オウンドメディアを広報に活用する意義
企業広報の担当者が「オウンドメディアを立ち上げたいが、SEO集客とは違う広報活用の方法が分からない」「プレスリリースやメディアリレーション以外の効果的な情報発信手段を探している」といった課題を抱えることは少なくありません。オウンドメディアは、SEO集客を目的としたマーケティングツールとしてだけでなく、企業ブランディングやPR効果を高める広報戦略の要としても活用できます。
この記事では、広報視点でのオウンドメディア活用方法、運用体制の構築、成功事例、効果測定まで、B2B企業の広報担当者向けに詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 広報の主戦場が「受け身のメディア露出」から「自社発信」へとシフト、オウンドメディアの重要性が増している
- 広報型オウンドメディアは、企業のリアルや文化を届け、社会との距離感を縮めることが目的
- プレスリリース連動、経営層の発信、企業文化・ビジョン、採用コンテンツなどを発信
- 宣伝会議の調査では8割の企業がオウンドメディアに「プラスの効果を感じている」
- 即効性はなく、最低1.5年かけてトピックと記事を増やし、メディアとしての力をつける必要がある
(1) 広報の主戦場が「自社発信」へとシフト
従来の広報活動は、プレスリリース配信、メディアへの情報提供、記者会見など、第三者メディア(テレビ、新聞、雑誌、Web媒体)に取り上げてもらう「受け身のメディア露出」が中心でした。しかし、デジタル時代の2025年には、広報の主戦場が「自社発信」へとシフトしています。
自社で所有・運営するオウンドメディアを通じて、企業が直接ステークホルダー(顧客、投資家、求職者、社会)に情報を届けることで、メディアフィルターを通さない一次情報の発信が可能になります。
(2) 企業のリアルを届け、社会との距離感を縮める
広報視点でのオウンドメディアは、企業のリアルを届けて社会との距離感を縮めることが重要です。商品・サービス情報だけでなく、働いている人、企業文化、ビジョン、社会貢献活動など、多面的な情報を発信することで、企業に対する理解と共感を深めることができます。
広報型オウンドメディアの基礎知識
(1) オウンドメディアとは(コーポレートサイトとの違い)
オウンドメディア(Owned Media)とは、企業が所有・運営するWebサイトやブログなどのメディアです。情報発信の主導権を持てることが特徴で、自社のタイミングで自由に情報を発信できます。
コーポレートサイトとの違い:
- コーポレートサイト: 企業の公式情報(会社概要、IR情報、採用情報、製品情報等)を掲載する公式サイト
- オウンドメディア: 企業が運営するメディアで、読者に有益な情報を継続的に発信し、企業のリアルや文化を届けることが目的
コーポレートサイトが「企業情報の提示」を目的とするのに対し、オウンドメディアは「読者との継続的なコミュニケーション」を目的とします。
(2) PESOモデルとオウンドメディアの位置づけ
PESOモデルとは、広報PRで活用される4つのメディアを統合したモデルです:
- Paid Media(ペイドメディア): 広告費を支払って獲得する露出(Web広告、新聞広告、テレビCM等)
- Earned Media(アーンドメディア): 第三者メディアに取り上げられて獲得する露出(プレスリリース、記者会見等)
- Shared Media(シェアードメディア): SNSなどで拡散される情報(Twitter、Facebook、Instagram等)
- Owned Media(オウンドメディア): 企業が所有・運営するメディア(自社サイト、ブログ等)
PESOモデルを活用し、各メディアの特性を理解して戦略的に組み合わせることで、広報効果を最大化できます。
(3) マーケティング目的のオウンドメディアとの違い
マーケティング目的のオウンドメディアは、SEO集客、リード獲得、商談化を主な目的とします。一方、広報型オウンドメディアは以下の特徴があります:
- 目的: 企業ブランディング、PR効果向上、社会との関係構築
- ターゲット: 顧客だけでなく、投資家、求職者、社会全体
- コンテンツ: 商品・サービス情報だけでなく、企業文化、ビジョン、社会貢献活動、経営層の発信など多面的
- KPI: PV数やリード数ではなく、ブランド認知度、メディア掲載数、採用応募数などを重視
広報視点でのオウンドメディア活用方法
(1) 企業ブランディングと企業文化・ビジョンの発信
広報型オウンドメディアでは、企業のミッション、ビジョン、バリューを継続的に発信し、企業ブランドを確立します。具体的には:
- 企業文化の紹介: 社員インタビュー、社内イベント、働き方の紹介
- ビジョンの発信: 経営層のメッセージ、中長期経営計画、社会的使命
- 社会貢献活動: CSR活動、サステナビリティへの取り組み、SDGs対応
(2) プレスリリース連動とメディアリレーション
プレスリリースを配信した後、オウンドメディアで詳細情報や背景ストーリーを発信することで、メディアリレーションを強化できます:
- プレスリリースの詳細解説: プレスリリースでは伝えきれない詳細情報、開発秘話、今後の展望等
- 記者向けの補足資料: 画像、動画、データ等をオウンドメディアで公開し、記者が記事化しやすい環境を整備
- 過去のプレスリリースアーカイブ: プレスリリースを時系列で整理し、企業の歴史を可視化
(3) 採用広報への応用
採用広報(リクルーティングPR)の手段としてオウンドメディアを活用することで、企業文化に共感する人材を惹きつけることができます:
- 社員ストーリー: 社員の働き方、キャリアパス、やりがいを紹介
- 職場環境の紹介: オフィスツアー、リモートワーク環境、福利厚生の紹介
- 採用イベントレポート: 会社説明会、インターンシップの様子を発信
(4) 経営層の発信とソートリーダーシップ
経営層(CEO、CTO、CFO等)が業界動向や経営哲学を発信することで、企業のソートリーダーシップ(thought leadership)を確立できます:
- 経営層のコラム: 業界トレンド、経営哲学、社会課題への見解
- 決算説明会の解説: 決算発表の背景、今後の戦略を分かりやすく解説
- 対談・インタビュー: 社外の識者・経営者との対談で多様な視点を提示
運用体制の構築と成功のポイント
(1) 運用体制の構築(役割分担・リソース確保)
オウンドメディアを成功させるには、継続的な運用体制の構築が不可欠です:
- 編集長(責任者): 戦略立案、コンテンツ企画、品質管理を統括
- ライター・編集者: 記事制作、取材、編集を担当
- デザイナー: ビジュアル制作、UI/UXデザイン
- エンジニア: サイト構築、保守、アクセス解析
小規模企業の場合、広報担当者が兼任するケースが多いですが、外部ライターや制作会社を活用することで運用負荷を軽減できます。
(2) コンテンツ制作の継続体制
宣伝会議の調査では、「コンテンツ数の維持」が課題として挙げられています。継続的なコンテンツ制作には以下の工夫が有効です:
- コンテンツカレンダーの作成: 年間・月間のコンテンツ計画を立て、ネタ切れを防ぐ
- 社内ライターの育成: 各部門から情報発信担当者を募り、社内ライターとして育成
- 外部リソースの活用: 制作会社やフリーランスライターに一部を委託
(3) SNSやメールニュースレターとの連携
オウンドメディアの効果最大化には、SNSやメールニュースレターとの連携が必須です:
- SNS連携: Twitter、LinkedIn、Facebookで記事を拡散し、Shared Mediaとしての効果を得る
- メールニュースレター: 定期的に新着記事を配信し、読者との継続的な関係を構築
- 社内共有: 社員にも記事を共有し、社内広報としての効果を得る
(4) 最低1.5年の継続運用が必要な理由
オウンドメディアには即効性がなく、最低1.5年かけてトピックと記事を増やし、メディアとしての力をつける必要があります。短期間で効果を求めると失敗リスクが高まります。
継続運用のメリット:
- 記事の蓄積: 過去記事がロングテールで読まれ続ける
- ブランド認知度の向上: 継続的な発信により、企業のファンが増加
- SEO効果: 記事数が増えることで、検索エンジンからの流入も増加
成功事例と広報効果の測定
(1) 目的別の成功事例(ブランディング、採用、リード獲得等)
広報PR担当者が選ぶオウンドメディアの成功事例として、以下のような目的別の活用が報告されています:
- ブランディング: 企業のビジョン・ミッションを継続的に発信し、ブランド認知度を向上
- 採用: 社員ストーリーや職場環境の紹介により、採用応募数が増加
- リード獲得: BtoB企業が専門知識を発信し、見込み顧客を獲得
- 広告費削減: オウンドメディアでの情報発信により、有料広告への依存度を低減
※これらの事例は企業規模・業種・リソースにより結果が異なります。導入効果は個別の状況に依存します。
(2) 広報効果の測定指標
広報型オウンドメディアでは、以下のような指標で効果を測定します:
- 定量指標: PV数、UU数、滞在時間、SNSシェア数、メディア掲載数、採用応募数
- 定性指標: ブランド認知度調査、社会からの評価、メディアからの問い合わせ増加
宣伝会議の調査では、8割の企業がオウンドメディアに「プラスの効果を感じている」と回答しています。
(3) 2025年の広報トレンドとオウンドメディアの役割
2025年の広報トレンドとして、以下の要素がオウンドメディアの重要性を高めています:
- 生成AIの進化: AIを活用したコンテンツ制作の効率化、パーソナライズされた情報発信
- Z世代・α世代の台頭: デジタルネイティブ世代へのリーチ手段としてオウンドメディアが有効
- サステナビリティ志向の強化: 企業のSDGs対応やCSR活動を発信する場としてオウンドメディアが活用される
デジタル時代では、オウンドメディア、従来型メディア連携(アーンドメディア)、危機管理広報までの包括的アプローチが必要です。
まとめ:広報型オウンドメディアを成功させるために
広報視点でのオウンドメディアは、SEO集客とは異なり、企業ブランディングやPR効果を高める戦略的ツールです。企業のリアルを届け、社会との距離感を縮めることで、企業に対する理解と共感を深めることができます。
次のアクション:
- 自社の広報戦略を整理し、オウンドメディアの目的(ブランディング、採用、メディアリレーション等)を明確にする
- 運用体制を構築し、編集長、ライター、デザイナーの役割分担を決定する
- コンテンツカレンダーを作成し、年間・月間の発信計画を立てる
- SNSやメールニュースレターとの連携を設計する
- 最低1.5年の継続運用を前提に、リソース(予算・人員)を確保する
- 成功事例を参考に、自社に合った活用方法を検討する
広報型オウンドメディアを通じて、企業のファンを増やし、社会との良好な関係を構築しましょう。
