新事業とは?立ち上げの進め方・成功要因・失敗パターンを解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/17

なぜ今、新事業開発が必要なのか

既存事業の成長鈍化に直面するB2B企業では、「次の収益の柱をどう作るか」が経営課題となっています。「新事業を立ち上げたいが、何から始めればいいのか分からない」「過去に失敗した経験があり、今度こそ成功させたい」といった悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

米国S&P500企業の平均寿命は、1960年代の50-60年から2010年以降は約18年に短縮しており、継続的イノベーションの重要性が増しています。この記事では、新事業の定義から立ち上げプロセス、成功要因・失敗パターンまで、B2B企業の実務担当者が判断に必要な情報を整理してご紹介します。

この記事のポイント:

  • 新規事業は企業が既存の事業モデル・領域を超えて立ち上げる事業で、企業寿命短縮化により重要性増加
  • 7つのプロセス(ビジョン明確化→課題発見→市場調査→事業計画→実行・検証)で体系的に進める
  • 成功率は約30%、86%が利益増加につながらず、小さく始めて検証を繰り返すアプローチが重要
  • 失敗の主因は「市場不在」「人材不足」「資金ショート」「タイミング誤り」
  • 2025年に中小企業新事業進出促進補助金が創設(750万円〜9,000万円)

新事業とは何か:定義と類型

(1) 新規事業の定義と既存事業との違い

新規事業とは、企業が既存の事業モデルや事業領域を超えて立ち上げる事業です。新製品・サービスの開発、異なる市場への参入、新しいビジネスモデルの構築などが含まれます。

既存事業との違い:

  • 既存事業: 既に確立された市場・顧客基盤・ノウハウがある
  • 新規事業: 市場・顧客基盤・ノウハウが未確立、不確実性が高い

新規事業では、既存事業で通用した成功パターンがそのまま適用できないケースが多く、データ分析・営業・マーケティング・財務管理など、異なるスキルセットが求められます。

(2) アンゾフの成長マトリクスによる分類

新規事業は、「アンゾフの成長マトリクス」で以下の4つに分類できます。

分類と特徴:

  • 市場開拓(既存製品 × 新規市場): 既存製品を新しい市場・顧客層に展開
  • 新製品開発(新規製品 × 既存市場): 既存顧客向けに新しい製品・サービスを開発
  • 多角化(新規製品 × 新規市場): 全く新しい市場に新製品で参入、最もリスクが高い
  • 市場浸透(既存製品 × 既存市場): 既存事業の拡大(厳密には新規事業ではない)

自社の経営資源や市場環境に応じて、適切な戦略を選択することが重要です。

新事業立ち上げの7つのプロセス

(1) ビジョン明確化と課題発見

新規事業立ち上げの最初のステップは、「なぜこの事業をやるのか」というビジョンを明確にすることです。

ビジョン明確化のポイント:

  • 自社の経営理念・中期経営計画との整合性
  • 解決したい社会課題・顧客の課題
  • 既存事業とのシナジー効果

次に、顧客の課題を発見します。顧客インタビュー、アンケート、データ分析などを通じて、未充足のニーズを特定します。

(2) 市場調査と事業性分析

市場規模・成長性・競合状況を調査し、事業性を分析します。

市場調査の項目:

  • 市場規模・成長率(TAM・SAM・SOMの算出)
  • 競合分析(競合の強み・弱み、差別化ポイント)
  • 顧客セグメント(ターゲット顧客の属性・ニーズ)
  • 規制・法律の確認

事業性分析のフレームワーク: 複数の視点(市場性・顧客ニーズ・技術・収益性)から事業性を検討し、3C分析(Customer・Competitor・Company)、SWOT分析、PEST分析などのフレームワークを活用します。

(3) 事業モデル検討と計画策定

収益モデル・コスト構造・販売チャネルを検討し、事業計画を策定します。

事業計画に含める項目:

  • 収益モデル(売上構成・価格戦略)
  • コスト構造(初期投資・固定費・変動費)
  • 損益計画(売上・費用・利益の3-5年予測)
  • 組織体制・人材計画
  • リスクと対策

(4) 実行・検証(リーンスタートアップ手法)

最小限のコストで小さく始め、顧客の反応を分析し、改良を繰り返す「リーンスタートアップ手法」が有効です。

リーンスタートアップの進め方:

  1. MVP(Minimum Viable Product:最小限の機能を持つ製品)を開発
  2. 早期に市場投入し、顧客フィードバックを収集
  3. データに基づいて改善(ピボット or 継続)を判断
  4. PMF(Product Market Fit:製品が市場に受け入れられる状態)を目指す

このサイクルを高速で回すことで、失敗確率を最小化できます。

成功事例に学ぶ共通要因

(1) 技術転用型(富士フイルムの事例)

富士フイルムは、写真フィルム事業の衰退に直面し、既存技術を異分野に転用することで新事業を成功させました。

成功のポイント:

  • コラーゲン・ナノ技術・抗酸化技術を化粧品「アスタリフト」に転用
  • 既存技術を活かすことで開発期間とコストを削減
  • 新市場(化粧品業界)でのブランド構築に成功

この事例は、既存技術の棚卸しと、それを活用できる新市場の探索が成功につながることを示しています。

(2) 横展開型(ラクスルの事例)

ラクスルは、印刷業界のオンライン受発注・管理システムを、アパレル・ユニフォーム事業に展開しました。

成功のポイント:

  • 印刷事業で培ったシステム・ノウハウを他業種に横展開
  • 同じビジネスモデル(受発注プラットフォーム)を異なる業界に適用
  • 業界構造が似ている市場を選定(多数の中小事業者が存在)

この事例は、一つの成功パターンを複数の市場に展開することで、スケールメリットを得られることを示しています。

注意点: 成功事例は企業規模・業種・既存技術により結果が異なります。自社への適用可能性は慎重に検討が必要です。

よくある失敗パターンと対策

(1) 市場不在・顧客ニーズ分析不足

新規事業撤退の最大の理由は「市場が存在しない」(誰も欲しがらない製品・サービス)です。

失敗のパターン:

  • 顧客インタビューをせず、社内の思い込みで製品開発
  • ターゲット顧客の設定が曖昧(「誰にでも使える」は誰にも刺さらない)
  • 競合調査が不十分で、既に類似製品が市場に存在

対策:

  • 初期段階で顧客インタビューを最低20-30件実施
  • 具体的なペルソナを設定し、顧客の課題を深掘り
  • MVPで早期に市場投入し、実際の顧客反応を確認

(2) 人材・スキル不足と資金ショート

「必要な技術・ノウハウを持つ人材がいない」が最大の課題(43.8%)とされています。

失敗のパターン:

  • 既存事業の片手間で新規事業を推進(リソース不足)
  • 外部の専門家を活用せず、社内の限られた知識のみで進行
  • 予想外の市場調査・製品改良コストによる資金不足

対策:

  • 新規事業専任チームを組成し、十分なリソースを確保
  • 不足スキルは外部専門家・アドバイザーで補完
  • 資金計画に余裕を持たせ、想定の1.5-2倍の予算を確保

(3) 参入タイミングの誤り

参入タイミングの誤り(早すぎて需要がない、遅すぎて競争が激化)も大きな失敗要因です。

失敗のパターン:

  • 市場が成熟する前に参入し、顧客教育コストが想定外に増加
  • 競合が既に市場を席巻している中で後発参入
  • 技術トレンドの見誤り(過度に先進的 or 時代遅れ)

対策:

  • 市場の成長曲線を分析し、参入タイミングを見極める
  • 競合の動向を継続的にモニタリング
  • テクノロジーロードマップで技術トレンドを把握

まとめ:新事業を成功に導くポイント

新規事業開発は、企業の持続的成長に不可欠ですが、成功率は約30%と低く、体系的なアプローチが重要です。以下のポイントを押さえて進めましょう。

新事業成功のポイント:

  • 7つのプロセス(ビジョン明確化→課題発見→市場調査→事業計画→実行・検証)を順序立てて進める
  • リーンスタートアップ手法で小さく始め、高速でPDCAを回す
  • 顧客ニーズを徹底的に分析し、市場不在のリスクを回避
  • 専任チームを組成し、十分なリソース(人材・資金)を確保
  • 3年以内の評価期間を設定し、撤退基準を明確化

次のアクション:

  • 自社の経営課題と新規事業のビジョンを整理する
  • 顧客インタビューで課題を深掘りする
  • 市場調査で事業性を検証する
  • リーンスタートアップ手法でMVPを開発・検証する
  • 補助金制度(中小企業新事業進出促進補助金等)の活用を検討する

新規事業は失敗のリスクが高いですが、成功事例から学び、失敗パターンを避けることで成功確率を高められます。小さく始めて検証を繰り返すアプローチで、自社の次の収益の柱を育てましょう。

※補助金制度の詳細は最新情報を公式サイトでご確認ください(この記事は2025年1月時点の情報です)。

よくある質問

Q1新規事業の成功率はどれくらいですか?

A1パーソル総合研究所の調査では、成功実感29%、実際の利益増加14%との結果があり、86%は実際の利益増加につながっていないとされています。大企業では、立ち上げ確率45%、単年度黒字化17%、累積損失解消7%、中核事業化4%というデータもあります。小さく始めて検証を繰り返すリーンスタートアップ手法が推奨されます。

Q2新事業に使える補助金はありますか?

A22025年に「中小企業新事業進出促進補助金」が創設されました。従業員数に応じて750万円〜9,000万円の支援(補助率50%、賃上げ特例で30-90百万円)が受けられます。申請要件やスケジュールは変更の可能性があるため、最新情報は公式サイト(中小企業基盤整備機構)でご確認ください。

Q3新事業の撤退基準はどう決めるべきですか?

A3多くの企業は3年以内の評価期間を設定しています。撤退判断の基準としては、(1) PMF(Product Market Fit)達成の見込み、(2) 累積損失の許容額、(3) 市場環境の変化(競合・規制)を総合的に判断するのが一般的です。最初から撤退基準を明確にしておくことで、損失を最小化できます。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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