従来型のプッシュ営業の効率が低下している...プル型営業に転換すべき?
B2B企業のマーケティング・営業責任者の多くが、「飛び込み営業やテレアポの効率が低下している」「顧客から問い合わせを獲得するプル型営業に転換したい」「プッシュ型とプル型、どちらを選ぶべきか」といった疑問を抱えています。
インターネットの普及により、顧客は購買行動時に営業担当者からではなく、自分でインターネットから情報を入手するようになりました。この変化に対応するため、多くの企業がプル型営業(インバウンド営業)への取り組みを強化しています。
この記事では、プル型営業の定義、プッシュ型営業との違い、メリット・デメリット、具体的な施策、使い分け・組み合わせ方、体制構築とKPI設定を体系的に解説します。B2B企業のマーケティング・営業責任者が、自社に適した営業戦略を設計できるよう、実用的な情報をお届けします。
この記事のポイント:
- プル型営業は顧客からのアクション(問い合わせ、資料請求)を促す営業手法で、インバウンド営業とも呼ばれる
- プッシュ型営業は企業から顧客へアプローチ、プル型営業は顧客から企業へアプローチ
- プル型営業のメリット:商談化率・成約率が高い(プッシュ型の10倍効果との報告)、信頼関係の構築が容易
- プル型営業のデメリット:成果が出るまでに時間がかかる(3-6ヶ月以上)、高品質コンテンツ作成のコストが必要
- プル型とプッシュ型は補完関係にあり、商材特性・市場状況・成果までの時間軸に応じて使い分けることが重要
1. プル型営業とは?プッシュ型営業との違いと顧客行動の変化
(1) プル型営業の定義(顧客からのアクションを促す営業手法)
プル型営業は、顧客からの問い合わせや資料請求などのアクションを促し、それに基づいて営業を行う手法です。
プル型営業の特徴:
- 受け身型: 企業側から積極的にアプローチせず、顧客からの接触を待つ
- 価値提供: SEO、コンテンツマーケティング、ウェビナー等で価値ある情報を提供し、顧客の関心を引く
- 顧客主導: 顧客が自発的に情報を探し、問い合わせるプロセス
例:
- 自社ブログで課題解決の記事を公開 → 検索で見つけた顧客が問い合わせ
- ウェビナーを開催 → 参加者から資料請求
- ホワイトペーパーをダウンロード配布 → ダウンロードした見込み客に営業アプローチ
(2) インバウンド営業との関連性
プル型営業は、インバウンド営業とも呼ばれます。
インバウンド営業:
- 顧客からの接触を待つ受け身型の営業スタイル
- 有益な情報を提供し、顧客が自発的に問い合わせる仕組みを作る
- プル型営業と実質的に同じ意味で使われることが多い
アウトバウンド営業との対比:
- アウトバウンド営業(プッシュ型): 企業側から能動的にアプローチ
- インバウンド営業(プル型): 顧客からの接触を待つ受け身型
(3) プッシュ型営業(アウトバウンド営業)との違い(企業→顧客 vs 顧客→企業)
プル型営業とプッシュ型営業は、アプローチの方向性が根本的に異なります。
| 項目 | プッシュ型営業 | プル型営業 |
|---|---|---|
| アプローチ方向 | 企業 → 顧客 | 顧客 → 企業 |
| 営業スタイル | 攻め型(能動的) | 受け身型(受動的) |
| 主な手法 | 飛び込み営業、テレアポ、DM | SEO、コンテンツマーケティング、ウェビナー |
| 顧客の関心度 | 低〜中(アプローチ時点) | 中〜高(問い合わせ時点) |
| 商談化率 | 低〜中 | 高 |
| 成果までの期間 | 短期(即座にアプローチ可) | 長期(3-6ヶ月以上) |
| コスト | 人件費中心 | コンテンツ作成・SEO対策 |
具体例:
- プッシュ型: 営業担当者が企業リストを作成し、電話でアポイントを取る
- プル型: 自社ブログで課題解決の記事を公開し、検索で見つけた顧客から問い合わせを受ける
(4) インターネット普及による顧客購買行動の変化
顧客の購買行動は、インターネットの普及により大きく変化しました。
従来(インターネット普及前):
- 顧客は営業担当者から製品情報を入手
- 営業担当者が情報源として重要な役割
- プッシュ型営業が主流
現在(インターネット普及後):
- 顧客は自分でインターネットから情報を入手
- 営業担当者に会う前に、すでに購入候補を絞り込んでいる
- プル型営業の重要性が増している
2024年のトレンド: 顧客があらかじめ自分で情報取得してから購入するようになり、プッシュ型営業に代わるプル型営業への取り組みが広がっています。多くの企業が問い合わせ(インバウンド)の促進に注力しています。
2. プル型営業のメリットとデメリット:商談化率と成果までの時間
(1) メリット:商談化率・成約率の高さ(プッシュ型の10倍効果との報告)
プル型営業の最大のメリットは、商談化率・成約率の高さです。
理由:
- 顧客が自発的に問い合わせるため、関心度が高い
- 顧客が自分で情報を調べ、課題を認識している
- 営業側は顧客の課題に合わせた提案がしやすい
効果: プル型営業を適切に実行すると、アウトバウンド(プッシュ型)に比べて見込み顧客のコンバージョン効果が10倍高くなるとの報告があります(Salesforce調査)。
具体例:
- プッシュ型テレアポ: 100件架電 → 10件接続 → 1件商談化(商談化率1%)
- プル型問い合わせ: 10件問い合わせ → 8件商談化(商談化率80%)
(2) メリット:信頼関係の構築と長期的な顧客関係
プル型営業では、価値ある情報を提供し続けることで、信頼関係を構築できます。
信頼関係の構築プロセス:
- 価値提供: 自社ブログで課題解決の記事を公開
- 専門性の訴求: 顧客が「この会社は詳しい」と認識
- 信頼の醸成: 継続的な情報提供で信頼が蓄積
- 問い合わせ: 顧客が課題を抱えたときに、真っ先に問い合わせ
長期的な顧客関係:
- プッシュ型は「売って終わり」になりがち
- プル型は信頼関係を基盤とした長期的な関係が築ける
- リピート購入、アップセル・クロスセルの機会が増える
(3) デメリット:成果が出るまでに時間がかかる(3-6ヶ月以上)
プル型営業の最大のデメリットは、成果が出るまでに時間がかかることです。
理由:
- SEO対策は効果が出るまで3-6ヶ月以上かかる
- コンテンツマーケティングは記事数が一定量蓄積されるまで効果が薄い
- ブランド認知の向上には時間が必要
タイムライン例:
- 0-3ヶ月: コンテンツ作成・SEO対策開始、問い合わせは少ない
- 3-6ヶ月: SEO効果が徐々に現れ、問い合わせが増え始める
- 6-12ヶ月: 安定的に問い合わせが入る状態
注意点: 短期的な売上目標がある場合は、プル型だけでは不十分です。プッシュ型との併用が現実的です。
(4) デメリット:高品質コンテンツ作成のコストと専門知識の必要性
プル型営業には、高品質なコンテンツ作成やSEO対策が必要で、コストと専門知識が求められます。
必要なコスト:
- 人件費: ライター、デザイナー、SEO担当者の人件費
- ツール費用: MA(マーケティングオートメーション)、CRM、SEOツール等
- 外注費用: 外部ライター、デザイナー、SEOコンサルタント等への外注費
必要な専門知識:
- SEO対策: キーワード選定、内部対策、外部対策
- コンテンツ作成: ターゲット設定、ライティング、デザイン
- データ分析: アクセス解析、コンバージョン測定、改善施策の立案
リスク: 専門知識なしに始めると、成果が出ず、投資が無駄になるリスクがあります。社内で専門人材を育成するか、外部パートナーに依頼することが推奨されます。
3. プル型営業の具体的な施策と実装方法
(1) SEO対策とコンテンツマーケティング(オウンドメディア、ブログ)
プル型営業の中核となる施策です。
SEO対策: 検索エンジンで上位表示されるようにウェブサイトを最適化します。
実装方法:
- キーワード調査: ターゲット顧客が検索するキーワードを特定
- コンテンツ作成: キーワードに沿った課題解決記事を作成
- 内部対策: タイトルタグ、メタディスクリプション、見出し構造を最適化
- 外部対策: 他サイトからのリンク獲得(被リンク)
コンテンツマーケティング: 価値ある情報を提供し、顧客の関心を引きます。
実装方法:
- オウンドメディア構築: 自社ブログを立ち上げ、定期的に記事を公開
- 記事テーマ設定: 顧客の課題を解決する実用的な記事
- 継続的な更新: 週1-2本ペースで記事を追加
期待される効果:
- 検索からの流入増加
- 専門性・信頼性の訴求
- 問い合わせ増加
(2) ウェビナー・セミナーとホワイトペーパー配布
直接的な接点を作る施策です。
ウェビナー・セミナー: オンライン(ウェビナー)または対面(セミナー)で、ターゲット顧客に有益な情報を提供します。
実装方法:
- テーマ設定: 顧客の関心が高いテーマを選定
- 集客: 自社サイト、SNS、メール、広告で告知
- 開催: 実用的な情報を提供し、Q&Aで顧客の疑問に答える
- フォローアップ: 参加者にアンケートを実施し、営業アプローチ
ホワイトペーパー: 専門的な情報をまとめた資料を無料でダウンロード配布します。
実装方法:
- テーマ設定: 顧客の課題を深掘りした専門的な内容
- 作成: 調査データ、事例、ノウハウをまとめた資料(PDF)
- 配布: 自社サイトでダウンロードフォームを設置
- リード獲得: ダウンロード時に連絡先を取得し、営業フォロー
(3) SNSマーケティングとメールマーケティング
顧客との接点を増やす施策です。
SNSマーケティング: Twitter(X)、LinkedIn、Facebook等で情報発信します。
実装方法:
- プラットフォーム選定: ターゲット顧客が利用するSNSを選択(B2BならLinkedInが有力)
- 定期投稿: 自社ブログ記事、業界ニュース、ノウハウを定期的に投稿
- エンゲージメント: コメント・リアクションで顧客と交流
- 広告活用: SNS広告で認知拡大
メールマーケティング: 見込み客に定期的にメールを送信し、関係を維持します。
実装方法:
- リスト構築: ホワイトペーパーダウンロード、ウェビナー参加者等からリスト作成
- ステップメール: 段階的に情報を提供するメールシリーズを設計
- ニュースレター: 月1-2回、有益な情報をまとめたメールを配信
- パーソナライズ: 顧客の関心に応じた内容をカスタマイズ
(4) 展示会・カンファレンス出展
対面で接点を作る施策です。
実装方法:
- 出展準備: ブースデザイン、配布資料、デモ環境を準備
- 集客: 事前告知で来場を促す
- 当日運営: 来場者に製品説明、名刺交換、資料配布
- フォローアップ: 来場者に後日営業アプローチ
効果:
- 短期間で多数の見込み客と接点を作れる
- 対面で信頼関係を構築できる
(5) 価値ある情報提供による専門性の訴求
すべての施策に共通する重要ポイントです。
実践のポイント:
- 顧客視点: 「自社の製品を売りたい」ではなく「顧客の課題を解決したい」
- 具体性: 抽象的な情報ではなく、具体的なステップ・数値・事例
- 専門性: 業界の専門知識を活かした深い情報
- 継続性: 単発ではなく、継続的に情報を提供
これにより、「この会社は信頼できる」「この会社に相談したい」と顧客に思ってもらえます。
4. プル型とプッシュ型の使い分け・組み合わせ方
(1) 商材特性による選択(認知度、購買頻度、単価)
商材の特性によって、プル型・プッシュ型の適性が異なります。
プル型に適した商材:
- 認知度が高い商材: 顧客が自発的に検索する
- 複雑な商材: 情報収集に時間をかける顧客が多い
- 高単価商材: 意思決定に時間がかかり、情報を比較検討
例: CRM、MAツール、ERPシステム
プッシュ型に適した商材:
- 認知度が低い商材: 顧客が存在を知らないため、積極的にアプローチが必要
- シンプルな商材: 説明が簡単で、即座に判断できる
- 低〜中単価商材: 意思決定が早い
例: 新製品、ニッチな商材
(2) 市場状況と競合環境による選択
市場の成熟度や競合状況も影響します。
プル型が有効な市場:
- 成熟市場: 顧客が製品カテゴリを認識しており、比較検討している
- 競合が多い市場: 差別化のため、専門性・信頼性を訴求
プッシュ型が有効な市場:
- 新興市場: 顧客が製品カテゴリを認識していない
- 競合が少ない市場: 積極的にアプローチして先行者利益を得る
(3) 成果が出るまでの時間軸(短期目標 vs 長期戦略)
時間軸も重要な判断基準です。
短期目標(3ヶ月以内に成果が必要):
- プッシュ型を優先: テレアポ、飛び込み営業で即座にアプローチ
- プル型は並行して開始するが、短期的な成果は期待しない
長期戦略(6ヶ月以上の視点):
- プル型を重視: SEO、コンテンツマーケティングで持続的な流入を確保
- プッシュ型は補完的に活用
(4) 両者の補完関係と併用アプローチ
プル型とプッシュ型は補完関係にあり、併用が効果的です。
併用アプローチ例:
パターン1: 短期はプッシュ型、長期はプル型
- 今すぐの売上はプッシュ型で獲得
- 同時にプル型(SEO、コンテンツマーケティング)を開始し、6ヶ月後以降の安定的な流入を確保
パターン2: プル型で獲得したリードにプッシュ型でフォロー
- プル型で問い合わせを獲得
- 問い合わせ後、営業担当者が積極的にフォローアップ(プッシュ型)
- 商談化率を最大化
パターン3: 新規顧客はプッシュ型、既存顧客はプル型
- 新規顧客獲得はプッシュ型でアプローチ
- 既存顧客にはプル型(メールマーケティング、ウェビナー)で継続的に情報提供
- リピート購入、アップセル・クロスセルを促進
5. プル型営業の体制構築とKPI設定:成果測定と改善サイクル
(1) マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスの連携体制
プル型営業を成功させるには、部門間の連携が不可欠です。
理想的な体制:
1. マーケティング部門:
- SEO、コンテンツマーケティング、SNS、ウェビナー等でリード獲得
- KPI: リード獲得数、ウェブサイト訪問数、ホワイトペーパーダウンロード数
2. インサイドセールス:
- 問い合わせ対応、リード育成、商談化
- KPI: 問い合わせ対応数、商談化率、SQL(Sales Qualified Lead)数
3. フィールドセールス:
- 商談、クロージング
- KPI: 商談数、成約率、受注金額
連携のポイント:
- MA(マーケティングオートメーション)・CRMツールでデータを共有
- 定期的な連絡会議で各部門の進捗を確認
- リードの引き継ぎルールを明確化
小規模企業の場合: 兼任も可能です。マーケティングと営業を1人で担当し、MA/CRMツールで効率化します。
(2) KPI設定(リード獲得数、問い合わせ数、商談化率、成約率)
プル型営業の効果を測定するため、各段階のKPIを設定します。
主要KPI:
| 段階 | KPI | 測定方法 |
|---|---|---|
| 認知 | ウェブサイト訪問数、SEO順位 | Googleアナリティクス、SEOツール |
| 関心 | ホワイトペーパーダウンロード数、ウェビナー参加数 | MAツール |
| 問い合わせ | 問い合わせ数、リード獲得数 | CRM |
| 商談化 | 商談化率(問い合わせ → 商談) | CRM |
| 成約 | 成約率(商談 → 成約)、受注金額 | CRM |
目安:
- リード獲得数: 月100件(目標による)
- 問い合わせ数: 月10-20件
- 商談化率: 50-80%(プル型は高い)
- 成約率: 20-40%
(3) 成果測定と継続的な改善(コンテンツ最適化、施策の見直し)
PDCAサイクルを回し、継続的に改善します。
改善サイクル:
1. Plan(計画):
- KPIを設定し、達成目標を決める
2. Do(実行):
- SEO対策、コンテンツマーケティング、ウェビナー等を実施
3. Check(測定):
- 各KPIの実績を測定し、目標との乖離を確認
4. Act(改善):
- 成果が出ていない施策を見直し、改善策を実行
改善の具体例:
- SEO順位が低い記事: キーワード最適化、内部リンク追加
- 問い合わせが少ない記事: CTAボタンの配置変更、フォーム簡素化
- 商談化率が低い: インサイドセールスのヒアリング改善
(4) MA/CRMツールの活用とデータ分析
ツールを活用し、営業活動を効率化・可視化します。
主要ツール:
MA(マーケティングオートメーション):
- HubSpot、Marketo、SATORI等
- リード管理、メール配信、スコアリング機能
CRM(Customer Relationship Management):
- Salesforce、HubSpot CRM、Zoho CRM等
- 顧客情報管理、商談管理、営業活動記録
SEOツール:
- Googleアナリティクス、Google Search Console、Ahrefs等
- アクセス解析、キーワード調査、被リンク分析
活用のメリット:
- データの可視化: 各KPIをダッシュボードで一覧
- 自動化: メール配信、リードスコアリングを自動化
- 部門間連携: データ共有でスムーズな引き継ぎ
6. まとめ:商材特性と市場状況に応じた営業戦略の選択
プル型営業は、顧客からのアクション(問い合わせ、資料請求)を促す営業手法で、インバウンド営業とも呼ばれます。プッシュ型営業と比較して商談化率・成約率が高く、信頼関係の構築が容易ですが、成果が出るまでに時間がかかる(3-6ヶ月以上)というデメリットもあります。
プル型営業の選択基準:
- 長期戦略として取り組む: 6ヶ月以上の視点で、SEO・コンテンツマーケティングに投資
- 商材特性を考慮: 認知度が高い、複雑、高単価な商材に適している
- プッシュ型と併用: 短期目標はプッシュ型、長期戦略はプル型で補完
次のアクション:
- 自社の商材特性、ターゲット顧客、成果までの時間軸を整理する
- プル型営業の施策(SEO、コンテンツマーケティング、ウェビナー等)を選定する
- マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスの連携体制を構築する
- KPI(リード獲得数、問い合わせ数、商談化率、成約率)を設定し、定期的に測定する
- MA/CRMツールを導入し、データドリブンな営業活動を実現する
- PDCAサイクルを回し、継続的に改善する
プル型営業とプッシュ型営業は、どちらが優れているということはありません。商材特性、市場状況、成果までの時間軸に応じて使い分け、両者を組み合わせることで、営業効率を最大化しましょう。
※SEO対策やコンテンツマーケティングの手法は変化するため、最新のトレンドを定期的に確認することを推奨します。(この記事は2025年1月時点の情報です)
