡張できます。初期設定では、自社の優先課題に応じて必要なHubを選択し、設定を進めることが重要です。
アカウント作成とユーザー追加・権限設定
アカウント作成は、HubSpot公式サイト(hubspot.com)でメールアドレスを登録することから始まります。無料CRMアカウントを作成後、必要に応じて有料Hubを追加する流れが一般的です。
ユーザー追加は、設定メニューからチームメンバーを招待し、権限レベルを設定します。権限レベルには、スーパー管理者(全設定変更可能)、管理者(ユーザー管理・設定変更可能)、通常ユーザー(閲覧・編集のみ)などがあります。部署・役割に応じた権限設定の推奨例として、マーケティング部門には Marketing Hub へのフルアクセス、営業部門には Sales Hub へのフルアクセス、カスタマーサポート部門には Service Hub へのフルアクセスを付与し、他部門には閲覧権限のみを付与することが推奨されます。
会社情報とドメイン設定
会社情報の登録では、会社名・住所・業種・タイムゾーン・通貨などを設定します。これらの情報は、レポート作成やメール配信時に使用されるため、正確に入力することが重要です。
ドメイン接続は、トラッキング精度向上とメール配信の信頼性向上のために不可欠です。自社ドメインをHubSpotに接続することで、ランディングページやブログを自社ドメイン配下で公開でき、SEO効果を高めることができます。また、メール配信時に自社ドメインから送信することで、到達率が向上します。
MA/SFA連携を見据えたトラッキング設定と他システム連携
MA/SFA連携を前提としたトラッキング設定と他システム連携の設計は、HubSpot活用の成否を分けるポイントです。初期段階で全体設計を行わないと、後から設定変更が困難になります。
トラッキングコードの設置とコンバージョン測定
トラッキングコードの設置方法には、Google Tag Manager経由とHubSpot直接設置の2つの方法があります。
Google Tag Manager経由は、タグ管理を一元化でき、複数のマーケティングツールを使用している場合に便利です。ただし、Google Tag Manager の設定知識が必要で、初期設定が複雑になります。
HubSpot直接設置は、HubSpotの管理画面からトラッキングコードを取得し、Webサイトの全ページに設置する方法です。設定が簡便で、HubSpot初心者にも扱いやすい点がメリットです。
コンバージョン測定では、フォーム送信、資料ダウンロード、問い合わせボタンクリックなど、重要なアクションをコンバージョンとして定義し、トラッキングします。HubSpotでは、フォーム作成機能を使って作成したフォームは自動的にトラッキングされますが、既存のフォームをトラッキングする場合は、カスタムイベントの設定が必要です。
Salesforce・Slack等の他システム連携設定
他システムとの連携設定は、Operations Hubを活用することで効率化できます。Operations Hubは、HubSpotのデータ同期・自動化ツールで、複数システム間のデータ連携やワークフロー自動化を実現します。
Salesforce連携では、HubSpotで獲得したリード情報をSalesforceに自動同期し、営業部門がSalesforce上で商談管理を行えるようにします。リードスコアリング、商談ステージ同期など、双方向のデータ連携を設定することで、マーケティングと営業の連携を強化できます。
Slack連携では、HubSpotで発生したイベント(新規リード獲得、商談ステージ変更等)をSlackチャネルに通知し、リアルタイムで情報共有できます。営業チームが即座にアクションを起こせるため、対応スピードが向上します。
MA/SFA連携を後回しにすると、後から設定変更が困難になるため、初期段階で全体設計を行うことが推奨されます。
運用定着のための設定とチェックリスト
運用定着を見据えた設定とチェックリストを整備することで、HubSpotが現場で使える状態になります。設定しただけで現場が使わないリスクを回避するためには、データ入力ルールの策定、現場への教育・トレーニング、定期的なレビュー体制の整備が不可欠です。
BtoB企業のHubSpot導入から内製化まで3か月程度が相場です。ただし大企業(読売新聞東京本社では51部署・約600名が活用)では選定から運用開始まで半年かかる場合もあり、社内調整が重要です。読売新聞東京本社のHubSpot導入後、ナレッジベースアクセス数が前年比1.5倍、電話問い合わせが35%削減、1イベントで500件超の新規ID獲得、Web購読申込の約30%をLP経由で達成しています(2024年時点)。ただし、これは大企業(600名規模)の事例のため、中小企業では再現性が異なる可能性があります。
以下に、HubSpot初期設定チェックリストを提供します。
【チェックリスト】HubSpot初期設定チェックリスト
- HubSpotアカウントを作成し、無料CRMにアクセスできる状態にした
- 必要な有料Hub(Marketing/Sales/Service)を選定し、契約を完了した
- チームメンバーをユーザーとして追加し、権限レベルを設定した
- 部署・役割に応じた権限設定を完了した(マーケ・営業・CS各部門)
- 会社情報(会社名・住所・業種・タイムゾーン・通貨)を登録した
- 自社ドメインをHubSpotに接続し、DNS設定を完了した
- トラッキングコードをWebサイトの全ページに設置した(Google Tag Manager or HubSpot直接)
- 重要なコンバージョンポイント(フォーム送信・資料DL等)を定義し、トラッキングを設定した
- Salesforce等の既存SFAシステムとの連携設定を完了した(該当する場合)
- Slack等のコミュニケーションツールとの連携設定を完了した(該当する場合)
- リードスコアリングモデルを設計し、HubSpotに設定した
- 商談ステージを定義し、営業プロセスに合わせてカスタマイズした
- メールテンプレートを作成し、マーケティング・営業チームで共有した
- ランディングページのテンプレートを作成し、デザインを統一した
- ハウスリスト(既存顧客データ)のインポートを完了した
- データ入力ルール(必須項目・入力形式・更新タイミング)を策定した
- コンタクトプロパティ(カスタム項目)を定義し、必要な情報を収集できる状態にした
- ワークフロー(自動化)を設計し、リード育成プロセスを自動化した
- レポートダッシュボードを作成し、KPIを可視化した
- 運用体制を整備し、責任者を明確化した(マーケ・営業・CS各部門)
- 定期レビュー体制(週次/月次)を構築した
- 操作マニュアルを作成し、チームメンバーに共有した
- ハンズオン研修を実施し、現場担当者が基本操作を習得した
- FAQ・質問窓口を設置し、現場の疑問に迅速に対応できる体制を整えた
- 利用状況を定期的にチェックする仕組みを構築した(ログイン状況・データ入力状況等)
このチェックリストを活用し、基本設定・連携設定・運用準備の3軸すべてを整備してください。一つずつクリアすることで、HubSpotが現場で使える状態になります。
データ入力ルールと運用体制の整備
データ入力ルールの策定では、必須項目(会社名・担当者名・メールアドレス・電話番号等)、入力形式(全角/半角、敬称の有無、住所の表記方法等)、更新タイミング(リード獲得時・商談化時・受注時等)を明確化します。ルールが曖昧だと、データの質が低下し、レポート作成時に正確な分析ができなくなります。
運用体制の整備では、責任者の明確化(誰がどのデータを管理するのか)と定期レビュー体制を構築します。例えば、マーケティング部門がリード情報を管理し、営業部門が商談情報を管理し、カスタマーサポート部門がサポートチケットを管理するといった分担を明確にします。週次または月次でHubSpotの利用状況をレビューし、データ入力状況・ワークフロー実行状況・KPI達成状況を確認することで、PDCAサイクルを回すことができます。
現場への教育とトレーニング
現場が使える状態にするためには、操作マニュアルの作成とハンズオン研修の実施が不可欠です。
操作マニュアルは、リード登録方法、コンタクト情報更新方法、商談ステージ変更方法、レポート閲覧方法などを画面キャプチャ付きで分かりやすく説明します。HubSpot公式ドキュメントをそのままコピーするのではなく、自社の運用フローに合わせたカスタマイズが重要です。
ハンズオン研修では、実際にHubSpotを操作しながら学ぶ機会を設けます。座学だけでは身につかないため、実際のリードデータを使って操作練習を行います。マーケティング担当者向け研修、営業担当者向け研修、カスタマーサポート担当者向け研修をそれぞれ実施し、役割に応じた操作を習得させます。
FAQ・質問窓口の設置では、現場の疑問に迅速に対応する体制を整えます。ツール導入初期は特に質問が多く発生するため、専任の担当者を配置することが推奨されます。利用状況の定期チェックでは、ログイン状況、データ入力状況、ワークフロー実行状況を確認し、使われていない機能があれば追加研修を実施します。
内製化までの3か月間、継続的にサポートすることが、HubSpot運用定着の鍵です。
HubSpot初期設定の成功は全体設計と運用準備で決まる【まとめ】
HubSpotの初期設定の成功は、基本設定の完了だけでなく、MA/SFA連携を見据えた全体設計と運用定着のための設定チェックリストを整備することで実現します。
公式マニュアル通りに進めれば使えるようになる、と考え、MA/SFA連携設定や運用ルール整備を後回しにすると、ツールが活用されず現場に定着しません。HubSpot導入後の成功事例を見ると、適切な設定と運用体制整備が成果につながっていることが分かります。
HubSpot導入企業のブログ運用では、サイトトラフィック+55%、インバウンドリンク+97%、インデックスページ+434%向上という成果が報告されています(HubSpot調査、中小企業1,531社、2024年)。読売新聞東京本社では、電話問い合わせ35%削減、1イベントで500件超の新規ID獲得を達成しました。ChatWork株式会社(kubell)では、見込み客数が従来の3倍、受注額が想定の3倍以上に増加しました。リードプラス株式会社では、初年度ROI 420%、有望見込み顧客獲得数が年末時点で6-7倍(うち20%が購買)を達成しました。パナソニック インダストリーでは、問い合わせ対応が6分の1に削減されました。
ただし、これらは個別企業の成功事例であり、全企業で同様の成果を保証するものではありません。適切な設定・運用体制整備が前提で、内製化に3か月程度かかる点に注意が必要です。
次のアクションとして、以下のステップを推奨します。
- HubSpot初期設定チェックリストで自社の設定状況を確認: 基本設定・連携設定・運用準備の3軸すべてを整備し、抜けがないか確認してください。
- MA/SFA連携設定を初期段階で実施: Salesforce等の既存システムとの連携設定を後回しにせず、初期段階で全体設計を行ってください。
- 運用定着までの3か月間、継続的にサポート: 操作マニュアル、ハンズオン研修、FAQ窓口を整備し、現場が使える状態を維持してください。
HubSpot初期設定は、一度設定したら終わりではなく、定期的に見直し、改善を続けることが重要です。全体設計と運用準備を地道に進めることで、HubSpotを確実に活用できる状態を構築できます。
